軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第736話 襲われた神域②

ルバンカの一撃で床石に叩きつけられたバスクの状態をビルディガが確認する。

バスクの目にはいつの間にか弓矢が突き刺さっていた。

『………っち、追い打ちか。うめえじゃねえか』

「ふん、頭を貫く予定だったか。随分固いな」

フォルマールが舌打ちをしながら、自らの役目を十分に果たせなかったことを毒づいている。

いくつもの攻撃が折り重なる刹那の中、ソフィーを背後に中衛のポジションについていたフォルマールは大精霊と召喚獣たちの一斉遠距離攻撃でビルディガの大回転が弱まっていくことに気付いた。

自らは、矢による攻撃をビルディガ相手にはせず、スキル発動時、攻撃の威力が増すスキル「真強引」を2回発動させ、攻めの瞬間を待っていた。

空中に浮いたタイミングをルバンカによって地面に叩きつけられ、受け身も取れないバスクの目を狙い、貫通力の高いスキル「真金弓箭」で眼球に矢を突き刺した。

『げしゃしゃ!! おいおいおいおいおい、イケメンになったじゃねえか。バスクよ。もう片方の目を刺してもらえよ、なあ、おい。マジで受けるぜ!!』

『うるせえよ。オヌバ。黙って剣やってろ』

痛みを感じていないのか、目に刺さったフォルマールの矢を平然と目玉ごとくり抜いて床石に捨てたバスクが、刀身を振るわせて喜ぶオヌバを落ち着かせる。

オヌバの下品な笑い声が巨大な1階層の広間に響く中、既に詠唱を止めた時空神がアレンの元へやってくる。

前衛はアレン、ルバンカ、リオンで固めている。

中衛はルーク、フォルマール、大精霊たちだ。

後衛はソフィー、クワトロ、マクリス、マグラが務めている。

そのほか、召喚獣たちも自らの役目に合わせた立ち位置で2体の魔神王をけん制する。

『……アレンさん、無事、各階層への移動制限をすることに成功しました。これで他の階層への移動に制限をかけました。もちろんセシルさん専用の試練空間へも私の許可なく入ることはできません』

アレンたちが時間を稼いでくれたお陰だと言う。

「……助かります。これで心置きなくやれますね」

時空神がその力をかけて戦闘員ではないララッパ団長たちのいる魔法神の研究所やセシルの試練空間へのアクセスできないようにしたと言う。

『オヌバよ。いい加減にせよ』

アレンたちが臨戦態勢に入る中、いつまでも高笑いする魔剣オヌバをビルディガが注意する。

『あん、うるせえよ。お前がアクシリオンの奴らなんぞを過大評価するから、俺がこんな芋臭ぇ奴の魔剣やらされてんだろ。あとちょっとで勝てたんだ! なのに奴らはもう少しってところで武装解除しやがって! アマンテ様に申し訳ないと思わねえのかよ!! この糞虫野郎が!!』

『今そんな話をしてる場合ではない。我らは成すべきことを成した』

ビルディガに注意されたのが思いのほか逆鱗に触れたのか、魔剣オヌバは仲間だと思えぬほど罵声を浴びせる。

(良く喋る魔剣だな。だが、原獣の園の攻略の経験は、オヌバとビルディガの立場をより明確にしてくれるな。ビルディガは虫Sの候補だし、生け捕りは確定と。飛んで神界に入る虫め。網は持っていないがしっかり弱らせて捕獲してくれる)

仲間のシアの試練達成のため、原獣の園の各地を回り、かつて神界を支配していた神々の歴史を知ることになった。

神界には法の神アクシリオンと光の神アマンテが支配しており、それぞれガルムを筆頭に12柱の獣神で構成する法天獣神衆、魔神オルドーを筆頭に8柱の神々で構成する光魔8神将を従えていた。

