軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第777話 攻略準備3日目:剣神の報酬

アレンの首が剣神セスタヴィヌスの一振りによって切り落とされそうなところで、審判を務める第一天使ケルビンが手を上げ、アレンの勝利を宣言する。

「よ、良かったですわ……」

「ソフィアローネ様!?」

アレンが両腕を切り落とされる凄惨な状況にソフィーの意識が飛びそうになり、フォルマールが慌てて抱きかかえ体を支える。

『髪の毛でも俺の一部ってことかよ』

(ナイス審判)

アレンが必死に繰り出した斬撃によって、剣神の髪が数本、床板にハラハラと落ちている。

『……ほらよ、試合は終わりだ』

「わ!?」

一瞬の間を置き、剣神が勝負がついたことを認めたところで、アレンの試練が終わった。

(剣神術のスキルが切れたタイミングを狙っても髪の毛2、3本が限界か。ふう……まあ、剣だけの勝負だからね!!)

成長した仲間たちのバフをもってしても、武具神にして上位神の剣神と剣で試合することに限界があったようだ。

アレンは神界で、グラハンを召喚獣にし、覚醒スキル「憑依合体」によって各段に剣での戦いが向上した。

さらに大地の神ガイアに貴重な、膨大な神力が込められた神聖オリハルコンの剣を頂いた。

それでも所詮は召喚獣を扱う召喚士がメインの職業だ。

剣をメインに扱うクレナのような剣さばきは披露できないなと思ったところで、アレンの足の力が抜けていく。

『アレン殿!!』

ガチャン

アレンが口から自らの剣を落としたところで、覚醒スキル「憑依合体」を解除したグラハンは、体力を消耗したアレンを抱きかかえる。

「全く無茶しやがって……。おれたちの報酬のためによ」

ドゴラとキールがアレンの剣の側に落ちている両腕をそれぞれ拾い上げて、きれいに切り落とされた腕の断面に押し当てた。

体力を全快する過程で両腕は完全に結合し、傷跡は消えていく。

アレンを心配する仲間たちに割って入るように剣神が近づいてくる。

『試練は合格だ。おい、クレナ! 剣神流の奥義を伝授してやるからな。魔王との戦いまでに扱えるようにしてやるから覚悟しろよ!!』

「は、はい!?」

(秘奥義もね。皆にもね。約束は守ってね。うしうし、これで前衛と中衛の火力が上がるぞ)

報酬はクレナだけではなく、ドゴラ、フォルマール、イグノマスも対象だ。

「ほかの武具神たちへのご指導についてもお願いします」

『それはこいつら次第だな。お前らも見ていたな。そういうことだ! 期日がねえようだ。しっかり鍛えてやってくれ!!』

一緒に試合を観戦していた武具神たちにも指示を出した。

(試練は無事に終わったな。ん?)

アレンが今日の予定を考えていると、クレナが駆け寄ってきて、今にも感情が爆発しそうだ。

「もう、無茶は駄目だよ!!」

「え? ちょ、ちょっと、けが人なんだけど」

仲間たちを押しのけるような勢いで胸グラを掴んだクレナによって、アレンの足は地面から離れて宙に浮く。

一歩間違えれば、首まで飛びそうなほどの殺し合いにクレナは涙目で怒っている。

「たしかにな。俺もアレンに命懸けてくれって頼んでねえよ」

「全くだ。ルプト様助けに行けなくなるぞ」

ドゴラもキールもアレンを助けてくれない。

(あの、お礼言われずにいます。ん? 剣神様?)

報酬イベントは既に終わったよねと助けを求めるように視線を送るが、剣神はどうもアレンを見ていない。

『確かにな。これはお前に与えるべき報酬だな』

「お気持ちはありがたいのですが、私に剣神流の奥義を叩き込まれても活用できる術はありませんし……」

ツカツカ

歩み始めた剣神の行動の異変に気付いたのか、クレナはようやく落ち着いたのか、アレンを床板に下した。

アレンの背後に控えるグラハンの目の前に立つ。

『ぬ? 儂か?』

『……魂に不思議な穴があるな。これに力を注ぎ込めとそういうわけか。これはルプトの意思か……。面白い』

剣神は足元で、全長15メートルにもなるグラハンを見上げゆっくりと胸元に向けて手を伸ばした。

(なんか記憶にあるぞ。これはルバンカの時にみたいに……)

グラハンの腹に向けて手を差し出した剣神の行動にアレンは既視感があった。

シアがルバンカの協力の下、原獣の園の獣神ガルムの神殿で修業する際、風神ヴェスに封印された覚醒スキルを解除してもらった。

その際も、ルバンカに対して風神ヴェスが似たような行動を取っていた。

『儂に力をくれると言うことなのか……』

『そうだ。感謝しろ。その力で無茶ばかりする主を守ってやるんだな。貴様の忠義、見事であったぞ』

アレンが無理して剣神との試練に臨む中、主のために献身的な対応に、剣神は気付いていたようだ。

ズンッ

神力を込めた剣神の手がグラハンに向けられると、腹の中に貫通するように、力を取り込んでいく。

『ぐは!? な、なんだ!? 儂に力が!! 力が湧いてくるぞ!!』

バチバチ

命が閃光のように弾け輝きだすと、グラハンが自らの体の中から力が沸き上がることを感じる。

霊体として青白い炎に包まれたグラハンの体が金色に輝きだし、全身から命がはじけるような音で包まれた。

ブンッ

魔導書がアレンの目の前に現れ、漆黒の表紙に銀色の文字でログを表示させた。

『霊Sの召喚獣は覚醒スキル「剣士の忠誠」の封印が解けた』

「ぶは!? グラハンの覚醒スキルが解放されたぞ!!」

(なんだ、これは上位神に試練を超えて認められることが封印解除の条件だったのか)

