軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第859話 無の世界に置かれた者

アレンたちは神界に進軍してきた魔王軍と戦ったが、キュベルが隙を突いて第一天使ルプトを攫った。

魔王が第一天使ルプトを食べるまで10日間の猶予を与えられたアレンは、その間にアレン軍や5大陸同盟軍を含めた10万を超える軍勢の準備を進め、アレンの仲間たちも神の試練を乗り越えるため修行に励んだ。

万全の戦いの準備をして、忘れ去られた大陸にある魔王城へ乗り込んだ。

だが、魔王城におびき寄せることは、アレン自体を無の世界に送るための魔王軍の策略だった。

アレンは魔王軍が10日間の調整の間に、神界へ進軍した折に時空神デスペラードから奪った時空管理システムによって、無の世界に飛ばされてしまう。

その上で、第一天使ルプトは魔王に食べられてしまった。

魔王は自らの肉体が第一天使ルプトを吸収した結果、安定したのか、自らを大魔王と名乗るようになる。

人間界、神界、暗黒界の3つの世界に分かれているのだが、そのどれにも属さない世界が存在する。

それが3つの世界の狭間に存在する無の世界だ。

魔王城で時空管理システムが起動した直後、転移先にある薄暗い石造りの建物の中から物語は始まる。

バチバチッ

ブウウウン

建物の天井近くに魔法陣が生じ、空中に亀裂を広げるように漆黒の穴が空いた。

火花と共に吐き出されるようにアレンが現われ、床石に落下する。

「ぐぬ!? ……こ、ここは? 魔王城の中ではないな。キュベルに言っていた無の世界なのか?」

無の世界に飛ばされたアレンは辺りを見渡そうとした。

しかし、思い通り自らの体が動かないことにすぐに気付いた。

「大魔王のデバフ攻撃で動かないか……。ここはキュベルの言っていた無の世界の中に作った監獄ってやつなのか」

大魔王との戦いでアレンは魔力回復阻害、全身のマヒという状態異常の効果で床石に転がり、一切身動きが取れない。

そんな中、真っ先にアレンが最初に行ったのが、仲間たちの状況を確認するため召喚獣との共有だ。

「全く見えない……ぞ。ホルダーにも戻っていない。共有が切れているのか」

ブンッ

マヒで顔を動かせず仰向けになったまま魔導書を出して確認するが、人間界との共有は完全に切れてしまっていた。

ホルダーを確認しながらも状況の整理を進める。

「削除してこっちに出してみるか。……いや、俺が状況を知りたいだけのために向こうの戦力を削ることは出来ないな」

アレンは召喚獣と記憶を共有することができる。

削除して再度、生成をしたら魔王軍の今の状況を確認できる。

ほぼほぼ全ての召喚獣を5大陸同盟軍、アレン軍、アレンのパーティーのために召喚している。

成長レベルを上げ、全ての召喚獣に必要な役目を与えており、この数分にもならない時間経過の中での状況を知るためだけのために、この無の世界に呼ぶのは躊躇う。

削除しても、恐らくだが人間界の戦場にはもう戻せないことは容易に想像できた。

パアッ

「回復できない状態異常ではないはずだ」

魔導書の収納を地面に向けて、状態異常の回復役である香味野菜をパラパラと降らせる。

3分ほどかけて、何十個の香味野菜を消費してアレンはようやくマヒの状態異常から解放された。

動けるようになったアレンは収納から天の恵みを1つ取り出して使用する。

「よし、動けるようになったぞ。天の恵みを使っても魔力はまだ回復しないな。こっちのデバフはかなり強い効果なのか。って、メルスの召喚獣枠が……」

魔王から受けた「 魔素破壊(マナブレイク) 」の効果が残っており、アレンのステータスは魔力0のままだ。

同時に召喚獣の枠に変化がないか魔導書を見ていたら、新たに1体の召喚獣が召喚できるようになった。

「め、メルス……。そうか、『一心同体』の効果が切れてオルドーあたりにやられたか。こっちにこい。メルス召喚」

『ぐっ!? って、アレン殿よ。無事だったか』

「無事とは言えないが、キュベルが言っていた無の世界で俺を閉じ込めるための監獄のようだ」

『そ、そうか。皆、無事に逃げることができたら良いのだが……。ああ、俺が倒されるまでにやられた仲間たちはいないからな。それだけは安心してくれ』

第一天使ルプトは魔王に食べられ、アレンが無の世界に閉じ込められている状況の中、皆を逃がすためにメルスは戦っていた。

「……そうか」

悔しがるメルスを見て、自らが真っ先に飛ばされた負い目のあるアレンは、同意することしかできなかった。

特技「天使の輪」で召喚獣たちを人間界で戦う仲間たちのために召喚できなくなったなど、アレンは言えるはずもない。

「よし、ここがどうなっているのか調べよう」

『脱出の方法など、用意してくれるとは思えないが……。ここは何なんだ?』

「キュベルは無の世界の用意した牢獄のようなことを言っていたな。この臭い場所から出てみるか」

アレンがいるのは薄暗い石畳の部屋だ。

不快そうにアレンは、目の前の床石に打ち付けられた楔からつながった鎖の先にある魔獣の腐乱死体を見る。

どれほどの日にちが過ぎたのか繋がれた息絶え、皮の張り付いた骨と化している。

奥に目を向けると巨大な鉄格子が見えるのだが、ここはこの魔獣を捉えるために用意された牢獄のようだ。

巨大な魔獣用に用意された鉄格子の隙間からアレンとメルスはひょいとするり抜けると、通路に出た。

