軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第742話 魔神王戦④取捨選択

時空神と魔法神の神域ではアレンたちの戦いは続いている。

魔神王マーラたちとの戦いが始まって40分が過ぎた。

「どうした? 集中力が切れたのか?」

『……あら、どうかしたのかしら? 色々聞いて私たちから何か情報が掴めるといいわね』

アレンが行う定期的な挑発を魔神王マーラは受け流す。

後衛にいる魔神王マーラから、前衛として戦う魔神王ビルディガに視線を移すが、2人の会話を耳に入れようともせず、無言、無表情で戦っているようだ。

(言葉の中に険が出てきたな。一層焦ってきていると見て良いのか。魔神たちの数を減らしているからだろうか。……もしかしたら1時間かそこらでバフは切れるのか? だが、助かる。丁度良いタイミングで勇者の試練が終わったぞ。3方面で戦況は好転してきたか)

アレン自身も剣を握りしめ、覚醒スキル「憑依合体」でグラハンと共に戦いながらも、マーラたちとはお互い数十万の知力による心理戦は続いている。

アレンたちが邪神の化身となった魔神たちを1体ずつ戦線に復活できないよう削っていきながらも、天空国、神界闘技場で戦況の変化が起きた。

魔王軍の侵攻から開始30分もしないころ、勇者ヘルミオスたちが武神オフォーリアの試練を超え、魔王軍との戦いに参加し始めた。

神界闘技場では当初、第一天使ルプトからの情報を聞いて修行中の天使たち、さらに武具神たちの応戦も始まった。

シャンダール天空国では回復やバフに優れたキールやロザリナ、神器を携えたドゴラ、シアなど、戦力が上がり、戦う竜人や獣人や天使の被害が少なくなりつつある。

当然、避難する神界人の犠牲も目に見て減少した。

1000体近い魔神や上位魔神は40分の間に200体近く戦闘不能にしたと、戦況を確認する鳥Eの召喚獣たちにより入ってくる。

魔王軍総司令オルドーとバスクに付けたクワトロの特技「追跡眼」の効果は有効なのだが、あくまでも追跡対象を観測するためのものだ。

対象の様子や会話が聞こえて良いのだが、視界のピントは対象者の背後に固定で動かせず、戦場全体を見るなら、クワトロの特技「万里眼」や鳥Eの召喚獣の特技「千里眼」には敵わない。

アレンは2体の魔神王の態度と3方面の戦況の変化から行動に移す時だと判断する。

敵の狙いが分からない以上後手に回るわけには行かない。

マーラたちがバフを振りまいてまもなく50分になろうとする。

このままじっくり数を減らしても勝てるかもしれない。

だが魔王軍総司令オルドーが時間を気にしていた以上、1時間という切り良い時間で魔王軍の動きがあるかもしれない。

だが、魔王軍の作戦がはっきりしない以上、リスクを取ってでも先手を取る決断をする。

「敵は数が減った。一気に押すぞ。誰も生きて返すな!!」

(30体減らした! ここからが勝負だ。ビルディガは絶対に逃すな)

数を減らすことを優先したアレンが改めて檄を出す。

アレンは後衛や中衛を中心に攻めて、敵の回復役やバフ役を十分に破壊したと判断した。

拮抗した戦場の中で数を減らし、畳みかけるタイミングを狙っていた。

3割減は、押し込み、勝ち切るのに十分な状況だ。

こちらの戦力が変わらない状況で、相手側の戦力が減るのは、割合以上の優位性がある。

「あ、アレン様、それはまさか、危ないですわ! ここにはたくさんの敵がいます!!」

ソフィーは何かを察して、アレンに慌てて止めようとする。

アンドレ戦では危なくて使えなかったが、まだ70体以上の敵がいる中、とても危険な技だ。

(ソフィーすまんな。戦況を覆すにはリスクを負わねばならぬ)

土の化身アンドレの範囲300メートルというおかしな攻撃範囲のため、グラハンの特技「戦士の咆哮」は発動条件がもろはの剣となるためだ。

「グラハン、戦士の咆哮を使え。今こそ、倒しきるぞ!!」

(ビルディガの体は俺のものだ!!)

