軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第809話 キュベルの策略

アレンの前に魔王軍総司令オルドー、参謀キュベル、魔神王ブレマンダがいる。

魔王城の転移先は広間になっており、唯一の出口の階段を魔王軍の幹部と思われる3体が占領している。

アレンが指示する前に仲間たちは動き出した。

キュベルが両手を振り、ふざけているのかと思う態度で攻撃しないよう懇願するが、そんなことをかまう必要はない。

アレンたちは自然と前衛、中衛、後衛に跳ねるように陣形を組む。

「うおおおお! 真・爆炎破!!」

「は! 真・粉砕撃!!」

ドゴラとシアが左右から息ぴったりに距離を詰め、スキルをお互いの神器に魔力を込めて、キュベルを対象にスキルを発動した。

『はわわ!!』

両手を口元に当て困惑するキュベルを救おうと動き出した者がいる。

両手を前面に伸ばしゴリゴリと魔力を込めて一瞬でスキルを発動する。

『はっ! 無限障壁!!』

パキパキパキ

「ぐあ!?」

「ぬ!」

キュベルの前面に多層構造の皿状の巨大な光の障壁が生まれた。

ドゴラとシアは光の障壁にスキルを叩き込む形となったのだが、多少のヒビが生じたものの、1枚も砕くことが出来ず勢いそのままに吹き飛ばされてしまう。

「大丈夫か!」

アレンはキュベルたちに視線を下げずに、中衛手前まで吹き飛ばされた。

『クレナとイグノマスは前線を維持してくれ。攻撃は一端中断だ。ヘルミオスさんたちも警戒を。3体とも魔神王のようです』

ドゴラとシアが吹き飛ばされた前衛の穴を埋めるべく、クレナとイグノマスが魔神王たちに立ち塞がる。

この場で陣形を広く展開したヘルミオスのパーティーや十英獣にも即座に聞こえるよう、鳥Fの特技「伝達」を使って指示を飛ばす。

アレンは新たに登場したブレマンダという魔神王を警戒する。

(後出しの障壁か何かで、2人でスキル使って破壊できないのは脅威だな。守備に特化したサポートタイプか?)

ドゴラとシアの攻撃の決断は確実に早かった。

魔王軍の中で作戦を統括していると思われるキュベルを阿吽の呼吸で狙った動きも無駄はない。

動きを察知してからの障壁の発動速度、その強度、どちらをとっても脅威に値する。

「新たな敵も強敵ってことだね」

中衛の位置にいるアレンに対して、ヘルミオスが側までやってくる。

「ええ、ですが、前回の神界での戦いよりも魔神王の数が少ないです。この人数なら倒すことも可能でしょう」

今回、新たなブレマンダとかいう魔神王がやってきたが、前回の神界に魔王軍や攻めてきた際にマーラ、ガンディーラ、ビルディガの3体の魔神王を撃破している。

「今回は神々の応援もない。それに、オルドーは脅威だよ」

神界での戦いは大精霊神を筆頭に精霊たち、武具神たちや属性神たちが加勢してくれたことを忘れてはいけないとヘルミオスは言う。

「そうですね。油断はしていないです。倒せば魔王軍の戦力をかなり削ることができますので、気を引きしめていきましょう」

(って、倒せずに逃がしたバスクがいないな。魔王軍はまだ奥の手を隠しているのか。俺たちを10日時間与えた間に何かやっていたと思うが……。ん?)

陣形を組み、3体攻略の作戦を考えようとしたところ、キュベルの肩に歪みが生じる。

パタパタ

野球ボールサイズの目玉に蝙蝠の羽が生えたようなものが空間の歪みから突然現れ、キュベルの耳元で語り掛ける。

『キュベル様、2ヶ所に分かれたアレンたちの戦力分析が終了しました。このまま戦闘を続けるべきではありません。このまま戦った場合の勝率は68%です』

(なんだと?)

