軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第731話 報酬を貰うべき者たち

生命の循環に帰った霊獣たちに対する大精霊神イースレイのありがたい言葉が続く。

アレンは心の中で早く終わってくれという言葉を念じ続ける。

大精霊神も豊穣神も心が読めるようで、たまにアレンを見てため息をついた。

『あう、あああ…』

宙に浮くベビーカーに乗ったバタバタと手を上げて、はるか先にいる大精霊神を掴もうとしている。

「ホマル様、もう少しお静かにお願いしますね」

第一天使を生んだ王妃は、上位神である豊穣神モルモルに名と力を与えられ、将来神へ仕えることが約束されたホマルにたいして、敬意を示しながらもポンポンと優しく叩き落ち着かせる。

(第一天使ともなると永遠の命が与えられ限りなく神に近いらしいからな)

メルスは10万歳で魔王軍参謀キュベルに倒されて命を落としたが、双子の妹のルプトは老いなど全く感じない。

剣神セスタヴィヌスに従う第一天使ケルビンは8万歳だった記憶している。

アレンは時間を持て余して、悠久の時が生まれたら、どんなやり込みができるのか考える。

『ここからはるか離れた原獣の園でも多くの霊獣が溢れていましたが、竜人たちは荒れ果てた土地へ渡り、それはそれは厳しい環境の中、必死に槍を握りしめ獣人と協力を得て、狩りに勤しんでいると聞いています。間違っていませんね?』

大精霊神は霊獣ネスティラドやシャンダール天空国での霊獣狩りだけではなく、原獣の園で起きていることを獣神ギランに確認する。

『ええ。霊獣が跋扈する環境に耐え、獣人と共によく頑張っていますよ。なんでも原獣の園で取れた貴重な資材を神界人に献上しているとか?』

(売買についても触れてくれて助かる。今こそ霊石収集の恩を返す時だ!)

アレンが大精霊神にお願いして獣神ギランには来てもらった。

力が欲しいアレンには膨大な量の霊石が必要であった。

数千万、数億を超える霊石は、信仰ポイントに替え、その結果、魔王軍と戦うために必要な貴重な霊力回復リングに替えた。

その結果、大地の迷宮を攻略し、霊獣ネスティラドを狩るのに大きく貢献できたと確信する。

膨大な人員を投入した礼はどうすればよいか、アレンはずっと考えていた。

対象者が数十万人とはあまりにも多すぎる。

天空国に残された竜人も含めると数百万人にもなる。

1人1人に恩恵を感じられるほどの礼をするには学園都市をいくつ作る必要があるのかというほどの膨大な費用がかかる。

資産価値が数百倍に神界では、アレン軍を全軍動かしても、金銭的な報酬は難しい。

ならば立場ならどうだ。

そもそも竜人は自らの立場や役目に強く拘る性分のようだ。

竜人としての誇りや尊厳に礼を換えることができるのではないのか。

鎮魂祭の話を聞いてアレンは今回の話を大精霊神に持ち掛けた。

アレンが竜人について考えている中、ギランは静かに圧をかけて天空大王を見ていた。

原獣の園にある全ての物はそこに住まう神々のものだ。

少なくとも、獣神ギランの許可を取って持ち出したりはしていない。

「け、献上ではございません。きっちり取引をしていると聞いています。そうだな! エピタニ伯爵よ!!」

沈黙に耐えられず、貴族中でも前列の方に並ぶエピタニへ大声で叫んで確認を取る。

「は!? そのとおりでございます。適正な価格、いえ大変良心的な価格で買取しております!!」

(かなり言い値で買い叩かれているってペロムスからも聞いているからな)

取引に時間をかけている余裕はアレンにはなかった。

仲間たちが神の試練を超えていくためにも、魔王軍との戦いのためにも大量の信仰ポイントが必要だった。

資材の売買にしても、多少無理しても学園都市の開拓にすぐに金が必要だった。

多少取引で負けても良いと時間を優先させた。

尊大な神界人の高位貴族で商人のエピタニが一手に、原獣の園で取れた資材の取引を行ってきた。

自らが守りたい産業や職人のためという理由で、取引内容や高額な関税をかけられても、こちら側に問題を解決するにはあまりにも時間がかかる。

迅速な取引を優先するため、価格面で我慢するところもあった。

『なるほど良心的な価格ですが、私は良いのですが原獣の園を治めるガルム様への資材の持ち出しの許可はとったのでしょうか?』

「へ? え? そ、それは……」

雲に浮いた国であるシャンダール天空国と違い、荒れ果てたとは言え神界に浮く巨大な大地である原獣の園は、草木の潤いこそ少ないものの、神界人にとって資材の宝庫だ。

『執拗に責めているわけではないのです。誰に感謝するのか分かっていますねと聞いています』

「もちろんでございます! ガルム様はもちろんギラン様へも大変感謝しております!!」

天空大王の答えは大精霊神の求めているものではなかった。

『……私は心を読めます。そして、今は貴重な祈りの時間です。たった1つの問いに答えていただきたいのですが、確認ですがこれだけの戦果を挙げた竜人も獣人もないがしろにはしていないし、今後もしないと言うことで良いですか?』

