作品タイトル不明
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あややクラブの二階の隅っこに作った錬金術用スペースは、ここの所ボブが嬉々として即売会用のブツの開発の為に独占している。
ってか、普段から殆どボブが占有しているんだけどね。
この所は即売会用の試行錯誤で、おやつの時間以外はずっとここって感じ。
本当は私達錬金術クラブにも所属しているメンバーはこの錬金術コーナー使いたい時もあるんだけどね。
この即売会前の時期は特に。
錬金術鍋だけだったのが、いつの間にかボブが持ち込んだ錬金術の道具が増えている。
部品程度の大きさのモノなら、この道具で作成可能な感じだ。
あの一角は妙に落ち着くし、欲しいものが全て数多ある引き出しのどれかに保管されているので作業しやすいのだ。
作業している手元も強い光でピンスポットな照明があるしね。
元々がボブの希望で作った一角なので、ボブが使っている時は皆やっぱり遠慮してしまうし、ボブが使ってなければセシリオ様が使ってたりするしね。
もうあそこはあの二人の専用スペースと化しているよね。
落ち着くための空間として二階の内装をした。
錬金術コーナー以外だと、リラックスできるソファやゲーミングチェアもどき、自立式のハンモックが設置されてるんだけど、座っちゃうと寝ちゃいそうというか、作業には向かない。
空中庭園であるベランダの花園はアドリエンヌ様の聖域と化しているので、あそこで作業をするのはある意味勇気がいる。
天気が良いと花の香に囲まれて作業するのは素敵だろうなぁとは思うんだけどね。
ということで、今私は花形の蓋のマスターピースを作戦会議室の机の上で作っている。
設計図を引いたものは左右対称で面白くなかったので、一輪だけでなく複数の花を模した蓋にやり替える事にしたのだ。
粘土を使うので汚れない様に、床にもデスクの上にも捨てても良い紙や布を敷いて作業していると、メグたんも一旦は出来上がった自分のマスターピースを持参して、隣のデスクで細部をちょこまかと変える作業を始めた。
「お前ら何を作ってんだ?」
近くのデスクで書きものをしていた闇王様が勇者のデスクを覗き込んだ。
「今度、錬金術クラブの即売会で売る製品づくりです」
ニコっと笑ったメグたんの笑顔にクラっと来たのか、闇王様の顔がちょっぴり赤くなった。
恐らく自分の気持ちにまだ気づいていなさそうな闇王様の挙動は、周りの者には一目で分かる。
まぁ、メグたんはそういう所は鈍感そうだから気付いてないだろうなぁ。
「な、何を売るんだ?」
「部員が夫々作った物を売るんですが、私はリアの計画に参加させてもらって香水と香水瓶です」
「香水?」
「ええ。どちらかというと香水瓶の方がメインなんですが、瓶だけ売るよりも香水も自分で調合してもらった方が面白いだろうって」
「へぇ。でも、ウチの学園は女子生徒の数は少ないぞ」
メグは♪ふふふんとドヤ顔をした。
まぁ、ドヤ顔も可愛いんだけどね。
「アドルフォ様、まだまだですね。本当の顧客は男子生徒なんですよ。意中の相手にプレゼントしてみてねってことですよ」
「お、おう。意中の女へのプレゼント・・・・」
「アドルフォ様も気になる女の子がいたら買ってみて下さいね」
にっこり笑ったウチのメグたんの笑顔にやられた様で、闇王様がギクシャクとした動きで頷いた後、自分の席に戻って行った。
果たして闇王様が私たちの香水瓶を買いに来て、そのままメグたんにプレゼントするだけの度胸があるかしら?
見ものだわ~。
そんな事を思い悪い笑顔を浮かべていたら、メグたんとは反対側の隣のデスクで作業していたフェリーペに見られてしまった。
でも、フェリーペもウチの勇者と闇王様のやり取りを見て、何か感じる物があったのだろう。
私の方を見て目配せをした後、やっぱり悪い笑顔を浮かべていた。
フェリーペはサラサ先輩企画のミニ冷蔵庫作りに参加しているので、いくつかの部品の設計図引きを担当している。
今もああでもない、こうでもないとせっせと図面を引いていたのだ。
でも勇者たち二人の会話で一旦手が止まってしまったのと、製図引きで体が固まっていたのだろう、ぐーっと伸びをした。
「そろそろおやつの時間じゃないか?」
これに便乗したのが闇王様だ。
「今日の飲茶は何?」
もうここの所、おやつは甘い物と飲茶の二本立てが定番になってしまった。
でもね、闇王さま。
飲茶だけが甘くないおやつではないのだよ。ふふふふ。
まぁ、先日ポテチを作ったりしたので色々ある事は身をもって知ってるだろうけどね。
「内緒です~」と言いながら席を立って、キッチンへ。
粘土をいじっていたので付けていた腕抜きやエプロンを外して、料理用のエプロンに。
手もしっかり洗った後に、2階のベランダへ。
ここ2~3日干しておいた丸いモノを取り入れる。
あ、アドリエンヌ様、お邪魔しております。すぐ居なくなるのでお気遣いなく~なんて思いながら、空中庭園の吊り下げられた籐椅子で本を読んでいたアドリエンヌ様を遠巻きにキッチンへ戻る。
以前、闇王様にお願いして作ってもらっていたBBQコンロの中に炭で火を熾す。
コンロの網が熱で一旦温められたの確認して、取り入れたばかりの丸いモノを並べる。
丸いモノにじんわり焼き色が付き始め、香ばしい匂いが立ち昇る。
お箸でひっくり返しながらじっくり焼くのがコツだ。
焼き上がっていくに従って香ばしい香りが1階に充満した。
う~~~ん。これは絶対美味しい。
セシリオ様が本棚スペースから這い出て、作業をしていた闇王様やメグたんもキッチンへ。
「それは何?」
闇王様の食いつきが半端ない。
ふふふふ。
「これ?これは塩煎餅ですよ」
そう、ここ2~3日干していたのは上新粉と水で作った煎餅だったのだ。
今日はスキルで作り出した煎茶でティータイムです。
アドリエンヌ様は今日はお茶を淹れるのを私に任せてくれ、パリっ、ボリボリ、ズーズズーと手が止まらないみたいだ。
「「「美味しい!」」」
これも常備菓子のラインナップへ加えろと闇王様に言われたけど、結構手間が掛かるから、錬金術クラブの即売会が終ってからならと一旦はお預けになった。
まぁ、即売会の後は冬の長期休暇なんで、実際は休み明けになるけどね。
生まれて初めて作ったお煎餅だけど、焼き立ては香りも含めて別格ね。
次は海老せんや揚げせんもいいなぁ~。
地球では西洋人の中には焼けた醤油の匂いが苦手な人が多いって聞いた事があったけど、ウチのみんなが匂いに抵抗が無ければ醤油煎餅も是非作ってみたいなぁ~。