軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第825話 チームシア⑧戦利品と進むべき道

魔剣オヌバが地面から急加速で床石から高さがスレスレを飛び、ドゴラの背中に向かっていく。

『内臓まき散らせ! クソガキが!!』

反り返った刀身の柄部分に近い場所に現れた禍々しいギザギザの歯が生え、真っ赤な舌が伸びた口から憎悪と殺意を込めた念を吐き出す。

『ど、ドゴラ殿!!』

自らの視線を横切ったホバが気付いた時には、既に背中まで何メートルもなかった。

ドゴラがホバの声に耳が入り、反応しようとするが振り向く時間すらなかった。

両肩からバツ字に掛けた2本の神器の大斧の隙間から心臓目掛けて刃の先が今にも届きそうな瞬間だ。

『むん!!』

ガンッ

まるでこういうことが起きることを読んでいたかのように、シアが絶妙なタイミングで拳を刀身に向かって振り下ろした。

音速で接近する刀身よりもシアの神器の拳ははるかに速かった。

『げは!? ク、クソ獣人どもが! ぶっ殺してやる! てめえら全員ズタズタの皆殺しだ!!』

床石に叩きつけられ、汚い言葉を浴びせる魔剣オヌバは空中に再度飛び上がり、刃の先をドゴラに向けてくる。

「悪いな、シア。油断したぜ。てめえらはもう負けたんだよ!!」

詫びるドゴラは既に両肩の神器の大斧を振り上げ魔剣オヌバに向ける。

十英獣たちも武器を手に取り、戦闘態勢に入っている。

「こいよ、てめえの刀身へし折ってやるぜ!!」

『や、野郎……。折れるものなら折ってみろや!!』

魔剣オヌバにとって許されない悪口であったようだ。

漆黒の刀身全体の葉脈のように走る血管を脈打たせ、ドゴラ目掛けて突っ込んできた。

だが、ドゴラの横をシアが音速で通り過ぎ、襲い掛かる魔剣オヌバへと駆け寄る。

「おい、シア!! 俺が……」

自分が倒すと言おうとしたドゴラだが、シアの手元に違和感を覚えた。

シアは何やらジャラジャラとした鎖のようなものを片手に持っていた。

『ほれ』

『そんなもの、叩き切って……。なんだ!? ……ち、力が入らねえ』

シアは両手で鎖をのばし、魔剣オヌバの剣先を受け止める。

これはルプトを捉えていた鎖だ。

鎖が魔剣オヌバに触れると、魔剣オヌバの魔力を吸収したりと力を奪っているのか、バキバキに脈打っていた刀身の血管が明らかに細くなっていく。

『シア様、何をされておられるのだ?』

『さ、さあ……』

シアの行動にホバとハチが呆気に取られ、理解が追い付かないと口ずさむ。

そんな呆気に取られた視線を無視してシアは淡々と魔剣オヌバを鎖でグルグル巻きにした。

とうとう空に浮く力を失い、床石にガチャンを落ちてしまった。

『これはルプトを捉えていた監獄長の野郎の鎖か。獣人め、さっさとこれをほどけ。ぶっ殺すぞ……』

『ほう、やはり、お前にも効果があったようだな。これもおまけだ、貰っておけ』

『な!? や、やめろ!!』

