軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第849話 地上戦⑩ルキモネ戦

ハクが竜王マティルドーラから託された竜王の玉を使い、7体いたガンディーラ改のうちの1体を倒した。

この竜王の玉はたった1時間しか効果が続かないので、それまでに戦況をひっくり返さねば、また厳しい戦況に逆戻りだ。

ギョロギョロ

触手や本体のスライム状の部分で様子をみるルキモネが巨大な口を開く。

『……やはり、メルスの顔に動揺が見られますね。時間に制限があるのか、今回の戦い方は何度も使えないのでしょう。でなければ、こんなに押し続けてようやく使ったことに説明がつきません。私が出張り、体勢を立て直し、魔王軍に逆らう者たちをせん滅しましょう。キュベル様がきっと喜んでくださる』

そこに前面に移動していたマグラとマクリスがルキモネの前の前を飛行する。

共有したメルスが速やかに攻撃に転じるよう指示すると2体は動き出す。

『炎獄殺! グオオオオオオオオオオオオ!!』

『フリーズキャノンなのらあああああああ!!』

『 魔法障壁(エビルシールド) 』

『 魔法障壁(エビルシールド) 』

複数の触手から魔法陣が現われ、一気に無数の防壁の魔力によるシールドを作り出した。

近距離からのいきなりの攻撃であったが、圧倒的な知力を持つルキモネが生じる魔法障壁は完全に2体の攻撃を完全に塞いでしまう。

シュルシュルッ

さらに無数に存在する触手を足元から這わせ、一気にマグラとマクリスに絡みつく。

『ぐあ! 不気味な触手を離せ! 貴様!!』

『捕まってしまったのらああああああ~!?』

『…… 魔素吸収(マナドレイン) 』

ドクンドクンッ

パアッ

絡みつき藻掻く2体の召喚獣は秒間数万の魔力を吸われ、さらに締め付けられ、光る泡へと変わっていく。

『一瞬でだと!? 馬鹿な!!』

当たり前のように2体のSランクの召喚獣を倒してしまったことを驚愕する。

『……まあ、敵の力など魔力量から見てもこの程度でしょう。指揮官の上位魔神たちに告げる。管理者権限をこの戦場の最高指揮官である私、ルキモネに渡しなさい。敵陣をせん滅しましょう。私こそが六大魔天最強にして魔王様を守る鉄壁の砦である』

『は! ガンディーラ改肆式の管理者権限の全てをルキモネ様に移譲します!!』

6体のガンディーラ改の駆動室内の指揮官の上位魔神がルキモネの指示に答える。

『この状況でこのような敵に……。だが、逃げることなど……』

メルスは動揺しながらもマグラとマクリスを再召喚する。

ルキモネがメルスの表情を捉え、自らがこれから得る功績を予想し、全ての目を細め不気味に笑みを零す。

『やはり、これ以上の戦法はないとみて良いと判断します。こちらの戦力をこれ以上削られないようにして押しつぶしていきましょう。恐らくクールタイムが無くなったでしょうから、ディグラグニの戦力増加は加味して……』

