軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第739話 魔神王戦①分かれた戦線

オルドーたちがいなくなった時空神の神域1階層は、数が減ったものの、合わせて200体ほどの上位魔神と魔神たちがアレンたちを、弧を描くように囲む。

(ふむ、魔神、上位魔神合わせて200体か。さすがに神界闘技場に多く魔神を割いたか。態々神界にやってきてバフ掛け始めたのは、武具8神や闘神3姉妹との戦いに備えて効果を少しでも長持ちさせたかったってことか)

アレンは臨戦態勢を取る魔神たちにいきなり攻撃を仕掛けることはない。

(メルス、注意しろ。天空大王でも何でも使ってルプトにも状況を伝えてくれ。神界が大ごとになるぞ)

メルスは別に元第一天使だったからと言って、ルプトと意識を共有しているわけでもないし、神界にいる神々や天使と情報伝達する特殊な力があるわけではない。

特技や覚醒スキルの能力がメルスの全てだ。

『ああ、分かった。危機的な状況のようだな。天空大王がアウラと交信ができる状況のようだ。倒すこともそうだが情報収集にそっちも努めてくれ』

現在、メルスは無理やり天空大王の元へやってきて非常事態であることを説明している。

その天空大王だが、どうやらルプト単独でアレンたちとやってきた理由は、配下のアウラたち3体の大天使は神界における情報連携に努めているようだ。

天空大王経由でアウラ、そしてルプトへの連絡は可能なようだ。

元第一天使とあって、真摯に話を聞いてもらえる中、さらに、天空国目掛けてバスクや魔神たちが向かっていることを伝えるよう指示する。

守人の竜人はもちろんのこと、王都ラブール内にいる神界人の神兵も総動員して対応するようだ。

すぐに動き出した理由はメルスが元第一天使だったこと以上に「先の火の神フレイヤへの進軍を超える進軍だ」と伝えたおかげだろう。

数年前、神界は魔王軍に侵攻された経験が活かされた形のようだ。

前回の侵攻では天空国が狙いではなかったが、情報は神々と共有され、前回以上の動きで対策が立てられているのだろう。

ルプトがまっさきに神界闘技場に救援を求めているのもそれが理由のようだ。

だが、神界闘技場へも総司令オルドーと参謀キュベル、そして大量の魔神たちが向かっている。

(もちろんだ。シャンダール天空国の王都目掛けている。この速度だ。お前も見えているだろうが、あと10分もせずに戦闘になるぞ)

雲の上にある小さな村や街、インフラ系の構造物は全て無視して王都を目掛けている。

クワトロの特技「追跡眼」は、対象の追跡をすることが目的のため、対象がどこにいるのかが大事で、周りの細かな状況は付属に過ぎない。

バスクの会話の様子から眼下に点在する村や街以上の情報を収集している。

(バスクが情報ダダ流しだな。メルスも共有してくれ)

『王都はまだか、あ? こら!!』

『バスク様、あと10分ほどで目的地です』

『なんで王都の真ん前に飛ばねえんだよ! 転移の意味がねえじゃねえか!!』

『私に聞かれても分かりません!?』

『ああ、神界人ぶっ殺す前に準備運動したくなったな!』

『ひいい!? ご勘弁を!!』

飛行系の魔法をかけているのか、飛びながら上位魔神の1体を詰めている。

『……召喚獣の枠はこっちでももらえるのだろうな。当然、Sランクもだ。召喚獣の枠も最低40は欲しいぞ』

(……正直、余裕がない。そっちに40体ならこっちでも40体かな)

『ふざけるな! ルバンカ、マクリス、マグラはこっちでもらうぞ。マクリスがいないと天空国は全滅だ!!』

(ペクタンとマクリスを2つの戦場で共有しよう。マグラとルバンカか。余裕があったら返してくれ)

