軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ローマちゃんの試験期間が後1週間で終わる今日、ユーリと二人で実家へお呼ばれ。

調味料工業団地で作っているお酒を2種類とソース料理が好きなエイファへ料理を手土産に3階へと上がる。今回は白身魚のソテー、ジュノペーゼソース。これは今夜ではなく、明日にでも父さんたち3人で食べて欲しい。

昔ながらのすり鉢で作るのは大変だから、スキルで造っているブレンダーで簡単に作ってみた。

いやぁ~、文明の利器はありがたいねぇ。

エイファのご機嫌取りと言うよりも、大事な妹を労わりたい気持ちから作ってみたのだが、エイファにちゃんと気持ちが伝わるかなぁ?

「いらっしゃい」

「おじゃまします」

「お帰り~」

「ただいま~」と両親と私たち夫婦の間で挨拶が交わされるが、エイファは居間から出て来ない。

私たちが居間へ入ると、無言で頭を軽く下げて自室へ戻ろうとしているみたい。

それを挨拶にしたかったみたいだけれど、「まぁ、エイファ。お行儀悪いわよ。ちゃんと挨拶しなさい」といつもは優しい母さんにしっかり叱られていた。

今夜の料理は母さんが作ってくれた料理で、幼い頃はモンテベルデ伯爵家のルイージ料理長の賄いを食べ、ポンタ村では『熊のまどろみ亭』の賄いで育ち、その後はここ『フローリストガーデン 光』の賄いだったので、母さんが料理を作ってくれた機会はそんなには無い。だから余計に母さんの手料理を食べれる事が嬉しい。

調味料は私が作った物を常にストックしているから、味噌もあれば、醤油もあるし、砂糖だってふんだんに使える。

まぁ、母さんは日本特有の調味料はあまり使い方が分からないみたいで、しばらく実家の台所で保管して、未使用のままだと、こっそり1階のレストランの方へ渡しているみたい。

ワインビネガーやバルサミコ酢、甜麺醤、〇覇、デジョンマスタード等、日本料理だけでなく前世や現世の世界各国の料理の調味料を思いつく限りスキルで造っては自分の家だけでなく、実家にも置いているので、こっちの世界で良く使われるビネガーなんかは使ってくれてるんだぁ。

「私にはアウレリア程の料理は作れないけど、材料や調味料なんかは主人やこの娘が揃えてくれるから、素材の味で食べれる煮物と焼いただけのお肉を用意したのよ。調味料のお陰でそれなりの味付けになってると思うの。でも、デザートは下の店から持って来たものだから美味しいと思うわよ」と母さんは言うけど、煮物には高価な香草が入っていたり、お肉だって母さんが和食調味料の中で唯一頻繁に使ってくれるニンニク醤油味で焼いた物で高価になり、普通の主婦では作れない物だ。

父さんたちがエイファと私に仲直りして欲しくて用意してくれた折角のチャンス。

挨拶はそっけなかったけど、ちゃんと食卓の席にはついてくれたエイファ。

少しだけで良いからいつものエイファに戻ってくれないかなぁ。

「美味しいよ。母さん」

「うん、美味しいです!いろんな調味料と素材の特徴を引き出した美味しい料理だと思います」と、私たち夫婦は心から母さんの料理を絶賛した。

それを年をとっても美しい母さんが頬を赤らめて身の置き所が無いと言った風に恥じらいながら聞いている。その仕草がめっちゃ可愛い。年上のしかも自分の親に向けて可愛いなんて言ってはいけないのだろうけれど、でも正直可愛いんだもの。

こんなに和気あいあいとした美味しい夕食なのに、エイファの顔は暗いし口数も極端に少ない。

店から持って上がったパフェは美味しいのだが、エイファの落とす暗い雰囲気を払しょくする事はなかった。

折角ナスカが是非にって作ってくれたパフェなのにね。

パフェの底には潰れたプリンが入っていて、その上にフルーツと生クリームを和えた物。さらにその上に2色のアイスクリームと飾り切されたフルーツが盛りだくさん。

プリンを潰すっていう発想は無かったなぁ。結構自由な発想だよね。多分だけれど、ナティージャみたいな一種のカスタードクリームを作りたかったんだろうなぁ。今度、ナティージャの作り方を教えてあげよう。しかし、がんばってるなぁ~、ナスカ。

夕食が終るとエイファは小声で挨拶をして、早々に自分の部屋へ籠った。

そのタイミングで母さんたちが「ねぇ、ローマちゃんの事、どうなっているの?」と心配気だ。

詳細は伝えずローマちゃんの研修を途中で打ち切りにするので、エイファが悲しむだろうとだけ伝えていたので、そりゃぁ心配するよね。ごめんね。

私はエイファの耳に入らない様に少し声を落として、これまでの経緯を伝えた。

「う~ん。職場の雰囲気を悪くする事もマイナス要因だけど、接客そのものがダメとなると解決は難しいなぁ・・・・」とこれまでレストランやホテルの従業員を扱って来た父さんが真っ先に匙を投げた。