薄暗い通路を見回すと、いくつもの鉄格子の扉が等間隔で並んでいる。

「……誰もいないな。俺たちだけか」

『ん? あの鉄格子が破壊されているぞ。何かいるのか!』

アレンが警戒して辺りを見回していると、一番奥の鉄格子に違和感を覚えたメルスが翼を広げ一気に移動した。

「本当だ。中の鎖も引き千切られているみたいだ。俺たちよりも前にここにきて、さらに逃げ出そうとした奴がいるってことか? 今は誰もいないな」

後を追ったアレンは、鉄格子が内側から通路に向けて破壊されていることに気付く。

さらに、床石に打ち付けられた楔から伸びる鎖は途中で引き千切られており、床石や壁も暴れたのか、破壊された後が残る。

『血の跡か。だが、死体がないな。どこかに運ばれたのか』

「恐らくだが、この檻の中で暴れた奴に魔族か魔神が倒されたのだろう」

『ん? なるほど、確かに。だが檻の中から出て行った者はどこに行ったのだ?』

武器がいくつか散乱しているが、アレンが最初にいた牢獄と違って死体がないことにメルスは気付く。

アレンは過去の魔王軍との戦いで魔神や魔族は倒されると灰となって消えていくことを知っている。

もしかしたら、牢獄の中から出た者も、捕らえた者を監視する魔王軍も無事かもしれないが、今の状況にアレンは1つの考えが思いつく。

「ん? これはもしかして……。ここはそうなのか」

『どうしたのだ? アレン殿よ。お、おい!!』

廊下を出たアレンは小走りに移動を開始した。

メルスが後ろから飛んでついてくる中、アレンの廊下を進んでいく。

鎖を引き千切り廊下を出た者が暴れたのか、時折床石や壁を粉砕し、武具の類が散乱している場所がある。

廊下を抜けた先は階段があり、駆け上がると上の階層を突っ切っていく。

『……なるほど。ここがそうなのか』

メルスもアレンに遅れてここが何なのか分かったようだ。

上の階層の通路を抜けた先の破壊された扉の中に入ると、そこは遺棄された研究施設のようだ。

巨大な水槽は破壊され、地面には研究員と思われる白衣をきた魔族の死体が転がっている。

「こいつらは消えていないことは強化されていない魔族たちだな」

魔王軍の中には、魔族や魔神を強化する術があるらしい。

そして、強化した魔族や魔神は角が生えて倒されたら黒い灰となって消える。

この一部白骨化の始まった死体は、強化されていないただの魔族なのだろう。

『そして、この水槽の中に入った物が聖獣石か』

「そうだ。ペロムスとベクがこの建物の中で牢獄から脱出し戦っていたんだろう」

『よく分かったな』

まるで来たことあるように、この場所までやってきたアレンにメルスは感心した。

「ペロムスから聞いていたからな。魔王城の中に攫われたかもしれなかったし」

ペロムスとアレンは1年以上前、海底のプロスティア帝国の帝都パトランタで、逃げた元獣王太子ベクを追っていた。

ペロムスを宮殿内で1人にさせてしまい、キュベルによってベクのいるこの監獄に連れてこられてしまった。

ベクの助けを得て聖獣石を盗み、アレンたちの下へ戻ってくることができた。

アレンは魔王軍との戦いが落ち着いた後、魔王城の内部かではないかと推察し、今後の戦いのために詳しい建物の構造をペロムスから詳しく聞いていた。

暴れた牢獄の状況から、ベクとペロムスが下の階層で戦ったことをすぐに気付いたのだが自慢する気にはなれない

(随分前から俺を無の世界に閉じ込めるつもりだったのか。俺は何をしてきたんだ)

魔王軍がどれほど用意周到の準備を進めてきたのか分かる。

そして「分析だ」、「検証だ」と調子に乗ってきたこれまでの生き様が恥ずかしくなってきた。

『だが反省会は後だ。ペロムスはここから逃げ出せたのであろう』

「……ああ、そうだ。たしか一番上の階層の奥に転移の魔導具があったと言っていた」

ペロムスがいた場所だと聞いて、アレンとメルスは次に何をすべきかすぐに気付いた。

アレンとメルスは破壊された水槽のある研究施設から移動を開始する。

通路を走り、階段を駆け上がって進んだ先にペロムスから聞いていたものがあった。

「あったぞ。これが転移システムだ」

『……そのまま置いてあるようだが動くのか?』

配線がいくつもつながり、キューブ状の物体が浮いている。

足元には魔法陣が描かれており、アレンたちが近付くとキューブ状の物体が僅かに点滅した。

『……魔力が足りないため転移が出来ません。魔石の交換もしくは魔力を充当してください』

「おお! 動くぞ!!」

ここにきて数時間が経過したが、ようやくアレンの顔に明るさが戻る。

アレンは魔導書の中の収納に手を突っ込み、意識を集中する。

【収納の中に入っているもの一覧】

・各種魔石

S:1万個

A:10万個

B:50万個

C:100万個

D:100万個

E:500万個

・霊石:3000万個

・各種回復薬など

天の恵み:5万個

魔力の種:2万個

香味野菜:1000個

金の卵:1000個

栄養食:1000個

・魔力回復リングS:2個

・霊力回復リングS:2個

・魔力霊力変換リングS:2個

・魔石霊石変換ポッド:1個

・食料

モルモの実:3000個

干し肉:3000個

パン:3000個

水:300トン

・神聖オリハルコン:武具10個分

・その他、武器、防具、魔法具多数

・光金貨、白金貨、金貨多数(1億枚の金貨分ほど)

アレンはメルスと共に、監獄の上の階層で見つけた転移システムを操作し始めるのであった。