『あれれのれ? 70%切っているね。当初の想定よりも随分低いじゃない。集合知力君』

『いえ、私はルキモネです。ルキモネとお呼びください』

『分かったから、ルキモネ君。こういう場面で個性を出さないでね。それで、これはどういうことかな?』

敵味方が武器を手に緊張した状態で、まるで腹話術の人形と会話するように、キュベルはすぐ側で飛ぶ目玉の魔獣と会話している。

硬直したことにシアと共に最前線に戻ったドゴラが思わず声を荒げた。

「おい、どうすんだ、アレン。やるんだろ!!」

『ドゴラ、キュベルの様子がおかしい。様子見だ。それに、皆も陣形維持に注力して下さい』

キュベルの様子を窺うアレンは、このまま戦いを再開するよりも、情報収集を優先させた。

アレンたちに見向きもせず、キュベルは目玉の魔獣と会話を続ける。

『要塞での戦いにアレンの主要な仲間や召喚獣をあまり残してこなかったことが、魔王城側での勝率低下に繋がっています』

『なるほどね。でも、それだと要塞戦はこちらが有利ってことだね』

『もちろんです。要塞戦での魔王軍の勝率はおよそ95%です。現在、情報の収集に努めていますが、それが完了すれば100%せん滅は可能です』

(なんだと? メルルたちを残してきた戦いの話だよな)

目玉の魔獣の断言はとてもキュベルの耳元に語り掛けるためとても小さいのだが、静寂の中で聞いたためアレンたちの耳にも入った。

「おい、せん滅だと! どれだけの仲間をあそこに残してきたって思ってんだ!!」

後衛の陣形まで聞こえたようで、キールもアレンの背後から声を荒げた。

(全くだ。ハッタリか? 心理戦を狙ってるのか? 態々俺らにも聞こえるような声で状況を相談しやがって。ここは一気に叩くか。長期戦だと何万も犠牲が出るぞ。グラハンに憑依合体を指示してと)

自らも「アレンの剣」を握りしめ、短期決戦を仕掛けようと一歩、前で足を運んだ。

そこへキュベルがクワッと仮面の下で目を見開き、両手を全力で前に突き出した。

『待ってっていってるでしょ! 人の話を聞く! 親からそう教わらなかったの!!』

この場に似つかわしくないキュベルの行動に、おかしな空気が広間を満たしていく。

「ふざけたことを言うなよ。誰が待つか。皆一気に畳みかけ……」

アレンはさらに一歩前に出て、皆に号令を掛けようとした。

『へえ? いいんだ。僕らはいいんだよ。君たちをここに閉じ込めて要塞で君たちの仲間たちを皆殺しにしちゃうよ~』

「なんだと?」

『言葉のとおりさ。僕たちには君たちが侵入は出来ても、この完璧な魔王城の外へ転移を行使することは出来ない。そういう結界がいくつも張られているんだよ。もう逃げられない。檻に閉じ込められているんだよ』

(なんだ? 何が言いたい。キュベルの目的は何だ? たしかに外で戦っている召喚獣の視界と共有できない、転移もできないけど、何故そんな話を敢えてする)

アレンがキュベルの話を聞きながら状況を確認していると、ブレマンダという魔神王が階段途中の踊り場の位置から一歩前に出る。

『申し訳ない。魔王城で監獄長を務める私が説明をしよう。貴方たちはこれから3パーティーに分かれてほしい』

「は? どういうことだ?」

『見ての通り上の階層へ上がるには、この踊り場の先にある扉を進まなければいけない。踊り場から分かれた3つの階段の先の扉から先へ進むのにたった今、入室制限をかけさせてもらった。3つの扉の前にそれぞれ12人以下の人数が立たないと2階層へいけない』

