軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第838話 チームヘルミオス④オルドー戦(2)

魔王軍総司令オルドーは前線を切り崩す作戦を取った。

「来たよ! イグノマス!!」

「分かっている! ぐぐぐ!!」

オルドーの戦術は、ヘルミオスたちとの戦いがこれで初めてではないことに起因しているようだ。

神界で第一天使ルプトが攫われ、時空管理システムが奪われた魔王軍の進撃において、オルドーが神界闘技場を攻めた。

ヘルミオスとそのパーティーは陣形を作り、クレナの助けも借りつつ、倒すことは出来なかったものの被害を最小限にしてオルドーの猛攻を抑え切ったのは10日前の話だ。

ヘルミオスは仲間たちに神界でとったのと同じ守備陣形を取ろうとしたが、オルドーは見切っていたようだ。

だが、オルドーのこの作戦の弱点をヘルミオスは瞬時に気付き、リオンに合わせるよう指示をした。

「取り囲もう!!」

『うむ!!』

陣形に入っていくということは、前衛の数が十分であれば取り囲み、背後を狙いやすいということだ。

この世界の攻撃には「クリティカル」や「ミス」などの効果があり、「ミス」となるとダメージが与えられず、「クリティカル」になると2倍のダメージを与えることができる。

攻撃対象の正面からの攻撃では「ミス」が発生しやすく、側面や背面からの攻撃は「クリティカル」が発生しやすい。

イグノマスの神器ワタツミの鎧から生じた水の膜で防ぐ間に背後にいたヘルミオスとリオンが武器で襲い掛かろうとする。

『甘いわ! そのつまらぬ水ごと灰にしてくれる! 炎殺周破(ダークネスラウンド) !!』

全長10メートルのオルドーが自らの身長と同じくらいの大剣を漆黒の炎で包み込ませた。

さらに背面から回転するように斬撃を浴びせる。

『ぐふ!?』

「うわ!?」

オルドーのスキル「炎殺周破」が神A「蓋世天錫」で迫るリオンの横腹を切りつけ、そのまま隣にいたヘルミオスごと回転するように巻き込んで吹き飛ばす。

見た目どおり脳筋スタイルのオルドーは、背後の憂いを力業で解消して勢いそのままに、後衛への進行を阻むイグノマスに再度迫る。

『消し炭になれ!!』

「うおおおおおおおおおお! 神技発動(アルティメット・マスター・ランス) ! 秘奥義水原!!」

『む! 我の攻撃が!?』

両手に三又の槍で神器カリプソンを握り締めたイグノマスが一歩も引かず、リオンとヘルミオスを吹き飛ばしたオルドーのスキルに神技「水原」を発動した。

無数の突きで応戦するイグノマスの攻撃に、オルドーが違和感を覚えた時には、漆黒の炎がかき消えていく。

イグノマスは槍神ガンダルグから奥義と秘奥義を授かっていた。

【イグノマスのスキル・奥義・秘奥義の簡易説明一覧】

・魚帝爆縮破:強力な一突き。単体攻撃からの追加全体攻撃。一突きした槍の先端に向けて全ての敵が、深海の潜水艦が一点に集中するような爆縮効果を生み引き寄せ捻り潰す

敵の攻撃を1回キャンセル。クールタイム1日

・奥義雷魚:長距離からの槍の一撃。自動追尾で攻撃が対象に当たると爆散する。クールタイム1時間

・秘奥義水原:多連撃により、敵の攻撃を無効にして自らの槍斬撃を浴びせる。発動がかなり速い。クールタイム1日

全ての炎を消しきっても追撃でオルドーに向かって槍を振るう。

対象と攻撃を打ち合った場合、秘奥義「水原」は対象の攻撃を相殺する。

さらに、こちらの攻撃の威力が多かった場合、さらなるダメージを相手に与えることができる。

「うおおおおおおおおおおおお! ここは通さぬ!!」

キンキン

リオンとヘルミオスを吹き飛ばして威力が多少減退したオルドーのスキル「炎殺周破」とイグノマスの神技である秘奥義「水原」は、ほぼほぼ威力が同じだったようだ。

『ふん、雑魚のくせに! 我にこのスキルを使わせるか! 神切剣(インフェルノブレード) !!』

追撃のダメージを負わなかったオルドーの全身から大剣に魔力が集まっていく。

大剣は闇に包まれ、天に向かって伸びていくと、オルドーはそのままイグノマスに向けて斬撃を浴びせようとする。

これはオルドーの大技で、神器ワタツミの防御に魔力を、秘奥義「水原」に霊力を大量に消費したイグノマスの身の守りでは絶対に助からない。

さらに、山を割き、海を割り、巨大要塞を粉砕する威力のあるスキル「神切剣」は、イグノマスが守ろうとする背後の後衛たちごと消し飛びかねない。

『いかん!!』

吹き飛ばされた先で立ち上がったリオンは加勢に向かおうとするが、まだ、オルドーに迫るまで何秒もかかりそうだ。

「ロゼッタ! 今だ!!」

ヘルミオスもリオンと同じく立ち上がり、オルドーに迫るのだが、このタイミングを待っていたかのようにロゼッタに合図を送る。

イグノマスの背後にドベルグとシルビアがいる。

そのドベルグを盾にするように待機していたロゼッタが躍り出た。

「分かっているわ。準備はバッチリよ! 強奪手(ローバーハンズ) !!」

既に全員の魔力が巡り陽炎のように揺れる中、大声でスキル名を叫ぶ。