【名前の由来とかの読者用メモ】

アマンテに仕える:光「魔」8神将

アクシリオンに仕える:法「天」獣神衆

魔王に仕える:六大「魔」「天」

※12獣神⇒法天獣神衆へ変更

創造神エルメアが人々を従えていた法の神と光の神を倒し、今の世界があると言う。

魔王軍の幹部の中には、何故か旧世界を支配していたと言われる神々が在籍しており、ビルディガもオヌバも光魔8神将に在籍していた過去があった。

(さて、原獣の園攻略の答え合わせとも言うべき魔王軍の会話も聞けたことだし、早々に倒すぞ)

『すみません、時空神様。私たちが攻撃を仕掛けますので、動きを封じることはできますか』

『もちろんです。私の得意とするところです』

鳥Fの召喚獣を使い、アレンが魔神王たちに聞こえないよう時空神に指示すると力強く頷いて返事してくれた。

自らの神域はもちろんのこと、妻である魔法神の神域が荒らされている状況に協力を惜しまないようだ。

『ルバンカ、リオン、お前たちは左右から一緒に前に出て一気に攻めるぞ。ルークはデバフ、フォルマ―ルは追撃を忘れるな!!』

アレンは仲間たちにも改めて、攻撃のタイミングを合わせ、一気に勝負に出ようと判断する。

相手がどのような隠し玉を持っているのか分からない。

時空神も戦闘に協力してくれるなら、早目に倒してしまいたいと考える。

空間を支配する時空神なら相手を拘束するのも余裕だろうと思ったが、そのとおりのようだ。

(明らかに新たな作戦指示が通っていることは分かっているのだろうけど、攻めてこないな。先ほどの攻撃を防がれたのを警戒しているのか)

立ち位置、武器の持ち方、顔の表情からも、アレンたちが次に何をするかなど、相手側に悟られて当然のことだ。

『……』

『……』

無言の睨み合いの中、時空神が十分に神力を貯め切れたようだ。

『 次元拘束(ディメンションバインド) !!』

バスクとビルディガの両者の四肢を、圧縮したような無色の輪で掴み、空間に貼り付けにするように、その場から動けないようにする。

(ん? 何故、今回は待った。時空神がスキルを発動する時間を与えたようにも見えたし)

今回の戦いに何か違和感のようなものをアレンは感じ始める。

『お! なんだ、こりゃ!? う、動けん。ぬおおおおおおおおお!!』

バキキッ

だが、バスクの慌てようと必死に引きちぎろうとする様は、アレンの圧倒的な知力をもってしても、嘘偽りはなさそうだ。

甲虫面(こうちゅうづら) のビルディガの表情は分からないが、2体とも時空神の空間に貼り付けにする神力を練って作られた拘束具を力任せに無理やり破壊しようとしている。

いくつか気になる点はあるが、確実に倒す選択をする。

「今だ!!」

アレンの掛け声で召喚獣たちと共に拘束された2体の魔神王たちに対して攻撃の指揮を取る。

『ち、くそが!! 外れろおおおおおお!!』

迫りくるバスクが慌てて拘束具を外そうとしたためヒビが生じる。

『させません!!』

時空神が改めて神力を込め直し、ひび割れた拘束具の補修しようとする。

ピシッ

(ん? 地面が)

