軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第840話 チームヘルミオス⑥オルドー戦(4)

オルドーが前進し、剣に魔力を込め大振りの大剣が空を切ろうとする。

『いつまでも我にまとわりつく!!』

「フレイムランス!!」

「フレイムランス!!」

魔導帝のリミアとローラが既に魔力を練っており、タイミングを見計らっていた火魔法を浴びせる。

変貌を遂げたオルドーにとってほぼダメージを与えられないのだが、目的は目暗ましだ。

ミスを誘発し、コンボの連携が途絶えないようにするのが目的のために視界を奪いたい。

魔法を何発放ってもコンボの数にカウントされないのだが、一瞬のスキを生じさせてミスを誘いたい。

『先ほどからちょこざいな!!』

不快感を露わにするオルドーだが、対象の狙いを定め勝利のための戦い方に迷いはない。

『必中矢!!』

『必中矢!!』

カンッ

ザシュッ

弓獣帝ゲンと弓帝グミスティが100メートル以上は離れた場所から炎の隙間に、右目と左目にそれぞれ1本ずつ神聖オリハルコン製の弓矢が襲い掛かる。

『はあああ!! 熊神瓦解破!!』

熊が前足を使って大振りの一撃を繰り出すように拳を振り下ろすと、ガシャガシャとオルドーの肉体から剥がれ落ちるようにステータスが下がった。

本気を出したオルドーは攻撃力だけでなく、耐久力や耐性が各段に向上したように思われる。

さらに体力が自然回復するようで、ダメージの回復速度が攻撃速度を上回る。

究極兵器バスクに対して行った作戦で、デバフ系の神技をシアに使わせるためコンボを優先しているのだが、潰れていない片目がしっかりとシアを視界に捉えていた。

『はあ!! 暗黒殺剣(ゲヘナクライム) !!』

大剣にオルドーの全魔力が込められていく。

漆黒の気が激しく刀身に絡ませながら、大振りに振り下ろす。

攻撃範囲は広く、床石を粉砕する漆黒の気が床石をぶちまけながら波状にシアたちに迫る。

『シア殿、下がるのだ!!』

オルドーと同じ大きさのリオンが全身を使い、割り込むようにダメージをもろに受ける。

パアッ

リオンの体が強力な一撃によって全ての体力を削り切り、光る泡となって消えていく。

だが、リオンの献身的な行動のおかげでオルドーのスキル「暗黒殺剣」は威力が完全に殺され、シアの周囲の前衛や背後にいる後衛たちのところまで攻撃範囲は及ばなかった。

カッ

音を立てながら光る泡となって消えたところでリオンが復活を始める。

『申し訳ない。思いのほか威力が高すぎて倒されてしまったわ』

ステータスが高く優れた耐性のあるリオンが一度でやられてしまった。

だが、リオンには常時発動の覚醒スキル「輪廻転生」がある。

この効果によって何度倒されても復活することができる。

倒すためには覚醒スキル「輪廻転生」を発動して1分以内にもう一度倒す必要がある。

「大丈夫だぜ。すぐに2度めは倒させねえよ。少しの間、下がっててくれ」

リオンが1分以内に2度倒せられないことを知っているドゴラは、リオンの盾になろうとする。

だが、そのリオンは自らの力の変化にすぐ気付いたようだ。

『……む? そうか。どうやら、天神羽織が破壊されてしまったようだ』

そう言って、リオンは地面に落ちた神A「蓋世天錫」を拾い、ドゴラたちの前に出る。

「なんだと? まじかよ」

ドゴラはリオンの言葉で何が起きたのかすぐに理解した。

リオンが倒された際、防具である神B「天神羽織」が先にダメージを受ける設定となっていた。

