軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第828話 チームアレン③ブレマンダ戦(1)

奥行きも幅も1キロメートルはある大広間の奥に、1階層でキュベルの側にいた、1体の魔神王がいる。

漆黒のコートを羽織り、腰にはジャラジャラと束ねた鎖が垂れている。

側には幾何学的な魔法陣から光の頭上に向けて伸びている。

『おや、どうしたのですか。私が怖いのでしょうか? どうぞ、こちらにお越しください』

ブレマンダは挑発するようにこっちにこいと言うが、たしかにこのまま立ち尽くしていてもしょうがない。

この一瞬の沈黙のあと、クレナの視線に視線を送らず肩に乗せた鳥Fの召喚獣越しに全員に話しかける。

『……どうやら絡め手が得意なタイプの敵のようだ。油断するな。クレナとフォルマールは俺の合図で「速攻で」攻撃できるようにしておいてくれ。罠かもしれないがこのまま進むぞ』

「……」

「……」

無言で答えた仲間たちと共に前へ進んでいく。

地上に残した仲間たちは熾烈な戦いをしているし、魔王城に分かれたパーティーの状況が分からない。

(さて、向こうのペースに飲まれるわけにはいかないな。集団の分断を図って3チームに分けたのも、予定してあることだし。この場所に誘い込むのも作戦の1つか。だが1体で俺たちと相手しようと言うのか? 表情から見ても随分余裕だな……。何か罠か作戦があるとみて良いか)

「クレナ、1人で一気に突っ込むなよ」

完全な無言だと敵に悟らせるものがあるかもしれない今度はあえて言葉に出して進む。

この広間は広すぎるからもっと距離を詰めて、できれば戦闘を長引かせず一気に倒したい。

ここに来るまでに随分時間を使ってしまった。

「罠かもしれないね!! ファルちゃんも皆と攻撃を合わせないとだめだよ」

『ええ、分かりました』

「ホーク、辺りに変なものがないか確認してくれ」

『ピイッ!!』

(ブレマンダの横にあるのは結界の魔法陣か。半透明の中にキューブ状の物体っぽいのがあるな。何かの起動装置か。ルプト、魔王へ通じる鍵、魔王城を隠す結界の中なら結界が怪しいか)

アレンたちが中央まで足を進めたところで、ブレマンダが口を開いた。

『そこまでです。私の攻撃陣形に入っていただいてありがとうございます』

(ここで攻撃範囲ギリギリだが止まれか。まだ300メートル近く離れているぞ。やはり近接戦闘が得意ではない感じか? だが、これ以上接近されると対処できない恐れがあると?)

「誰だ、お前。初めて見るな。これまでコソコソと魔王城の中で隠れた奴か?」

プロスティア帝国でも神界でも魔王軍の侵攻した際にいなかったとアレンは言う。

『おっと、そうでした。人類のために戦う英雄たちに対して大変失礼でしたね。私はブレマンダと言います。キュベル様のお目にかかり魔王城内で監獄長をやらせていただいております』

「監獄長だと? じゃあ、お前の側にあるよく分からない結界の中にルプトはいるのか?」

鳥Eの召喚獣の特技「鷹の目」でルプトはいないのは分かっているが惚けて尋ねる。

『いえいえ。こちらにあるのは魔王軍の場所を隠す魔法陣を覆う結界ですよ。もちろん、皆さんが苦労して探し当てた道のりも私の魔法である「無限迷宮」の効果です。楽しんでいただけましたか?』

(監獄長ってことはルプトを捉えるのもこいつの役目か。こいつの役割は魔王城内特化か? 確実にここで倒すぞ)

「あの者を倒して、手元の魔法陣を破壊する。これで地上で戦うメルルたちとの連携ができるようになるということでしょうか」

「……恐らくな、ソフィー。だが、今はこいつを倒すことだけを考えよう。皆、罠がまだあるかもしれない。気をつけろよ。俺たちが誘い込まれことに変わりはないんだからな」

魔王軍もアレンたちと同様にいかにして自分らを倒すか考えてきたはずだ。

この広間に誘い込まれたということは、それだけ、この広間は彼らにとって優位な空間のはずだ。

(今17時くらいか。ソフィーが精霊神の祝福をかけて7時間が経過と。大地の迷宮攻略時よりもさらにバフの持続時間が長くなっているからな)

大地の迷宮攻略時、ソフィーの神技「精霊神の祝福」は6時間ほどの効果の時間を誇ったが、ロザリナのスキル「風花雪月」や自らの加護による魔力および霊力増強によって、今はその倍の12時間以上だ。

魔王軍との戦いが深夜を跨がない限り持続時間の心配をする必要がないほどの持続時間となった。

神技「精霊神の祝福」だけではなく効果が1時間固定の神技や覚醒スキルとかでなければ心配しなくても良い。

効果が切れることよりも、クールタイムの効果もある神技「精霊神の祝福」をどのタイミングで発動するかが肝になると考える。

アレンは剣を構え、背後のグラハンに声をかけた。

「グラハン、憑依だ」

『うむ!! 戦いの時だな!!』

持続時間が1時間固定でロザリナのスキルとルークの時の大精霊の効果によって、効果が3・8時間になった覚醒スキル「憑依」を発動する。

(虫系統の枠は既に向こうに取られているからな。今のステータスで倒すぞ)

アレンに霊体の体に変わっていくグラハンの体が取り込まれていく。

ここに来るために使った虫Aの召喚獣たちは一端削除され、さらに厳しくなったアレン軍たちの応援のため、全てメルスに再召喚されている。

「いくぞ!! うらあああああ!!」

(くらえ、魔球1号! これで俺はメジャーデビューする!!)

