軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25

「えっ?」

メグたんの心底びっくりした様な声が私の右横から上がった。

私、只今絶賛床の上にひっくり返り中~。

2年生になってから初めて習う授業。

そう、今日はダンスのクラス、その3回目だ。

全部実技なのは言うまでもないだろう。

ただ初回は自己紹介と授業の狙いについての説明、2回目は先生によるデモンストレーションによるダンスの種類の違いを学んだので、この3回目が実質生徒が踊る最初の授業なのだ。

今私たち4人はいつもの白ければどんな服でも良いという学園の方針に則って白い服を着ている。

フェリーペとボブはシャツにズボンだ。

メグと私はダンスならスカートが広がった方が綺麗に見えると思ったから、例のゴスロリ服だ。

教室は風魔法の講堂。

先生は、眼鏡を掛けひっつめにした背の高いミス・サリンジャーだ。

ありがたい事に、平民クラスは平民クラスだけの授業となっている。

お貴族様と合同でないのはめっちゃありがたいのだ。

マリベルたちは私たちとは別の感想を持っている様だけどね。

「パンパン」と手を叩いて平民クラスの皆の注意を集めるミス・サリンジャー。

顔つきはちょっとキツメ。

「はい、男女に分かれて整列して下さい。女子は4人しかいないので、男子の背の低い子も女の子役でお願いしますね」の一言に男子から大ブーイングが巻き起こった。

「パンパーン」

ミス・サリンジャーのハートは鋼鉄製なのかもしれない。

生徒たちのブーイングに表情も変えず、先ほどより大きな音で手を叩いた。

「いいですか?では、まず最初のステップを教えます。基本のステップで足で三角形を描く様にします。後ろの方、見えてますか?最前列の子はしゃがんで下さい。見えますか?もう一度やりますから良く見て下さいね。三角形ですよぉ」

ミス・サリンジャーを更に厳めしく見せる濃紺のドレスは足元の動きが見える様に裾が少しだけ短い。

大人の女性は足首が隠れるぐらいのドレスやスカートが普通なのだけれど、足捌きが見えなければダンスを学べないので、ダンス教師のドレスの裾が少し短いのは当たり前なんだそうだ。

「いち、にぃ、いち、にぃ」

スッテ―ン。

派手に転んだ人が居た。

何を隠そう、わ・た・しだ。

そして冒頭のメグたんの口からビックリして零れた「えっ?」と言う場面に戻る。

マジでびっくりした。

私本人がびっくりしますた。

ドッジボールだって普通に参加できていたのに、ダンスになると足がもつれるのだ。

えええ?何で?

地球に居た時だって普通にダンスは踊れていたよ?

何で?

横に居た勇者様の方が慌ててしまってワタワタしているので、余計にクラスメートの耳目を集めてしまっている。

らめぇぇぇ。メグたん!それ以上慌てないで。

お尻を打っただけだから・・・・。

何とか起き上がり、白い服についた土を手で払って、また練習を始める。

単純にステップを三角形になる様に踏むだけなのだ。

スコーン。

再びこけてしまった。

「まぁまぁ、アウレリアさん。もう一度やってみせてちょうだい。何が原因でひっくり返ってしまうのか確かめますね」

え?ミス・サリンジャー、クラスメイトの前で一人で踊るの?

どしぇぇぇぇぇ。

それ、地獄ですからっぁぁぁ。

自分の顔が真っ赤になってるの分かってます。

だって恥ずかしさで血が上って実際に熱を持ってるんだもん、触らなくても分かるよ。

メグたんは心配そうな顔で見守ってくれてるけど、フェリーペなんて呆気にとられた顔をしてる。

うひぃぃぃ。

マリベルとナナはニヤニヤしてるよ。

んがぁぁーー!

ミス・サリンジャーの手拍子に合わせ、足で三角を描く様にステップを踏んだ。

今度は転びそうになっただけで、転ばなかった。

でも、そう、転びそうにはなったのだ。

「分かりました。アウレリアさん、あなたのステップは手拍子から可成り遅れているのですが、頭の中ではちゃんと手拍子に合わせてカウントを取っているのでしょう。つまり頭の中と体のリズムに大きなズレがあるので、ガクガクとした動きになっているのが原因ですね。そうですねぇ・・・・まずは体を動かすのではなく、私の手拍子に合わせて手拍子を打ってもらいましょう」

先生の横に立たされてクラスメイトがステップを踏んでいるのを眺めながら、先生の手拍子に合わせて手拍子を打った。

「クスクス。せんせーい!手拍子が微妙にズレいていてこれでは踊れませ~ん」

マリベルが鬼の首を取ったかの様に、私の方をにやけた顔で指差した。

でも、確かに自分が打っている手拍子が先生のそれから随分とズレているのが分かる。

裏拍子くらいのズレならフラメンコの手拍子の様で、それはそれでカッコいいのだけれど、私たち二人の打つ手拍子に合わせて歩いてみると、タンタンという一定のリズムではなく、タットンタットンと足を引きずる様な歩き方になってしまうだろう。

だからマリベルの指摘に、誰も反対意見を述べる事はなかった。

さもありなん!

「そうですね、それではアウレリアさんには常にペアになって手を繋いで踊ってもらいましょう。それなら転ばないで支えてもらえますからね。女子の少ないクラスだから、男子とペアを組んでもらいましょうかね。誰にしますか?」

「先生!俺がペアを組みますっ」

フェリーペがすかさず手を上げて、めでたく?私の固定ペアとなった。

「さあ、リア。手を出して」とフェリーペがいそいそと私の両手を取って、一緒に三角形のステップを踏んでくれる。

他の皆とリズムがズレるので、邪魔にならない様に講堂の端っこに移動した。

「もしかしたらリズムが早すぎてついて行けないのかもしれないから、俺の声に合わせてステップを踏んでみる?」と、フェリーペがとっても甲斐甲斐しく動いてくれる。

さっきまでこっちを呆れ顔で見てたくせに!

フェリーペが比較的ゆっくり「1,2,3」と口ずさんでくれ、私とは鏡対象になる様に三角ステップを踏んでくれる。

恥ずかしくてモジモジしてしまっている私が珍しかったのだろう、止まってこっちをしっかり見つめて来たフェリーペが、「俺、リアっていつも何でも出来るから敵わないなって思ってたんだ。だから、リアにも苦手な事があるって分かってちょっとホッとしたよ」と私を気遣ってくれたのか、スマートに微笑みかけてくれた。

ちょっと奥さん、このスマートで優しいイケメンは誰ですか?

惚れてしまうやろも。

いつもより3割増しにかっこよく見えるジャマイカっ!

ふっ。まぁ、惚れたりしないけどなっ。