軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

記者は辛いよ フールVer. ①

このテロンって先輩は以前からちょっと怠け者な感じだったなぁと思いながら、辺境伯領都の石畳の道を二人して早足で移動ナウ。

オイラはいつもならポンタ村で取材活動をしてるんだ。あそこがオイラの担当地区なんだよ。

ポンタ村は特殊な村だ。建設工事が苦手なこの国が、王都と他の大きな町とを直接つなぐと標高差の関係で馬車での移動がキツクなるってんで、モンテベルデーノとゴンスンデを結ぶ街道と王都を繋ぐために態々作られた道に出来た宿場町だった。それが今やフローリストガーデンホテルのグランドキッチンや倉庫群があるから、とっても発展した大きな町になってしまった。まぁ、名前は相変わらず村呼びだけどな。

フローリストガーデンに勤めている幼馴染によると、食材手配のゼットとか言う人が調味料工業団地に住んでいるノエミさんと結婚したので一緒に住みたいので、倉庫をポンタ村から工業団地へ移動させて欲しいと上の人に頼んだらしいが、結局受け入れてもらえず、未だにポンタ村には大きな倉庫群があり、人の往来も激しい。ポンタ村にとっては倉庫があるのはありがたい事なんだけど、ゼットさんって人は日に日に暗い顔になってるってよ。

しかし、ポンタ村から倉庫が無くなったら村が廃れてしまうから、ゼットさん、しばらくは通い妻ならぬ通い夫で頑張ってくれ!

未だにポンタ村は人口も増え続け、求人も豊富で仕事にあぶれた人は少ないから治安は頗る良いし、今も仕事の口を求めて人が流れ込んで来ている。

特に王都では生活できない層が結構な人数流れ込んで来ているんだけれど、高い鉄道の料金が払えないからこの村まで到達できるのは歩いて移動できる比較的体力のある成人男性が多い。

だからこそ、ウチの支局ではオルダル・トゥディ紙以外にもポンタ村専用求人広告専門誌を発行していて不動産の空き物件紹介やアパートのシェア広告なんかも同誌に掲載している。だからオイラは結構忙しく働いているんだ。

まぁ、そんな時に辺境伯領都で取材しろって厳命が下ったんだよ。

ここの辺境伯領都は今とってもきな臭い雰囲気なんだよなぁ。

普段は一緒に組んでる相棒はポンタ村に残したまま、オイッス先輩の相棒、テロン先輩と臨時でペアを組んでいるんだけれど、オイラたちアーベル様付きの記者の中でもリーダー格のオイッス先輩と違い、テロン先輩はやる気が薄い先輩として有名なんだよなぁ。

オイラ、ちゃんとテロン先輩と今回の仕事一緒に熟せるだろうか?

オイッス先輩の様な面倒見の良い人でないと、テロン先輩の相棒は務まらない様な気がするんですけどぉ・・・・。

で、そのきな臭さって言うのが我が物顔で辺境伯領都を闊歩している可成りの数の帝国軍人。しかも軍服を着たまま闊歩しているので、「ここはどこの国?」って考えてしまうくらいには目に付く人数なのだ。

こいつらは店先から商品を取っても金を払わない。綺麗な女性を攫っておもちゃにする。酷い時には小さな子の命まで弄んでいるらしい。オイラはまだ金を払わず商品を持ち逃げする現場を4度見ただけだけどね。

でも、ここに到着してほんの数日でこれだよ。

取材した領民たちは口を揃えて辺境伯とその衛兵らの悪辣さを訴えて来た。勿論、帝国の軍人についても。

それと辺境伯に不満を持っている領民は地下組織が辺境伯の財産を焼き討ちする事に喜びを感じているんじゃないかなぁ?取材してそう思ったよ。でもさぁ、辺境伯の私財が失われると補充が行われるはずで、そのツケは領民へ向くんじゃないかなぁ?

