軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第810話 アレンの決断

一方的に魔王城の攻略方法を伝えたキュベルたちは、転移先の広間にアレンたちを置いたままその場から消えてしまった。

この広間にやってきて30分ほど過ぎた。

【魔王城攻略編の時間の流れ①】

・12時 ヘビーユーザー島で忘れ去られた大陸を目指す

全軍の大陸上陸に成功

・13時 アレンたち、ヘルミオスのパーティー、十英獣が魔王城に到着

・13時半 魔王城組は魔王城1階層の扉の攻撃←今ここ!

ドゴラが1人、巨大な扉の前に向かって神器カグツチを振り上げて、飛び掛かっていた。

「うらあああああああ! 全身全霊(フルブレイズ) !!」

ズガアアアアアアアン

「やったかっ!! はぁはぁ……」

巨大な扉が大きな強力な一撃で大きくヒビが入り、今にも壊れそうだ。

ドゴラは扉の下に着地して、肩を大きく上下して呼吸を整えようとして言う。

また、ドゴラの前にも仲間たちが攻撃しており、扉はいくつもの破損や焦げ付いていたり、酸で溶解している。

『とんでもなく頑丈な扉だな。お前の全魔力を込めたのに溶かしきれないとはな』

「そ、そうだな、フレイヤ。はぁはぁ……」

『これは壊せないポンね』

『随分強力な結界だコンね』

ドゴラと同じく全魔力を大精霊ムートンに吸われ、疲労困憊のルークが辛うじて返事する。

30分も掛けて扉をアレンのパーティー、ヘルミオスのパーティー、十英獣が破壊しようとした。

扉はひたすら攻撃を受け、粉砕され、ヒビが割れ、焼け焦げ、溶かされても、それでも、完全に壊すことはできなかった。

精霊王であり、今回の戦いの助っ人で参戦してくれたコンズとポンズの力も全力で借りたのだが、力を消耗し過ぎて項垂れている。

「はぁはぁ……。きついな」

「つらいですわね……」

2柱の亜神である精霊王に魔力を吸われてソフィーもルークも辛そうだ。

(ふむふむ、魔神王との戦闘前に精霊王たちの戦力が確認できたのは良いな。それにしても必死に破壊した隙間から召喚獣潜ませようとしたが無理か)

仲間たちの攻撃のタイミングを合わせて、集中攻撃してみたが、破壊は出来るのだが、人1人分通過するほどの大きさの穴を扉に空けることはできなかった。

だが、視界が通るだけの穴があれば十分とばかりの、扉の先に鳥Aの召喚獣を送ろうとしたのだが、魔力による障壁でもあるのか召喚できない。

以前、邪神教グシャラと戦いのおりに、結界の張られたヘビーユーザー島内に召喚獣を潜入させようとしたが無理だったことを思い出す。

メキメキ

『魔力吸収。修復中です。修復中です。修復中……。2階層への入室はしばらくお待ちください』

アレンの分析を進める中、破壊された扉は、髑髏の1つ目部分にはめられた宝玉が真っ赤な光を発して点滅し、『修復中』のアナウンスを繰り返す。

全ての破損個所はたちまち修復され、あっという間に傷1つない元通りの扉に戻った。

「困ったね。これは、破壊は厳しんじゃないかな。こんな速さでいくらでも修復されるなら、全員を通り抜けさせるなんて無理だよ。バフの時間も有限だよ」

扉を睨みつけ、考え込むアレンに対して、ヘルミオスが冷静に分析して話しかけてくる。

そろそろ判断の時だと仲間たちも思っているようで、アレンに視線が集まってくる。

「……たしかに時間は有限ですからね」

(なるほど、ダメージは通るが、破壊された箇所を受けた攻撃の魔力で修復するのか。無限に修復できるとはよく考えているな。扉だけではなく、扉の周りの壁にも効果範囲にあると)

