軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第756話 魔王軍の狙い、アレンの分析

魔王軍が3方向に分かれて戦闘が開始して1時間が経過した。

魔王軍は、時空神の時空管理システム、神界闘技場、シャンダール天空国に絞って戦闘を開始している。

最初の30分ほどの間は神々の戦闘参加が限定されており、応戦した天使、神兵や町人の神界人、守人の竜人、原獣の園から応援に駆け付けた獣人たち合わせて、数万という多大な犠牲が出た。

しかし、武具神、武神、属性神、精霊神など戦闘に長けた神々が、第一天使ルプトとアウラたち3姉妹の大天使たちの声掛けによって、続々と各戦線で戦いに参加する事態に発展し、魔王軍側の攻勢を削ぎ始める。

神々の試練に挑戦し、試練を超えた者たちがいるアレン、ヘルミオス、ガララ提督、ゼウ獣王子のパーティーが魔王軍との戦いに臨んだ結果、十分すぎる出鼻は挫いていると考える。

既に3ヶ所の戦線では魔王軍の魔神王こそ倒されていないものの、化身にして復活しても、魔神の損耗率は5割を超え、上位魔神も6割を倒すことができた。

それでも魔王軍は各前線で戦いを継続していることにアレンは疑問を持ち始めていた。

(魔王軍の狙いはなんだ。たとえマーラが元大天使で魔法神に仕えていたからって神界闘技場や天空国にそこまで詳しくはないだろ。リスクに対してリターンが合っていないぞ。これはそれほどの作戦なのか?)

天使の活動範囲は自らが仕える神の神域などに限定されていることは、神界で活動してきたことで分かってきた。

実際10万年という長い時間を第一天使として活動し、他の天使に比べて行動範囲が広いメルスであっても、神界で知らないことは多い。

魔神および上位魔神1000体を投入し、魔王こそいないものの、魔王軍の最高幹部を恐らく全部投入する程の作戦の失敗がすれば、魔王軍の被害は甚大になるだろう。

魔王軍の必死な戦いから見ても、魔神王の口々に言う作戦の重要性からも、魔王軍全体の戦力を減らしてでも必ず成功させなくてはいけないことは分かる。

魔神王マーラの完ぺきではない不確実な情報でこれだけの戦力をかけてくることに違和感を覚える。

この状況の中でマーラはこの場を去り、作戦遂行のためにやったるぞ感むき出しのビルディガだけが残された。

「よっし、魔神王ってやつが残り1体になったぞ。これならいけんだろ」

「ええ、倒してしまいましょう」

『ふん、もう勝ったつもりか! 吾輩も甘く見られたものだな!!』

ルークの勝利宣言にソフィーが答え、ビルディガが鼻息を荒くし敵意をむき出しにする。

甲虫でメタリックで強固な外骨格の下から筋肉を膨張させ、前足の大鎌を振り上げ、今にも飛び掛かりそうだ。

(絶妙なタイミングだな。だが、お陰で敵に狙いが絞られたも当然だ。ならばやることは1つだ。えっと、マーラは……。デカブツのところか)

シャンダール天空国で戦況を伝える鳥Eの召喚獣の特技「鷹の目」がガンディーラとマーラを捉える。

魔王軍が時空神の時空管理システムを奪って1時間が経過したとき、マーラの行動によって、無数に分かれた選択肢の全てが集約され1つだけ残った。

「時空神デスペラード様、少し作戦があります。ついてきてください。失礼ながら仲間というわけにはまいりませんので肩に触れますね」

(抵抗したら目の前の甲虫野郎に攻められて死んじゃうよ)

『え? は?』

この場に残してもさすがに1柱で戦うのは厳しいだろうから、アレンは時空神の肩に手を触れると、仲間たちと共に鳥Aの召喚獣でシャンダール天空国の王都ラブール近くのメルスたちが戦っている市街地へ転移する。

鳥Aの召喚獣の覚醒スキル「帰巣本能」は自らと仲間を「巣」として設置した指定の場所に転移することができるが、味方ではないと一緒に移動することはできない。

味方ではない者を転移させるためには召喚士であるアレンが直接、対象に触れる必要がある。

神であるが構わず手を当てて転移すると、鳥Eの召喚獣など一部の召喚獣を残して、その場には魔王軍だけが残された。

『ぬ?』

戦意むき出しのビルディガが拍子抜けする様を何キロも離れた位置で様子を見る鳥Eの召喚獣が捉える。

「お、おい、ここって、はあ? どういうことだよ! これからあいつを倒すんだろ!!」

訳が分からないルークがメルスたちの戦場に転移したせいで思わずアレンに抗議してしまう。

「そうだ。何だこれは、戦っている最中だろう」

『そ、そうです。アレンさん、このままですとイシリスの元にいる……』

「すまないが皆、全てを説明している場合じゃない。魔王軍の狙いを確実に把握することが最優先だ。あと、魔法神の神域は魔王軍の狙いではないようなので心配いりません」

一刻を争う状況が状況だけにアレンは神である時空神の言葉すら遮る。

今この場で仲間たちに自らの思考の全てを伝えることはできない。

魔王軍側もビルディガだけであの場を守れるとは思えないくらい分かるだろう。

それでもマーラは最優先の目標達成のために動き出したと見て良い。

(神界闘技場は最大戦力の封じ込め。時空神の神域は時空管理システムの掌握。そして、この天空国が魔王軍の目的なのだろう。神域を断ち切るって言ってたオルドーいないし)