そのため神B「天神羽織」はオルドーのスキル「暗黒殺剣」によって破壊され、同時に特技「斥力障壁」と覚醒スキル「守破の衣」が解除されてしまった。

特技「斥力障壁」はリオン自身しか効果がないが、覚醒スキル「守破の衣」は仲間たち全員の大幅な守備の低下に繋がる。

『これで我らの防壁も失ったというわけか。無敵茸は再度使えないみたいだし。これで押し切れば良いのだが……』

シアはこの場での戦況を分析する。

ペクタンの覚醒スキル「無敵茸」のクールタイムは1日だ。

魔法具が装備できない召喚獣のため、シアたちのように大幅にクールタイムを減らすことはできず、バスクとの戦いのようにドゴラのスキル「戦破陣」とのコンボはできない。

さらに、バスク戦からまだ何時間もたっていないため、ドゴラとシアは新たに獲得した秘奥義のクールタイム中だ。

バスクに倒されたルバンカはいない。

ほかにもバスクを倒すためにエクストラスキルをかなり使ってしまった十英獣も多い。

『ほう、どうした? 早くしないと。貴様が今かけたスキルの効果も消えてしまうぞ。これほどの多勢だ。無理をすれば我に勝てるかもしれぬぞ?』

ゴゴゴゴッ

口角を上げ、圧倒的な余裕と威圧感を持つオルドーは漆黒の魔力が全身を満たしていく。

ゆっくりと1つずつシアがコンボをかけて決めたデバフを乗せた神技を解除していく。

魔王への忠誠を尽くすオルドーはシアたちの不安な表情の変化を捉える。

今が好機だとシアたちの陣形に向かって足を進めていく。

オルドーのダメージを蓄積させ、ステータスを減退させているのだが、体力を自然回復させ、デバフも解除できるようだ。

『長期戦は難しい。だが、これでガルム様の神技を叩き込むほどの余裕があるのか……』

バスクの時と違ってコンボを繋ぐための条件が厳しく、神技「獣神無限爆散拳」を叩き込むにはとても厳しい状況だ。

「確かにそうだね、シア様。だけど、彼は僕が止めを刺す。だから、皆一斉に攻撃を仕掛けてくれないか? 僕が一撃を与える隙を作ってほしい」

『なに? それは、どういうことでしょうか……?』

シアの問いにも視線の端でヘルミオスを見ると笑みが広がっており、明らかに勝機があると言わんばかりの表情だ。

攻撃の手札が削られる中、ヘルミオスは手元に半透明な仮想窓に銀色の文字で表示されたものを見る。

『天稟の才の条件が全て満たしました。スキル「暗黒殺剣」を得ますか?』

「もちろんだ。あのスキル、僕の力に換えてほしい」

『……暗黒殺剣の属性を分解し、威力を維持するようスキルの再構築をします』

『……再構築に成功しました』

『ヘルミオスは神技「 神聖煌剣(ディバインソード) 」を獲得しました』

仮想窓にログが流れていく。

パアッ

光る泡がヘルミオスを包み込むように新たな力が湧いてくる。

エクストラモードになったヘルミオスのスキル「天稟の才」はオルドーのスキルを神技として獲得することができた。

「……みんな、もう一度言うね」

2つのチームの皆が勇者ヘルミオスの言葉に視線をそのままに耳を傾ける。

「こんな強敵にこれ以上の長期戦は不可能だ」

「おいおい、どういうことだよ。いけんのかよ?」

「多分、大丈夫」

「多分って……。まあ、このままじゃやられそうだし。シアもいいか?」

『もちろんだ。作戦があるなら、それに賭けるしかあるまい』

ドゴラとシアが同意したところで全員の意思が固まった。

『ほう、コソコソ話おって。我こそが最も身近で魔王様を守護する最強の剣であり盾よ。油断すると思うな。は!!』

語り掛けてきたと思いきや、一気に大剣を振り上げ、陣形深くに攻め込んできた。

「こ、こちらに来ます!!」