ロゼッタの右手に向かってオルドーの貯めた魔力がスキルごと光の玉となって離脱し始めた。

『ぬ!? わ、我のスキルを? 馬鹿め、貴様ごとき人族などに!!』

ブチブチッ

見た目の通り力ずくで離れ始めたスキルと魔力をオルドーが引き戻し始める。

ロゼッタの伸ばした手のひらや手首の血管を流れる血液が弾け始める。

「も、持たないわよ!? 早く!! ぐぐっ……」

右腕が自らの手で真っ赤に染まるがそれでもロゼッタはエクストラスキル「強奪手」の発動を止めようとしない。

本来であれば、スキルを強奪することができる。

かつて、上位魔神に匹敵するS級ダンジョンの最下層ボスのスキルすら盗んだことがある。

だが魔神王にして、六大魔天の長であり、魔王軍総司令オルドーに対して、右腕を負傷してもスキルの発動を数秒間しかできない。

だが、この数秒でヘルミオスたちの攻撃を展開するには十分な時間であった。

自らのスキルと魔力が拘束され、正面にいるイグノマスは一歩も前に進ませぬと息巻いている。

ここまでの一連のヘルミオスたちの行動が、次の一手を封鎖するための行動であったことに気付き、オルドーはさらに硬直時間が長くなってしまう。

『む!? 貴様ら……』

『ハッ!! 天誅殺!!』

背後からの足元を狙った攻撃によりオルドーは体勢を崩し、両膝を床石に叩きつけた。

「 神切剣(ホーリーソード) !!」

背後からオルドーの心臓目掛けてヘルミオスが神器オハバリをまっすぐ突き出して突っ込んでいく。

ブッシャッ

背筋を断ち、心臓を割くように神器オハバリを差し込んだ。

オルドーはヘルミオスが突き刺した衝撃で上半身が前屈みに倒れ込んでいる。

タンッ

イグノマスの背後にいたドベルグが、イグノマスの肩を蹴り上げ、宙に舞い前屈みになったオルドーの首を上から切りつけた。

「うおおおお! 破甲剣(ガードブレイク) !!」

ザンッ

ゴトッ

「やったわ!!」

ドベルグの相手の耐久力、耐性を無視するエクストラスキル「破甲剣」によって、ロゼッタが目の前でオルドーの首がゆっくりと断面が正面に見える形で切り落とされる様を見て、歓喜の声を響かせる。

「もう、ロゼッタ。まだ生きているかもしれないから近付かないで」

「何言っているの。首を切り落したんだから、倒したに決まっているじゃない」

首から上を失い大剣を手元の真下に落としたオルドーが力なく前屈みに膝を追って座り込んだ。

これを見て仲間たちの誰もが勝利を確信するが、ヘルミオスはかつてアレンと戦った時、魔神レーゼルの復活を見逃したことがある。

「鑑定っと」

・ヘルミオスのスキル「鑑定」の効果

【名 前】オルドー

【年 齢】2180000

【種 別】魔神王

【レベル】??????

【体 力】??????

【魔 力】??????

【攻撃力】??????

【耐久力】??????

【素早さ】??????

【知 力】??????

【幸 運】??????

【スキル】??????

※エクストラモードになって、魔神王であっても名前、年齢、種別の鑑定可能

レベルの桁数、ステータス値の桁数まで鑑定可能。スキル数は鑑定不可

ブンッ

50センチメートル四方の半透明な「仮想窓」がヘルミオスの前に現れ、オルドーの鑑定結果を表示する。

この「仮想窓」はヘルミオスの職業「英雄王」に付随する能力で、アレンの職業「召喚士」の「魔導書」に当たり、メルスが第一天使であったころに設定し与えたものだ。

「どう?」

パーティー全員が魔導書を見ることができるのだが仮想窓はそうではない。

「いや、鑑定が発動するから。まだ死んでいないかな。皆も注意してね……」

人や魔獣などの対象しか鑑定できず、石ころや壁などはスキルが発動しない。

この効果を応用して鑑定内容が分からなくても死んでなければ鑑定できると判断できる。

過去の反省を鑑み、ヘルミオスは武器を手に取り警戒しながらスキル「鑑定」を使用し続ける。

「ロゼッタ、ひどい怪我です」

「イグノマスさん、大丈夫でしょうか。オールヒール!」

オルドーが首からドバドバと紫の血を流す中、グレタとイングリッサの2人の回復役が今回のケガを負った皆の回復を進め、体勢の立て直しを図る。

右腕の血管が弾けたロゼッタと、命懸けで後衛を守り、盾役をこなしたイグノマスの怪我を癒す。

「……済まない。盾は私の役目なのに」

イグノマスの背後にいた、ヘルミオスのパーティー内でタンク役の騎士帝ベスターが謝罪する。

今回の作戦で、パーティーのチーム内に入ってきたイグノマスがエクストラモードであり、神技による相手の攻撃の相殺、神器ワタツミの強力な防具がある。

「ふん、俺が盾役に優れていたというだけだ。気に病むことではない」

イグノマスは神器ワタツミでも防げなかったダメージを回復してもらいながら、背後に顔を向けず神器カリプソンを握り締め、謝罪を受け入れた。

この一瞬和んだ状況に床石に転がった血反吐を垂らすオルドーの口が動く

『ほう、なるほど。我の首が切り落とされたか。下等な存在の分際で良い連携だ』

「な!? やはりまだ!!」

オルドーは首を切り落とされても死んではいなかったのであった。