軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第801話 戦いの狼煙

戦闘開始に向けた兵たちへのバフの振りまきが進んでいる。

鳥Bの召喚獣に乗ったキールはスタッフに魔力を込め、バフを振りまき続けている。

「アリポンやハッチ、後ろにいる戦略艦も含めて、こっちも順調だぞ」

ソフィーやルークたちと違って、キールには既に忘れ去られた大陸へ突っ込む予定のヘビーユーザー島にいるアレン軍、背後の戦略艦を中心にバフの専念をしてもらっていた。

(回復専門だったけど守備のバフとしては優秀を通り越して希少だな)

攻防全てに長けたバフ使いのロザリナほどではないが、今回の作戦には軍の強固な守りが重要だ。

【キールのスキル一覧13章簡易版】

・真回復:回復魔法を振りまく

対象は回復魔法のレベルによって単体、範囲に分かれる

キールの才能なら欠損は完全に回復する

・真浄化:アンデット系に抜群の浄化の魔法を繰り出す

効果はスキルレベルと知力依存

・真聖光:単体を対象に光属性の防壁を張る

効果はスキルレベルと知力依存

・神の雫:死者を蘇生する

対象をスキルレベル毎に1人増加

クールタイムは1時間

・万能薬:魔力を込めて水を万能薬に変える

スキルレベルが上がるごとに量と効果増大

万能薬の効果はスキルレベル①~⑨で増えていく

①体力全回復、②魔力全回復、③状態異常無効、④状態異常回復

⑤体力自然回復、⑥魔力自然回復、⑦物理耐性上昇、⑧全耐性上昇

⑨飲んだ効果を周囲の仲間へ伝達

・聖堅法衣:神聖属性付与およびダメージ10%軽減

ダメージ軽減はスキルレベル毎に10%増加

効果範囲はスキルレベル毎に100メートル増加

邪気のあるものを祓うことができる

スキルレベル×回数分で効果消滅(重ね掛け不可)

・健康常医:状態異常から身も守る

状態異常から回復する

体力を秒間0・5%自然回復する

体力回復はスキルレベルアップ毎に秒間0・5%増加

スキルレベル×10分で効果消滅(重ね掛け不可)

スキルレベル×状態防御回数分で効果消滅(重ね掛け不可)

※神の雫以外クールタイムほぼ無し

『はは。精霊神の祝福だね。こんなに早く使ってしまって大丈夫なの?』

「精霊神ローゼン様、時の大精霊タイム様とロザリナのバフの延長があります。また、兵の犠牲を減らすためにもよろしくお願いします」

アレンたちは、バフの時間が時の大精霊の2倍とロザリナの1・9倍の掛け合わせで3・8倍にもなる。

クールタイムが1日の神技「精霊神の祝福」だが、これだけバフの持続時間が伸びるなら最初からかけてしまった方が良いという判断だ。

『もちろんだよって、もう何度もお礼言われたし。恐縮しているね。大精霊神様の命とは言え、しっかり働かせてもらうよ。はは、じゃあいくよ!!』

パロロロ

光の雨が広範囲に渡って降り始め、兵たち全員に神技「精霊神の祝福」の効果が付与される。

(……でもあれだな。神が手伝えないって話を何度もしてきたのに、今回の戦いにはすんなり協力してくれたんだ)

ヘラヘラと笑って協力する精霊神ローゼンに対してアレンは思うことがある。

ローゼンヘイムの魔王軍侵攻の際から長い付き合いのある精霊神ローゼンだが、神の理が絶対だとアレンは何度言われたか分からない。

アレンはローゼンの行動に違和感のようなものを覚えていた。

それはローゼンヘイムで始めて知り合ってからどんどん疑問が大きくなっていく。

神は人間たちを干渉しないし直接助けない。

大地の神ガイアがシャンダール天空国に魔王軍が攻め込む際、第一天使ルプトに従う大天使アウラに対して、戦いに参加する際、理を逸脱しないか確認を取っていたことを、あの場にいたメルスを通じてアレンも確認している。

