軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第785話 応戦準備7日目:集合知力②※他者視点

3日後に戦いを備えた7日目では、魔王軍はアレンたちと戦う準備を進めていた。

ルキモネという名の「集合知力」として作られた魔神王が、キュベルたちの眼下で、巨大な目玉と口を1つもち、無数の細かい目玉と触手の姿で静かにこちらを覗き込んでいる。

参謀キュベルは人智を超えた知能を持つ「集合知力」で六大魔天ルキモネを作り上げた魔獣兵研究所長シノロムへと視線を移した。

『それでシノロム所長。アレン君の到着時期を知らせるために態々僕を呼んだのかい?』

こんなの1日目で分かっていただろうと「忙しい中」という言葉を含みながらも、キュベルは不満を零した。

「なに、それはこれからじゃわい。オルドー総司令様にも説明しないといけないから、あくまでも時刻の計算も餌の提供も余興じゃ。それにこの施設の構想はキュベル様が考えたものでしょうが」

『ぬ? 我のためにルキモネの力を見せてくれたのか?』

この「集合知力」のある施設は参謀キュベルの直轄だ。

魔王軍の中において魔王軍総司令と参謀は甲乙付け難い最高位の役職のため、オルドーと言えども易々と入れない。

この場で作業する魔族たちもキュベル直属の配下たちのようだ。

「それではルキモネよ。魔力俯瞰図を起動せよ。魔力感知器からの情報を視覚化するのじゃ」

『はい。シノロム様! 魔力俯瞰図を起動開始!!』

オルドーが集合知力のことを「ルキモネ」と呼ぶのでシノロムも合わせることにする。

集合知力のルキモネは、名前で呼ばれて嬉しかったのか、大きく返事すると全ての目が見開いて眼球が輝きを増す。

数十万の目が懐中電灯やレーザーポインタのように天井へ向けて照射する。

真っ白な点で地図を描くように世界地図が現れる。

さらに黄味がかった点が大小の大きさで光を照射していく。

キュベルたちはプラネタリウムのように数十メートルに広がった光の造形の中で、白色と黄色で織りなす点滅か絵のようなものを見つめる。

『白色の光は地図だな。ん? 何やら黄色の光の量にムラがあるな。ここは転職ダンジョンがあるというラターシュ王国、S級ダンジョンも随分強く濃く輝いているな。我らの大陸も黄色く輝いているな』

要所を思い出すかのように、オルドーは白色の光で照射されたものが世界の大陸の国境線であることがすぐに分かった。

さらに、衛星から見る夜の地球の夜間光の照らされ具合のように、ある箇所では人口密集地のように光が強く、また砂漠の上を照らしたかのように光が弱い箇所があり、濃淡があることにも気付く。

『魔力量1以上の対象者は地上に12億6788万8830人、水上および水中3億2450万2589人、存在が確認できます』

ルキモネに厳しいキュベルやシノロムより、オルドーの理解に合わせて計算結果を報告する。

魔力がたった1でもあるものを一人残らず、数百万の圧倒的知力をもって、照射して目に見える形にしたようだ。

『む? 我らが大陸周辺に強力な光源があるぞ!!』

魔力俯瞰図を見てオルドーがすぐに『忘れ去られた大陸』の海岸線と一定に距離を保つように移動する強く発行する光を発見する。

「それはおそらく、聖鳥クワトロの成れの果てじゃ。何日も掛けても儂らの要塞の穴が見つからず、沿岸から情報収集しているのじゃろう。まったく30キロメートルという射程距離をよく分かっておるわい」