『ふえ!?』

アレンは自らの剣をブレマンダの顔面目掛けて時速1000キロメートルを超える速度で投げた。

ブレマンダが間の伸びた声を共に一瞬虚を突かれる。

『今だ!!』

だが、まだまだ、アレンンとブレマンダまで距離は300メートル以上ある。

攻撃力がバフによって音速に達する速度で移動できるアレンにとって2秒と掛からない距離だ。

床石にヒビがあるほど踏みつけ投擲した結果、たった1秒でも、アレンに意識が向かうことを期待する。

だが、もっと速いクレナとフォルマールがアレンの肩に留まる鳥Fの召喚獣の声に反応して魔力を消費する。

「 神技開放(アルティメット・ソード・マスター) ! 超突撃!!」

アレンと共に最前列で陣形を組んでいたクレナがフォルメネスに跨った状態の時に発動できる神技「超突撃」を発動した。

クレナたちは一瞬で、全力で投げたアレンの剣を追い抜き、ブレマンダに達する。

『無限障壁!?』

(くそ、間に合わないか)

両手から魔力が練られ、無数の皿状の障壁がブレマンダの正面に現れる。

ガキイイイイイイン

調停神ファルネメスの頭の角が、魔力で寝られた円状の障壁に速度を落とすことなくぶつかった。

ガラスが割れるほどの音と激しい衝撃で透明なガラスのような障壁をバリバリと割っていく。

「神技発動! 疾風迅雷!!」

ガキイイイン

ブレマンダの多重構造の魔法の障壁を2枚破壊し、それでもさらに進もうとするところで、フォルマールの矢が達する。

矢は魔法障壁を1枚破壊したところで矢じりを粉砕し爆散する。

さらにアレンの剣がフォルマールの後にやってくるが、1枚も障壁を破壊できずに弾き飛ばされてしまう。

Sランクの魔石をフォルマールの神技「無限の矢筒」で矢に変えた矢じりは粉砕できても、大地の神によって「物理耐性(極大)」の効果のあるアレンの剣は破壊できなかったようだ。

『私の側から消えなさい!』

「ウワッぷ!?」

『クレナさん!?』

さらに、クレナとファルネメスはそれぞれ障壁から生じた衝撃波によって吹き飛ばされてしまった。

ファルネメスは体をひねり地面を蹴り上げ天井高くまで舞い上がったクレナの下へ助けに行った。

「……」

メキメキ

アレンは無言で今何が起きたのか様子を窺っていた。

たった1秒とか2秒しかない攻撃のやり取りだが分かったこともある。

(あの障壁は5層構造に見えるな。クレナの神技で2枚、フォルマールだと1枚、俺とドゴラの通常攻撃やただのスキルだと1枚も破壊できない。そして秒間1枚の速度でガンガン障壁が回復していくぞ。っていうか2人の最速の攻撃なんだが、間に合わなかったな。発動が早すぎるぞ)

アレンはドゴラが魔王城の1階で攻撃を阻まれた時のことを思い出す。

あの時もドゴラはスキルを使用していたが、1枚も障壁を破壊できずに吹き飛ばされていた。

クレナの神技「超突撃」とフォルマールの神技「疾風迅雷」はパーティー内でも随一の威力と速度を誇る神技だ。

普段の戦いではとっておきとも言える必殺の神技を消費してまで攻撃してみたが全くダメージは与えることは出来なかった。

『おやおや、もう攻撃はおしまいですか? いきなり3枚も破壊されて流石は、キュベル様も一目をおく英雄たちです。いやいや、びっくりしました』

(かなり慎重な性格で無茶もしないと。完全に障壁が回復して余裕出てきたか?)

「……いや、お前を倒す方法を考えていた。どうやらその場を動きたくないようだし。あまり時間を掛けずに倒せそうだ。キュベル様に足元の特別な魔法陣を絶対に守れとか言われたんじゃないのか?」

『ほう、それはどうでしょうね。あなた方を始末するのにどうやらこの場を動かなくても済みそうだとも言えますよ。今の一連の連携は随分とっておきのスキルを使った。残念ながら失敗に終わったようですが、違いますか?』

「なんだと?」

『まさか、結界を貼るだけが私の力だと思わないことです。無限牢獄……解放!!』

ブウウウウン

カッ

アレンたちの前方と後方に合わせて3つの魔法陣が生じて、ゆっくりと全身が頭から浮き上がってくる。

「お、お前は!?」

その中の1体にアレンは見覚えがあった。

『貴様はアレンか! よくも我を倒してくれたな!!』

『……ふっふっふ。いきなりあたりを引いてくれましたね。彼はあなた方に倒された邪竜ドライゼン。元六大魔天の彼もまた、私と同様に魔王様が魔神王にしてくれたのですよ』

巨大な漆黒の竜がアレンたちの前に現れたのであった。