作品タイトル不明
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結局全ての駅のビジネスホテルは全く同じ物をドンドン建てて行った。
責任者は大公様と繋がりのある貴族家の紹介者が主だけれど、掃除とかは盗み癖の無い人で真面目に働いてくれる人であれば問題ないから、フローリストガーデンホテルチェーンより幾分気が楽なのだ。
そうこうする内に最初のビジネスホテルが開業した。
もちろんオープニングセレモニーなんて仰々しい物は開かないよ。
ひっそりと営業を始めたんだけれど、もう連日超満員。
特に商人さんたちにウケが良い。
価格的にも懐に優しいのが人気の一つらしい。
鉄道の料金は高いが、その分移動の日数はぐ~んと減るので、移動に係る宿泊費や食費の回数が減る事でその面では費用が抑えられるし、場合によっては馬車や御者を借りたり、冒険者を護衛に雇う事を考えるといっそ鉄道の方が安く上がるらしい。
しかも運べる荷物も結構な重さまでOKだし、泊まる所も新しくて綺麗だし、食事も珍しい物は出ないけれどほっぺたが落ちるくらいには美味しいので大人気なのだ。
そしてその流れに敏感に反応したのも商人たちだった。
駅周辺の土地は大公様やウチで押さえているのだが、徒歩で10~15分くらいの移動は移動とすら思わない人たちが殆どなので、徐々に他の商人による私有地が鉄道を囲む様になった。
まぁね、徒歩や乗合馬車くらいしか移動手段が無い世界だったからね。
「ここから駅が見えるから大きな看板を立てれば客も来てくれて商売できると思うんだ」
「俺もお前とは反対側に土地を買ったよ。今、ここで商売しなければ何処でするんだってもんだよな。ところでお前は何を売るんだ?」
「俺?俺は新鮮な野菜やフルーツさ」
「え?みんなビジネスホテルで食事するんじゃないか?」
「従業員は自分の部屋や家に少しくらいはフルーツを置いておくだろうし、金持ちの客なんかも移動中に食べるものとしてフルーツを買うだろうと思ったんだ。もし売れなければ売りモンを変えればいいだけさ。今はこの土地を手に入れる事こそが大事なんだ。最悪、他の人に土地や建物を貸したって大儲けできると思うぞ」
「おお!そうだな。俺は列車の中で読むであろう本なんかを売る事にしてるんだ」
「本は高いだろう?」
「でも、鉄道の中はする事が無いからな。揺れないから寝るっていう手段もあるけれど一日中寝てるわけにはいかないだろう?そうなると暇つぶしが必要になるんじゃないかと思ってさぁ」
「ははぁ。それは良い所に目を付けたな、お前」なんて会話がそこら辺の商人の口から頻繁に聞こえて来る。
内容は売る物が違うくらいで、全員、今、この瞬間、駅付近の土地を手に入れて店を建てる事は共通しているのだ。
そして自然発生的に出来たいくつもの商業アーケードの外側に居住区がどんどん出来て来ている。
恐らくこれら新しい店やウチのビジネスホテルで働きたい人たちが徐々に駅付近に集まって来ているのだろう。
面白いのはある日突然小さな居住区が出来上がる事だ。
もちろん上下水道も無い。
家だって家って呼んじゃぁいけない様な壁の無い屋根だけの掘っ立て小屋が乱立しているだけだったりするが、人がたくさん集まって住んでいるのでそこが居住区と言うか小さな集落になるのだ。
川も無い場所もあり、そういう場合には先に井戸を掘っている人にお金を払って水を買っている様だ。
私だったらその地区に井戸を掘って、使いたい人から使用料を取るけどなぁ。
でも、そういう発想をする人がいないんだよね。
まぁ、だからそこに集まっている人たちは貧しさから抜け出せないんだろうけどね。
私も上下水道を整備したり、ごみ収集などの公共事業の必要性は分かっているのだが、如何せん領主ではないので身銭を切ってまで何かをしようとは思っていない。
そんなこんなで町が徐々に大きくなり、とうとうスラム街までが出来上がっている所もある。
ただ、スラム街は駅を利用する乗客たちの目に入る様な近場ではなく、駅を取り巻く商業区を更に取り巻く様にして広がった居住区を遠巻きに見ているくらいの距離なので、今の所問題は無い。
笑っちゃうのは駅のある土地の領主の中で目端の利く者は土地を売らず、自分の土地として確保していたが、そうでない領主は全部土地を売りに出してウハウハと喜んでいたそうだ。
しかし、だんだんと既存の町の中心から多くの人口が駅の周りに流れ込み始め、駅周辺が大きな町化して行くのを見るにつれ、徐々に自分が如何に損をしたのか気付いた様だが、もうあとの祭りだ。
だって土地は売った時は金を手にする事ができるけど、土地を持っていればそれを貸出して賃料を永久に貰う事が出来たんだからね。
で、やんわりと住民たちに町長を選ばせて、領主に道路やゴミ処理、下水の処理などの陳情をしてもらう様にした。
駅付近の土地で儲けようが損をしようが領主である限り、住民が居ればちゃんと公共サービスは提供してもらわないとね。
ウチだって税金は払っているんだしね。
こちらの下水は汲み取り式で、その作業をする人に安い日当を払うくらいで排水処理を行う訳ではない。
汚水は村や町からちょっと離れた所に捨てている様だ。
ゴミも町の外にゴミ捨て場が自然に出来るので、そこへ住民みずから捨てに行くのだが、街が繁栄して大きくなると、そのゴミ捨て場を移動させたりしなくてはならなくなるのだ。
もちろん町中のゴミを収集して町から遠いゴミ捨て場まで運んでお駄賃を得ている人もいるので、領主の懐はそこまで痛まないのだが、税金を徴収したいのならば最低限の公共サービスは提供してもらわないとと思うのは私だけかな?
折角真っ新な土地なので、上下水道を敷くだけで衛生的で安全な町を作り出す事もできるし、鉄道だけでなく馬車が通れる道を作れば鉄道以外の手段で移動する人達もここを宿場町として活用できる様になる。
陸路移動だと領主が通行税を徴収することもできるのだが、鉄道は大公様が土地を買い上げ王に働きかけ自分の領地としているので、列車から降りなければ鉄道の運賃以外には通行税を払う必要が無いのだ。
だからこの様に栄えている宿場町が出来たのなら、陸路を整える方が領主にとっても収入が増えるのだ。
まぁ、最初は道建設の初期投資の方が高いだろうけど、長い目で見たら早い内に道は作っといた方がいいと思うぞぉぉ。