作品タイトル不明
93
次にあややクラブの部室へ入った時、以前に見た事のある光景が広がっていた。
そう、皇子様とディアナ様が玄関から入って直ぐの所で道を塞いでおり、それに闇王様が対応しているの図だ。
「あの会議の場では過去の経緯についてしか質問が許されていなかったので遠慮したのだが、色々と聞きたい事があるのだ。もし可能であれば今日教えて頂けないだろうか?」
皇子は大分下手に出ていて、闇王様に気を使ってるのが分かるのだが、ディアナ様は相変わらず高ビーな感じだ。
「こちらも色々とやらなければいけない事があるので、対面ではなく書面でお願いできないですかね。回答出来るものについては、同じく書面にて回答させてもらいます。この方法だと、こちらの手が空いた時にちょくちょく回答を書き込めるので、ウチとしてもありがたいんですがね」
「う~ん。私としては直に口頭でのやり取りの方が、質問に対する答えに更に質問したくなった時、対処して頂きやすいと思ってるんですがね・・・・」
闇王様が明らかに乗り気ではなく、口を開いた時にはお断りの言葉が出て来る事は、見ていた全員に分かった。
それは皇子もディアナ様も同じ様だ。
「お時間もそんなに取らせないと思うので、今お時間を割いて頂いてお答え頂けないでしょうか?こちらの部室で都合が悪ければ私たちの部室に来て頂いてもよろしいですし・・・・」
ディアナ様が闇王様からNoの返事が出る前に割って入った形だ。
学園の中では身分を問わないというのが建前だが、身分差はそこに歴然と存在する。
普通、高位の貴族が話している時に、下位の貴族が割り込んで話をする事はない。
でも、今、正にディアナ様はそれをやってしまったのだ。
「今鳥人コンテストや来年の新しいイベントに向け作業が目白押しで、時間を割くのは難しいな。その他にもイベントとは関係ない部内の活動も活発にやっているし・・・・。書面だとちょっとずつでも回答を書き溜めておけるので、そっちの方がありがたいかな」
むむむ。もしや闇王さん、その部内の活動ってトランプじゃないよね?
むむむむ。
最近は、魔法障害物競争の企画を詰めるのではなく、もっぱら部内トランプ大会をやっている様な物なんだけど、部室には決められた人しか入って来れないからバレないんだよね。
「新しいイベント?どんな感じの物ですか?」
皇子様がワクワクした様な目で、新しいイベントというキーワードに飛びついちゃったよ。
「え?いや、ポスターが出来て園内に貼られるまでは、学園側にしか内容等は言いませんよ。イベントクラブさんだってそうでしょ?自分たちが思い付いた企画を、実現する前に他の人に無償で教えるなんて事しないでしょ?」
「それはそうですが・・・・」
「申し訳ないが、そろそろ作業に戻らないといけないので、質問票が出来たらウチの部室の前に立っている使用人に渡しておいてください」
「なっ!」
ディアナ嬢はどうしても闇王様の対応が許せないみたいで、どんどん目が三角になってきている。
「アドルフォ様、率直に物を申し上げる事は出来るだけ避けたいと思っていましたが、あまりに目に余るので言わせて頂きます。些か不敬が過ぎるのではないでしょうか?仮にも一国の皇子である方への対応とは思えませんことよ」
今度は闇王様が口を開く前に、その斜め後ろに佇んでいたセシリオ様がズイっと前に出て来た。
恐らく、腹に据えかねたんだね。
「ディアナ嬢、ここは学園です。学園の中では身分を考慮しなくて良いという校風がございます。それを承知で留学されていらっしゃると思いますので、本校の校風やルールを守って頂きたいと思います。それに、僕たちはオルダル国の貴族であって、帝国の貴族ではございません。不敬を働くと指を指されるのなら、僕たちが我が国の王族に対して無礼を働いた時に願います。それよりも下位貴族であるあなたの様な者が上位貴族であるアドルフォ様やカサノッサ家への無礼を働いている方がよっぽど問題だと思いますよ。まぁ、学園内は身分を問わないというルールがございますから、僕は敢えてそれを問題とはしませんがね」
闇王様の瞳からも殺人光線が真直ぐディアナ様の瞳を目掛けて発射された。
ディアナ様は一瞬たじろいだが、「ふん!」と小さく虚勢を張って直ぐに立ち直った。
ある意味すごいです、ディアナ様。
「虎の威をかるという言葉がございますが、ディアナ様の今のお姿を拝見して、僕はその言葉を思い出しましたよ」と黒い笑みを浮かべたセシリオ様が闇王様の横から再び斜め後ろへ位置を変えながら言った。
「まぁ、みなさん。ディアナは私の親戚でもあり、一人で留学しに来て未だ友達作りに奮闘している私に同情しているのでしょう。行き過ぎた所がありましたら、私に免じて許して下さい」
皇子はディアナ様を庇い、言い訳を言いこそすれ、その言動に対してディアナ様を叱ったりはしない。
この人物はペルソーナ・ノン・グラータであると私たち全員が思った瞬間だ。
謝る事や、自分の下についている者を諫める事もしないのなら、何のための高い身分なのだろう。
オルダル国の高位貴族を蔑ろにしているという事は、オルダル国そのものを蔑ろにしているという事なのにね。
確かに帝国はオルダル国よりも国土は広く、軍事力や経済力も高い。
でも、呼んでもいないのに、勝手にウチの国に来る事を選んでおいて、受入てもらってるのに唾を吐くとはどういう事か。
これはもう、早々にお帰り頂いた方がいいよね。
本当は国に御帰り頂くのが一番だが、それが出来なくても私たちの部室からは出て行って欲しい。
「それではオレたちのクラブはこれからまだ作業が山積みなので、大変申し訳ないのですがお引き取り願えますか?来訪されますと作業がストップしますので、申し訳ないですが、今後はこちらの部室を訪ねるのもご遠慮願えれば嬉しいです。何かあれば学園を通してお問合せ下さい。鳥人コンテストの会合は、引き続きオブザーバーとして参加して頂く事になっておりますので、開催日時は事前にお知らせ致します。それではお気をつけてお帰り下さい」と、闇王様直々に我々の後ろの扉を開け、皇子たちの退室を促した。
ディアナ様は怒り心頭という顔を隠さず、皇子の方は若干眉の間に皺を作りながらあややクラブの部室を出て行った。