軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第97話 逃避行②

アレンはセシルを背負って街の中に入って行く。

大通りからどんどん路地のほうに、ジグザグに進んでいく。

「アレン、宿には泊まらないの?」

「はい、泊まりません」

アレンが大通りを避けて路地の方に不規則に進んでいくことに、疑問を持ったセシルが質問をする。大通りにはいくつか宿屋があったがアレンは素通りした。

路地を進みながら、夜目で門を監視している鳥Dの召喚獣がダグラハを発見する。

(むむ、やはり何かの許可証を持っているな)

ダグラハは何か許可証のようなものを見せ、アレンも通った門番用の扉から街中に入ってくる。

そして、また高速で移動を始める。

(さてと、やはり足跡追跡型だったか。マップ型じゃなくてよかったぜ)

アレンはこの数時間にわたる逃避行によって、ダグラハの追跡のスキルの分析を終えている。

アレンは前世で健一だった頃、ゲームでたくさんの職をプレイしてきた。基本的に戦士や魔法使いのように、強い武器を揃え敵に大きなダメージを与えたり、強力な魔法を使ったりしてきた。完全な脳筋プレーだ。だから、盗賊のような絡め手を使う職業の経験はほとんどない。

しかし、中には盗賊をしないといけないこともあったので、それなりの知識はある。

アレンの中で、追跡は2種類ある。

・1種類目は、追跡対象者の足跡がフィールド上で視認でき、対象者を追える

・2種類目は、追跡対象者の座標がマップ上に表示され、対象者を追える

今回ダグラハが使っているのは1種類目だ。アレンは100パーセント断言できる。

なぜなら、アレンは自分がどこで曲がったか確認しながら移動をしていた。ダグラハは、その曲がった地点でアレンと同じく曲がって移動をしているからだ。

もし、アレンの位置が座標のようなもので見えているのであれば、そのようなことをせず、移動方向を補正しながら最短距離で追ってくるはずだ。

今ダグラハは無駄にジグザグと移動しているアレンの軌跡のとおり移動を続けている。

(さてと捲きますよっと)

「ちょっと飛びますね」

「キャッ」

アレンは飛び、建物の上を移動し始める。すぐに追われないよう、ダグラハから離れつつどんどん距離を離していく。

(よしよし見失ったぞ! 追跡の分析は完璧と。我を追ってこようなど100年早いわ!!!)

鳥Dの召喚獣がダグラハが慌てている様子を捉える。細かく移動していたため見間違えたかと、道を戻っていくようだ。アレンが索敵の対抗策を練るなんて思いもよらず、建物の上まで意識が回らなかった。

そして、街の外壁である塀の上に立つ。

「え? 戦わないの? アレンって強いんでしょ?」

セシルの中でアレンはかなり強いようだ。

「はい、ちょっと苦手なタイプです。恐らく勝てないでしょう」

(手段を選ばなくても勝率1割もないな。俺の召喚獣は鈍足だからな。罠にかけて待ち伏せをしても躱されるだろうし。まあ少々攻撃が通じても回復薬で治されて終わりよ。さて街から出るぞ。ブロン出てこい)

石Dの召喚獣が街の外に召喚され、アレンの指示の元、盾を水平に上部に掲げる。アレンはその上に飛び乗り、さらに前方に石Dの召喚獣を召喚し同じように指示する。

同じことを繰り返し、どんどん飛び乗って移動する。数キロメートルに亘って足跡を残さないように進んでいく。

(とりあえず、召喚獣の足跡を俺と同様の足跡と認識するかは分からんが、ちょくちょくこうやって足跡を消していくぞ)

この作戦は足跡を消せるが、移動速度がかなり遅くなる。地面を走って移動し、石Dの召喚獣で足跡を消すのを数回繰り返しながら、既に鳥Dの召喚獣が確認した白竜山脈の、さらにその北端を目指していく。北端に関所があり、そこを抜けたらグランヴェルの街だ。

ほどなくして、寝る準備をする。とてもじゃないが1日2日ではグランヴェルの街には帰れそうにない。

囲むように石Dの召喚獣を配置し、収納からお泊りセットの毛布やら魔道具の灯りやらを出していく。

「才能有ったんだ」

セシルが色々出しているアレンに対して、ぽつりと言う。

「そうですね。色々出来て便利ですよ」

「なんで黙っていたの?」

「才能なんて語ってもいいことないですよ」

「そうね……」

セシルの中で納得することがあるようだ。

「明日はもっと走ります。少し休んでいてください」

「アレンは寝ないの?」

「私も寝ますよ、おやすみなさいませセシルお嬢様」

「……おやすみ」

(さて、できれば3~4日以内に帰りたいぞ。そうじゃないと身が持たない)