帝国兵が我が物顔で闊歩するこの状況を前に辺境伯領の衛兵たちは帝国軍人たちが領民に何をしても知らん顔してるんだとよ。

それって変でしょう?って、多くの領民が声を潜めて告白してくれた。

大きな声で言わないのは衛兵が怖いからだろう。

で、その衛兵たちは辺境伯の私財を焼き討ちから守るためだけに奔走しているらしい。

更にテロン先輩の指示に従って、って、テロン先輩は指示は出すけど動かないんだよなぁ。で、テロン先輩はオイラに命令だけして、動いて取材をするのはオイラだけって・・・・。あっ!考えが横道に逸れちゃったぜ。

先日、テロン先輩の指示に従って調べてみたら、辺境伯領だけ税率が引き上げられ、地下組織対策と称して更に別枠で臨時に新たな税の徴収までしているみたいだ。

これって領民は飢えて死ねってことか?

むちゃくちゃやってんなぁ。

で、衛兵たちは町中を闊歩する帝国軍人は取り締まらず、焼き討ちの対応以外には税を払えなかった領民をひっ捕まえているらしい。オイラも2件、納税できなかった領民を捕えている所を見掛けたよ。

短い間に2件見たって事は、かなりの数の領民がそんな目に合っているってことだと思う。

今日もテロン先輩から指示が出て地下組織の存在を捉えるべく、ビラがありそうなところを走り回っているところさ。

これから顔を出す予定なのは教会だ。

この町に教会は2つあるのだが、今からオイラたちが行こうとしているのは小さい方だ。

普段、教会内は無人で、横に併設されている学校で授業のある日曜だけ、大きな教会から人が派遣されて来るみたいで、無人の時を狙って教会の方にビラが時々置いてあるそうだ。

無人の教会であっても勝手にお祈りするのはOKなので、普段から数名の領民が出たり入ったりするらしい。だから誰がビラを置いて行くのか分からず仕舞いなんだそうだ。しかも結構な人が出入りするから着実にビラは人々の手に渡っているらしい。

いつでもお祈り出来る様に夜も扉には鍵がかかっていない事から、夜に侵入して来ているのかもしれないけどね。

夜、教会の中には浮浪児とか町に来たばっかりで未だ仕事にあぶれている奴とかが寝泊まりしているから鍵を閉めない。鍵を閉めると冬は死人が出るからなんだと。

綺麗に礼拝堂を使っている内は夜そいつらを追い出すって事はしないから、今後も誰がビラを置いて行っているのか分からず仕舞いかなぁ~。

まぁ、現場百遍って言われているから、教会の様子とビラの有無と、そこで寝泊まりしている人たちのインタビューだけは取っておかないとね。

先日、辺境伯の兵の訓練場横の宿舎に不審火が上がったって聞いた。

犠牲者も数名だが出してしまったらしい。

ここの所、辺境伯所有の不動産が多数不審火などで燃やされている。

すぐに消火された所も、そうでない所もあるが、不審火は殆どが辺境伯関連の建物なのだ。

これは明確に辺境伯の財産を狙っていると言って良いと思う。

おや?あそこで手を繋いで歩いているカップル。二人を囲む護衛兵が多すぎてちゃんと見えないが、あれは辺境伯領の長女と以前ウチの国の学園に留学していた帝国の第三皇子ではないのか?

不審に思って横で歩いていたテロン先輩を見ると、普段は開いているのかどうか分からない細い目をカッと見開いて例のカップルを見ていた。

やっぱり第三皇子と辺境伯領の長女なのだろう。

頷くとテロン先輩も頷き返して来た。

これ程の数の帝国兵が辺境伯領に入って来ているのは第三皇子の護衛と言うことなのか?

それにしては数が多すぎるけど・・・・。

「婚約秒読みらしいぞ」とテロン先輩が教えてくれた。

取材はほとんどオイラにやらせてるくせに、何時誰からその情報を得たんだろう???

「火事だぁー!」

辺境伯領の港が不審火で燃え落ちたのは、例のカップルを見た4日後だった。

ここの港は結構大きく、直ぐにでも記事にして本社へ流さないといけない案件だ。

「ゴンスンデへ報告へ行ってくる。お前はそのまま取材を続けてくれ。いよいよ危なくなったらここを離れろ。記事より命優先でやれ」と、テロン先輩はオイラを一人置いて、とっとと宿を引き払った。

なんだかなぁ~。

先輩、ちゃんとここへ戻ってくるのかなぁ?