「そうなの。裏方に回るか、研修を途中で終了かだったんだけれど、本人とメイド長で面談した所、裏方はやる気がないって断言されちゃって・・・・。次の研修先を紹介するにしてもウチのグループからは外れてしまうし、ウチとしても理由が理由だから別の接客業の仕事を紹介するのは難しいんだよね」

「そうなのねぇ・・・・。ウチに来ている時はとても良い子で、エイファの友達だと職場で触れ回る様な子に見えないのにね・・・・」

少し心の距離を置いてこのテーマを聞いていたユーリが、「リア。お前が出来るのは、研修を終了する事と、次の研修先をすぐに見つけられる様に、それを事前に学園に伝える事だけだと思うぞ。その際、その理由をしっかり学園側に伝えて、接客業でない研修先を紹介する様誘導するくらいしか出来ないと思う。ローマちゃんの人生は、ローマちゃんのモノで、外野がどうにかしてやろうとしても、本人に自覚がなかったり、やる気がなければ誰も助けてはやれないのだから」と淡々と言い聞かせる様に私に話すが、私が既に学園にローマちゃんの事を色々とお願いしている事を知っているユーリの本心は私の両親に聞かせたいと思っているのだろう。

私だってエイファの友達とエイファの間が気まずくなるのは避けたい。だって大事な妹なのだから・・・・。

でも、私の肩にはレストランやホテルの全従業員の生活がかかっているのだ。

そこへ縁故でとんでもない者を雇い入れる事は出来ない。

ましてや正規の従業員でもなく、ただの研修員なのだから。判断は早い内にした方が良い。

「はぁ。ユーリさんのおっしゃっている事も分かるんですけど・・・・エイファが苦しむと思うと・・・・」

「まぁ、レティシア。これで縁が切れる様ならそれまでの友達、否、知り合いと言うことさ。最初はローマちゃんも苦しむかもしれないけれど、心の傷が癒えたら、ちゃんとエイファとも友達に戻るだろう」

父さんが母さんを慰めているけれど、私も含め、みんながエイファを苦しめたくない気持ちで一杯だ。

何せ、ローマちゃんはエイファの数少ない友達の中でも一番の親友なのだから。

「そう言えばプルミエって言う給仕が先日首になって、ホテルの前で騒いだって報告があったが、そっちの問題は片付いたのかい?」

父さんが解雇つながりで思い出した様に聞いて来た。

その表情には心配している事が窺えた。

病気の子供を抱えているのに夫は働かず、彼女の稼ぎで生計を立てているのに、働く態度はまじめでは無く、職場の雰囲気も壊してしまう人物。

そこで思い切って解雇したのだが、「このホテルを利用しているみなさんに訴えます。私は病気の子供を抱えているのに解雇されたんです。酷いと思いませんかっ!?」とホテルの玄関口で騒ぎまくったのだ。

ホテルの玄関口は宿泊客だけでなく、レストランやクラブ等を利用するだけの客もおり、結構な人数が行き来している中、人目を惹くパフォーマンスが繰り広げられ、ウチのホテルのイメージが著しく損なわれたのだ。

もちろんベルボーイたちやレセプション担当の男性職員、ガードマンなどが直ぐに彼女を裏へ引き摺る様に連れて行き従業員出入口からおっぽり出したが、たまたま出社していた私が見ていてもその引き摺る感じがあまり良い印象を与えなかった様に見えた。

彼女の扱いが悪いと周りに思わせてしまったかもしれない。

実際にはこちらの言い分が正しいのだが、ホテルの玄関先で彼女と同レベルまで落ちた形でホテル側が弁明すれば、それはそれでホテルの格が落ちてしまう。

解雇に当たってどこが問題なのか、1ヶ月の様子見をする中で改善されなければ解雇と前以て説明しているのに、彼女の態度は改まらなかったのだ。

いや、説明をして直ぐはある程度改まったのだが、1週間もすると元に戻ってしまったのだ。

なので彼女を裏門へ連れて行く途中で、「ホテル側はあなたの勤務態度の問題点を1ヶ月前に告知しており、それを改めなかったのでお約束通り解雇になっただけです」とコンシェルジュが気を利かせて周りに聞こえる様に言ってくれたので、ある程度は印象を和らげる事が出来たとは思うけど・・・・。

本当に人を雇うのは難しい。

ああ、今度はローマちゃんかぁ・・・・。