作品タイトル不明
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週末の間にモナミの容態を確認した。
痛みはまだある様で未だ毎晩痛み緩和の薬を貰っている様なのだが、お医者様がそろそろ薬は止めないと癖になるとの事で、徐々に処方を辞めると言われたそうだ。
孤児院の子供の中には先生を恨む様な発言をする子もいたのだけれど、日本の現代知識を持っている私からしたらとてもまともな先生だと思った。
それでも薬無しでは痛みで眠られないとのことで、患部を見せてもらったら、まだ皮膚が赤かったので、医者の先生にお願いして塗り薬の中に痛みを和らげる薬を少しだけ混ぜてもらった。
先生の話だと、経口で薬を接取する場合に比べ、患部に塗るだけならば量も少な目だし、体内への吸収もゆっくりになるとのこと。
この観点で作られた塗り薬を火傷に使うという発想が今まで無かったらしいので、変に感謝されちゃった。
この世界のお医者さんはどちらかと言ったらお呪いをしている感覚だったので、この先生の優秀さに舌を巻いた。
こういう先生にウチのホテルで働いてもらいたいのだが、先生は自分の診療所でずっと仕事をしたいとのこと。
「先生、私、先生の医療は凄いと思います。ただ、先生お一人が凄いだけでは、先生が引退されたりするとその知識や技術は途切れてしまいます」
「まだ幼い君にそこまで言われると、嬉しいやら、君の方が凄いと思うやらで、嬉しいやら何かこそばゆく感じるよ」
「先生、私は大公様の精鋭の一人と言われていて、今、大公様からの御依頼で高級な宿屋を複数建てている所なんですが、宿屋と言うのは何が起こるか分からないので、医療の心得のある方に各宿屋に常駐してもらいたいと思っていたのですが、中々田舎で働いても良いと言うお医者様に出会う事ができませんでした」
先生は私の頭を優しく撫でて、「薬も医療で使う器具も王都や大きな町の方が入手しやすいし、医者も生活があるので十分な数の患者のいる所でなければ続かないんだよ」と、医者側の事情を説明してくれた。
もっともだなと思ったのだけれど、ウチのホテルは医者は居なくても薬師は置く予定なのだ。
それを説明して、それらの者に医療と言う程のレベルではないが、素人が行えるくらいの応急手当を教えてもらえないだろうかとお願いしてみた。
「う~ん、応急手当と言うのも、実は患者がどんな病気なのか分からなければかえって症状を悪化させてしまう事もあるんだよ。だから医療の知識が無いのに医療行為を施すのはとても危ない事なんだよ」
「先生、病気の応急手当は危ないと言うのは分かりました。でも、今回の様な火傷や傷など外傷の場合は応急手当をしても良いのではないですか?」
「うん、外傷なら手当はしても良いかもしれないな」
「後、先生、頭が痛くて寝れない患者さんが出たとします。首の辺りを揉んだ方が良いのか、揉まない方が良いのか、温めれば良いのか、冷やせば良いのか、大まかなガイドを作れないでしょうか?」
「大まかなガイド?」
「はい、頭のこの辺りが痛いと言ったらとか、ずきずきするのかドンドンと頭の中で太鼓を叩かれている様に感じるのか、吐き気を伴う頭痛なのかと言った一口に頭が痛いって言ってもいろんな症状があると思うんです」
医者は心底びっくりした顔をした。
「君はすごいなぁ。痛みに種類がある事を理解しているんだね。それもその痛みがどの辺りで発生しているかで病気の種類が違う可能性まであると知っているって事かい?」
「いえ、本当の事を言えば、詳しくは分かりません。でも、お腹が痛い時、トイレに駆け込む様な痛みの時と、動く事さえ出来ずに横になって暫くしたら痛みが治まると言った様に、痛みの種類があるというのは分かります」
「ふむ、なるほど」
「それで先生、お願いがあるんです」
「何だい?」
「ウチの宿屋で住込みで働く薬師たちに、応急処置の仕方を教えて欲しいのです。もちろん無料でとは言いません。薬師ならば、どの薬を与えれば良いと言った知識が少なからずあるはずなんです。素人へ教えるよりは早く正確に応急処置を教える事が出来るんじゃないかと思うんです」
「ほほう」
「彼ら薬師にはウチの宿屋の庭で薬草を作る事を許可しているのですが、大きな町で売る為に作ると同時に、宿屋で処方するためにも育てる予定なんですね。だから、その応急措置の勉強をさせて頂く時に、高く売れる薬草とは別に、どんな薬草を常備薬として育てれば良いかとかも分かる様になるじゃないですか。だから是非教えて頂きたいのです」
お医者さんはまだ悩んでいる様で、「う~ん」と一頻唸った後で、「まぁ医学全般と言う訳ではなく、突発的に起こる外傷や頭痛、腹痛への応急措置と言うことなんだね?」と再度確認して来た。
無言で頷くと、「分かったよ。患者が入るとそちらを優先するので、決まった日時に教える事は難しいかもしれないが、それでも良ければ教えよう。ただ、長々と教える事は出来ないので、4~5日に分けて1日数時間教えるだけなら良いよ」とこちらのお願いを請けてくれた。
「ありがとうございますっ」
嬉しさのあまり、お医者さんの両手を握って上下にブンブン振ってしまった。
「もし良かったら薬師だけじゃなく、君もおいで。もしかしたら君は並みの医者より医者に向いているかもしれないよ」と褒めてくれた。
私も参加するとなると学園の無い週末だけになってしまうが、元々決まった日時では講習をする事が出来ないので、問題無いと言われた。
ヤンデーノとゴンスンデに住んでいる薬師はこの授業のために王都へ来てもらうのは薬局を閉めてまでは難しいだろうけど、村へ派遣される予定の元々王都に住んでいる自分の薬局を持たない薬師2人は問題なく講習を受けてくれるだろう。