作品タイトル不明
闇王もといユーリの新聞王への道10
「俺の家も王家に潰された口だ。俺ん所の領地内に鉱山が見つかったんだが、それは俺の家の者が見つけたのではなく王家の足が見つけたのが運の尽きさ。王家はその鉱山の権利が欲しくて俺の家を潰したんだ」
王家の足と言うのは王家の隠密だ。
数は少ないみたいだが、各地の貴族の動向や財産について調べる裏機関の事だ。
中には鉱山の様な天然資源の有無を専門的に調査する王家の足も数は少ないらしいがいると言われている。
「君の所のクラッツオ家も領地内に金鉱山が見つかったらしいぞ。お前の家を不当に乗っ取ったジェラルドにも鉱山の事は知らせずお家乗っ取りを王家側がけしかけたみたいだな。ん?どうしてそんな事まで知っているかって顔だな」
「君は王家の内側についてまで情報を手に入れている様だが、一介の元貴族の子息にどうやってそんな情報を知りえるのか、君の言う情報は信用に値するのか、そんな事を考えている顔だよ」
「はははははは」
アーベルは仰け反って笑った後、真剣な顔をしてこちらを睨め付ける様にオレに視線を固定した。
「王家の足、ウチがその一つだったんだよ」
「え?」
「あまり位が高く無い貴族家の一部が王家の足でもあるんだよ。ウチのオーバリ家然り、オイカリネン男爵然り、パーッキネン男爵然り、キースキネン子爵然りだ。全部、滅亡したキヴィマキ王国の元貴族だよ。もちろん、ウチもね。キヴィマキ王国を滅ぼした際、現王家の祖先が旧キヴィマキ王国の貴族たちをオルダル国の貴族として迎え入れる代わりに王家の足となる事を強要し、当時のキヴィマキ貴族の内、それを受け入れた者の成れの果てが俺たちだよ。だから未だに王家の足として働いている元キヴィマキ王国の者たちとは繋がっているんだ。故に、情報を手に入れる事が出来ている」
「それなのに自家のお取り潰しについての情報は掴めなかったのかい?」
「ああ、それね。天然資源の調査は元キヴィマキ王国の貴族たちとは別の流れを汲む王家の足だからね。対象となっているウチやウチと繋がりの強い元キヴィマキ王国関係の王家の足には何も伝わって来てなかったよ。その代わりと言ってはなんだけど、元キヴィマキ系の王家の足も、俺たちが持ってる全ての情報を王家に流しているわけじゃないからね。ってか、俺たちはこの国を潰して、再びキヴィマキ王国を再建する事が望みなのでね」とニヤリと笑う。
顔は良い奴なのに、ニヤリと笑う度にその肩に背負っているドロドロしたものが覗き、顔の造形の良さが何の役にも立ってない。異性から見たらまた別の印象を受けるのだろうがな。
「分かっていると思うが、俺たちは君についての情報を入手している。でも、王家等には伝えていない。ああ、もちろん貴族たちにもね。ビラ活動も焼き討ちもしているけれど、俺たちの目的は自身の手で王家を転覆させるのではなく、平民の力で国を潰させる事だ。まぁ、言ってみれば君と全く同じ目的だな」
うっかり返事をしそうになるけれど、オレはまだ此奴にオレがビラ活動を始めたと認めていない。
言質を取られる事だけは避けたい。
此奴が王家の足だったと言う情報も此奴の自己申告なので、その信ぴょう性は確保できてないからな。
「俺が本当に王家の足だったのか、未だにキヴィマキ王国系の王家の足と繋がっているかどうか信じて貰えない事は理解できる。俺が君の立場でもそうだからね。ってか、知らない奴の言葉一つで信じると言った人物なら、こちらが関り合いになる価値も無いしな。でも、ある程度はこちらの手の内を見せないと何も進まないのも分かっている。なので、新聞社の取材としてキヴィマキ系の王家の足と会談を持つ気はないかい?」
思わずガタっとコーヒーテーブルに手をついてソファから身を乗り出してしまった。
王家に謀反心を抱えている王家の足と繋ぎを得る事が出来るのならこれ以上の良策は無い。
「取材をさせてもらえるのは嬉しいが、記事にはさせてもらえないんだろう?」と鎌を掛けてみた。
「会談を無事設定し、君にとって必要な情報を得る事が出来たら、俺とウチの部下たちを記者として雇い入れてくれないか?」
「ん?」
「俺たちはこの国を転覆させたい。そして情報を得る手段がある。君にとってとっても美味しい人材じゃないかい?」
「それでお前たちを雇ったとして、お前たちの利益はどこにあるんだい?」
「新聞記者と言う新しい身分。記事を書くためと言えば多少危ない所へも比較的安全に侵入できるし、衛兵たちに捕まったとしても新聞社と言う組織に守られる」
それだけじゃないだろうと疑いの目を黙って向け続けると、アーベルも観念したのか「分かったよ。俺たちはこの国に発生した平民たちの地下組織のリーダーたちが誰なのか複数掴んでいる。こいつらに取材と称して近づき、少しづつこちらが流したい情報を流すつもりだ。それでこれらの組織の活動が活発化してくれ国が転覆してくれれば万々歳だが、もしそれが叶わなくても国に可成りのダメージを与える事が出来る。それが狙いだ」
此奴、こちらが欲しい情報を的確に提示して来ているところを見ると、ここを訪ねる前に本当に色々と調査をして来たのだろう。
得たいと言っている奴等側の利点も納得がいく。
今まで情報を糧に生きてきた奴等だけに、情報の価値を知っているってことか・・・・。
よし!なら奴等を雇えば、奴等が持っている情報をオレが利用できるし、何より王制を転覆させたいところまでは目的が同じだからな。雇ってみるかぁ。
「本当にそんな会談を設定できるのであれば、是非お願いしたいねぇ」
「ユーリ!」
今まで黙ってみていたリアが、焦った顔をして俺の左袖を引っ張る。
「大丈夫だよ。新聞記者として王家の足と渡りを付ける事は、メリットしか無いよ」
「でも・・・・」
「オレはビラ活動については何も認めていない。ただ新聞記者として会うだけだから、何の心配も無い」
「でも・・・・」
躊躇するリアを見て、アーベルと言う男はニッコリとリアに微笑みかけた。
「アウレリアさん。何なら会場はあなたの所のホテルでも良いですよ。それならそちらもその部屋へ入って来る者の出入りに目を光らせる事もできるでしょう?」
リアはこの提案を受けても良いのかどうか悩んでいる様だ。
「オレとしてはこの提案、美味しいから受ける心算だ」
「ユーリ!」
「大丈夫だ。それじゃあ、会場をお前んところのホテルにしよう。それで安心できるだろう?」
「・・・・」
結局、来週頭にリアん所のヤンデーノのホテルの部屋で会談を設定する事になった。