軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「こんな立派な馬車に私も乗って良いのでしょうか?」

モナミが左腕に風呂敷包みの様な物を持ったまま、大公様が差し向けてくれた馬車を見て口をあんぐりと開けた。

「はい、遠慮なくどうぞ」とダンテスさんがモナミの手に手を添えて、彼女が片手でも問題なく馬車に乗れる様にサポートしてくれる。

今日はいよいよモリスン村のホテルにモナミを連れて行くので、ウチのレストランの前に大公様にしたら簡素な馬車を回してくれた。

大公家にしては簡素な馬車と言っても、市井の者には十分豪華だし、何より車体の横に大公様の紋章が入っているので、めちゃくちゃ安心できる移動方法なのだ。

モナミ以外のスタッフは順次自分でモリスン村のホテルへ移動してもらい、到着した者から社員寮に入ってもらっている。

希望者がいれば、モリスン村やそのすぐ横のヤマルダ村に家を借りて住む事は各自で家賃を払うのなら問題は無い。

でも、職場から近すぎるという欠点はあっても、建てられたばかりの新しい社員寮の方が綺麗だし便利なので、全員社員寮に入るそうだ。

馬車は王都の門を出て、既に2時間くらい走った。

「アウレリア様、本日はとても大人しいですね。乗り物酔いですか?」

ダンテスさんが心配そうに私の顔を覗いて来た。

「え?いえ、大丈夫ですよ」

「ダンテス様、ウチの子はニコラスさんの事で落ち込んでいるのです」

「父さん!」

「いや、アウレリア、こういう事は隠さず、ちゃんと話した方が良いんだよ」

「そうですね。ギジェルモ様、ありがとうございます。アウレリア様が気になさっているのは子爵家が行った対処法の事ですよね」

「はい、そうなんです」

私が答えないので、父さんが代わりに答えてくれた。

「アウレリア様、一度貴族について色々とお伝えした方が良いと思っておりました。モナミ様には関係の無い話になって申し訳ないのですが、この機会に説明をさせて頂いてもよろしいでしょうか」

「私の事は気にせず、どうぞ話して下さい」とモナミは馬車の片隅で小さくなって座っていたのが、余計に小さく座り直した。

「アウレリア様、貴族には寄親と寄子と言うシステムがあるのはご存知ですね」

私が無言で頷くと、「アウレリア、返事はちゃんと声に出しなさい」と珍しく父さんに叱られた。

「はい、知っています」

ちゃんと声に出して返事をすると、父さんもダンテスさんもほんわかとほほ笑んで頷いてくれた。

「寄子は寄り親に迷惑を掛ける事がありますが、それでも極力迷惑を掛けない様にします。大公様は後継ぎがいらっしゃらない事もあり、緩い寄親寄子のグループを作っていらっしゃいます。寄子寄り親と言うよりも、派閥関係なくいろんな貴族が大公様を頼っていて、他の派閥に所属している者までもが大公様のグループには所属しております。その関係を理解するには寄り親寄子が一番近いのでその様に考えて下さい」

「はい」

「今回の子爵家は大公様を寄親の様に慕っていらっしゃいました。いつも助けて頂くお返しにとニコラスを紹介して来たのですが、彼がフローリストガーデンを辞めさせられた事をこちらから知らせた後、ご自身の手の者にその後のニコラスの行動を見張らせていて別の食堂へレシピを売りに行った事を突き止めた様です」

ああ、やっぱりそういう人物が出て来る事は避けれないのかぁ・・・・。

「ただ、その食堂は真面な店だったので料理を作り始めたニコラスの顔に、契約違反の入れ墨が浮かび上がったのを見て直ぐに調理するのを止めたそうです。それはニコラス本人にも、その食堂の主人にも別々に聞き取りをし、ちゃんと確認したらしいのです。で、ニコラスは顔中に出た蔦の入れ墨を見て、真面な職には就けない事を理解したらしく、裏社会に職を求めたそうです」

「契約を破れば顔に入れ墨が出るのを分かっていて何でそんなことをしたんでしょう・・・・」

「アウレリア様、恐らくですがどこまでの行動が契約書に違反をするかというニコラスの見込みが甘かったのでしょう。レシピそのものだけでなく調理法も契約書に引っかかるという部分を失念していたのかもしれませんね」

「そうですか・・・・」

「子爵家としては大公様との契約書を破り、顔にその証拠が出てしまった人物を自分が推薦した事は、大公様に対して大罪を犯した事になるのです。それくらい人を推薦すると言うことは重たい事なんですよ。今回、料理人とコンシェルジュ、給仕頭やメイド頭に関してのみ、貴族や大商人の推薦のある者を契約しています。所謂下っ端のスタッフにまでそれを望んでおりませんが、ウチのホテルの核心部分に触れる事の多いこれらの職に就く者は責任の取れる者でないといけないからです。だが、ニコラスは折角ウチのホテルに勤める事が出来たのに、その職を手放さなければならなくなった。その事に納得がいかなかったのでしょう、ホテルに害をなそうと調理法を売るなんてことをしでかしたのです。子爵家としては許せなかったのでしょうねぇ」

「・・・・」

「何等かの対処をしなければ、ニコラスは裏社会に色々とウチの店の事を広め、こちらに大損害を齎していた可能性が高かったのです。これを放置してしまえば、子爵家としては大公様に弓を引いた事と同じと貴族社会では受け取られるのです。だからアウレリア様が気になさる事はありません。ホテルの顧客は地位の高い方々です。一方、サービスを提供するのは平民です。普通に考えて力関係がどちらへ傾くか分かりますよね?」

「はい」

「平民は、アウレリア様、自分の身を護る様に働く必要があるのですよ。一人の人間がスタッフ全員の命を軽んじる行動をする場合は、切り捨てて当たり前なんです。あのままニコラスを雇っていて顧客と揉めた場合、彼だけでなく厨房の皆や、もしかしたら給仕たち、もちろん、そのホテルの責任者まで責任を追及される事も容易に想像できるのです。アウレリア様はニコラスを首にした事で、ホテルで働く皆を守ったって事なので、気にしなくて良いのです」

そうか、他の皆を守ったって事になるのか・・・・。

少しだけ気分が上昇して来た。少しだけだけどね。

それにしてもダンテスさんがウチのホテルとかウチの店って言ってくれたのが、仲間になってくれてる証拠だと心底嬉しかった。