『余裕などない。アビゲイルの部隊は王都に1万人しか駐留していないみたいだしな。どうやって守れと言うのだ!!』

第一天使として生まれたメルスにとって、天空国は故郷で、天空大王は自身の親というわけではないが、自らを輩出した血族に当たる。

だが、私的な理由を無視しても、これから始まるのは一方的な大虐殺になるのは目に見えている。

アレンたちもパーティーが全員揃っておらず、戦力をかき集めようにも人手が全く足りない。

天空大王経由の情報で武具神たちも参加しないと、大虐殺が始まりかねない。

天使程度では魔神の群れ相手に戦いにならないだろうが、これ以上の戦力の追加は厳しい。

冷汗を流し、アレンに余裕がないことがマーラにも伝わったようだ。

『あらあら、アレンよ。何を考えているのかしら。何かお困りでしたらお姉さんが相談に乗って上げましょうか?』

「本当ですか!? では、魔王軍の目的を教えて頂けますか?」

アレンは明るい顔を作り、魔神王マーラに相談してみる。

『何を言っているの? そんなことを言って魔王様の悲願が叶わなかったらどうするのですか?』

「魔王の目的があって、こんなことをしていると。それは今の俺ならまだ邪魔ができるということですね」

『……まあ! 本当に頭の回る子ね』

アレンの言葉に余裕のあったマーラの表情が引きつってしまう。

既に心理戦は始まっていた。

完全に絶望的な後手の状況で、勝ち筋を見出さなくてはいけない。

『マーラよ、黙っていろ。目標があるのだろ。こいつは我らの心を読む』

ビルディガがもっと警戒心を持つようマーラに忠告する。

『え、ええ。申し訳ありませんわ』

『確実かつ迅速に倒せ。ことを成さねばならん』

(むむ、さっきからポーカーフェイスの虫野郎が俺の邪魔をしてくるな。だが、邪魔されるのが嫌で迅速に事を進めたいのね。ん? 切れ目から触手が出てきたぞ。また1体敵が追加か)

「おい、何だよ。気持ちわりいな!」

『ギイイイイイイィ!!』

「ひょひょひょ、儂の研究の最大成果じゃて。究極魔造兵器ギイちゃんよ! 儂の研究の邪魔をする全ての者を一掃するのじゃ! これをこうしてこう、やはり儂の仮説は正しかった。これで無の空間へも転送できるじゃて」

割れ目の下で、シノロムがニタニタしながら時空神の転移システムを弄る。

『ギイイイイイイィ!!』

オルドーが割いた1階層と2階層の大きな切れ目の下から、ウネウネとした無数の触手があふれ出し、とうとう巨大な目玉を押しつぶすように変形させ、無理やり1階層に這い出てくる。

『ふふ、ギイちゃんも参戦してくれるのですね。では、勝ったも同然ですね』

「そんな1体増えたくらいで負けるとは思えんが」

『ビルディガ様に黙っているよう仰せつかっておりますわ』

(ぐぬぬ。これ以上は何も言わないか。今の経緯と分散させた魔王軍はこんな感じか)

マーラたち魔神王や魔神たちと対峙しながらも、いま起きた状況を整理する。

【ここまでの魔王軍との経緯】

・2体の魔神王が時空神を執拗に攻める

・アレンたちが誘導されてやってくる

・時空神が神域に神力を込めたタイミングで転移システムを掌握

・転移システムにより300体の上位魔神と700体の魔神が襲来

・バフを全力でかけ、魔神王、上位魔神、魔神は魔法神・時空神の神域、シャンダール天空国、神界闘技場の3方向に分かれる

【3手に分かれた魔王軍の配置戦力状況:戦闘前】

①時空神・魔法神イシリスの神域

・魔神王ビルディガ、魔神王マーラ

・シノロム、最終魔造究極兵器ギィちゃん

・上位魔神50体、魔神50体

②神界闘技場

・魔神王オルドー、魔神王キュベル

・上位魔神200体、魔神500体

③シャンダール天空国王都ラブール

・魔神王ガンディーラ、魔神王バスク、魔剣オヌバ

・上位魔神50体、魔神150体

【アレンたちの配置戦力状況:戦闘前】

①時空神・魔法神イシリスの神域

・アレン、ソフィー、フォルマール、ルーク

・クワトロ、グラハン、リオン、他召喚獣40体

・マクリス(①③共有)、ペクタン(①③共有)、他召喚獣40体

・8体の大精霊、8体の精霊、8体の幼精霊

・セシル(修行中)