『ぬう、これも報告が必要なことだが、我に見せたいのはこれではないと?』

沿岸から情報収集するクワトロよりも大事な話があるとシノロムに次の報告を催促するよう睨みつける。

「ルキモネよ、魔力を100以上。バウキス帝国を拡大するのじゃ」

『魔力量100以上の対象者はバウキス帝国で2679万6442人です』

『ああ、なるほどね。ルキモネ君、条件はそのままに7日前の同刻から魔力俯瞰図を5秒置きの変化するよう僕らに見せて』

シノロムの指示を引き継ぐようにキュベルが新たな指示を出す。

パッ

パッ

パッ

『キュベル様畏まりました。過去52年分の情報記憶野からの条件付き抽出開始します』

『6日前、魔力量100以上の対象者はバウキス帝国で2551万7240人』

『5日前、魔力量100以上の対象者はバウキス帝国で2562万2217人』

『4日前、魔力量100以上の対象者はバウキス帝国で2579万6209人』

『3日前、魔力量100以上の対象者はバウキス帝国で2602万9217人』

『2日前、魔力量100以上の対象者はバウキス帝国で2637万1143人』

『1日前、魔力量100以上の対象者はバウキス帝国で2659万6735人』

『2時間前、魔力量100以上の対象者はバウキス帝国で2679万1102人』

バウキス帝国を拡大した光による立体地図には人員がどんどん増えており。

『ん? バウキス帝国の一か所で随分光源が膨らんでいるのはないか! ……ここは軍艦の造船工場がある港だな。魔力量のある者たちが集まって戦いの準備をしているということか!!』

オルドーは魔王軍総司令として各国の主要な軍事施設の場所を把握しているようだ。

「そのとおりですじゃ。こちらについての報告もあって、お二方をお呼びしたのじゃ。この軍港と同じくしてS級ダンジョンへの冒険者も日に万単位で増えております。また、武具を調達するため、鍛冶職人が多くいる村への魔導船の行き来も確認しておりますじゃ。他国についても同じく、軍艦や武具製造に必要な都市の人員増加やこのバウキス帝国への移動の確認が見てとれるのですじゃ」

『戦争準備か。アレンたちは各国を動かし、ここなら軍艦を用意しているとみてよいな』

軍の最高指導者としてオルドーがアレンたちのこれからの動きを予想する。

「そのとおりですじゃ。今からなら魔王軍を派遣することも可能じゃが、いかがされましょう?」

『……むう。敵の動きを前もって叩くか』

始める前にアレンたちの作戦を叩くいい機会だとシノロムは提案する

だが、オルドーは今の状況で魔王軍の戦力や軍港を攻めた時の影響について頭を巡らし、即答はしない。

『ルキモネはなんて?』

「一応、その後の影響も鑑みると推奨率は23%じゃな。5000億回の試算じゃが、ほとんど結果は変わらんよ」

『だよね』

『ぬ? どういうことだ? 攻めた結果、不都合が生じるというわけか?』

『そのとおり。今まさに膨大な人力と資材、そして時間を無駄に払ってくれているんだ。十分に労力を払った後、それを徒労に終わらせた方が絶望に叩きつけれて良くないかい? 二度と立ち直れないほどにね』

キュベルは仮面の下でニヤリと笑みを零した。

『なるほどな。二度と我らに歯向かえぬと言うことが道理か。だが、それは今後のアレンたちとの攻略法が分かっていることが前提だな。その軍艦を作ってどこから攻めてくるか予測できるということか?』

