軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第813話 地上戦③敵の狙い

アレン軍の足元で倒したはずの死体から化身となった魔獣たちが蠢き始めた。

四肢が引き千切れ、内臓をぶちまけて死んだはずの魔獣たちが虚ろな目を開き大声で絶望の叫びを轟かせる。

割かれた四肢の切れ目から触手のようなものが伸び、切断面同士を無理やり接合していく。

『ギャウパパアアア!?』

半壊した頭部に関わらず、手足に力を込め、曲がった剣や内臓がはみ出した鎧のまま、無理やり立ち上がる。

「敵が動き出したぞ! 隊列を戻し、防御を固めよ!! これは化身だ!!」

盾使いとして最前列を進むライバック将軍が大声で叫んだ。

アレンはこの戦いが始まる前から邪神の化身についてアレン軍、勇者軍、ゴーレム軍、そして5大陸同盟軍に情報を提供している。

今回の魔王軍との戦いでも神界での侵攻時と同様に化身を使用した作戦をしてくることを予想できていいた。

『アレンよ。クワトロを!』

クワトロの特技「鑑定眼」が必要なため、魔導書のカードの空2枠使って、事前に決めていた暗号のようなメッセージでアレンと連絡を取る。

連絡を受けたアレンがクワトロをカードに戻したため、メルスが再度召喚する。

ここで、魔王城に転移は成功したものの、キュベルによって3手に分けることを共有されていることを知る。

『向こうもかなり厳しい状況だな。まあ、これ以上の応援はそもそもないがな』

Sランクの召喚獣がアレンたちと向かっているが、Aランク以下の全てとメルスやマグラなどこの忘れ去られた大陸の地上からの魔王軍攻略を進めている。

鑑定結果はクワトロの脳裏に認識したものをアレンやメルスは共有しているが魔導書にも表示される。

これでアレンたちも地上の魔王軍が化身を使った作戦をしていることがすぐに分かるだろう。

【名 前】ヘロマ

【年 齢】56

【種 族】オーガキング(化身)

【体 力】61000

【魔 力】38000

【攻撃力】74000+4100

【耐久力】53000+5000

【素早さ】37000

【知 力】23000

【幸 運】0

【攻撃属性】無

【耐久属性】物理耐性(中)、魔法耐性(中)、体力超回復

【名 前】ガッサム

【年 齢】112

【種 族】トロルエンペラー(化身)

【体 力】110000

【魔 力】76000

【攻撃力】129000+9000

【耐久力】86000+7700

【素早さ】77000

【知 力】32000

【幸 運】0

【攻撃属性】無

【耐久属性】物理耐性(大)、魔法耐性(大)、体力超回復

化身になったAランクの魔獣はバフも重なり上位魔神ほどのステータスになっている。

Sランクの魔獣はステータスの項目によっては10万を超え、亜神に匹敵しそうだ。

「うわああああああ!!」

「飛剣!!」

化身となったオーガキングが前進した盾使いの1人を背後から足を掴み、10メートルを超える自らの視線まで持ち上げた。

だがゼノフがオーガキングの背面からスキル「飛剣」の飛ぶ斬撃で腕を切り落とし、盾使いの兵を解放する。

「敵が強化されたぞ! 前線の兵たちへの回復頻度を上げよ!!」

「倒した魔獣は消し炭になるまで焼き尽くせ!! 弓隊は頭部を吹き飛ばせ!!」

「は!」

「は!」

アレン軍の演習や10日間の間、アレンの作戦の落とし込みのおかげで、すぐに将軍たちが大声で指揮を出す。

魔王軍もアレン軍同様に総力戦で戦いの準備を進めており、神界で使用した魔族などの化身にする戦術を取ることも予想していた。

後方にいるルキドラール将軍はエルフ部隊に、ブンゼンバーグ将軍はダークエルフ部隊への指示を加速させる。

なお、状態異常にならない効果のある「香味野菜」を使い、怪我を負った兵たちが化身にならないよう戦闘開始前に使用済みだ。

アレン軍の陣形内に肉体の破壊が不十分のため化身として復活した魔獣たちは、ステータスが1・5倍から2倍になっているが、1体当たりの兵数を増やし、ほとんど被害無く一掃していく。

