作品タイトル不明
第830話 チームアレン⑤ブレマンダ戦(3)
ドライゼンとケンタガスの受けたダメージをバロンカロンが回復してしまった。
(さすがに複数で構成のパーティーだと役割があるのか。背後に控える回復役を先に叩かないといけないな。これはえっと……)
戦術を練るアレンの頭の中で後方に控えるバロンカロンへの攻撃の優先順位が上がる。
だが、アレンたちの視線の細かい動きや表情をブレマンダは見ていた
『おっと、貴重な回復役のバロンカロンが倒されそうですね。障壁展開!!』
ブウウウン
ブレマンダの前面を覆う5枚の「無限障壁」の1枚がバロンカロンの正面に現れた。
透明度の高い5枚あったブレマンダの障壁は4枚になった。
(ほう? 回復役は率先して守るか。障壁の枚数は4枚から数が増えないな。自らは4枚での守りが十分だということか? まあ、神技で1枚割れる程度だし)
アレンの言葉を発しようとしたところで、ソフィーが気を利かせて口を開いた。
「精霊王コンズ様、強敵ですのでご助力お願いします!!」
「ポンズの出番だ。一緒にボコボコにするぜ!!」
『契約に基づき成すべきことを成しましょうコン』
『出番だポンね』
ソフィーとルークはこの場にそれぞれ10体の精霊王、大精霊、精霊、幼精霊たちを顕現させている。
精霊や大精霊は4体ずつだが、幼精霊と精霊王は1体ずつだ。
一緒にやってきた精霊神ローゼンと精霊神ファーブルと違い、コンズとポンズはソフィーとルークがこれまでの幼精霊、精霊、大精霊たちと同様に契約を交わして顕現させている。
本来は星5つの才能の精霊使いであるソフィーとルークは大精霊までしか契約できない。
しかし、精霊の園やシャンダール天空国での働きの報酬として、短い期間での契約だが、フルで一緒に戦う旨の契約をアレンが大精霊神イースレイと勝ち取った。
神界のシャンダール天空国を魔王軍の襲来から天使を産むことができる神界人を守ったことは、神々にとって報酬を請求できてもおかしくないほどの貢献であった。
『はは。ここで立ち止まるわけにはいかないね』
『そうさね。あたいらは世界を救わねばならない』
精霊神のローゼンとファーブルは神技の使用などで一時的に力を貸す立場なので、今の状況でも直接的に戦闘に参加せず見守るようだ。
ここまでの道中、初めて出会った精霊神ローゼンが精霊王だった時と同じく、精霊王コンズと精霊王ポンズはキツネやタヌキ相応の大きさしかない。
周囲に火の玉を無数に浮かせふわふわと浮くキツネのコンズ、地面をスタスタ歩く2足歩行でデカイ腹のポンズが、それぞれが契約したソフィーとルークに返事すると最前面にぴょんと躍り出た。
『む? お前らは……』
精霊たちの中から最前に出てきた2体の精霊王を見たドライゼンが強く反応する。
『竜王にもなれず、審判の門も挑戦できず、魔王にへつらい闇に染まり、それでも何者にもなれなかったなれの果てを始末するコンね』
『こ、殺す!! 絶対に殺す!!』
(お? 俺でも言わないえげつないこといっているね。おかげで敵4体のうち1体の攻撃の対象が絞れて助かる)
憎悪に顔が歪むドライゼンは審判の門を越え、自らが竜王になりたかった過去があるのだが、それだけに神器を持ち亜神である精霊王たちは許せない存在のようだ。
ボオッ
コンズの周囲を火の玉が赤から青に色が変わっていき超高熱になるとメキメキと全長が30メートルほどの大きさになっていく。
可愛げのある大きさだったのが凶悪な犬歯が伸びた9つの尾を持つキツネへと姿を変える。
「ううっ……」
本来の姿になるためにソフィーの膨大な魔力を吸っていく。
全ての魔力を吸ったら、霊力を吸い、それでも足りなければ体力の一部を吸って戦闘モードの本来の姿を露わにする。
「ソフィアローネ様!?」
一瞬、立ち眩みのしたソフィーを側にいるフォルマールが支える。
「大丈夫か? ソフィー」
「問題ありませんわ、戦いに集中しましょう。フォルマールもです!」
アレンはキールに改めて念を押すことにする。
「ソフィーとルークの体力は切らさないようにしろ。見た目以上に体力を削られるからな」
(って、ん? これは力を溜めているのか)
首を上げてブレスを吐く姿勢を取っているのだが、すぐに吐き出さない。
先ほどの2倍近い威力のブレスをドライゼンは吐こうとしているようだ。
「おいおい、すごいのが来るぞ!!」
『この力……。これは厳しいかもしれぬ』
ソフィーの心配など知らないと言わないばかりに、ドライゼンは膨大な魔力を練り口元から漆黒の炎が溢れていく。
あまりの迫力とムートンは全体を守り切れないと絶句する。
『消え失せよ! グルオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
『コンコンコンッ』
漆黒の炎のブレスが向かってくると、コンズは周囲に飛ぶ無数の火の玉をドライゼンに目掛けて飛ばす。
1つ2つと火の玉が漆黒の炎に飲まれるが、コンズの火の玉はブレスを超える威力を出す。
『グハッ!? 我の炎が!!』