今回の戦いに際して大精霊神イースレイに助勢を頼んだところ、快く快諾した上で、仲間たちの他の神々から頂いている加護を特大にしてくれるよう働きかけてくれた。

創造神エルメアの第一天使ルプト奪還は、それほどに神界にとって大義があることなのか。

魔王にルプトが食べられることは神界にとってそれほど大きな問題なのか。

随分、都合の良い理のようにも思えるし、誰にとって何が都合良いのだろうか。

間もなく開戦という時にアレンの中で思考が巡る。

『……もし、この戦いに生き残れたらその時話そうか。今はこの戦いに集中するんだよ。はは』

仲間たちのためにも不安な様子を一切見せないアレンの表情を読むように精霊神ローゼンが声をかけてきた。

「よろしくお願いします。いえ、ありがとうございます」

精霊神や精霊王たちの参戦の理由は分からないが、確実に理由があることだけは教えてくれたことにアレンは改めて礼を言う。

恐らくこれがローゼンにとってギリギリ言えることだったのだろう。

【10月1日11:58】

WEB会議を通じて今回の魔王城攻略に向けた作戦開始を12時にした残り2分となり、ヘビーユーザー島はさらに加速し、忘れ去られた大陸へ迫る。

『アレン軍は陣形を急いで下さい!! 間もなく魔王軍側の攻撃範囲に突入します!! これよりヘビーユーザー島の推進力を最大限に急加速します!! 推進の魔導具への魔導コアの連結を!! 戦略艦4艦についても同様の対応をして距離を離されないようにしてください!! 戦略艦は距離を離されないよう、ヘビーユーザー島を盾に航行願います!!』

忘れ去られた大陸まで30キロメートルに入れば、魔王軍の攻撃圏だ。

アレンは鳥Fの召喚獣の覚醒スキル「伝令」を使い、仲間やアレン軍たちに何度も檄を入れる。

全長10キロメートルにもなる八丈島ほどの大きさのヘビーユーザー島の中部地下深くに埋め込まれていた推進の魔導具へのさらなる加速指示を出した。

なお、それぞれの戦略艦の指揮官たちの側に召喚獣たちを待機させており、魔導技師団による通信の魔導具だけでなく、今回のように戦線が広くても即座に連絡ができるようにしてある。

勝利を確信した戦いではない。

アレンも含めて仲間たちもまだ成長段階で準備は万全ではない。

協力してくれる神々のおかげで勝率が上がったかもしれない。

それでも魔王軍の底は見えない。

セーブポイントもやり直しも効かない一発勝負の戦いだ。

敗北すれば、世界と仲間と残してきた家族の全てを失うかもしれない。

あまりにも大きな賭けに全世界が総力を上げて乗ってくれた。

今回の作戦の全てをアレンが考えた。

誰よりもアレンの両肩にあまりにも重い責任が伸し掛かる。

「やろう!」

また不安そうになりかけたアレンの表情を読んでか、視線のあったクレナが掛け声をかけてくれ、アレンは思わずややぎこちない笑みを返してしまった。

「ああ、やろう。気合い入れていくぞ!」

「おう!」

今度はずっと一緒に冒険をしてきたドゴラがアレンの言葉に力強く返事してくれた。

まもなく要塞の射程に入るが、魔王城攻略のため、少しでも海岸線に向け距離を詰めたい。

(迷う場合じゃない。全ての知力を使って魔王軍を攻略して見せるぞ。ん? 魔王軍の動きが?)

だが、12時まで残り僅かなタイミングで、クワトロの特技「万里眼」が要塞の上の魔王軍の動きの変化を捉える。

クワトロも知力が上がったおかげで要塞の外壁の上に登った魔族たちの細かい表情まで読み取れる。

要塞の上の魔族たちが急に警戒音でも鳴り響いているのか急に慌てて動き出した。

指揮官の魔族が怒号を上げて指示しているようだ。

指揮官の視認できないほど離れているのだ、視線をこちらに向け腕を天に向けている。

(「放て」だと?)

海岸沿いになる要塞の上に立つ最高指揮官と思われる上位魔神が天高く掲げていた腕をこちらに向けて一気に振り下ろした。

『防御を! 攻撃が来ます! 速やかに防御態勢を!!』

【10月1日12:00】

魔王軍の指揮官の声に合わせて正確にこちらに魔族たちが砲門をこちらに向けてくる。

昼間でもはっきり見える砲台から発する強力な輝きに、同時にアレンは急いで皆に新たな指示を出した。

魔王軍がヘビーユーザー島に向かって30キロメートルの距離を一気に詰めて砲弾が襲い掛かる。

10月1日の12時きっかりに始まった戦いは、魔王軍の圧倒的な火力によって戦いの狼煙が上がった。

(海上の上空から調査中のクワトロを沈めたやつか)

