軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第819話 チームシア②白亜の大迷宮(2)

テミの占いが終わり、チームを分けたことによるメンバーの編成によって、シアをチームリーダーに話し合い、隊列を組んで前進を開始した。

ドゴラとシアが最前線を進み、最後尾にはルバンカが壮麗な白亜の大宮殿を駆け抜ける。

魔力による誤認識の魔法がかけられているのか、元々巨大な城なのか、またはその両方なのか。

通路が果てしなくどこまでも続いており、通常の建造物ではありえないほどの広さだ。

前衛の十英獣の2人は左右に分かれて挟み込むように後衛を守るように進む。

カッカッと床石を蹴り上げる音が通路を響いていく。

獣神化したシアが前進するため、神器「神風の靴」で床石を蹴り上げるたびに摩擦熱が生じ、火花が散る。

ドゴラやほかの仲間たちも同様のようだ。

全員がバフを受け、20万、30万に達する素早さを持った隊列はジェット機か戦闘機ほどの速度を持ち、あっという間に最善の道を進み続けている。

途中で通路を左右に進む分岐路が何度もあったのだが、テミのおかげで道を誤ることはない。

魔王城の2階層は大迷宮となっており、長距離の移動を余儀なくされた。

『そこの先に罠らしき嫌な感じだぞ。左に逸れて進め。その先に左に行ける通路を進むのだ』

テミの首元には小さな拡声の魔導具が取り付けられている。

アレンが事前に用意したもので、大地の迷宮時の経験からパーティー内にテミの声を届かせることを想定したものだ。

この隊列は50メートル以上に広がっているため、大声を出さないと聞こえない。

叫ぶ負担を考えてアレン軍の魔導技師団に作ってもらった50メートル、100メートル、200メートルで声の広がりの調整可能なホイッスルタイプの拡声の魔導具を首からぶら下げている。

音速以上の速さで声が広がる仕様のため超高速で移動しても、全員が聞き漏らすことはない。

なお、同じ理由で罠探知に優れたロゼッタも同じものを持っている。

『罠だ! 左に逸れよ!!』

それでもチームリーダーのシアが大声で返事をして、隊列を維持しつつ、左側に逸れて進行を続ける。

「罠とかネチネチしやがって」

バフにより効果は有限な中、ドゴラが眉間にしわを寄せて苛つきを口にする。

「……愚痴を言っても仕方なかろう。我らの動揺を誘うのも作戦のうちなのだろう。む、左へ曲がる……!? 敵だ!!」

魔導具無しにドゴラの耳元でテミが諭してくれる。

『バレたぞ! かかれ! この先に進めるな!!』

『おう!!』

『は!』

等間隔で続く柱の陰に隠れた先に左に曲がる通路があった。

シアは視界の端で、通路を曲がろうとする進行の手前にあった柱の陰がユラリと揺れたように感じた。

上位魔神が1体と3体ほどの魔神が突然現れた。

そのうちの1体、ローブを頭から羽織った魔神がどうやら索敵を妨害する何らかの魔法を使っていたようだ。

「てめえが頭か! うらああああああああ!!」

『げばっひゃ!!』

ドゴラが神器カグツチと神器ヘラルドの2本の大斧を交互に振るい両肩からそれぞれ袈裟懸けに叩き切る。

『か、回復を!? ぐひ!?』

回復役の魔神が回復しようとすると、ドゴラと並走していたシアが、大きなダメージを負っていることに意識が向けられて反応できなかった。

回復役の魔神の顔面に神器「獣神の拳」を叩き込み首から上を爆散させる。

なお、上位魔神はドゴラの一撃でバツの字に裂かれ、既に絶命している。

バシュッ

『き、貴様! カーズファイ……!? ぐぬ!!』

2体の魔神のうち魔導士のローブを着た1体が両手に持った片手剣で接近してきたシアに対して飛び掛かろうとするが、高い位置から狙いを定めていた弓獣帝ゲンが喉元目掛けて矢を放つ。