刀身の柄近くにあった禍々しい口を塞ぐように、ルプトの口についていた呪符をペタリと貼り付けた。

とうとう魔剣オヌバは力を完全に失ったのか一切動かなくなり、ただの大剣になってしまった。

「よし、動けなくなったぜ! これで終わりだ!!」

ドゴラは神器カグツチを振るおうとするとシアが止めに入る。

『まて! これはアレンへの戦利品だ。持っていくぞ』

「ああ? 戦利品だと」

魔剣オヌバに叩きつける寸前でドゴラは神器カグツチを止めた。

『そうだ。アレンは石Sの召喚獣になれる素体を探していた。蟲神であったビルディガが虫Sの候補なら元岩山神の魔剣オヌバなら石Sにするに十分だと思うゆえにな』

『……』

魔剣オヌバが落ち着いたところでシアがドゴラや十英獣たちに何をしているのか説明する。

何のことかさっぱり分からないが自らについてシアが語っていることだけは理解できたようだ。

身動きも抵抗もできない魔剣オヌバが無言で睨みながら聞いている。

魔剣オヌバは暗黒神アマンテに仕えた上位神である岩山神だ。

100万年以上前、最上位神である神暗黒神アマンテは魔神オルドーを筆頭に8柱の上位神を配下に仕えさせていた。

この神々は光魔八神将と呼ばれ、創造神エルメアに仕える闘神三姉妹の剣神セスタヴィヌス、武神オフォーリア、戦神ルミネアに匹敵しても引けを取らない神々もいたと言う。

【暗黒神アマンテに仕える光魔八神将たち】

・魔神オルドー

・岩山神オヌバ

・蟲神ビルディガ

・死神クリーパー

・魚神ミンギア

・竜神ゲフィオン

・風神ヴェス

・雷神ソヴィ

魔王の下でバスクの魔剣として使われているのか経緯は分からない。

暗黒神に仕えていた蟲神ビルディガはアレンが虫Sの召喚獣候補であると第一天使ルプトに仕える大天使アウラより知ることができた。

安全に運べるなら魔剣オヌバをアレンの下へ持っていこうとシアは言う。

説明が後半に行くにつれ納得感のある表情に変わったドゴラが背に2本の神器をかけ始めながら呆れて口にする。

「ったく、そんなことを考えて戦っていたのかよ」

既に灰になったバスクを見ながら言う。

シアの話を聞いて、他に装備していた魔法具でも漁った方が良いのかと考えたが、これ以上の戦利品は得られそうにない。

『そう言わないでくれ。こやつは気配がまだあったのだが捉える方法が鎖や呪符しか思いつかなかったのだ。アレンには世話になっているからな』

そそくさと第一天使ルプトを救出したのは、魔剣オヌバがまだ生きており、ルプトを縛る鎖と呪符が必要だったからだったためだ。

「アレンのためか。それならゼウ様もアレンのおかげで獣王になれたとも言えるな」

アレンは、獣王を目指す中で生じたシアとゼウの兄妹のわだかまりを解き、2人の試練に協力してきた。

パーティーメンバーでの活躍もあったのだが、アレンの抜群の知恵と才覚がなければ、獣王がゼウになり、シアは魔王と戦い獣帝王を目指す形でまとまる結果にならなかったと考える。