ブレスを切り裂き穴を空ける勢いで火の玉はドライゼンに向かっていき、再度、全身を焦がし吹き飛ばしてしまった。
「オールヒール!?」
「あ、ありがとうございます」
コンズによってドライゼンのブレスが届かない状況であったが、ソフィーを速やかに捉えてキールが回復魔法をかけて体力を全快にする。
吹き飛ばされたドライゼンの空間を埋めるように、ケンタガスが突っ込んでくる。
『今度はおいらの役目だポンね。ポンポン、ポンッ』
メキメキッ
可愛いタヌキの姿をしたポンズの内側から筋肉が躍動していく。
ポンズは戦闘モードになるべく、全長10メートル、二足歩行の肩幅も腕の野太い逆三角形の真の姿に変えた。
両肩から腕にかけての剛腕とは裏腹に、ビール腹もびっくりなふっくらしたお腹が特徴だ。
『ぐへら!?』
舌を出し焦点の定まらないケンタガスが跳躍した後、バロンカロンによって先ほどよりも強化された大斧の斬撃をポンズの腹目掛けて突っ込んでくる。
ズン
全体重をかけられ、ケンタガスの大斧が深くポンズの腹に切り込まれていく。
「おい、ポンズ!! 大丈夫か!?」
戦闘モードに変わったポンズに全魔力、全霊力、体力の一部を吸われ立ち眩みのするルークは、攻撃をもろに受けてしまってポンズを心配する。
『大丈夫ポンね。斬撃の類は利かないポンよ。フンッ!!』
ボヨン
『……』
ポンズが腹を突き出すと、無言のケンタガスは吹き飛ばされる。
さらに、メキメキと両足の太ももとふくらはぎの筋肉を肥大させたかと思うと、ガッと床石を粉砕して跳躍し、両手の手を頭上で握りしめ周囲をガチガチの岩で覆った。
『行くポンよ!』
『ぐらば!?』
襲い掛かるポンズに合わせるようにケンタガスは、全身を仰け反らせて大斧が背後の床石に着くほど振りかぶると、全力で振り上げる。
ガキイイイイインッ
ケンタガスが膨張し過ぎて血管が弾けるほどの筋肉を強張らせ振り上げた大斧とポンズの両手を覆う岩玉がぶつかると、衝撃波と共に金属音があたり一帯に響き渡る。
ポンズの両手を覆う岩はケンタガスの全力の大斧を受けて砕けてしまう。
ピシッ
だが、ケンタガスの大斧はポンズの両手の岩によって亀裂が入ったかと思ったら一気に広がっていく。
ポンズは岩で覆う両手を振り下ろし、そのままケンタガスの脳天から肉体を捻り潰し、筋肉隆々の上半身が爆散させる。
『む? また湧いてくるポンね』
「ぽ、ポンズ。一端戻ってきてくれ……」
今度はルークが意識朦朧としながらお願いする。
『おやおや、やられてしまいましたね。監獄解放!!』
『げぱらは!?』
パアッ
【名 前】リンブルラ
【年 齢】30
【種 族】究極兵器体ゾンビ
【体 力】190000
【魔 力】100000
【攻撃力】220000
【耐久力】100000
【素早さ】230000
【知 力】100000
【幸 運】0
【攻撃属性】無属性、回避率上昇
【耐久属性】魔法耐性(強)、状態異常耐性(強)
ケンタガスがポンズに倒されブレマンダの足元にある魔法陣が1つ消えた。
ブレマンダはすかさず「監獄解放」発動し新たに1つの魔法陣を作り出す。
2足歩行の魔神になれ果てたゾンビ体のようで、両手にナックルをはめている。
内臓が飛び出ているが、細い足首と腹回り、太ももと肩から腕が溢れる筋肉で太くなっている。
明らかにスピード重視のパワーファイター系の敵のようだ。
「よし、1体か。やはり、維持できる数に限るがある訳か。そして減った分だけいくらでも呼び出せると考えておいた方がいいな」
(前世でも画面の範囲内まで雑魚を呼び出すボスがいたな)
アレンが前世で健一だったころやり込んだゲームの中で、常に最大2体くらいの配下を呼びだし続けるボスがいたことを思い出す。
「また出てきた!!」
『そうですね、クレナさん。せっかく1体倒したのに、新たに1体出てきましたね。これは長期戦になりそうです』
ハッとするクレナに耳元で叫ばれ、ファルネメスが状況を分析する。
「オールヒール!」
「ありがと、キール」
「おい、アレン。ソフィーもルークもふらふらじゃねえか! こんな戦い方だと持たないぞ!!」
「たしかにな。お前たちの負担や分かれた皆のことを考えたら長期戦はまずいな」
亜神の力を持つ精霊王ポンズとコンズは戦力になるのだが、ソフィーとルークの負担が大きすぎる。
(大精霊だけでも魔力を膨大に消費するのに。契約を交わした精霊王の実害がすぐに出てきたな。キールをこっちに呼んで正解だったな。やっぱりソフィーとルークは体力削りまくりになったし)
精霊の力を行使するためには精霊使いの魔力を消費する。
神界に行き、霊力を獲得したソフィーやルークなら霊力も消費する。
さらに力を行使したいなら体力も消費することになる。
またS級ダンジョン攻略していた頃、精霊使いとして経験の浅かったソフィーは幼精霊が暴走し、気を失うほどの体力を奪われたのは1度や2度ではない。
「アレンよ、分かっているな。精霊使いは体力の全てを失うと死ぬんだぞ!」
終わりなき戦いにキールが思わず声を荒げたのであった。