軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第835話 チームヘルミオス②宝物庫

ヘルミオスたちが門番していた2体の上位魔神たちが「宝物庫」と呼んでいた扉の前にやってきた。

リオンが力づくで押したり引いたりするのだが、ピクリともしない。

『やれやれ、これは開きそうにないの……』

リオンが錫杖を大きく振り上げようとしたところでロゼッタが待ったをかける。

「ちょっと、乱暴ね。こういうのは適切に扉を開けないと宝物が壊れるものもあるのよ! 私が開けるから待って!!」

追いついたロゼッタがそこを退くように言うと、リオンは素直に扉の端へと移動した。

怪盗としてダンジョンだけでなく王侯貴族の宝物庫にも忍び込んだことのあるロゼッタは、宝物庫の支配人が魔導具で細工し、扉を適切な開錠をせずに侵入すると宝物を失うような罠があったこともあった。

貴重な宝は金銀財宝に限らず、支配人が秘匿にしたいアイテムなどもあり、適切な入場を求められることをロゼッタは経験で知っている。

「2階層に上がるときの扉と違うわね……。開くかしら。 開錠(アンロック) !!」

カッ

ギギギッ

仲間たちが背後で見つめる中、ロゼッタが魔力を手にひらに込め、施錠された扉に向かって送ると、宝玉がキラリと反応しゆっくりと観音開きで開いていく。

「ひひひ、何よ、ちゃんと空いたじゃない。何かしら。空の魔導袋に余裕を持たせて良かったわよ。ついているわね」

既に足音を消して怪盗モードに入ったロゼッタが涎を垂らしニヤニヤしながら我先にするりと扉の中に入ろうとする。

「ちょっとロゼッタ、危ないよ。罠かもしれないから」

扉の正面に立っていたロゼッタが扉を開け、かつて怪盗団を率いていた習性からか興奮するように扉の中へと入っていく。

ヘルミオスが慌てて後をつけて中に入るとロゼッタが立ち止まっていた。

危ないことを注意しようとするヘルミオスの視線にもロゼッタと同じ光景が広がる。

「お宝よ! やったわ!!」

そこには金銀の財宝、宝飾、武器や防具などが飾られた。

中には古めかしい地図、骨とう品まである。

ヘルミオスたちは魔王城の2階層の大迷宮の中で広間に綺麗に飾られた魔王城の宝物庫に辿り着いた。

柱の間にあって、種類ごとに整理された宝物の数々をゆっくりと見渡す。

「魔王軍が魔王のために集めた宝物なのかな……。ギアムート帝国でもこんなにないよ。すごい量だ」

ヘルミオスはとてつもない量の宝物の数々に息を飲む。

その中の骨とう品の展示コーナーでイグノマスがある本が額縁の中に立てかけて飾られていることに気付き近寄っていく。

「む? プ……プロスティア帝国物語の原版ではないか! なんでこんなところに……。本物だ!」

両手で大事に抱えた古くて分厚い羊皮紙のハードカバーの本を手に取る。

「それって確か、プロスティア帝国で動乱の中で紛失したものだよね」

聖魚マクリスが近衛騎士団長で将軍のイグノマスが起こした内乱によって、宮殿内の財宝が随分荒らされることになった。

これはイグノマスとその配下が周辺の王侯貴族や軍を懐柔するために荒らしたのだが、その後、動乱が静まってもプロスティア帝国物語の原版が見つかることはなかった。

イグノマスは盗んでおらずどこかにいってしまったと、内乱の前からプロスティア帝国物語の原版がないと女帝ラプソニルに申し開きをしているのだが、荒らしておいて調子が良いと信じてもらえなかった。

