軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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今朝始業のタイミングでローマちゃんはホテルからの正式文書を受け取った。

シンバメイド長から何度も説明と確認を受けた後だから、きっとそれがどんな内容の書類なのか分かっているのだろう。

「いい気味よ。オーナー一族と関係があるとか意味深に触れ回って、ただの研修生が偉そうにしてたものね」

「そうそう、若い男性に対する色目が酷かったしね~」

「うんうん。ここへは結婚相手を探しに来たのかって感じだったよね」

「だよね~。でも、オーナーの妹の友達でもちゃんと仕事しなければ首は切られるんだね。ある意味安心したわよ~」

これらはメイドたちが制服に着替えたり、食事をしたりする女子従業員の控室で交わされた言葉だ。

客室のあるメインの建物とは別の建物なので、万が一にも客は来ない。

そんな従業員専用建物の中をたまたま別件で通りかかった私の耳に入ってきたのは、ローマちゃんの名前は出ていなくても話の内容と彼女たちの着ているメイドの制服で、ローマちゃんの事だと丸わかりの噂話だった。

「ローマちゃん。力になれなくてごめんね・・・・。もし良かったらウチにご飯を食べに来ない?」と恐る恐るウチのエイファが話しかけたらしいけれど、「ううん。いい」とそっけなく言って支給品を事務所へ返し、身一つでホテルを出て行ったローマちゃん。ある意味潔い。

エイファはかなり落ち込んでいて、でも、同時にローマちゃんが研修を切り上げられた理由もエイファなりに納得しているのか、私にこの状況をどうにかしてくれとかは言いに来た事がない。

あれからもエイファは研修を前と変わらず頑張っている。

でも家では可成り塞いでいると母さんが言っていた。

心配だけど、今はどうする事も出来ない。

私に出来たのは、新しい研修先を出来るだけ早く紹介してあげて下さいと学園の先生方に頼む事だけだ。

「セシリオの店が結構上手く行ってるんだ。これから暫くはウチの書斎だけでなく、外に出る事も増えると思う」と先日ユーリが言って来た。

私やエイファにはローマちゃんの事が主となっているけれど、ウチの旦那様は旦那様で周りに動きがあり、忙しくなって来たんだろう。

幼い頃から一緒だし、留学まで一緒に行っていたし、叔父さんの事件の時もアドリエンヌ様よりは手を差し伸べてくれたタイミングは遅かったけれど、しっかりユーリを支えてくれた親友だものね。そんな親友が興した事業だからこそ、手伝いたいのは分かる。

ユーリが思いっきりセシリオ様を補助できる様に、ここでエイファだけじゃなく、私まで落ち込んでいてはユーリに心配を掛けてしまうので、何とかしなくちゃだね。

夕食前、セシリオ様関連で販売前の刷り上がったばっかりの雑誌を見せてもらった。

ユーリん所で作っている『王都ゴシップ』と言う雑誌だ。

女性をターゲットに社交界のパーティでどこそこの貴族がどんな服を着ていたとか、誰と誰が浮気しているとか、商人の奥さん連中で一番のおしゃれさんは誰かとか、いろんな記事を載せていて、結構人気だ。

ただ、『オルダルトゥデイ』と違い、そこまで正確性や中立性を求められていないので、似た様な雑誌は後発組が結構頑張っている。

売り上げは新聞程ではない。

セシリオ様の店はオートクチュールと既製服であるプレタポルテ、両方を扱う画期的な店になるらしい。ゴンスンデでは紳士用のシャツには半既製服があるが、貴族などの富裕層の女性服でプレタポルテは画期的なのだ。何故なら貴族の女性の服は体にぴったり沿ったものが主流なので、採寸せずにドレスを作ると言うのは発想すらないのだ。

今回の雑誌ではセシリオ様が同雑誌の御意見番でもあるマダム・パルティエとの対談形式を取っている広告が6ページに渡って掲載されていた。最初は裏表だけの紙1枚のペラ雑誌だったのに、今やページ数も格段に増えて、地球の雑誌と似た様な商品になっている。

セシリオ様はもともとこの雑誌の記事の監修をしているので身内なのだが、それでも広告料を払ってくれれば広告主でもある。ただ、今回は広告なのに記事の様に見えてしまうのだ。しかも、広告部分は全部フルカラーだ!雑誌は一色刷りなのにね。大盤振る舞いだよ。

このカラーにする費用はセシリオ様のモード会社が出すので、ユーリん所の懐は痛まない。

で、雑誌の真ん中に数ページカラーページがあるだけで、売り場に並べられた時に他社の雑誌とは差を付けられる。

しかも広告だから広告の費用は考えず雑誌の値段は据え置き!読者の懐も痛まない。

モード会社から見てみれば今迄にない画期的な広報が出来、多少の費用が掛かろうと業界のトップに躍り出る可能性がぐ~んと高まったのだ。

セシリオ様、ユーリ、どっちの会社にとっても美味しい事この上ない。

ちゃんと広告のページ下部に小さな文字で、『このページは広告です。記事ではありません』と入っているのだが、それに気づく人は何人いるのだろう?