アレンのしたことを考えれば、その礼を考えるのは当然かとドゴラは納得する。

『あのような奴のことなど知らぬ』

「おいおい、ゼウ様と仲直りしたのではなかったのかよ。これが終わったらちゃんとアルバハル獣王国に帰れや」

『当然だ。ドゴラよ、お前をアルバハル獣王国に紹介せねばならぬからな。母上の故郷であるバリオウ獣王国にもな』

シアが獣王になることを夢見て、命を落とした母の故郷へもドゴラを連れていくと言う。

「おいおい人族の俺が行っていいのかよ」

『当然よ。英雄のドゴラが獣王国に足を踏み入れなくて誰を入れると言うのだ。それにお前は余の……』

談笑するドゴラとシアの間にホバが割って入る。

『シア様、そろそろ動きましょう。あ、それは危ないやもしれませんので我が持ちましょう』

鎖でグルグル巻きになった魔剣オヌバを拾おうとするシアを静止し、ホバがガシリと掴んで腰に括り付ける。

「よし、あとはルプト様だな。って、動けないのか?」

魔剣オヌバの騒動で完全に忘れていたドゴラが振り向いてルプトを見ると、手足を振るわせて立てないでいる。

視線をルプトの側にいるフイに向けると、首を振るって口を開く。

『ルプト様に回復魔法をかけているのだが効果がない。力を奪う何か別の魔法にかけられたのかもしれませんが、ここではそれが何なのか解除までは難しいです』

『いいのです。申し訳ありません。何やら転移できぬよう魔法をかけられたようです。霊力の使用を干渉されているようです』

フイの言葉にふがいない点をルプトが力なく謝罪する。

どうやら転移や移動の得意なルプトの力を奪う何らかの魔法が掛かっており、フイの回復魔法だけでなく、天の恵みや香味野菜なども効果がない。

「キールの破邪の魔法で悪い効果を消せねえといけねえかな。とりあえず、ここから脱出だ」

『ルプト様はここから先がどうなっているのか分かりますか?』

バスクを倒し、魔剣オヌバを手にし、ルプトを救出したシアがこれからの方針のため、10日ほど魔王城に捕らえられていたルプトに城内の様子を窺う。

『申し訳ありません。移動時も力を拘束され、どのようになっているのか正確には……。魔王がいる玉座の間はもっと上の階層だと思うくらいです』

10日間のほとんど外の見えない牢獄に入れられたと言う。

『……そうですか。何か魔王城の攻略のヒントになりそうなことが、思い出したときで良いので教えてください』

『ハチよ。お前がルプト様を運んで差し上げよ』

『そうですね。ささ、どうぞ私がお運びしましょう』

『申し訳ありません。助かります』

十英獣で唯一盾を持つ剣獣帝ハチが背にルプトを抱えてあげる。

『よし、このまま先に進むぞ!』

「お? ズンズン進んで大丈夫なのかよ」

ドゴラは先頭を走りだしたシアに対して、このまま魔王城の攻略を進めるのかと問う。

魔剣オヌバを腰に差すホバも、ルプトを大事に背に抱えるルプトを囲むように十英獣たちもシアの後を追って走り出した。

バスクと戦った大広間は2つの通路で繋がっていた。

どうやら3つに分かれたチームは広間に繋がっており、それを抜けるとここで落ち合うようになっているようだ。

そして、合流地点の壁には3つ目の髑髏が掘られた扉があった。

「上の階層に行けば、魔王がいんのか? 両端はアレンたちや勇者たちはどうなってんだろうな。もう、攻略は終わったんかな」

アレンのパーティー、ヘルミオスのパーティー、そして十英獣の全員は1階層に転移してきた。

3チームに分かれて2階層の攻略を進めて4時間が経過したが、他の2チームの様子が分からない。

『恐らくだがまだ終わっておらぬのではないのか?』

「何で分かんだよ」

『見よ、ドゴラよ。骸骨の目が我らが来た道の中央だけ光っておろう』

「アレンのところも、勇者のところも目が光ってないからまだってわけか」

『そういうことだ』

シアたちが相談していると扉の髑髏にはめられた宝玉がチカチカと光り、機械的な声で語り掛け始めた。

『攻略お疲れ様です。上の階層へ行きますか? ただし、魔王様への続く場所へ至るためには「鍵」が必要です。でなければ3階層からの攻略となります。それとも未攻略の別のルートへ移動しますか?』

『鍵だと? 魔王の間へ通じる鍵のことか』

『そのとおりでございます。魔王の間へ直接行くには「鍵」が必要です』

『このまま我らだけで先行してもしょうがないな。別のチームの攻略がまだなら先に進まぬが道理か』

2チームの状況は分からないが、どちらかのチームが目指すオルドーを倒さないと魔王の間へ行けず、何階層あるか分からないが、3階層からの攻略になるようだ。

シアのチームを除く2チームのうち1つのチームはオルドーを倒していない。

オルドーではない方のチームも既に攻略が済んでいても、オルドーを攻略しないと3階層へは進んでいないと判断できる。

魔王軍総司令オルドーは元光魔八神将で強敵だ。

「よし、他のチームに合流したらよいってことだな!」

シアがほとんど答えを言った状況でようやく理解したドゴラがジャガイモ顔で答えた。

『よし、髑髏の扉よ。我らは未攻略の道へ進ませてくれ』

シアは3つ目髑髏の扉へ2階層の別のチームのルートへ行くと言う。

『分かりました。未攻略の2階層のルートへランダムに転送します』

パアッ

シアたちの足元に魔法陣が現われ、他のチームへ合流するため転移したのであった。