ルバンカの左右の肩にはペクタンが乗っているのだが、視界の高い位置からの攻撃のため反対側にゲンがいた。

攻撃魔法を放とうと蓄積した魔力が喉を射抜かれ、声も封じられ、魔力は四散する。

『むん!!』

槌獣帝ホバが大槌を頭の上から振り落とし捻り潰した。

残り1体の魔神はドゴラとシアの両サイドにいた斧槍獣帝ラゾが中距離から残り1体の魔神に対して突きの一撃を喰らわせつつ、剣獣帝ハチが続けざまに叩き切る。

ドゴラが斬撃を浴びせた上位魔神はまだ息があったのだが、爪獣帝パズと双剣獣帝セヌが瞬時に距離を詰め、止めを刺した。

ホバ、ハチ、ラゾ、ゲン、パズ、セヌの前衛たちは名工ハバラクが鍛えた神聖オリハルコンの武具を与えられている。

「まったく、魔神相手に苦労していたのが嘘みたいだぜ」

自らが2本の神器を振っている間に上位魔神1体と魔神3体の戦いが終わっていることに呆れてしまう。

数年前ドゴラは、ローゼンヘイムで魔神レーゼルの1体相手にパーティー全員で戦って苦戦したことを思い出す。

『感傷に浸っている場合ではないぞ、ドゴラ。我らは神界に行ってそれだけ強くなったってわけだ。それにしても、敵が少ないな。どこに潜んでいるのやら』

ここまで進んできた中でまだ数回しか魔神たちと出会っていないことに、シアは警戒を続けている。

「ああ、神界であれだけぶっ倒したんだ。主のいる大事な王城がこれだけガラガラだと気が抜けるぜ」

ドゴラはこれ以上の魔神たちの気配がないことに拍子抜けする。

神界でルプトを攫うため上位魔神と魔神合わせて1000体に敵が攻めてきた。

化身になってまで攻める魔神たちは逃がさないよう神々と共に倒したのだが、その結果、魔神たちが魔王城にあまりいないなと考えた。

「他の場所に出払っていなければ良いだが……。扉だな」

3方に分かれた他のチームや忘れ去られた大陸の端に置いてきた仲間たちの身を案じる。

油断はするなよとドゴラに視線を送ったあと、シアは魔神が隠れていた先に通路に巨大な扉があることを発見する。

扉には巨大な骸骨が掘られており、3方に分かれたことを暗示するような3つの目玉が光り、こちらを無言で見つめてくる。

「気分の悪い扉だな。……どうやらその魔神たちが潜んでいるようだ。このまま一気に突っ切った方が良いな」

テミが扉に向けて手をかざすと眉間に皺を寄せる。

「ここだの。ルプト様がいらっしゃるようだ。だが、かなりの強敵がこの扉の先で待ち構えておる。心してかかるのだぞ」

戦闘はお前らの出番だと身を引きながらテミは言う。

「本当か! バスクの野郎がいるんだろ! やっちまおうぜ!!」

『おい、ドゴラ。さすがに不用心すぎるぞ! 敵がどんな準備をしているのか分からぬのだぞ!!』

「行かなきゃルプト様は助けられないだろ!!

中にまで聞こえるぞとシアが感情を爆発させたドゴラを叱責する。

こんな巨大な扉の前で立ちすくんでいてもしょうがないとドゴラは言う。

「押戸のようだな。たしかにドゴラ殿の言うとおりだな。ハチよ、反対の扉を押せ!」

「は!」

扉の右側に向かった獣王親衛隊長のホバが、配下で副隊長のハチ対して指示を出す。

2人が罠かもしれないので、身動きの取れにくい扉開け役を買って出たようだ。

「むぬぬぬぬ!!」

「お、重いな……」

ホバとハチが腰を落として観音開きの扉を両手で押していく。

武器を両手に持てずズリズリと押して扉の先へ入っていく様は、攻撃をする際の恰好の狙いとなる。

ホバたち獣王親衛隊に身を置く者たちは魔王城へ向かうに際して、ゼウ獣王からアレンのパーティーであるシアやドゴラの身を絶対に守れと厳命を受けている。

なお、素早さに特化していない重装備の2人が扉を開けることによって、機動力のあるシアたちに罠があった場合の対応をさせるためだ。

ゲンが弓を携え、パズとセヌが両手の武器を握りしめ、今にも跳躍しそうな体勢で扉の先を伺っている。

だが扉を開けても何もやってこないし、誰かが待ち受けている様子もない。

『ドゴラ、中に入るぞ』

「おう」

ザッと音を立て2人して勢いよく中に入った。

「我らも続くぞ!!」

「ああ!!」

ドゴラとシアを囲むように、ホバとハチ以外の十英獣が一気に踊り出る。

『……ずっと続く真っすぐの通路だな。この先に何かあるようだな』

開けていたホバとハチ、そして、最後にルバンカが皆を押すように中に入ると、巨躯が目を凝らしている。

「このまま進めと言うことか……」

「バスクの野郎は奥だな」

通路がまるでシアたちを誘うように一本道のまま奥へと続いている。

幅も20メートルほどあり、天井の高さはそのままなのでルバンカでも通路を進めそうだ。

数百メートル進むと通路の終わりが見えてくる。

明るい光が通路に差し込んできており、この先に大広間があるようだ。

警戒しながら、通路を抜け、大広間へと足を踏み入れた。

「我らと戦うには十分な広さというわけだ……。ルプト様!?」

シアたちが広間に入るなり、辺りを見回すと、明らかに正面に誰かがうずくまっている。

『んんん!?』

奥行きが1キロメートルを超える大広間であったが、シアたちがやってきた通路と対称の通路が広間の先に1つだけある造りのようだ。

その反対側の通路の側に3組6枚の翼をもつ第一天使ルプトが何やら魔法陣か結界のようなものに閉じ込められている。

こちらがやってくることに気付いたが地面から伸びる鎖のようなものが首輪と繋がっており、口には何やら呪符のようなもので何も言えない状態になっていた。

「ルプト様だ!!」

『罠だ! 誰かおるぞ!!』

ドゴラが声を上げ駆けだしそうになるのをシアが制する。

ヒタヒタヒタ

自らが進んだ反対側の通路から禍々しい気をまとった何かが、シアたちが広間にやってきたことに気付き、素足のまま床石を歩いてやってきているからだ。

『ひひひ! 俺様をこんなに待たせやがって、って!? ドゴラじゃねえか!! これはついているぜ!!』

「バスク!!」

異形の姿に変わり果てたバスクが通路の先から出てきたルプトの前に立ち塞がったのであった。