「さすがはオルドー総司令様、アレンたちにはこれまでの計画で多くの辛酸を魔王軍は舐めてきたと思いますのじゃ」

魔王軍とアレンたちはこれまでもずっと戦ってきた。

ローゼンヘイムへの侵攻では計1000万人でも落とすことが出来なかった。

邪神教の教祖を使った人間の魂の回収でも求めた数の10分の1程度止まりであった。

中央大陸への魔王軍の拠点を失うことになった。

プロスティア帝国の邪神復活でも神界への侵攻もアレンたちの邪魔が入り、魔王軍の戦力は大きく削られる結果となった。

『たしかにな。アレンたちには随分邪魔をされたものだ。それとこれに何の関係がある』

「全てのアレンの作戦をルキモネは記録として詳細を記録しておりますじゃ」

『おお! どう攻めてくるのか予想できるというわけだな』

「そのとおりですじゃ。さらに、現在の召喚獣を使った偵察と軍港の動きも加味しており……」

『シノロム所長、分かっていると思うけど「予想」するんだよ?』

『もちろんですじゃ』

『はい。アレンたちの攻略を誘導がほぼ完了しております。さらに効果的な対処法もです。確実にアレンの動きを「誘導」してみせます』

足元からルキモネの自信に満ちた声が響く。

どう攻めてくるのか予想しているんじゃなくて、どう攻めているのか現在の偵察の状況と対応への要塞による対応に差を設けされる。

これから始まるアレンたちとの戦いを有利に進めるため誘導させているとルキモネとシノロムは言う。

『おお、これは魔王様にもご報告差し上げねばな!! ん?』

『んん?』

「ん?

『なんでしょう?』

キュベルがオウム返しのように首をコテッとして仮面越しに頭を倒す。

シノロムとルキモネも同じく頭を倒して見せる。

『……もしかして。ルキモネがいれば我らはもっと上手く勝てたのではないのか? 50年前から記憶があったとさっき言っていたではないか』

オルドーはルキモネという防壁に特化した六大魔天がいることは魔王軍総司令として知っていた。

キュベルの報告からもこの施設に足を運んで誰がルキモネなのかすぐに予想できた。

だが、これほどの性能であることは聞かされておらず驚きを隠せない。

参謀の提案は魔王軍にとっての絶対だ。

オルドーであってもよっぽどの根拠があっても覆せない。

『まあ、黙っていて申し訳ないよ。だけどこれまでも作戦の根幹は揺らいでいないよ。ルキモネの性能が上がったのは、魔王様に頼んで魔神王にしてもらったのも理由だし。3体の六大魔天を失った結果、枠が3つ余ったし。まあ、最後に戦いを有利にするにはどれだけ「奥の手」があるかって話だよ』

作戦結果でこれまでもオルドーや今は亡きラモンハモンに攻められていたが、最も大事な部分は守ってきた。

それはルキモネより作戦を進めていく上での最低ラインは確認していたからだ。

おかげで作戦の立案者として厳しい立場であったとやれやれと両手を振るう。

『たしかに。今回の六大魔天の推薦について問題はないが、それならば、ルキモネを優先すべきであったか』

魔神王にするにも限界があるらしく、今回3体失った補充についても、10日間の猶予期間中に選定は進めているようだ。

「魔王軍から中央大陸を攻め、必要な才能のある素材を収取してくれたから試作が進み、今回のような成果につながったのじゃ」

『試作ではありません。私はルキモネ……』

集合知力と呼ばれてルキモネが不満を漏らす。

『ルキモネが誕生するずっと前から集合知力の研究は進んでいたと言うことか。50年も前から?』

「もっと昔じゃよ。このルキモネで試作8号体と聞いておるのじゃ。それで言うと儂も初代研究責任者の所長ではないと聞いておる」

どれほど昔から研究を進めておったのか、オルドーは息を飲んだ。

『これは神々を欺くために僕が始めたもの。だけど今回は手加減抜きの全力さ。アレン君たちもその背後の人間たちも皆まとめて絶望を与えてみせよう』

アレンたちを復活できないよう完膚なきまでに叩き潰すとキュベルは断言する。

『なるほど、次回の作戦に問題はなさそうだな』

『うんうん。そろそろ総司令の拳が飛んできそうだったからね。そうとシノロム所長、たしかまだアレンたちとの戦う準備があるってことだよね。こっちも魔王軍総司令殿に報告しておかないとね』

「そうですじゃ。こっちの究極魔獣兵の研究施設へ来てほしいのじゃ」

『おお! とうとう完成したのか!! 究極の魔獣兵器か!!』

「うむ、ぜひ見てほしいのじゃ」

『じゃあ、皆は引き続きアレン君の偵察の邪魔をしてね。ミスしたら集合知力になってもらうからね』

「はい!?」

「はい!?」

「はい!?」

失敗すれば集合知力に取り込ませるぞというキュベルの言葉に、タッチパネルを叩く魔族たちが絶句する。

キュベルはオルドーとシノロムを連れて、別の研究施設へと転移したのであった。