化身となった魔獣の足を狙い地面に倒し、頭部を狙って絶命させ、さらに火魔法や火の精霊の力を借りて消し炭にしていく。

アレン軍の動きを止めて隊列内部に沸いた化身の魔獣を狩っていると、まだ化身となっていない5000体の魔王軍たちがアレン軍に向かって間髪入れずさらに突撃してくる。

『なるほど、倒されていない魔獣たちは化身にしないのか。温存作戦か。敵の動きが激しくなったな。カバヤキ、サンド、マツヒメ、敵の動きを封じよ!!』

魔王軍はこの場に300万体いるのだが、先ほどから1000体から5000体と少数ずつアレン軍に送っていく様子に、どうもこちらの出方の様子を見ているように感じる。

アレンの召喚獣は、強力な攻撃や、皆を強化するバフ、仲間たちを回復するだけではない。

召喚獣1体1体に作戦に組み込めば多彩な役割がある。

アレンが創生スキルを上げることにより、リオンやメルスだけでなく、召喚できる召喚獣の種類が増え、有用な作戦が増えた。

アレン軍の最前列の部隊の被害を抑えるため、メルスは足止めの効果のあるナマズ姿の魚Fの召喚獣の特技「泥沼」が魔獣たちの進行方向を泥沼に変えて勢いを削る。

また、石Gは巨大な砂丘へと変わり、砂の手で魔獣の足元を掴み、そのまま砂の中にメリメリと取り込んでいき動きを拘束する。

さらに、おかっぱ頭で振袖を着た少女の市松人形姿の霊の召喚獣の覚醒スキル「伸びた毛」の果てしなく伸びた毛で泥沼や砂の山を飛び越えようとした魔獣を拘束し、効率よく泥や砂の餌食にしていく。

敵は5000体の2割程度が動きを封じられ後方の魔獣は、足元を取られ勢いを削がられる。

『プギュモアアアアア!!』

腰近くまで泥に浸かり、長い髪に絡め取られた魔獣たちを足蹴にして、後方の魔獣たちがアレン軍に迫ろうとする。

成長レベル9まで上げ、バフを貰った召喚獣であっても3体でも全ての魔獣の動きを封じることは出来ない。

特技や覚醒スキルの効果のなかった魔獣たちが再度、アレン軍に迫る。

『ドグウ、ウーパ! 魔獣たちを止めよ』

土偶の姿をした石Eの召喚獣とウーパールーパーの姿をした竜Eの召喚獣に、捉えきれず迫る魔王軍に対して応戦するように指示を出す。

『……』

『ウーパ!!』

無言の石Eの召喚獣と独特な鳴き声の竜Eの召喚獣がメルスの指示に答えた。

石Eの召喚獣は特技「念動力」を使い、目から衝撃波を発生させ、数十体の魔獣たちを後方に吹き飛ばす。

成長レベル9まで上げたためEランクという低ランクの召喚獣であっても、四肢が消し飛び、頭部が破壊され、絶命する魔獣もいる。

それでも構わず突っ込んでくる魔獣たちに対して、クールタイムの長くない特技のため、バンバン特技を発動させて無数の魔獣の波を押し返していく。

石Eの召喚獣から数百メートル離れた場所では、魔獣たちを竜Eの召喚獣が特技「毒の霧」で体力を削り、攻撃してくる魔獣に対して全身からにじみ出る乳白色の覚醒スキル「マヒ油」を浴びせる。