グレタがオルドーの接近に警戒の声を上げた。

「止まれああああああああ!!」

「ああああああああああ!!」

イグノマスとベスターの2枚の盾役が前進してオルドーの進行を止めようとする。

『雑魚が!!』

「くそ!?」

「がは!?」

オルドーはいくつもシアのデバフの神技を受けたとは思えないほどの、凶悪な前蹴りで盾役の2人を後衛たちの下へと吹き飛ばされる。

空いてしまった壁役の穴を埋めるべく、ドベルグやシルビアが突っ込んでいく。

「そこまでだ! はああ!! 煉魔冥斬剣(ヘルファイアブレード) 」

オルドーに向かって跳躍したシルビアは、バスク戦で使わなかったエクストラスキル「煉魔冥斬剣」で襲い掛かる。

キンッ

『ふん、このような攻撃効かぬわ!!』

「うぐ!?」

大剣を振り上げやってきたシルビアを、攻撃を仕掛ける十英獣たちと共に屠ろうとする。

「させるか! 奥義無鉄!!」

ザンッ

「ぐは! 雑魚ごときが我の腕を! 許さん!!」

ドゴラはオルドーの右手の手首を耐久力無視の奥義「無鉄」で切り落とした。

だが、カウンターと言わんばかりに大剣を左手で持ち直し、再度襲い掛かろうとする。

「させないよ。 破甲剣(ガードブレイク) !!」

ヘルミオスは、ドベルグからスキル「天稟の才」で獲得したスキル「破甲剣」を発動した。

ギンッ

『ふん、右手の次は左手か。分かりやすいわ!!』

目の前で作戦の話をしていたオルドーはヘルミオスに警戒していた。

左手で即座に大剣を握り直し、刀身の腹でヘルミオスのスキルを受けた。

切り裂けそうになった大剣へのヘルミオスの斬撃の進行が止まってしまった。

「く!」

「ふん、いつまでもまとわりつく。死ね、 暗黒殺剣(ゲヘナクライム) !!」

接近を許したのは作戦と言わんばかりに、再度、オルドーの大剣はリオンを一撃で屠ったスキル「暗黒殺剣」を発動させる。

今まさにヘルミオスが消し飛びそうになりそうだ。

「じゃあいくよ! これは君のスキルだ、オルドー! 神聖煌剣(ディバインソード) !!」

カッ

バチバチ

ヘルミオスの神器オハバリの剣は光輝きだし、閃光のように魔力が弾ける。

お互いが乗せたスキルと神技が大剣に込められ、ぶつかり合ったのであった。

威力は拮抗していると思っていたが、先ほどスキル「破甲剣」でオルドーの大剣は亀裂が入っていた。

バキッ

『くそ、貴様のような虫けらに!!』

オルドーの大剣は砕け、首元に向かってヘルミオスの眩い斬撃が食い込んでいく。

だが、オルドーは肩の筋力を躍動させ、自らの漆黒の魔力で身を守り、必死に耐えようとする。

ベキベキ

奥義「無骨」で切り落とされた右腕は再生を終え、接近して斬撃を繰り出すヘルミオスに対して拳を握り締め、カウンターの一撃を今にも繰り出しそうだ。

「……皆、 敵(かたき) を取るからね。武の極致!! うおおおおおおおおおおおお!!」

『な!? 馬鹿な!! 我が!! ぬぐおおおおおおおおおおおお!!』

神技「神聖煌剣」は神技「武の極致」の重ね掛けにより威力が遥かに向上し、広間の全てを照らす強烈な輝きを見せる。

ヘルミオスの2つの神技による重ね掛けがオルドーのスキルを圧倒し始め、ようやく余裕を失い焦りの表情を見せた。

「くそっ。何も見えねえぞ」

ドゴラたちが輝きに奪われた視界が戻ってきたときには全てが終わっていた。

ドサッツ

袈裟懸けに切られたオルドーの上半身が床石に落ちる。

「全く、流石、本物の勇者だぜ。アレンと一緒でむちゃくちゃだな」

ドゴラは地面でピクリともしないオルドーを見て、ヘルミオスの威力に呆れるのであった。