話を続けさせるのはよくないとアレンは判断する。

だが、キュベルの前方には魔神王で監獄長ブレマンダが説明しながらも、障壁による鉄壁の守りを維持している。

『3つの扉の先には「捕らえたルプト」、「この城の隠蔽の解除」、「魔王のいる階層への鍵」のどれががある。ぜひ頑張って魔王城の攻略を楽しんでほしい』

「待て!!」

『遅いです! 転移!!』

簡単な説明だけをしてこの場を離れようとしているブレマンダに対して、アレンに声を上げながらとびかかった。

「させるか! クレナ!!」

「うん、キュベルだね。やああああああ!!」

『残念。じゃあ、上の階で待ってるよ!』

カッ

攻撃が当たる寸前で3体の魔神王は逃げるようにこの場から姿を消した。

階段の踊り場でアレンの剣とクレナの神器アスカロンが中空を空振りすると、仲間たちもやってくる。

「逃げられてしまったね」

ヘルミオスがあたりを警戒しながらアレンに話しかけてくる。

「申し訳ないです。状況を整理するため、話を聞き入ってしまいました」

「いや、あの状況じゃ仕方ねえだろ。メルルたちも心配だし、どうするんだ? このまま進むのか?」

「恐らくだが前に進むしかないのではないかしら」

ドゴラがフォローを入れ、ソフィーはこれからどうすべきか自らの意見を口にする。

「おいおい、地上に残した仲間たちを見捨てるのか」

何万も残した仲間たちや数万人にもなるアレン軍、勇者軍、ゴーレム軍がいる。

キールは彼らが心配だと言うと、ソフィーはそのような選択肢はないのではと口にする。

その背後でフォルマールが「ソフィアローネ様の言うとおりです」と言わんばかりに力強く頷いている。

「ソフィーの言うとおりだ。転移できないのだろう。このまま進んでルプト様を救い出し、魔王と倒すしかないのだろう」

(進むとしてもこのまま3パーティーを分けるのはどうなんだ)

シアはキュベルの言葉を正確に理解して、首をかしげるドゴラやクレナにも説明して上げる。

「うっし、3パーティーに分かれて、あいつらを倒したらいいんだな!」

「ドゴラ、あいつらがこの場で戦わなかった理由を言っていなかったな?」

「あ? 何だよ、アレン。ビビったってことだろ」

「そのとおりだ。3体の魔神王でもこの場で戦うよりも、パーティーを分かれて各個撃破した方が良いと判断した。もしも、1つのパーティーに3体の魔神王が待ち構えたらどうする。状況によっては、戦力は3分の1じゃ済まなくなるぞ。この場にはバスクはいなかったし」

キュベルは良く分からない目玉の魔獣の報告を聞いて、アレンたちのパーティーが多すぎて分かれて分散させる作戦に変えた。

十分なパーティー構成なら、このまま戦闘に移行したのかもしれない。

(戦力を分散させての各個撃破か。いやらしい作戦を考えてくる。俺たちに10日、日にちを与えている隙に万全の準備をしていたってことか。ここから進めば奴らの罠に入るようなものだな)

だが、こっちがまんまとキュベルの作戦に乗って、戦力を分散させて勝手に分かれたら、それこそ、敵の思う壺だ。

「だけど、ここでボーッと突っ立っててもしょうがねえじゃん」

「全くその通りだ、ルーク。とりあえず、ヘルミオスさんのパーティーも一緒に全員で正面の扉へ行ってみましょう」

アレンの言葉に、踊り場の正面の階段を上がった先の扉の前に向かう。

扉の前には踊り場と同じくらい足場があり、全員が足を踏み入れるのは十分な広さだ。

足元には10メートルほどの魔法陣があり、扉からの伸びた宝玉の光を当てられている。

何の光だとアレンたちは扉を見上げた。

高さ数十メートルの巨大な扉には1つ目の魔獣か何かの髑髏が掘られており、1つ目の目玉の位置に宝玉が1つはめられ、アレンたちがやってきたことに反応してチカチカと点滅し始めた。

『人数が定員よりも多いです。扉の前の人数を12人以下にしないと、この扉は開きません。3つ全ての足元の魔法陣の人数をそれ以下にしてください。魔王城2階層への転移は3つの扉を同時に行います』

(足元の魔法陣で人数を把握しているのか)

「ほら、扉空かないってよ」

クレナがキュベルの言ったとおりになったと嘆く。

どうするんだと視線が集まる中、アレンはソフィーとルークをそれぞれ見て新たな指示を出した。

「ソフィー、ルーク、すまないが大精霊たちの力を借りて全魔力を込めて、この扉をぶち抜いてくれ」

キュベルが一手、策略を仕掛けてくる中、アレンは決断を迫られるのであった。