『よし、魔獣たちの勢いが削れていくな。ん?』

ドオオオオオン

パアッ

『ウーパ!?』

魔王軍は竜Eの召喚獣たちを30キロメートル離れた場所から砲台を打ち込んで倒した。

『……!?』

『召喚獣たちを狙ってきたか。そうはさせ、ぐは!?』

メルスは超高熱のレーザービームを喰らい吹き飛ばされる。

石Eの召喚獣もやられたところで、石Eと竜Eの召喚獣を再召喚しようとした、一瞬の意識の隙をついて、超メガロン砲の直撃を浴びる。

『クワトロの死角からの攻撃だと!? 数発を躱した動きでそんなことが分かるのか!? ……随分賢い奴が魔王軍にいるようだな』

鳥Eの召喚獣とクワトロは障害物があると確認ができない。

特技「万里眼」の死角を把握し、メルスの数手先まで魔王軍は読んでいるようだ。

その後もメルスが砲弾やメガロン砲を躱し続けると、今度は狙いをアレン軍に変えてきた。

『砲弾が飛んでくるぞ!!』

「うわあああああ!?」

「負傷者の回復を急げ!!」

メルスの声にライバック将軍たち盾使いが反応し、必死に防戦する。

だが、砲弾までは守れるのだが、メガロン砲や超メガロン砲に狙われると、アレン軍の兵が一度に数十人が吹き飛ばされる。

『魔王軍は長期戦を狙っているのか。我らを分断している以上の何かがまだあるのか……』

クワトロを再召喚した際にキュベルのやり取りの記憶から、魔王軍はこの地上での戦いに勝利を確信しているようだ。

だが、勝利を確信しているのに、魔王軍の攻撃は数千単位の魔獣の攻撃、倒された魔獣の化身による復活、長距離からの遠距離攻撃が主な攻撃方法だ。

この状況で魔王軍がキュベルたちの会話にあった95%の確率でせん滅可能であるとは思えない。

さらに、このまま持久戦に持って行っても、アレンたちを助けに行けないし、このまま時間をかけてもアレン軍の損害が大きいと考える。

『アレン軍よ! 俺は前線で魔王軍の砲台を破壊する。召喚獣は召喚するが、これまで以上に激しい戦いになるぞ!!』

このまま敵の狙いが分かるまで耐えるのは厳しいと考えた。

10キロメートル弱まで前線を進めたメルルたちにメルスは一気に距離を詰めた。

『ようやく、こっちに来たか。グオオオオオオ!! 炎獄殺!!』

メルスが視界に入ったマグラは特技「炎獄殺」を吐く寸前であった。

バフによって強化されたマグラのブレスは、魔獣たちの骨も燃やし尽くし、化身にさせない。

マグラはメルスの指示をあまり聞かないが共有で、化身になる条件を理解しているようだ。

『メルル、敵がまだまだ後退します』

「もう。敵本陣に追い付けないよ」

タムタムとメルルの嘆いたのは、先行するハクたちのブレスに避けるように、魔王軍の魔神たちの指揮官や砲台がどんどん後方に下がっているからだ。

『だが、何時までも逃げれまい! 砲弾の射程からもアレン軍を外すぞ! スパークリングスラッシュ!!』

下がるならそれでアレン軍の被害も避けられる。

天使Bの召喚獣は再召喚すればクールタイムなど関係なく何度でも覚醒スキル使いたい放題だ。

メルスもきたことによって、メルルたちの攻めの勢いがさらに増す。

魔獣たちを蹴散らしていくと、砲台に乗る魔族たちが砲弾を放つことを止め、何やら右手を掲げ始めた。

全員の手の甲に魔石のようなものを埋め込められており、メルスが何事か気付いた。

『ん? 砲撃がやんだぞ。何かするな……。まさか、俺が出てくるのを待っていたのか』

何を言っているのか分からないが自らの行動が敵の次の作戦の引き金になったような気がする。

『よし、敵主力の一体であるメルスが計画通り最前線に出た。皆準備は良いか!!』

『は! 接続信号は正常に作動!!』

『ガンディーラ改! 合体だ!!』

魔族たちが大声で叫ぶと、全ての砲台の魔導兵器が淡く輝いたのであった。