『やるのだな。その覚悟、気に入った!!』

1000年前、騎士の見習いから長い下積み経験を経て、ギアムート帝国の近衛騎士団長まで上り詰めたグラハンは、アレンの全身に纏いながらやニヤリと笑ったような気がした。

覚醒スキル「憑依合体」によりアレンの体を纏いゆらめく青白い炎が、真っ赤に色が変わっていく。

(きたきた、久々の戦士の咆哮だ。ペクタンには感謝だ!!)

・戦士の咆哮時のアレンのステータス(+武器防具)

【体 力】78000/314987(現状/最大値)

【魔 力】370937

【霊 力】370937

【攻撃力】300887+50000

【耐久力】304631+12000

【素早さ】358674

【知 力】484832+30000

【幸 運】314994

【戦士の咆哮の効果と条件12章簡易版】

・発動条件は体力が最大の4分の1以下でないと発動しない

・体力が4分の1を超えると発動が止まる

・全ステータスが2割上昇

・剣術のスキルレベル1上昇

アレンのステータスが一気に跳ね上がる。

アレンはルバンカの加護の効果により体力が秒間1%回復する。

状態を維持するためには体力を4分の1に減らして現状維持しないといけない。

ルバンカのカードをホルダーから無くさないといけないが、こんな加護的にも戦力的にもはずすという選択肢はそうそうない。

状況が変わったのは草Sの召喚獣の加護「生命循環」を手に入れたからだ。

体力が回復した矢先から霊力に換えていくことができるようになった。

さらに、体力が減ったら瞬時に蓄えていた魔力から、特技「戦士の咆哮」の発動条件を満たした上で、順次送り出し、体力の数値を維持できる。

「アレンよ。無理はせぬよな! ここには多くの仲間がギリギリ戦っているのだぞ!!」

(ああ、分かっている。俺が死ねば、この場は全滅だ。セシルも恐らくな)

背後からフォルマールが特技「戦士の咆哮」だけが戦術ではないと大声で警告する。

アレンの召喚獣の特技や覚醒スキルは強敵との戦況を変えるほどの圧倒的優位性がある。

特技「戦士の咆哮」は戦力の強化に繋がるが、その分死にやすい。

危険を顧みるための復活系の特技や覚醒スキルをアレンの召喚獣は持っているがそれも完ぺきではなかった。

体力が減り過ぎた状態を維持すると言うことはそれだけ死にやすい。

アレンにはいくつか復活スキルがあるのだが、効果の恩恵に見合ったデメリットがあった。

【アレンの復活スキルメリット・デメリット】

・メリット:覚醒スキル「不死鳥」は死亡時、自動的に発動し蘇生できる

・メリット:特技「復活茸」は死亡時、死亡時に蘇生できる

・デメリット:覚醒スキル「不死鳥」は、対象がアレンのみ

・デメリット:覚醒スキル「不死鳥」発動後、全てのカードが消滅する

・デメリット:特技「復活茸」は、対象がアレン以外

・共通メリット:復活した後も、対象のバフは全て持続時間まで継続する

何でもアレンが死亡したら召喚獣は一旦消滅するらしい。

この辺りは精霊の園で精霊獣神との戦いで検証済みだ。

よって、アレンが死んだらクワトロもペクタンも一旦消滅する。

聖珠ポイントで再作成は可能だが、死亡時に2体の召喚獣は消えるため、ペクタンの特技「復活茸」は使用できない。

「おう任せとけ!!」

(集中だな)

