軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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鉄道の客車は良い感じにクッションの利いた椅子を使っていることもあり、揺れもあまり感じない。

窓ガラスも私のスキルで呼び出した割れづらく濁りのない物なので、外の景色を見る事が出来る。

ただ、平坦な土地が延々と続き、木が多いか、全く無いかと言った違いしか無い景色なので、数時間もすると結構飽きる。

何よりも開墾が進んでいない土地も可成りあって町や村などはごくたまにしか見掛けず、手付かずの自然、それも山あり谷ありではなく平地が延々と続くのである。

最近、本が良く駅町で売れているというのも頷ける。

ナンクロとかクロスワードの本を作って売りに出したらどうかな?って一瞬頭をよぎったけど、また自分の時間が無くなると慌ててその考えは捨てた。

調味料工業団地から王都へ戻るだけなので、ゴンスンデからの移動を思うと短いんだけれど、それでも鉄道で移動する時は退屈を覚える。

馬車で移動する事を考えたらとっても快適なのにね。

5歳の時、『麦畑の誓い』のみんなに連れられて生まれて初めて駅馬車に乗った時の事を思い出した。

あれはお尻が痛かった。

それを思えば、退屈なんて贅沢だよね。

そんな事を考えていたら、ポンタ村の駅に着いた。

プラットフォームに飛び降り、真直ぐ『熊のまどろみ亭』へ向かう。

「こんばんは~。今日もよろしくお願いしま~す」

そういって、昔の入口、今は裏口となっている方から入り、厨房へ声を掛けた。

「ああ、アウレリアかい。お帰り。食事が先かい?それとも部屋へ行くかい?」

「先に部屋に行って、その後調理場でお食事させてもらっていいですか?」

「ああ、いいよ。ダンヒルさんは宿の2階でいいかい?」

「はい。お願いします」

ダンヒルさんも既に何度も『熊のまどろみ亭』には泊まっているので、ランプを貰って2階へ上がって行った。

私は伯父さんたちの家に未だ私の部屋として取ってある部屋へ向かい、荷物を置いて来た。

食堂で食事をしても良いんだけれど、それだとランディやフェリシアたちとお話できないから、調理場で頂く事にしたけれど、ダンヒルさんは部屋で食べるらしい。

恐らく、私が気兼ねなく親戚とお話できる様に気を使ってくれてるんだと思う。

「あんたのお陰で、ウチは大繁盛だよ」

クリスティーナ伯母さんが嬉しそうな顔で私の夕食を調理台の上に並べてくれた。

大葉とニンニクを使ったソースが掛かっているステーキとポテトサラダ、香草たっぷりのスープだった。

もちろんパンは白パン。

ポテトサラダのマヨネーズは以前、お世話になった時に教えたままの『熊のまどろみ亭』のお手製だ。

私がメニューを確認しながらにっこり笑顔で答えると、「それにしてもお貴族様のお客がものすごく増えたんだ」とマノロ伯父さんが少し顔を顰めた。

何か問題でもあるのだろうか?

そう問うと、「いや、なに、問題は無いんだが、気を抜けないっていうのがなぁ・・・・」とちょっとバツが悪そうに頭を掻いている大きな熊が一匹。

「面白い様に儲かっとるから、此奴なりにお前に礼が言いたかったんじゃよ」と横から爺さんに言われ、マノロ伯父さんが更にバツが悪そうだった。

「最近は、宿もやってくれっていうお貴族様も多くてなぁ。まぁ、食堂だけで手いっぱいで、常連さん以外は泊めてないがな」

やっぱり当初決めた様に、常連さんはまだ泊めているみたいだ。

そのお陰でダンヒルさんも2階に泊めてもらえてるんだけどね。

「で、小耳に挟んだんだが、お前の所で使ってる味付けのヤツを作ってるそうじゃないか。それと酒も」

大きな熊が目をランランと輝かせて聞いて来た。

「作り始めてはいますが、まだ出来上がるまでには時間が掛かるんですよ」

「ん?でも酒も味付けのヤツも今も使ってるだろう?」

熊が不思議そうに聞いてくる。

そうだった、まだ伯父さんたちには私のスキルについて詳しい事は話していなかった。

大公様に最初に会った時にスキルについて聞かれて料理魔法が使える事はその場にいたクリスティーナ伯母さんから聞いているだろうけど、スキルで食材や調味料を呼び出してる事までは知らないかも?

「あ、いえ。少量なら今でもあるんですが、調味料工業団地はそれをもっと量を増やして製造する為に作ったんです。最低でも1年はかかりますし、中には数十年単位のものもあります。お酒は特にそうですね」

「え?」

お酒を一番楽しみにしていたであろう熊さんが、ちょっとがっかりして肩を落としている・・・・。

「お醤油という調味料があります」

「お前の言う調味料って、味付けに使う奴の事か?」

「はい」

「調味料工業団地の調味料って土地名じゃなかったのか・・・・」

「伯父さん、私が勝手に名付けたんですけれど、塩も含めて味付けに使う物は出汁とか調味料って言う様にしています」

「出汁?」

「はい。キノコとか海藻とか魚とか肉ですね。スープを作る時にベースの味付けをするものです」

「あ、なんかそれ、昔お前がここで作っていたスープの時、骨を使った奴があったな。ああいう奴の事か?」

「そうです。そうです」

「うむ。あれは上手かったな。ってか、ウチでも結構な頻度で使ってるけど、骨は煮込むのに時間が掛かるのと、灰汁を取らないといけないのがなぁ・・・・」

マノロ伯父さんがそう言うと、「でも、普通なら廃棄される食材で美味しい料理が出来て、店的にありがたいって父さん前に言ってたぞ」と横からランディがぶっちゃけた。

「ま、まぁ、そうなんだがな」

「パイにしたって、天火料理にしたって、、全部リアがウチに教えてくれた物だから、どれもありがたく作らせてもらおうって前に言ってたじゃないか」

マノロ伯父さんはよっぽどバツが悪かったのか、「お、おう・・・・」と尻切れトンボな返事をして明日の朝食の仕込みに入った。

「父さんもお前にはとっても感謝してるぞ。俺もだけどなっ」と良い笑顔を見せたランディも、皿洗いに戻って行った。

背中を向けた伯父さんに向かって、「醤油なら少しだけになりますが、分ける事はできますよ」と言うと、それまで背中を見せていた伯父さんが、ガバっとこちらを向いた。

「本当かっ」

「もちろん、お金は頂きますけど」

「ああ、それで良い。少量でもいいから回してくれ」

そうやって初の醤油定期購入者となったマノロ伯父さんは満面の笑みを浮かべていた。