そう言ったもののアレンはバフの時間についてはそこまで心配していない。

バフの時間は通常の使用よりも時の大精霊とロザリナの併用のおかげで3・8倍に伸びている。

例えばソフィーが使用した精霊神の祝福は大地の迷宮では、時の大精霊のみの延長で6時間ほどの効果があった。

今は魔力や霊力が神の加護などもあって上昇しているため2倍以上に上昇している。

今日の12時に使用した精霊神の祝福の効果が切れるのは深夜を跨いだ明日になる。

それよりもこの扉を破壊するために使用したクールタイムの長い神技やスキルが必要になる場面がないかの方が心配だ。

そんなことを冷静に考えているとキールがたまらず声を荒げる。

「おい! おいてきた仲間たちが心配なんだぞ! これ以上はまずいだろ!!」

仲間たちは全員、忘れ去られた大陸の南端から要塞を破壊しながら攻略しようとしている仲間たちが、キュベルの側にいた目玉の魔獣が95%の確率でせん滅可能と言ったことを聞いている。

「たしかにな。この30分ほどの無駄な時間のためにアレン軍がどれだけ危険な目にあっているのか分からない」

それでも数百、数千の被害は少なくとも出ているとアレンはキールに向き直って答えた。

10万個を超える天の恵みをこの日のために準備し提供しているため、生きてさえいればどんな欠損や致命傷でも回復できる。

数百、数千とは、それは失われた兵の命の数だ。

「そこまで分かってんだろ! だったら!?」

そこまで言ったところでこれ以上言葉を発することを止めた。

それほど冷静なアレンの内側から激しい感情が溢れているのが、パーティーを組んで長いキールも分かったためだ。

「失敗は許されない。選択を間違えるわけにはいかない。魔王軍も俺たちが来ることを分かっているからあらゆる可能性を考え、あらゆる方法で俺たちを全滅させるつもりだ。この選択は絶対に間違えるわけにはいかないんだ」

だからこんな状況ではあるが落ち着いて判断させてほしいと仲間たち全員に語り掛けた。

「す、すまない。だが俺は誰も死んでほしくないんだ……」

感情的になってしまったことをキールは謝罪する。

今度はシアが場の空気を変えようとアレンに語り掛けてくる。

「アレンよ。あのキュベルが準備していたのだ。抜け道がそう簡単にあるとは思えぬな。余の神技はコンボ発動対象外であるし」

「……そもそも、生き物でも魔獣でも何でもないから攻撃の対象じゃないってわけだな」

(シアの絶対破壊の神技も考えたけど、そもそも発動が厳しそうだな)

シアには神技「獣神無限爆散拳」という絶対に対象を破壊する神技を持っている。

こんな扉に向かってシアはコンボの連鎖がカウントしないことから、どうやら絶対に何でも破壊すると謳った神技「獣神無限爆散拳」は発動できないようだ。

アレンは仲間たち、ヘルミオスのパーティー、十英獣に語り掛ける。

「……よし、パーティーを3つ分ける。攻撃している間に分け方も考えていた」

(俺ならパーティーを3つに分けて、それぞれ各個撃破する。それなら、1パーティーは厳しい戦いを強いられる。だけど、それなら残り2パーティーは魔王城の攻略を優先できるって話でもある。……キュベルの策にはまりに行くんだ。言い訳に過ぎないな)

自らの言葉に言い聞かせるように次の行動を示した。

「3パーティーならそれぞれ12人以下になるようにするって話かい?」

「えっと、ヘルミオスさん。エクストラモード、神の加護などを加味して、召喚獣も分けます」

アレンが決断したことで、それぞれのパーティーリーダーのアレンとヘルミオスが話を進める。

なお、十英獣でテミのいない9人の場合は、ホバ将軍がリーダーなのだが、ゼウ獣王の厳命でシアの指揮下にある。

【魔王城攻略3パーティーの編成について】

①アレン、クレナ、キール、ソフィー、フォルマール、ルーク、ロザリナ、ペロムス、(グラハン)、(コンズ)、(ポンズ)、(その他精霊たくさん)

②シア、ドゴラ、十英獣10 人(テミもいる) 、(ルバンカ)、(ペクタン)

③イグノマス、ヘルミオスパーティー10人、(リオン)