前世ではこの手法は人を騙す事を前提にしているみたいで無条件に嫌いだったけど、セシリオ様の広告は自社がどの様なポリシーを元にデザインと縫製に取り組んでいるかを熱く語っているイメージ広告で、この服を売りたいと言った具体的な商品押しではなく、次のシーズン流行のデコルテはこれとこれ!みたいな記事として十分に面白く、しかも美しいフルカラーなのでただただ目を引き面白い。

セシリオ様も自社のポリシーだけでイメージアップを図っているだけじゃなく、実は製品の一部分の写真をふんだんに載せていて、しっかり読者の視線を自分の持って行きたい方向へ誘導しているのだ。

ただ、そのやり方が巧妙で、画像でデコルテだけや袖口等ドレスの一部のみを載せ、セシリオ様がこの秋流行らせたいと思っているドレスの特徴を分かりやすく解説しているので、どう見ても記事にしか見えない。

もちろん広告で載せたタイプの服は前もって作り溜められており、広告を見て購買欲を掻き立てられたご婦人方が注文して、プレタポルテでも良いと言う客には比較的すぐに欲しい服が手に入ると言う仕組みだ。

広告も服のデザインだけでなく、生地の柄もこういうのが~と前以て大量購入している生地の前面押しで、他の店が慌てて似た様な生地を購入しようとしても色や柄の大きさなどのレパートリーが乏しくなってしまうのだ。

広告ではマダム・パルティエが『とても斬新だけれど、突飛じゃないので社交界で身に付けるには打って付けですね』とコメントを入れてたり、この生地の特徴は何で、どんなメリットがあるなんて言うモード談義も入っているので多分読者は純粋な記事だと思っていると思う・・・・。

私から見たら、どう考えても今年流行る服を前広で 宣伝(ゆうどう) している様にしか見えないのだけれど・・・・これを記事と勘違いする人から見たら、貴重な意見を教えてもらっている気になる。やっぱり騙しの手口になるのかなぁ?

ユーリはこの広告を出すのに、セシリオ様に全面協力しているみたい。

そしてこの宣伝の方法は、広告担当の営業マン、デルのアイデアなんだそうだ。

う~ん。これって後から問題にならないのかな?と少し不安が残る。

今はエイファの事で頭がいっぱいなので、どうしてもセシリオ様のお店について深く考える事が出来ないのよね。

まぁ、私は新聞社の者ではないので、関係ないといっちゃ関係ないのだれけどね。

私にはセシリオ様の広告より、ローマちゃんとウチのエイファの事の方がよっぽど心配なんだよ。

ローマちゃんの新しい研修先が決まったら学園から報告が来る様にお願いしているのだけれど、まだ連絡は無いし・・・・。でも、気を抜いて何もしないと、はっと気づいたらもう卒園って事になりかねない。

まだウチでの研修最終日から4日しか経ってないから、いくら何でも次の研修先が決まるには早すぎるかな?もう少し時間が掛かるのだんだろうなぁ。ローマちゃんから見たらもっと早くに研修を中止にしてあげた方が身動きが取れやすかったかも・・・・。

一応、学園には前もって次の研修先を探して下さいと2週間半の余裕を持って伝えていたけれど、ローマちゃん自身が次の研修先を探したいと思わなければ、学園に次の研修先探しをお願いしないかもしれないんだよね・・・・。

元々生徒の中には研修には行かず、学園の図書館などで独自の研究をする子もいるみたいだから、そっちに切り替える可能性が無いわけではない。

まぁ、貴族の娘たちは元々が嫁入りの箔付けに学園に通ってる様な物なので、そもそも研修を受けておらず、実家で花嫁修業ってのもあるくらいだから、研修を受けなくても卒園はできるだろう。

「ローマん家は陶器づくりの工房だけど、女だから家を継げないんだって」と、前にエイファが言っていたので、将来の職業はウチではない所での接客業くらいしか道は無い。

あ、平民でも直ぐに結婚するなら働かないというケースもあるなぁ。

私としては早くローマちゃんの新しい研修先が見つかり、今度は問題を起こさず、卒園までちゃんと勤め上げて欲しいのだ。

後、ウチのエイファが今回の事でフローリストガーデンホテルで働く事を厭う事がありません様にと心から願っている。

もちろん、セシリオ様の事業も上手く行けば良いし、そして立ち上げのお手伝いをしているユーリがもう少し家でゆったり出来るといいなとは思うけど、今は早くローマちゃんの次の研修先が決まる事の方が大事だ。