アレンはセシルの寝顔を見ながら、召喚獣を通してダグラハの動向を確認する。

そして数時間後の翌朝、まだ眠いセシルを背負って走り始める。休憩は仮眠程度で済ませてしまいたい。

(ぐぬぬ、建物上の足跡バレたな。やるじゃないか)

ダグラハがアレンの工作に気付いてしまった。荷物を片付け、セシルを起こして移動を開始する。

ダグラハは今建物の上にいる。ダグラハが立っているのはアレンが移動した建物の上だ。ほどなくして塀の上まで追跡される。アレンの足跡が街の外になく、視線をあちこちに移しながら、アレンの足跡を探している様子が見て取れる。

(ぐふふ、どうよ? 足跡はないぞ。って、え?)

アレンは走りながら、ダグラハの動向を確認し続ける。ダグラハは、足跡がないことを確認したあとまっすぐ走り始めたのだ。そして、何キロメートルか走ったところで、街を中心に円状に走り始めた。

(うは、何じゃそりゃ!? え? これって)

当然、円状に走っているためアレンの足跡にいずれぶつかる。アレンの足跡を発見するとそのまま追跡を再開した。

(やばい、足跡消しの距離をもっと増やすぞ)

数キロメートルで見つかってしまったため、さらに長い距離を石Dの召喚獣で足跡消し作戦を敢行したりしながら、白竜山脈の北端を目指す。

アレンとダグラハの距離は、ダグラハが足跡を見失ったり、見つけたりしながら、詰めたり離されたりを繰り返していく。

そしてカルネルの街から2日目の朝を迎え、アレンは無事関所の受付を済ませ、グランヴェル領に入る。

「どうしたの? 何かあったの」

「え?」

関所を抜け、すぐに行きましょうというアレンの挙動に何か違和感があったようだ。

(ぐ、気付かれたか。ここは正直に答えるか)

「さきほど、ダグラハの居場所を見失いました」

「え?」

アレンはダグラハの位置を確認している。追われていることを伝えている時に、何となくそんなスキルがあると言った。

少し前、鳥Eの召喚獣がダグラハの後を追っていると、ダグラハがこれまで以上にものすごいスピードで移動を開始した。とても鳥Eの召喚獣では捕捉できないほどの速度だ。

現在、数体の鳥Eの召喚獣が行方を探しているのだが、発見できていない。そもそも追いつけていないので、ダグラハの発見は難しいだろう。

(やはり、速度を一気に上げるスキルがあったんだ)

倉庫でダグラハに蹴られたことを思い出す。目でも追えず、一瞬消えたように見えた。スキルがどうのこうの言っていたため、スキルを使ったかもしれないと思っていた。こんなものを見せられて完全にスキルであると認識した。

(こんな距離を移動できるなんて)

スキルでも短距離限定の速度上昇だと思っていたが、かなりの距離を移動できるようだ。あっという間に走り去ってしまった。

「私を置いて行けばアレンは助かるんじゃないの?」

「え? 何言っているんですか。置いて行かないですよ」

「だって、このままだと……」

(ふむ、セシルも12歳だな。こんなことで音を上げるなど)

数日追われるように移動しているため、不安になってしまったようだ。

「大丈夫ですよ。無事2人でグランヴェルの街に帰りましょう。何も問題ないですよ。それに約束しましたからね」

「約束?」

「はい、ミハイ様にセシルお嬢様を必ず守ると約束しました。約束は守りますよ」

「ありがと……」

セシルがアレンの肩に顔を埋める。

(カッコいいことを言ってしまったが、これは保険をかけておかないといけないな。関所も越えたしそろそろいいだろう)

アレンは複数の召喚獣を召喚し空に飛ばす。そして、共有した鳥Dの召喚獣達が鷹の目で周囲の索敵を行う。すぐにダグラハに気付くためだ。

そして、カルネルの街を出て3日目を迎える。

今日も朝早くからセシルを背中に乗せて、グランヴェルの街を目指している。

できれば明日中にはグランヴェルの街に着きたいなと急いで走る。

そんなアレンが飛ばした鳥Eの召喚獣を見つめる魔獣がいる。その魔獣はこの鳥の近くに遊び相手がいることを知っている。

片目を失った人面犬のような顔をニチャアと歪ませて移動を開始するのであった。