この世界は剣と魔法の世界だが、弓矢や魔法でも、ステータスを底上げしたり、エクストラスキルを使っても、攻撃範囲が1キロメートルを超えるのは至難だ。

飛距離が長い分、動く対象に対して命中率や威力が下がったり、破壊対象の範囲が狭かったりする。

魔王軍はこういった点を理解しているのか飛距離を伸ばしつつ、攻撃威力が十分伸ばすための対策を練っていた。

クワトロの特技「千里眼」が要塞の外壁の上に取り付けられた数十メートルにはなろう巨大な砲台が無数に取り付けられていることを確認する。

周囲を数十人の魔族たちが取り囲む、何やら魔力を送り込むと、砲台全体に描かれていた幾何学模様の文字を金色に浮き上がらせていた。

魔族たちの魔力を一気に吸って、詠唱する時間もなく、すぐに砲台は発射準備を完了したようだ。

十分に魔力を取り込んだ砲台の上部に取り付けられている砲身の口から、漆黒の砲弾が轟音の共に弧を描きながら舞い上がる。

ギュオオオオオン!!

空気を切り裂いた摩擦熱で空気を燃やしながらヘビーユーザー島の上部目掛けて襲い掛かってくる。

砲弾の側面に魔族たちの使用する文字が浮かび上がり、弾道が変わり、ヘビーユーザー島の中でもアレン軍のいる場所目掛けて飛んでくる。

(明らかに軌道が変則的に修正されたぞ。クワトロを襲った奴と同じか)

「くるぞおおおおおお!!」

才能的にも耐久力の低いダークエルフの部隊に向かって直径5メートルにはなろう、巨大な砲弾が誘導されるように襲い掛かる。

(ハッチ! 子ハッチを壁にするんだ!!)

だが、アレンはこの状況に対応するべく作戦を考えていた。

この日に備えて数日間、虫Aの召喚獣が覚醒スキル「王台」と特技「産卵」を使用し続けたため、ハッチと子ハッチで3万体近くが、ヘビーユーザー島の前面から中腹までの上空を覆っている。

『ギチギチ!!』

虫Aの召喚獣から覚醒スキル「王台」で生まれたハッチや、特技「産卵」で生まれた子ハッチはアレンの指示を直接伝えることは出来ない。

共有することもできないため、3万の群れの中の大部分を占める子ハッチに対して、虫Aの召喚獣が迅速に指示するようアレンは伝えた。

子ハッチたちが砲弾のダークエルフの部隊へ襲い掛かる進路を遮るように、合わせて5体がかりで砲弾を捨て身で受けに行く。

ドオオオオオン

『ギチギチ!?』

『ギチギチ!?』

『ギチギチ!?』

パアッ

2体のハッチは無事であったが、3体の子ハッチが直撃を受けて鳴き声を上げて光る泡となって消えていく。

さらに、倒されなかったものの2体のハッチは陣形の遥か彼方へと吹き飛ばされてしまった。

ギュイイイイイン

5体がかりで威力を殺された砲弾だが、刻まれた幾何学文字がさらに金色に輝きだすと、急速な回転を再開する。

数段に渡って威力が発揮される砲弾のようだ。

『まだ砲弾は無事です!! 盾隊は防御してください!!』

「仕事だぞ。魔王城の大陸へ拠点を運ぶぞ。堅城壁!!」

盾使い部隊のライバック将軍が、自らが持つ巨大な盾に魔力を込めると、巨大な光の壁が盾の正面に現れる。

スキル「堅城壁」は、盾使いの耐久力に依存して守備の特化しており、抜群の防御力を誇る。

だが、砲弾の威力はまだ健在で、ドリルのように回転しながらライバック将軍のスキル「堅城壁」の光の壁を貫通しようとする。

メキメキッ

「堅巨盾!!」

「堅巨壁!!」

「堅巨盾!」

「堅巨壁!!」

10人以上がかりで星3~4つの盾使いたちが一斉に防御壁のスキルを発動する。

ようやく威力が殺され、推進力を完全に失った砲弾を島の端から海へ破棄する。

脅威が去り、アレン軍に安堵が広がろうとしたところで、クワトロ越しのアレンは魔王軍の要塞の外壁の様子を捉えた。

ドドドドドン

魔王軍はさらに魔力を込め、ヘビーユーザー島目掛けて今度は10台の砲台から砲弾を発射した。

『島を沈める気だ!!』

まるでアレンたちの動きを読んでいたかのような12時ピッタリの時刻で、魔王軍の砲弾によって戦いの狼煙が上がったのであった。