言葉にすると膨大な時間がかかりそうなアレンの思考が止めどめとなく脳内に巡る。

魔法神の神域は時空神が封印しているため、神域を切ることができるオルドー無しで、そう簡単に侵入することができない。

「ええ、一刻を争う状況です。ここはアレン様の作戦を優先させましょう。ご指示を!」

ソフィーがアレンのやり方に賛同した結果、他の仲間たちも時空神も言いたいことを飲み込んだ。

「助かる。ソフィーとルークは『メルス』を中心に加護とバフスキルを振りまいてくれ。クールタイムは解除済みだ」

(メルスもスピード勝負だ。ボンボンでスピード上げたら、武器は双剣に変えろ)

『ああ、分かった。あの裏切り者の天使を追うんだな』

丁度ローゼンが精霊神の祝福を振りまいたところだ。

メルスを最優先でバフを掛けるように念を押す。

「ローゼン様!!」

「ファーブル!!」

『はは! 大精霊神に呼ばれちゃったよ』

結構距離があるのだが、精霊神ローゼンとファーブルはソフィーたちが来たことに気付いているようだ。

緊迫した状況の中でソフィーとルークの顔がパッと明るくなりながらも、アレンの言うバフを掛ける指示を聞いて神技やスキルを使い、自らと契約した大精霊たちの加護を振りまき始めた。

アレンはソフィーたちに指示を出した時も含めて魔神王マーラの様子を注意深く伺っている。

マーラは魔導砲(極大)を受け修復に努めるガンディーラの頭部付近に近づく。

『それで、この辺一帯には対象の者はいないと言うことで良いのか?』

『……対象存在率極小。王城内潜伏可能性大。大王3階層滞在可能性大』

『分かりました。これだけ探し回っていないのであれば、そう考えるのが自然です。この場に注意を引けたことは良しとしましょう。このまま援軍を要請し、敵を引きつけなさい』

『援軍100体転移』

ブンッ

会話の途中で100体の魔神と上位魔神がマーラ中心に転移してくる。

どうやら先ほどオルドーがマーラに対して援軍を送ると言っていたので時空管理システムをシノロムが操作して送ってきたのだろう。

『上位魔神10体は私とついてきなさい。残りはこの場で奴らを蹴散らしなさい!!』

『ああああうああああ!!』

神界闘技場では武具神や武神、天使たちとの激戦で、魔神も上位魔神も最低1回は倒されており、全て損壊が激しくボロボロのゾンビの見た目となった化身となっている。

うつろな表情で声を荒げるが、マーラの指示には素直に従うようだ。

(マーラは王都ラブールへ向かうのか)

マーラとビルディガにはクワトロの特技「追跡眼」がついておらず、アレンたちのいる竜人たちの陣形内からかなり距離が離れており、鳥Eの特技「千里眼」により、マーラが何を話しているのかまでは分からない。

だが、王都へ向かうくらいの様子は見て取って判断できる。

(む? ビルディガが引っ込み始めたぞ)

アレンが天空国に来た理由はいくつかあって、主な理由は3つだ。

1つ目は、マーラの動きを確認するためだ。

2つ目は、精霊神たちがやってきてバフを掛けるタイミングだから、アレンたちもバフを貰い、クールタイムを解除したソフィーたちのバフや大精霊のバフをメルスたちに振りまくためだ。

3つ目は、ビルディガが何をするかで、天空国を狙っていると言うアレンの考えを確信に変えるためだ。

(俺たちは時空神の神域に戻るべきか)

『メルスはマーラを追ってくれ』

『ああ、分かった』

鳥Fの召喚獣の特技「伝達」を使い、仲間たちにも聞こえるようメルスが戦線から離脱し、マーラを追うことを全体に伝える。

ビルディガは時空神の神域のオルドーが切り裂いた1階層の隙間から、2階層にある時空管理システムへ移動する。

アレンたちがいなくなったことで2階層へ引っ込んだビルディガは神界からの撤退を要請する。

隙間から入ってきた鳥Eの召喚獣が見逃さず、ビルディガとシノロムの様子を確認しようとする。

『シノロムよ。鬱陶しいアレンどもがいなくなった。撤退を準備せよ。フンッ 羽虫が!』

『ピイイッ!?』

パアッ

隙間の中に入って魔王軍の様子を見ようとした鳥Eの召喚獣はビルディガの大鎌の一振りで光る泡となって消えていく。

他にもいた鳥Eの召喚獣は魔神たちの無数の魔力弾を避けきれず消されてしまった。

「はあ? 魔神を運べだの追加ユニットを魔王城から寄こせだの! あれもこれもできるわけないじゃろう!! まったく!!」

だが、わずかに聞こえたビルディガとシノロムの会話から、時空管理システムを使い、魔王軍の撤収を図っているようだ。

「いけない。やはり、ビルディガは撤退を選択したか。俺たちは戻るぞ」

「時空管理システムは取り戻さないといけませんわね」

『はい。悪用させるわけにはいきません』

メルスをマーラの下へ向かわせて、アレンたちは時空管理システムに戻る。

時空神の神域の1階層に転移したアレンたちを既に上位魔神と魔神合わせて40体ばかりになった魔王軍が迎え撃つ。

『……まだか。何しに行ったか知らんがまた戻ってきたようだ』

「まだじゃわい!!」

『仕方ない。お前たち時を稼げ……』

時空システムで撤退しようとするビルディガは、魔神たちをけしかけアレンの足止めをしようとする。

「ソフィーとフォルマールは援護を。ルークいくぞ!」

「おう!!」

アレンとルークが突っ込んでいく。

「うらあああああああああ!!」

アレンは上位魔神を相手に無数の斬撃を浴びせ、簡単にサイコロ状に切り裂き屠るのであった。