軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「あなた、アウレリア。気を付けて行って来てね」

生まれて初めて屋外に連れて来られたエイファーと彼女を抱きかかえている母さん。

ウチの店の門の所で大公様の馬車に乗る私達を見送ってくれる。

「1ヶ月程留守にするが何かあったら兄さんたちに必ず相談してくれ」

母さんは頷いているが、父さんは心配そうだ。

生まれたばかりのエイファーを置いて行くのも身を割かれる思いなのだろう。

少し目がウルっとしている気がする。

「母さん、エイファー、行ってきます。すぐに帰ってくるね」と馬車の窓から手を振ってみた。

「ご主人とお嬢様は確かに大公家でお預かりしました。1ヶ月強の予定ですが帰りが遅れる様であれば、必ず事前にお知らせ致します。何かあれば当家に使いを寄こして下さい。出来る限りの尽力をお約束します」

最後にダンテスさんが同じ馬車に乗り、馬車の天井をコンコンと叩いて出発させた。

「父さん、一緒に来てくれてありがとう」

「ん?ああ・・・・」

父さんはまだ目を母さんたちに固定したまま、私の話は半分くらいしか聞いていない様だ。

王都の門を出て初めて私に向き直ってくれた。

「アウレリア、体調が悪くなったりしたら遠慮せずに直ぐに言うんだよ」と頭を撫でてくれた。

それに私はニッコリと笑って応えた。

ダンテスさんも無言でうんうんと頷いてくれている。

夏休みに入って4日目の今日、大公様と一緒に旅をする事になった。

例の高級ホテル候補地の確認のための旅だ。

大公様は別の馬車で移動されるのだが、お荷物もあるので合計4台の馬車で移動となる。

先頭が私の乗っている馬車で、父さんとダンテスさんと一緒だ。4人乗りの比較的小さな馬車だが、私たちの荷物はこの馬車に乗せてある。次が、大公様の馬車で、筆頭執事のカルロスさんが一緒に乗っている馬車だが、大公様の紋章が入った大きく立派な馬車だ。二人だけで広々としたスペースを満喫されていることだろう。3台目が大公様ご一行のお荷物を乗せた簡素な馬車で、最後がメイドたちの乗っている馬車だ。

もちろん護衛もたくさん付き従っているので、結構な大人数になっている。

私たちの馬車が先頭なのは襲われた時に大公様を守るためで、メイドたちの乗った馬車が最後なのも同じ理由だ。

護衛は騎士たちが騎馬で付き従ってくれていて、縦長に広がる4台の馬車を満遍なく警護してくれている。

馬車の豪華さが違うので大公様の乗っていらっしゃる馬車は一目瞭然なのだが、馬車の横にある紋章で大公様と分かるので、襲って来る野盗はいないだろうとの事だ。

今回大公様は旅行をされる予定ではなかったのだが、私とダンテスさんだけだと上級貴族が旅行する時の様子が分からないだろうと途中まで一緒に来て下さる事になった。

ゴンスンデまではとのこと。

そして出発は今朝。

舗装されていない道をゆっくりと進み、途中昼食は街道の小さな村の食堂でということになった。

ポンタ村まででも馬車で数日かかるので、何ケ所かで宿泊する予定なのだが、全ての村に貴族が泊まれる様な宿屋や食事が出来る食堂がある訳ではないのだ。

その不便さがあるので、今回私に高級ホテルという宿題を出されたのだからね。

今日の昼食は『熊のまどろみ亭』よりは幾分上等そうな食堂だった。

まだ王都に近いので貴族が良く利用するのだろう。

椅子とかテーブルも可成り上等なモノが用意され、個室に食事が用意された。

ポンタ村で最初に大公様がおいでになられた時よりも良い木材で作られたテーブルで、テーブルクロス等はなく、そのまま直にテーブルの上に配膳された。

テーブルクロスの代わりに、センターテーブルが使ってあるので、布の値段が高いこの世界の事情を考えると、とても良い手だと思えた。

ダンテスさんや父さん、そして私が大公様と同じテーブルに着くことになり、父さんがしきりに恐縮していた。

メニューはまずスープとパンが出され、その後に肉を焼いた物が出された。

最後にカットしたフルーツが出されただけだった。

使っている食材は上等なモノだし、塩も惜しげもなく使われていたので味もそこそこ。

でも、メニューに工夫は見られなかった。

これだと平民が旅をする時のメニューと一緒で、ただ違いは個室に用意されていることと、使っている材料の質の違いしかなかった。

大公様が食後の紅茶を飲みながら、「これでどうして儂が上級貴族用の宿泊施設が欲しいと言ったか分かるか?」と聞いて来られた。

「はい」と答えると、「うむ」と頷かれた。

同時にどうしてフローリストガーデンがあれ程持て囃されているのか、そして熊のまどろみ亭を使用する貴族が一気に増えたのか分かった気がした。

メニュー一つとっても工夫の度合いが全然違うのだ。

昼食後もポッコポッコと馬が引く馬車に揺られ、舗装されていない街道をポンタ村方面に向けて移動した。

その夜は昼食を摂った村から4つ先の村の宿に泊まるのだが、確実に我々が泊まれる様に大公様の手の者が事前に予約してくれていたらしい。

私はその宿を知っていた。

前回、あややクラブの面々とゴンスンデに行く時に泊まった宿だ。

大公様の馬車は宿の入口につけられたが、私たちや他の馬車は入口から離れた所に停められ、そこで降りた。

大公様がお降りになる前に、遠くに停められた馬車から降りたメイドたちが、気品を失わない様に背筋を伸ばし、スカートが極力揺れない様に気を付けながらも小走りで宿の入口まで器用に駆けて来た。

メイドたちに時間を与えるためなのだろう、大公様は馬車が停まってしばらくしてから下車された。

まっすぐな街道に面して建てられた宿なので、馬車回しが無いのだ。

だからメイドは可成りの距離を小走りで移動している。

高級ホテルにはかならずロータリーを作ってお付きの者たちの移動距離が少なくて済む様にしなくてはと気づいた。

肩から下げているポシェットから取り出したノートに忘れない様に走り書きをした。

メイド3人の内の一人は大公様が宿へ入る前に建物の中に消えて行ったので、大公様のお部屋を整えているのだろう。

「ダンテスさん」

「何ですか?アウレリア様」

「明日の夜の宿は、先に建物に入ったメイドさんについて行きたいのですが、良いでしょうか?」

「はい。もちろんですよ。良い所に目を付けられましたね」とにっこり笑顔で答えてくれました。

こうして夏休みの視察旅行の第一日目が終了した。