前進し攻めるアレンたちのいた足元から何かが割れる音がした。

ヒビは一気に大きくなり、漆黒の闇が溢れたかと思うと、低く太い声が鳴り響く。

『 神切剣(インフェルノブレード) !!』

パアッ

ザバッ

天井にも届きそうなほどの漆黒の闇の衝撃波は、床石を粉砕し、アレンたちのいた場所を切り裂いていく。

その場にとどまって、魔神王を拘束し直そうとして手を伸ばしていた時空神の両腕は直撃を受けてしまった。

覚醒スキル「自己犠牲」の対象としていた石Cの召喚獣がみがわりとなって受けたダメージに耐えられず、一気に光る泡となって消えていく。

『ぐは!? ば、馬鹿な!? 各階層の神域移動は完全に封印されてるはずです!!』

両腕を肘関節から切り裂かれた時空神が理解できないと絶叫する。

時空神がその持ち分を最大限発揮したにもかかわらず、下の階層からの直接攻撃に理解が追いつかないようだ。

『何を騒いでいる? 我の力は神の理を割く。貴様ごとき下級神に我が止められる道理などないわ』

切り裂かれた下の階層から底無しの絶望が溢れてくる。

その声は怪我を負った時空神に対する心配する思いなど微塵もなかった。

たった今、スキル「神切剣」を発動したと思われる使い手が漆黒に溢れる大剣を担ぎ、床石に出来た大きな裂け目から、ゆっくりと浮き上がってくる。

外套をはためかせ、上半身は服を着ておらず筋肉隆々の青い肌の魔族がそうなのかと思う。

短く刈り込んだ髪、魔族特有の紫の肌だ。

頭部のコメカミのあたりからそれぞれ長い角、眼球の白目は漆黒だ。

『ふふ、アレン君久しぶりだね。全ては作戦通りということだね。マーラよ、時空神の神域への介入よくやってくれた。何事も「序盤」が大事だよね』

全てをあざけ笑う道化師の格好した何度もあったことがある魔王軍参謀のキュベルが次に浮かび上がってきた。

『お褒め頂きありがとうございます。このマーラ、今こそ、キュベル様のお役に立てるときと存じておりますわ』

大男にキュベルと左右に対を成すように上がってきたのは、漆黒の3枚組の翼を生やし、紫の肌、漆黒の瞳、こめかみから角を生やした、魔王軍直属の六大魔天の一角であるマーラだ。

(プロスティア帝国にもやってきた魔王軍幹部がそろい踏みだな。バスク同様に何だか強化されているが魔神王ってやつになっているのか)

『……どうやら魔王軍は総力戦でしかけてきたようだな』

(ああ、そのようだ。そして俺とバスクは躍らされたと)

視界を共有していたメルスの言葉に、アレンは状況を理解しつつあった。

『あん? 俺たちに任せるっていっただろ。何で、お前らが来んだよ!!』

『作戦会議開いてもお前は話を聞かないからな。お陰で上手くいったぞ。馬鹿に全部話すと上手くいくものもいかなくなるからな』

『あん? 何だと。お前も知っていたのか! この虫野郎!!』

頭に血が上ったバスクが切れ散らかすと、総司令オルドーが割って入る。

『……そういうことだ。今はその大事な作戦の時だ。暴れさせてやるから今は黙っていろ』

オルドーは肩に担いだ大剣を振り上げたかと思ったら、一瞬にして空中を切り裂いた。

パキッ

バスクとオルドーを動けなくしていた拘束具を容易く破壊して見せた。

「なんていうことでしょう。この神界に魔王軍の幹部がそろい踏みですね……」

「ソフィアローネ様はもっとお下がりを!」

絶句するソフィーを自らの体で壁にするフォルマールも普段の無表情と違い、緊張で汗をにじませる。

だが、召喚獣たちに囲まれたオルドーは、アレンたちに視線を送ることもなく割けた床石へと叫んだ。

自分たちの作戦を優先させているようだ。

『それでシノロム所長よ。管理システムの掌握は順調なのか!』

「はは!! まもなく全ての制御は儂の思いのままでございますじゃ。ひょひょひょう!! なあ、ギイちゃんよ。そっちの配線をこっちにつなぐのじゃ」

『ギイ!!』

割れ目の下の階層では魔王軍たちが時空神の管理システムを支配しようと画策しているようだ。

『管理システムの完全制御などできるはずがない!!』

『それができるのですよ。そのために私がいたのですから。この階層の封印に力を注力してくれたおかげで楽に事が運べましたわ』

絶句する時空神にニヤリと笑みを零す魔神王マーラは自信ありげに断言するのであった。