体力が削られた状態で、ビルディガや化身となった魔神や上位魔神の中へ突っ込んでいく。

『む!!』

アレンの体の変化にビルディガはすぐに気付いたようだ。

斬撃を肩から生える一番大きな鎌状の腕で受ける威力が格段に上昇する。

「うおおおおおおおおおおおおおおお!! ソウルセイバアアアアアアアア!!」

強力な一撃が上段から振り下ろされ、強固なエメラルド色の外骨格を叩き切り、人で言うところの左肩に大きく剣が食い込まれる。

初めてビルディガを地面に膝から崩すことができた。

『がは!?』

『いけない!! デスファイア!!』

『させぬ!!』

咄嗟に放ったマーラの漆黒の炎であるデスファイアはアレンに届く前に、リオンが身を挺して守る。

「今です!! 遠距離攻撃を!!」

「ムートン、ひび割れた虫野郎に毒沼津波だ!!」

ビルディガが窮地の状況にソフィーとルークも勝負の時だと考えた。

体力が削れた状態で前線を押し上げて突っ込むアレンのサポートをしないといけない。

ソフィーは、大精霊たちを使い、魔神たちをアレンの元へ向かわせないようにする。

ルークは、外骨格が今の一撃で広くひび割れてしまったビルディガに対して、耐性を削る強力な酸の攻撃をお見舞いする。

『皆も、ビルディガを回復させなさい』

この場でビルディガが倒されたら、戦いが終わってしまうため、狙われまくって随分数を減らした回復役に回復を依頼する。

「むん! させぬ!!」

『げひゃぱ!?』

ビルディガに回復しようとした1体の頭部をフォルマールの矢が貫通する。

最終魔造兵器ギイは、倒された魔神や上位魔神たちを復活させるのにてんやわんやでビルディガの助けには行けないようだ。

「うおおおおおおおおおお!!」

『ぐぬぬぬ!?』

膝を地面についた状態で、4本から3本になった腕で必死にアレンの猛攻撃に応戦するようだ。

2人の間に火花が無数に現れ、衝撃波が生まれる。

戦いが激しさを増す中、他の戦線からの連絡がシノロムに入る。

クワトロの特技「追跡眼」が総司令オルドーの行動を捕捉している。

『シノロムよ! 神界に広がった魔王軍の回収はすぐにできるのか!!』

階層の切れ目の下にいるシノロムが答える。

「ふぁ!? ま、待つのじゃ。そこまでの設定はすぐにできぬぞ」

(ん? オルドーたちに何かあったのか)

シノロムの返事が良くないと判断したオルドーは、今度はマーラに語り掛ける。

『マーラよ。いつまでそこにいる。次の作戦に行動を移すのだ!!』

『急ぎなさい。この計画は魔王様による3界支配にとって必要なこと。回復役が狙われています。魔法防壁を……』

神界闘技場にいた魔王軍総司令オルドーが耳に手を当て、どうやらマーラに連絡を取っているようだ。

魔王軍最高指揮官の指示をマーラは聞き流してしまう。

『マーラよ。返事せよ!!』

『お、オルドー様!?』

『どうした? いつまで手こずっているのか! 予定から随分遅れていることが分かっているのか!!』

『も、申し訳ございません。戦いは順調に進んでおります』

特技「追跡眼」のお陰で2人の会話に整合性が生まれた結果、聞き取ることができる。

『だったら、さっさと天空国に行かぬか!! こっちは武神までやってきて手が終えぬわ! こっちから100体ほど魔神を連れ、天空国へ攻めよ。今なら容易なはずだ!!』

『わ、分かりました! 時空転移!!』

この状況で魔神王マーラの周りに魔法陣が現れる。

怪我を負ったビルディガたちを置いて、マーラはこの場を後にしたのであった。

『ま、マーラ様!!』

魔神たちが魔王軍幹部の1体であるマーラがいなくなり絶句し、困惑が広がる。

『狼狽えるな……。間もなく答えに近い。全ては作戦通り進んでいる』

『し、しかし!!』

『落ち着け。吾輩らはこの場を離れるわけには行かぬ!! そう、これが答えだ!!』

メキメキ

マーラが転移し残された魔神王ビルディガが最後の力を振り絞るように自らの肉体を変貌させ強化を図るのであった。