全てのガンディーラ改の管理者権限を奪い、自在に扱えるようになったルキモネが戦術を練る。

「これはやはり 迷宮神降臨(ディグラグニ・オン) で戦うしか……」

『それにはさらに時間の制約がかけてしまいます』

「だが、とんでもない力だったぞ! 今のままじゃ戦えないぞ!!」

超神合体ゴーレムの駆動室内でもメルルやガララ提督たちの思いが錯綜するが、ルキモネの思考を超えることはできない。

このまま今のままの作戦はまずいとルキモネを警戒したメルスが、メルルたちの近くまで戻ってきた。

『これは撤退を考えるしかないのか。全軍を全滅させるわけにはいかぬ……。すまぬ、アレン殿よ。だが、ルプトを救出せねば……』

新たな強敵の存在に、長期戦にイチかバチか掛けるには犠牲が多すぎるメルスは判断する。

この貴重な1時間で確実に戦えるなら、ルキモネと6体のガンディーラ改と戦うべきだ。

だが、無謀な戦いでメルルたちアレンの仲間たちはもちろんのこと、背後にいる貴重な人類の戦力を失うことになる。

棺桶袋に入れられた人数を含めて10万人は、アレン、ヘルミオス、ガララ提督、十英獣のパーティーや仲間たちを除いて世界最高の戦力だ。

何度も何度も転職し、S級ダンジョンや試しの門で手に入れ、名工ハバラクや魔法具師カサゴマが作り上げた貴重な武具や魔法具を装備している。

もし、このまま戦って全滅しようものなら失った戦力は計り知れない。

魔王軍に倒せない結果に終わるならなおさらだ。

魔王軍による人類の滅亡が確実に早まるだろう。

だが、ここで撤退することはルプトを見捨てることを意味する。

迫りくる敵を排除しつつ戦略艦に乗って撤退するにも1時間近い時間を要する。

今やるべきことを判断しないといけないこの状況の中でふいに声をかける者がいた。

「……あまり、良い状況とは言えないわね」

『そのとおりだ、セシル。今は撤退をすべきか……、セシル!?』

当たり前のように返事をしてしまったメルスの側にいたのは上空に浮かぶセシルだった。

「何言ってんのよ! 撤退なんてありえないでしょ!!」

『だ、だが……。いや、古代魔法を会得したのか? その姿は……』

見たことのないローブを着て、見たことのない水晶がセシルの周りに浮いていた。

セシルの態度からもメルスの導き出せる答えは1つだ。

「ちょっと、状況を軽く説明してもらえるかしら。アレンがいないようだけど?」

『アレン殿は仲間たちと共に別行動で魔王城の中にいる。我らは別動隊で地上から魔王城を探している。まあ、魔王城自体はみつけているのだが、この場の敵が強すぎて撤退もやむなしというところだ』

メルスが突如にやってきたセシルに簡潔に説明する。

魔王城については、アレンが監獄長ブレマンダを倒したことにより、既に魔王城を隠す結界は消えて位置は分かっているのだが、現状向かうことができないでいた。

「……アレン軍たちの手で余る敵を倒して、ルプト様を助けにアレンたちのところに向かうで良いのかしら?」

現状を把握した上で淡々と何をすべきかセシルは今すべきことを口にする。

『それはそうなのだが……。それが簡単なことではないのだ』

メルスは目の前でセシルの周囲に無数の魔法陣を生じさせ、魔力を練り始めるとセシルではない何かのような違和感を覚える。

まるで神と相対しているような強力な圧に思わず吹き飛ばされそうになる。

この状況に前方にいるルキモネが気付いた。

『敵陣営に何か強力な魔力が……!? さ、300万を超える魔力!! こんな時に神の介入ですか! そんなことはあり得ない!! ……この魔力の波長は人間のようですが異次元すぎる。魔法陣!? 膨大な魔力が練られていきます!! ガンディーラ改たち!!』

『目玉の化け物が動揺しているようだが……。これもお前の力なのか? セシル』

「……このままだと敵ごと捻り潰してしまいそうよ。ちょっと、メルス。メルルやハクたちに前線から下がるように言ってくれるかしら。一緒に吹き飛ばしてしまいそうだから」

ブウウウウン

セシルの魔法陣の錬成に呼応するように、周囲を取り巻く5つのドッジボールサイズの水色透明の玉が点滅を始め、ダンジョンにあるキューブ状の物体のように、メッセージを発する。

