軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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セシリオ様の即席お貴族様講座は、すぐに始まった。

「普通、貴族の娘は家の発展のために政略結婚が当たり前なんだ。年が離れているのなんて普通の事だし、自分の父親より年上の人に嫁ぐなんていうのもザラだよ。後継ぎの息子とその予備の息子、そうだなぁ、大体2人くらい魔法スキル持ちの男の子を産めばお役目御免なんだよ。だから、それ以降はお互いに愛人を作ったりして好きにするもんなんだ。子供の教育なんていうのは、ナニーや家庭教師に任せるから、貴族の子供なんて大人になる一歩手前でなければ親とというより、大人と同じテーブルに着く事すらないんだよ。だから平民と比べると親子の情も薄目かなぁ」

まぁ、そんな事だとは思っていたので、折角の即席講座だけれど目新しい情報は無い。

「で、普通は家の発展のための結婚だから、父親も娘たちの嫁ぎ先にはとても神経を尖らせながら婚約を用意するんだけれど、普通、娘が二人以上いる場合は同じ家へ嫁がせることはないんだ。どうしてそうしないかって言うと、主に二つ理由がある」

セシリオ様は指を二本立ってて私たちの顔をぐるりと見回した。

フェリーペを始め、平民組はその先の言葉をじっと待っている。

「一つは、嫁ぎ先が没落したら二人の娘共にその煽りを受けて没落してしまうし、最悪、自家にも影響が出てしまう。もう一つは跡取りの事だ」

「跡取り?」

ボブの口から思わずというように疑問が零れたようだ。

「そう。姉が産んだ子が後継ぎになるか、妹の子か。骨肉の争いになるのを避けるため、普通同じ家に二人以上の娘を嫁がせないもんなんだ。ましてや、今の王家はまだその権力が確立されたとはとても言えない状態なんだ。しかもアドリエンヌのところは娘は二人だけなんだよ。だからアディがアドリエンヌの父親のことを頭が良くないって言ってたんだ」

「ふ~ん。でも、妹の方を王太子へ嫁がせるためにアドリエンヌ様が人身御供って言うのはどういう意味なんですか?」

よし!フェリーペ、良く聞いてくれた。そこ、私も気になっていたんだよ。

「現王の権威はまだ確立されていないから、どこの家も側室に娘を差し出したくないんだよ。結構な年齢だし、王太子の即位もそんなに遠い話じゃないと思う。つまり在位期間が残り少ない相手というわけだ。まだ、王太子の方が王よりも旨味があるし、そっちは正妻の座も空いているから嫁に出すなら王太子なんだよ」

「ええ?それって、もしかして妹の方を王太子の正妃とするために、成り手の少ない現王の側室にアドリエンヌ様を差し出したってことなのかぁ?」

フェリーペの言い様は身も蓋もないように聞こえる。でも、真理だろう。

私には前々世の記憶もある。明治大正は恋愛結婚よりも親に言われた人との結婚が普通だったのでそう言う話は身近な話なのだが・・・・。でも、正室ではなく側室と言うのが特に納得のいかない所だ。妹のために、オマケの様に嫁がせる・・・・。許せないと思う。せめて今後、娘が過ごしやすい相手を探すことに心を砕いて欲しかったっ!

アドリエンヌ様とは私たち平民はどうやってもお会いする事は出来ない。

会えないだけじゃなくて、アドリエンヌ様の父親が厳しくて、彼女の動向すら知る事ができないでいた。

学園を出てずっとそんな状態だから、疑問にも思ってなかったけれど、セシリオ様が教えてくれなければこんな裏情報を知る事すらできなかったはず・・・・。

アドリエンヌ様にお会いするのは、出来るとすれば貴族であるセシリオ様だけれども、未婚の女性の所にこれまた未婚の男性が会いに行くと言うのはとてもハードルが高い。

それに苦労してアドリエンヌ様に会えたとても、どうしてあげる事もできない。

貴族の子女は親の言う通りに政略結婚をするのが普通だから、 傍(はた) が何かしてあげられる事はほぼ無い。

ましてや相手が王であれば、王の承認を得た”婚約”となるので、それこそそれをひっくり返すのは無理だ。

唯一の方法は駆け落ちだが、その場合は逃げた二人の貴族籍のはく奪はもちろん、両家の親族に多大なる迷惑が掛かってしまうのだ。

今回の場合、本当にアドリエンヌ様が王の側室になるのなら、それを無視しての駆け落ちなんてしたら王家の顔を潰した事と同義となり、お家取り潰しなんて言う処置も考えられるのだそうだ。

「それにアドリエンヌ側にも脛に傷があるからね。婚約がこれまで2回も流れている事だよ。今回のまで流れてしまったら運の無い女性として社交界で定着してしまうだろう。貴族や宮殿って言うのは、運の無い人間を極端に嫌うからな。もし、今回の話も流れてしまったら、今後アドリエンヌは 真面(まとも) な結婚は望めなくなるだろう・・・・」

セシリオ様が眉根を寄せて苦虫を潰した顔で言った言葉を、ユーリは両手の色が白に変わる程力を込めて握りながら聞いていた。

自分の叔父がしでかした騒動でアドリエンヌに瑕疵がないにも関わらず、多大なる迷惑を掛けてしまっているのが、前から気になっていたのだろう。

「結論として、アドリエンヌは現王の側室になる事を断る道は残ってないってことさ。あの父親が親だったのが不運としか言いようがないね。あややクラブの時だって、ガーデニング一つやらせてくれなかったしな・・・・。最近、また、農民の次男、三男たちが不穏な動きをしているってユーリ経由で情報が入って来ているから、余計に心配だよな」

そんな情報、私の手元には届いていなかったので、反射的にユーリの方を向いたら、苦虫を噛み潰したような表情のユーリが僅かに頷いた。

余計にアドリエンヌ様の婚約を祝う気持ちが減ってしまった・・・・。

何とかしてアドリエンヌ様の状態や気持ちを知りたいけど、会えないのだからやり様が無い。

「セシリオ様。私たちがアドリエンヌ様へお手紙を書いたら、デザイナー経由で渡してもらう事は可能ですか?」

それくらいしか方法を思いつかなった。でも、何とか連絡だけは取りたいんだよ。

「う~ん、短い手紙なら何とか渡せるかもしれない。ただ、メイドたちが側を離れる瞬間がなければ基本渡せないと思って欲しい」

「わかりました。短い手紙を書いてみます」

「俺も」

「僕も」

平民組が全員書くのなら、メグにも知らせて鉄道で手紙を送ってもらおう。