古代神である風神ヴェスの力で覚醒スキルが解放されたことを知ったアレンは火の神や大地の神など、連絡の手段のある神々に、自らのSランクの召喚獣の封印を解除してほしいとお願いしたことがある。

答えとしては、そんなことできないと言われて、たまたま封印解除の条件が叶っただけかと思っていた。

剣神のおかげで、ただの「神」ではなく、「上位神」なら封印が解除できるとアレンの分析は進む。

風神は獣神の神殿に封印されていたが、剣神と同じ上位神だ。

剣神との修行が新たな力を得る機会だったことを知る。

「もう、アレンったら」

「うるさい、クレナ。今、分析中だ。午後の修行に戻るんだ!!」

『おう、そうだな。日程までに秘奥義までとなると修行のペース上げていかねえと行かねえな。クレナ、体得できねえと夜から飯抜きだからな』

「ひぎゃば!? 2倍で飯抜き!!」

クレナが剣神の厳しい言葉に思わず仰け反ってしまう。

剣神の言葉にクレナがドゴラたちと共にぞろぞろと剣神の道場に戻ろうとする。

(さて、俺は創生スキルを上げながら、グラハンの新覚醒スキルの分析をしてと)

『何が起きているのだ……』

「ケルビンさんも審判ありがとうございます」

『公平な審判をしたまでだ。ルプト様を何卒、救ってあげてほしい』

仏頂面のケルビンがアレンに頭を下げてお願いする。

「もちろんです。必ず神界にお返しします」

にこやかにケルビンに返答したアレンは剣神の道場に戻って分析を進めた。

剣神との試合からあっという間に時間が過ぎ、まもなく4日目になろうとしている深夜遅くだ。

「はぁはぁ。もう、無理かも……。夕飯もまだだし」

クレナが剣神の前で子供のように大の字になって床板に寝転がる。

人間界の剣士たちから多くの信仰を集める剣神相手に、このような態度を取れるのはクレナくらいだろう。

『ったく、仕方ねえ奴だな。6時間休憩してよいぞ。朝一でな、お前らもだ!!』

『そういうことだ。ドゴラも飯食って休みを取れ。明日はこんなもんじゃねえぞ』

『おい、ドゴラ。わらわの使徒なのだ。シャキッとしろ』

「お、おう……」

既にドゴラも疲弊が限界を超えており、誰に何を言われたのか分かっていなかった。

斧神に今日はここまでと言われ、火の神に檄を入れられているのだが、疲弊で朦朧としながら神器カグツチをかろうじて担いだまま、道場の外の休憩部屋に向かう。

「カブコの『栄養食』を何個でも食っていいからな!!」

イグノマスやフォルマールも修行が昼前までと各段に変わり、疲労困憊の中、道場外に置いていた拠点用の魔導具へと向かう。

草Hの召喚獣は特技スキル「非常食」で1個食べれば1日分の食事となるカブの見た目をした食料を実らせることができる。

覚醒スキル「栄養食」となれば100人分に増やすことができる。

芳醇な甘みもあり、調理が不要で長期間常温で置いていても腐らず、皮まで全て食べることができ、ゴミが出ず、 野戦食(レーション) としての側面がかなり大きい。

道場外に設置した拠点用の魔導具内の食堂にはカブコが数百個山積みにしてある。

「10個食べる……」

「俺は12個いける……」

クレナとドゴラが顔を向けずアレンに返事する。

「あの……。アレン様も休まれませんか?」

「あ? ああ、もうちょいで分析が完了する。それが終わったら少し休むよ」

ソフィーに先に戻って休むよう伝え、もう少し、グラハンの新しい覚醒スキルの分析を進めるとアレンは言う。

後ろ髪を引かれる思いのソフィーを見送ったアレンはさらに分析を進めた。

それからほどなくしてアレンは概ねグラハンの覚醒スキル「剣士の忠誠」の分析が終わった。

(やべえ。魔王戦前に超有用な覚醒スキルが手に入ったぞ! めっちゃ強くなった!!)

アレンは魔導書を見ながら目を輝かせた。

・覚醒スキル「剣士の忠誠」発動時のグラハンのステータス

【種 類】霊

【ランク】S

【名 前】グラハン

【体 力】4000/40000

【魔 力】40000

【攻撃力】40000

【耐久力】50000

【素早さ】40000

【知 力】50000+100000

【幸 運】40000

【加 護】耐久力5000、知力5000、心頭滅却

【特 技】霊斬剣改、霊呪爆炎撃改、マジックイーター改、ソウルセイバー改、戦士の咆哮改

【覚 醒】憑依合体、聖珠生成、剣士の忠誠

【覚醒スキル「剣士の忠誠」の効果・発動条件】

・体力1割以下時に発動可

・剣神術と瞑想のレベルが5上昇※

・物理耐性〈極〉付与

・全ての特技が「改」に変化し、効果2倍

・知力10万上昇

・半径1キロメートルの周囲の物理耐性〈強〉付与

・魔力と霊力が秒間3%回復(幻獣化と重複可)

・憑依合体、戦士の咆哮との重複発動可能

・効果は1時間

・クールタイムは1日

※習得していない場合は付与された状態で5上昇

(こんなものか……。明日の予定は)

『……まったく』

深夜、アレンはようやく道場内の畑の前で、グラハンの分析が進み、意識を手放した。

拠点の魔導具へ戻る気力もなく畑に埋もれるように眠ったアレンに対して、メルスが小さくつぶやいて呆れる。

気を失うように眠ったアレンを拠点の魔導具まで背負って運ぶメルスであった。