プロスティア皇家のマクリス皇子が水の神アクアと契約を交わしたことは、帝国を治め、魚人たちを統べるための正当性を示す貴重な帝国の宝だ。

皇帝を目指していたイグノマスが知らないはずがないと尋問は長きにわたって行われたらしい。

それでも見つからなかったので、現在もプロスティア帝国の王侯貴族、商人、属国や属州に至るまで速やかに返還を求めている。

さらに5大陸同盟会議に参加した際にも、動乱の折りに失ったプロスティア帝国物語が地上にないか探索を各国の代表に求めていた。

「とうとう見つけたぞ! 随分疑われたが宝物庫を荒らしたのは事実だからな。これは魔王の首と共に我が必ずラプソニル女帝陛下に渡すぞ! 土産が増えたな!!」

イグノマスは貴重な戦果であるプロスティア帝国物語の原版を、いそいそと自らの魔導袋に納めた。

魔王の首とセットで、この原版があれば、プロスティア帝国に堂々と帰ることができると笑みが零れる。

「そうか。魔王軍はこの物語の内容を見て、邪神の尾の復活をたくらんだのか」

ふむふむとヘルミオスが納得し、理解が仲間に広がる中、1人だけ不満そうになる者がいる。

「ちょっと、そんな金にならないものなんてどうでもいいでしょ。 宝物探検(トレジャーハント) 、この広間で一番高価なお宝の場所に案内しなさいよ!!」

クイクイッ

正面の頭上斜め上に浮くロゼッタのスキル「宝物探検」の魔力の手が、指示に従って人差し指を広間の奥へと指し示す。

「ぐふふ、一番のお宝はあっちね」

「もう、だから罠があるかもしれないから勝手に行かない」

小躍りするように広間の奥へと向かうロゼッタをヘルミオスたちが後を追う。

「おっ宝、おっ宝~♪ こっちかしらって、石像? え?」

柱を回り込んだ先にあったのは1体の石像だった。

全長10メートルくらいの頭を丸めた筋肉隆々の髭を蓄えた老齢な男が棒のようなものを振り上げたポーズに掘られている。

筋肉をリアルに掘られた石像にロゼッタは一瞬固まってしまう。

この世界には石でできた魔獣もおり、ただの石像のふりをして近付いた者たちに襲い掛かったりすることもあり、ヘルミオスたちに一気に緊張が走り、ロゼッタの前に躍り出る。

「鑑定……結果は出ないと。ただの石像のようだ。え? この帯は……」

スキル「鑑定」を使い、敵かただの石像か確認する。

ヘルミオスのスキル「鑑定」は神々など一部の対象を除いて敵のステータスなどを鑑定できる。

なお、鑑定できなくても「???」と表示されるのでただの石像か見分けがつく。

「いや、ただの石像だ。真っ黒なバンドを飾っているのか。あれ? このバンドに見覚えが……、て!?」

この巨大な石像はどうやら黒く刺々しい腰帯を飾るためのもののようだ。

その腰帯を装備していた敵の姿を思い出そうとした時だ。

シュルシュル

腰帯が解け、石像から離れるとこちらに向かってくる。

鑑定不可の状態からいきなり襲い掛かられた経験がないのか、虚を突かれたヘルミオスが一瞬、迎撃態勢が遅れてしまった。

『む?』

まっすぐリオンに向かってやってくる漆黒の腰帯に、錫杖は十分に間に合うだけのステータスはあった。

だが、向かってくる漆黒の腰帯に何もすることもなく胸元へと迎え入れた

ブワッ

茨を編んだような漆黒の腰帯は何かに反応したのか、胸元でさらに広がる。

「ちょっと、何してんのよ! 襲われているわよ!!」

漆黒の腰帯に襲われるリオンが攻撃の意思を示さないことに理解できないと驚愕するが、既にリオンの胸から背中までぐるりと包み込まれてしまっている。

『……何だか懐かしい気配がするの。記憶にはないが、見覚えがあるのか……。よしよし』

仲間たちの不安と驚きの視線を集めるリオンは対照的に穏やかな目をしていた。

法の神アクシリオンの心臓のみで召喚獣になったリオンはかつて、この腰帯を見聞きした記憶がうっすらあるようだ。

「これはバスクが巻いていた 腰帯(バンド) だね。宝物庫に帰ってきたってことかな。それにしてもリオンの召喚獣になる前と何等かの関係があるのかな……。法の神に仕えていたものかな?」

メキメキッ

「うわ!?」

急に漆黒の腰帯はトゲを伸ばし荒々しくなり、この状況を整理していたヘルミオスが後ろに飛び退いた。

『これこれ仕えてなどおらぬよな。そう怒らないでくれ。……何か言葉を間違えて、これの作り主らしき者にしばかれていた記憶があるの。思い出せぬがきっと儂にとって悲しい記憶だ。お前たちも余計な事は言うでないぞ』

ヘルミオスの言う「仕えている」という言葉に漆黒の腰帯が怒りを見せたが、刺々しくても構わず優しく手のひらで叩いてあげると、荒々しさはなくなり落ち着いてく。

シュルシュル

結局、リオンの胸の辺りまで広がっていた漆黒の腰帯は腰の辺りにまとまっていく。

『どうやら一緒に装着していきたいようだの』

「訳が分かんないわよ……。意識のある 腰帯(バンド) なんて不思議よね」

「でも、これで召喚獣の身の守りが良くなったから宝物庫にきた甲斐があったね。これもロゼッタのおかげだよ」

「うむ、俺も原版を取り返すことができたぞ」

『何だか耐久力を上がった気はしないの。召喚獣は特別な武具しか装備できないぞ』

召喚獣のリオンは腰帯を巻いても装備の効果は得られた気はしないらしい。

召喚獣が装備品や魔法具は基本的に装備できず、神Aの錫杖など、リオンであれば神系統のみだ。

「さらに訳が分かんないわよ」

「まあまあ、ロゼッタ。せっかくリオンが気に入っているみたいだし、この宝物庫で一番の貴重な装備のようだ。これはそのまま持っていこう。同じように貴重な場所とか見つからないかな?」

ロゼッタのスキル「宝物探検」の効果はこの宝物庫の一番の宝を見つけたことで終わっている。

再度、スキル「宝物探検」を掛け直して、別にこの迷宮を攻略するヒントになる貴重なアイテムのある場所を探してほしいとロゼッタに言う。

「調子がいいわね。まあ、いいわよ。 宝物探検(トレジャーハント) !!」

カッ

クイクイッ

ロゼッタがスキル「宝物探検」を掛け直すと魔力の手が頭上に現れ、この宝物庫の出入り口を指し示す。

「あら? まだ、この魔王城のお宝があるみたいだわ」

「よし、気を付けていこう!!」

「って、この宝物庫の中じゃないじゃない。ちょっとまって!?」

「先を急いでいるんだ。ここに来るのは後にしよう。ね?」

「本当でしょうね! 絶対よ!!」

ロゼッタが新たな宝物の在処を指し示す魔力の手の先へとヘルミオスたちを先導する。

誰もいなくなり静かになった宝物庫で石造の足元に魔法陣が現れる。

パアッ

『……おや、今回はバレずに済んだね。全く大事な宝物庫に何の用があるんだか』

ヘルミオスたちが宝物庫から出て行った後、キュベルがわざとらしく警戒しながら転移して現れるのであった。