『魔力蓄積①の魔力50万消費指示を受付。使用者の指示を確認。全ての魔力を放出します』

『魔力蓄積②の魔力50万消費指示を受付。使用者の指示を確認。全ての魔力を放出します』

『魔力蓄積③の魔力50万消費指示を受付。使用者の指示を確認。全ての魔力を放出します』

『魔力蓄積④の魔力50万消費指示を受付。使用者の指示を確認。全ての魔力を放出します』

『魔力蓄積⑤の魔力50万消費指示を受付。使用者の指示を確認。全ての魔力を放出します』

ごりごりと魔力を吸収する杖をゆっくりと詠唱を唱えるセシルは前に突き出した。

メルスはセシルの状況にただ事ではないと判断し鳥Fの召喚獣を通じて指示を出す。

『メルスだ! すぐに指示に従ってくれ!! セシルがこれから強力な魔法を放つ! 速やかに後方に離れるんだ!! アレン軍たちよ、強力な魔法が放たれる! 各部隊は盾部隊の背後に回り、身を守れ!! 命を守る行動に移るのだ!!』

「おいおい、何が起きているんだ。両足役どもよ、一気に後退しろ!!」

『ギャウ!!』

超神合体ゴーレムがハクたちと一緒にガンディーラ改や化身たちを無視して後方への撤退を急ぐ。

超神合体ゴーレムに乗り込むメルルたちでもはっきり分かるほど、自らの背後上空を見てルキモネが驚愕している。

『全ガンディーラ改に告げる! 全魔力を込めた超メガロン砲の発射準備を! 位置情報はこちらで調整する! 魔法障壁(エビルシールド) !!』

触手をガンディーラ改や後方にいる魔神、魔族、魔獣の陣形のいる方向に無数に伸ばし、巨大な魔法障壁を構築する。

お互いの攻撃が準備整ったところで、ルキモネとセシルの攻撃するタイミングが一致した。

『超メガロン砲発射!!』

『超メガロン砲発射!!』

『超メガロン砲発射!!』

「じゃあ、いくわね。 小隕石(プチメテオ) !!」

地面から空を割くように7つの超メガロン砲が膨大な魔力の主であるセシル目掛けて発射される。

だが、セシルの放った魔法「小隕石」の発動も同時であった。

1つ当たり300メートルほどの岩石が7つ、真っ赤に燃やしながら、超メガロン砲に撃たれながらもガンディーラ改に向かっていく。

ルキモネが膨大な魔力を作って作り上げた「魔法障壁」を砕き、そのまま全てのガンディーラ改を砕いていく。

雪も氷も全て蒸発し、化身も魔獣も魔神も捻り潰し、燃やし尽くし、吹き飛ばしていく。

「な、何が起きていると言うのだ!? 皆、吹き飛ばされるなよ!!」

数キロメートル離れたところであるが、衝撃波がライバック将軍たち盾部隊に襲い掛かる。

なお、砕けた岩やガンディーラ改の破片のほとんどは、アレン軍たちにぶつからないよう、石Hの召喚獣が防いでくれている。

『ば、馬鹿な。こんなことが!? 人の手でこのような魔力を放つなどあり得ません! ぐああああああああああ!!』

ルキモネは理解できないでいるが、地形も環境も変わるほどの尋常ではない魔法攻撃に、全身を大きく損傷し、巨躯でも抗うこともできず後方へと吹き飛ばされていく。

あまりにも一方的な力で地形すら変わってしまいそうだ。

『ガンディーラ改肆式を1体倒した』

『ガンディーラ改伍式を1体倒した』

『ガンディーラ改陸式を1体倒した』

『ガンディーラ改漆式を1体倒した』

『ガンディーラ改捌式を1体倒した』

『ガンディーラ改玖式を1体倒した』

前進していたガンディーラ改3体および魔王軍内部にいたガンディーラ改3体ごと、駆動室内で操縦する魔神や魔族ごと全て捻り潰して倒した。

「……よし、魔力全部使ってしまったわ。邪魔者は消えたのかしら?」

セシルの周囲を衛星のように回る水色をした水晶の玉は全ての魔力を失い同じ大きさの石ころに変わってしまった。

『セシルよ、お前は……』

「待たせたわ。古代魔法達成に向けた時空神様の試練が今終わったのよ」

強敵を一発の魔法で一掃したセシルがつぶやいたのであった。