軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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大公様の馬車でフローリストガーデン 光の前まで送ってもらい、父さんと二人で馬車を降りた。

「本日も、本当にありがとうございました」

「ありがとうございました」

親子でダンテスさんに頭を下げる。

「いえいえ、大事無くて良かったです。それではまた」と男前な挨拶をして馬車が出て行った。

レストランに入った途端にナスカが慌てて駆けて来た。

「お嬢様、大変です!」

ナスカのあまりの血相に父様も私も暫し固まってしまった。

「ナスカ、落ち着きなさい。どうしたのかちゃんと説明しなさい」

少し固まった後に元に戻った父さんがナスカを宥める様に言った。

「お嬢様に援助して頂いている孤児院のホットドッグの出店でモナミが火傷してしまい、右手の指がくっついてしまったそうです」と言いながらも、ナスカの目から大粒の涙がポロポロと落ちて来た。

「モナミはここ数年毎日ホットドッグを売っていたのに、どうして今回に限ってそんな大やけどを?」

「屋台の傍で喧嘩していた男の人たちの誰かがぶつかって、ソーセージを湯がいていた鍋の中にモナミの右手が入ってしまったん・・・・ヒック・・・・そうです・・・・。男の人が背中からぶつかって来たので、頭にぶつかられ気を失ったと同時に右手を火に掛けてある鍋底に手を突いちゃった様で、大やけどになったらしいんです・・・・ヒック」

説明している内にその場面を想像してしまったのだろう、ナスカは泣き出してしまった。

「モナミは今、どうしているんだい?」

「旦那様、孤児院にいるらしいんですが・・・・」

「医者には診せたのかい?」

「分かりません。私も今この子に聞いたばかりで・・・・」

ナスカの背中には孤児院から来たのだろう、小さな子供が泣き顔のまま立っていた。

「父さん、ナスカは今夜仕事を休ませてモナミの傍に居させても良いですか?」

「ああ、もちろんだよ。マルタ義姉さんには私から説明しておこう」

「ありがとうございます・・・・ヒック」

「父さん、私、今からナスカと一緒に孤児院へ行って、モナミを医者の所、でなければ薬師の所へ連れて行こうと思います」

「わかった。これ、お金が入っているから持って行きなさい。急な事で大人を付けてあげるのは難しいからハムとドムを連れて行きなさい。男の子が二人も一緒にいれば大丈夫だろうし、なによりあいつらも同じ孤児院の仲間だ、心配しているだろうから。お前たち二人はここで待っていなさい。今、ドムたちをここへ寄こすから」

「旦那様、ありがとうございます」

ナスカの目は真っ赤だ。

「お嬢様っ!お待たせしました」

ドムとハムが駆け寄って来た。

お医者さんが対応してくれる時間内にモナミを連れて行きたいので、私たちはほぼ駆け足で孤児院へ向かった。

「え?それじゃあ、喧嘩をしていた男二人はいつの間にか居なくなっていたの?」

「そう・・・・」

モナミを手伝って屋台をしていたハミラが悔しそうな顔になっている。

「私達が孤児だって知っていたのでしょう。文句を言う家族もいないので、責任を問われる前に現場を離れたんだと思います」

医者に診せるにしてもその原因を作った男たちは既にトンズラしており、屋台でそこそこ稼げていたとしても医者にどれくらいのお金を払わなくてはいけないのか分からず、孤児院の院長先生も、屋台で働いていたメンバーもモナミを気遣って甲斐甲斐しく世話を焼いてはいたけれど、医者には連れて行っていなかった。

「心配しないで。父さんがお金をくれたのでお医者さんの所へ行きましょう」

味噌の様なペースト状の何かを右手に塗られたモナミが痛みで呻きながら椅子から立ち上がった。

ハムはさっとモナミの二の腕を軽く掴んで、彼女が歩きやすい様にしてくれたが、これはしばらくは痛みでまともに歩けないかもと、もう一度椅子に座らせた。

火傷をして直ぐではないので水に患部を浸けさせた方が良いのか、それとも味噌の様なペースト状の物で包んだままの方が良いのか悩んだけれど、「モナミ、その手に塗ってある物はまだひんやりする?」と聞けば「はい」と答えたので、そのままにして私は孤児院の子と一緒に医者を探しに町へ出た。

1軒目の医者は不在だった。

孤児院から一番近い場所の医者だから期待をしたのだけれど・・・・。

次に孤児院の子が連れて来てくれた所は、「何?孤児院?金は払えるのか?火傷ぉ?唾でも付けとけ」と言われ、こんな医者には診せれないと最初の医者の所へ戻った。

最初の医者はまだ戻って来ていなかったので、みんなで暫く待たせてもらっていたら1時間後くらいに戻って来た。

診療時間外の時間に既になっていた。

若いのにごま塩頭のオジサンだった。

「先生、孤児院で大やけどをした子が居るんです。診て頂けませんか?」

「何?大やけど?今どんな処置をしてるのかい?」

「ペースト状の物を患部に塗って冷やしています。患部は右手なのですが、煮えたぎる湯の入った鍋の中に突っ込んで、気を失っていた事もあり熱いなべ底にしばらく右手をくっつけていた様で、指と指が引っ付いていると聞いています」

「ふむ。詳しい情報をありがとう」と、医者は何個かの小さな瓶と蓋付の入れ物を鞄に入れ、「さぁ、行こう!」と私達と一緒に孤児院へ来てくれた。

「ふ~む。これは痛いだろう。くっついた指と指を剥がすのは、刃物を使って切り離すしかないが、刃物で切ったら高い確率で切った所から腐って行くこともある。そしてその切り離す処置も高価な治療の部類に入る。なので、右手の指はもうこのくっついたままになるが、私がしてやれるのは痛みを抑えるための薬を処方する事と早く皮膚が落ち着く様に軟膏を塗るくらいだな。ほらご覧、ここの部分は皮膚そのものがなくなっているだろう?軟膏は塗る時は痛いだろうが、塗ればここの組織が早く再生するんだ」

お医者さんの説明を理解したのは私だけの様だった。

院長先生でさえ、ところどころしか理解できなかったみたい。

「僕の言う事がわかったかな?」

「はい、先生。清潔にしていても一旦指の間を切ったりしたら、術後の経過次第では手そのものを切り落とさなくてはならない可能性があると言う事。右掌の指は使えなくなっても、右手そのものが無くなった訳ではないので、次善の策として火傷はそのまま、でも痛みを緩和し、皮膚の再生を促すと言うことですね」と、先生がした説明を別の表現で確認した。

「こりゃ、たまげた。お嬢さんは医学を学んでいるのかな?」

「いえ、私は宿屋と飯屋をしているだけです」

「それにしても僕の説明を理解した上で、更に難しい用語を使って確認してくるあたり、お前さんは医者になったら良いのじゃないかね?」

お医者さんは嬉しそうにそう言ってくれたけど、人の生き死にに直接関係する医療に携わるのは勇気が居るのだ。

ましてや血なんて見るだけでもダメな私にはハードルが高い。

結局、お医者さんはモナミの手に軟膏を塗って帰って行った。