・ララッパ団長(避難中)

②神界闘技場

・クレナ

・ルプト、武具神の下で修業する天使軍2万体

・アレン残りパーティー(修行中)

・ヘルミオスパーティー(修行中)

・ガララ提督パーティー(修行中)

・竜王マティルドーラ(修行中)

③シャンダール天空国王都ラブール

・メルス、ルバンカ、マグラ

・マクリス(①③共有)、ペクタン(①③共有)、他召喚獣40体

・守主アビゲイル率いる竜人軍およそ1万(王都待機分)、獣人100人

※小説とは思えないほど、文章だけに頼らないあまりにも分かりやすい戦況解説

(こう見ると、魔神や上位魔神が一番少なくて助かるな。マーラの言うとおり、速攻で皆殺しだ。生きて帰れると思うな。慈悲はない。数ならこっちの方が有利だからな。ハッチ、アリピン、王台に産卵だ。数でこの空間を埋め尽くし押し切るぞ。デンカとチューも活躍してもらうぞ)

『ギチギチ!!』

『ギチギチ!!』

敵は100体ほどで、こっちは虫Aと虫Bの召喚獣がそれぞれ100体ずつ産卵で数を増やすことができる。

おかげで数の有利はこちらにあるようだ。

お互いの陣形を埋め尽くすように広がっていく。

なお、この1階層は1辺10キロメートルを超える巨大な建造物で、お互いの召喚獣や魔獣を何万体も出しても空間全体を埋め尽くすことはできないほど広大だ。

『雑魚を何体出しても同じことなのに……』

(言ってろ。狙いが分かった時にはお前らの詰みだ)

密集的な陣形によりあまりの数にお互いの姿が召喚獣たちによって、見え隠れしてしまう。

『背後の杖持った奴らだ。分かるな』

「ああ、分かっている。 ……真強引、むん! 真轟雷弾、真金弓箭」

アレンの会話中も淡々とスキル「真強引」で威力を上げていたフォルマールが、隙間を縫うように、2発の矢を魔王軍側にお見舞いする。

ドパンッ

ドパンッ

『ヒギャッパッ!?』

『ネギロッパッ!?』

戦闘を開始したのはアレンたち側だ。

お互いの陣形の間を無造作に動き回る隙間からフォルマールが必中の一撃をお見舞いする。

狙う相手は陣形の後方から魔王軍たちにバフをかけている者たちだ。

1体は頭部を粉砕され、もう1体は胸部に大きな穴が開き絶命する。

(目くらましを使い、雑魚を削り、回復役、バフ役を先に処理するのは王道だ。瞬殺して他の戦場を支援せねば)

「素晴らしいわ。フォルマール!!」

「お褒めの言葉は勝利の後でお願いします。ソフィアローネ様」

(ん? なんで、一方的に攻撃された? 今も余裕そうだし。だが、魔神どもはフォルマールの一撃で随分慌てていたけど)

ニヤニヤするマーラと同胞を一瞬で2体倒され驚き慄く魔神たちが対照的に見えた。

『ふふ、それがどうしたの? ねえ、ギイちゃん。寝坊助さんを起こしてあげなさい』

『ギィ!』

頭部を吹き飛ばされた上位魔神に巨大な瞳を向け、クワッと見開くと怪光線が照射される。

『ヒュゴゴッゴ!?』

ベキベキ

頭部を吹き飛ばされた上位魔神の頭を無理やり血肉で蘇生するようにおぞまじい化け物がゆっくりと立ち上がろうとするのであった。