※()内は12人のカウント対象外と想定

「おい、何か、俺らのパーティー少ないぞ、アレン!」

パーティーの振り分けを聞いていたキールがまた声を上げる。

「確かに少ないな。分けた理由を聞いてくれ。まずパーティー分けの基本から手短に説明するぞ。基本、3パーティーはこれまでの連携が力になるので基本的に分けない」

「当然だな。だが、ドゴラやイグノマスは分けるのだな」

「そうだ、シア。神の加護やエクストラモード、後は召喚獣による回復や攻撃のフォローを考えるとこれがベターだと考える。戦力の過不足があって間違っていたらすまない。あの世で謝る」

何をしても選択を間違えた代償が仲間たちの命、世界の終わりに繋がる状況でアレンは理解を示すよう口にする。

3パーティーはそれぞれのパーティー内で魔王軍と戦い、神々の試練を乗り越えてきた。

阿吽の呼吸とも言える練度は、ステータス以上に代えがたい。

だが、それぞれ個人で見たら、エクストラモードで神器を持っているものもいれば、ノーマルモードもいる。

十英獣の全員がノーマルモードで、ヘルミオスのパーティーはヘルミオス以外がノーマルモードだ。

十英獣には、回復役が1人しかおらず、この辺りのフォローを入れるため、ドゴラ、イグノマス、ルバンカ、ペクタン、リオンはアレンとは別パーティーに移動してもらった。

「ドゴラは圧倒的な攻撃で重戦士だし、ペクタンやシアとの相性も良い。イグノマスは攻防2つの神器で前衛なのに守りも優れている。あと、俺と離れる召喚獣たちは注意が必要だぞ。再召喚は厳しいだろうからな」

簡潔にパーティー分けの理由を説明する。

『なるほど、アレン殿の側には儂くらいしか召喚獣がいないというわけか。重大だな』

「そういうことだ。期待しているぞ、グラハン」

アレンと一緒に戦う攻撃主体の召喚獣がグラハンしかない。

ただ、グラハンは覚醒スキル「憑依合体」があるため、アレンとの相性は抜群に良い。

あと大精霊や精霊王をソフィーやルークは顕現できるから戦力は恐らく3チームで一番高いと考える。

『プッププ~!!』

アレンの足元では、ベニテングタケに手足の生えたペクタンがやったるぞ感溢れており、シュッシュッとシャドーボクシングで素振りをしている。

「ああ、そういうことか」

キールは納得してくれたようだ。

「なるほど、シアがそちらのパーティーのリーダーなら、こちらのパーティーリーダーは誰なのだ?」

「シアとヘルミオスさんがそれぞれのリーダーだ」

ドゴラは単純に理解したが、ヘルミオスと同年齢のイグノマスが自らリーダーを買って出ようとしたので釘を指す。

「僕がやられたらその時は頼むよ、イグノマスさん」

「うむ、その時は任されよ。あと同じチームだ。敬称は不要だ」

「じゃあ、切れそうなバフは掛け直しておいてくれ」

(この状況なら、要塞戦で精霊神の祝福を掛けておいたのは正解だったな。ソフィーはクールタイムカット優先の装備だが、これが切れるとメルスたちも全滅だ)

アレンの中で「95%の確率でせん滅可能」の言葉がチラつく。

メルスの視界は共有できないのだが、アレンの魔導書のカードの状況を見て苦戦はしているものの危機的な状況ではないと言うことは分かる。

だが、危機的であってもここからでは助けに行くことは出来ない。

「よし、俺のパーティーは正面、シアたちが右で、ヘルミオスさんたちは左で。行く手には魔神王が待ち構えている。①捕らえたルプト、②この城の隠蔽の解除、③魔王のいる階層への鍵がそれぞれの達成すべきクエストだ。それぞれ自分ところのクエストを済ませても魔王との戦いは先走らないでくれ!!」

キュベルの言うそれぞれのパーティーのクエスト達成条件を改めて声を上げて指示を出す。

ワラワラと左右に別れたパーティーがそれぞれの扉の前にやってくる。

『……全ての扉前で12人以下のパーティーであることを確認できました。この先に進みますか?』

パーティーの前で完全に修復された扉にはめ込められた宝玉が点滅しながらアレンに語り掛けてくる。

「ああ」

(召喚獣や精霊はやはりカウント対象外か)

想定通りなので転移するよう扉を相手に同意する。

『では、魔王城2階層へ転移します』

3パーティーに分かれた先の扉で皆、それぞれ2階層へ転移したのであった。