大精霊神は何が足りないのかはっきりと口にさせることにしたようだ。

一切のウソも偽りも認めないという態度に広間の空気が変わった。

「おい、アレン殿よ。何をしたと言うのだ?」

「アビゲイルさん、今は大事な問答を行っています」

状況についていけないアビゲイルがアレンに小声で問う。

「もちろんです。霊獣を狩る竜人は神界人にとっても誇りでございます。おかげで私たちは神々に仕える天使を育み、このように神界だけではなく人間界を支えることができるのです。メフスト=ド=シャンダールが神界人を代表して誓いとさせていただきます」

天空大王は自らの名をかけて、上位神が2柱のほか4大属性神全ての前で、竜人の立場をはっきりとさせる。

『分かりました。人の世は人が治めるべきでしょうから、今の天空大王の言葉を信じましょう。報酬の儀へ移ってください』

「は! 此度の霊獣ネスティラドはアレン殿率いるパーティーによって倒されたと報告されています。第一天使ホマル様のため、霊晶石を天空大王陛下に献上したアレン殿がまた1つ、人類史に残す戦果を挙げましたので、大精霊神様より報酬があります。ほれ、アレン殿!」

ジーゲンの語尾が強まるのは、この報酬の流れで竜人に一切触れないことに自らも気付いているのだが、このまま予定通りの式典で話を押し通したいようだ。

(ジーゲンから聞いた流れのとおりになったな。報酬に元々、アビゲイルたち竜人は考えていなかったと。ネスティラドを倒したのは俺たちなのは間違いないがな)

アレンは事前に今回の鎮魂祭の流れについてメモ紙をジーゲンから渡されていた。

相応の報酬を求めるようジーゲンから事前にレクチャーを受けている。

「……報酬でございますか?」

『ん?』

アレンがまるで唐突に話を受け、理解できないのか復唱するような態度に、大精霊神は反応をして見せる。

だが、アレンはペクタンに会いに行った際に、今日の話はついている。

「おい、事前に説明しただろ! 報酬を言うのだ!!」

進行役のため、大精霊神に背を向けたジーゲンが小声ながらもアレンに責め立てる。

「……申し訳ありません。私は報酬を頂くわけにはいきません」

「な!? 何を行っておるのだ!!」

アレンの前に跪いている天空大王が思わず立ち上がり、神々の前で向き直ってしまう。

『天空大王よ。いかがされましたか?』

「い、いえ……」

これ以上の問答するのは難しいと改めて跪いた。

『褒美はいらないと……。ですが、アレンさん、あなたたちは魔王軍という地上の脅威と戦う身にあると思っていますが、私の報酬は期待できないといますか?』

「申し訳ありません。決していらないと拒絶するような非礼な話とは違いまして、既に魔法神様より頂く予定の報酬がございます」

『ほう? ああ、なるほど。たしか魔法神の報酬のために霊獣ネスティラドは狩ったのですね』

事前の話のとおり大精霊神が話をしてくれる。

「そのとおりです。これから予想される厳しい魔王軍との戦いのため、頂く報酬が分散されては困るのです。魔法神様の報酬が、仲間のために強力な魔導の深淵ではなくなる可能性があります」

『……それは筋が通った話です。ですが、数十万年のという永久にも思える神界の歴史において、災いの権化を狩った報酬を神が与えなかったという事実は残すわけにはいきませんね』

「では、先程の話に戻りますが、私たちに協力頂いた竜人や獣人にするのはどうでしょう。彼ら大勢の協力をもって霊獣ネスティラドを狩ったのは紛れもない事実です」

『筋の通った話ですね。ええっと、アビゲイルさんといいましたか?』

「我でございますか!?」

『そのとおりです。この鎮魂祭の締めくくりは、あなた方の武勇の賞賛をもって、褒美を与えるべきかと思います。ギランさんも竜人と獣人の頑張りがあったことを認めているところです』

「褒美……。急に言われても」

今回の鎮魂祭でジーゲンより一切事前説明もなく、参加するだけの存在だと思っていたアビゲイルが困惑しているようだ。

「うむ、たしかに我ら神界人と友好関係を築く竜人に褒美を与えられることは、天空大王として素晴らしいことだ」

天空大王はそう言って、自らが横に退いて、アビゲイルが大精霊神の玉座の前に行けるように道を開けた。

大精霊神が褒美を与えると言い、天空大王が態々退き道を開けた状況に、まるで押し出されるようにアビゲイルが神々の前に立つ。

「これは失礼しました」

アビゲイルは理解が追いつかないまま、立ち呆けてしまったことに謝罪して、改めて神々の前に跪いた。

『何でも良いですよ。さあ、報酬を求めなさい』

状況が理解できないホマルを除いて、皆がアビゲイルの報酬を求める。

(よしよし、これで丸く収まったかな)

前回、ネスティラドの倒した実績を譲ろうとしたアレンがこれで良かったのだと納得する。

「で、でしたら」

『はい。人類史に刻まれる功績です。何を求めますか』

「では、今後も霊獣を狩れるよう錘を頂きたいです」

アビゲイルが、武器が欲しいと大精霊神に求めるのであった。