軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第723話 アンドレを目指して②

アレンたちは新たに召喚獣にしたことにより得た、因果律調整(中)によって、階段や攻略に必要なアイテムの引き当て率を上げた状態で、24体の鳥Aの召喚獣と共に階段を探す。

ダンジョン内にはたまに店があり、攻略の時間短縮につながる爆炎草や備超炭、ツルハシ、スコップなども物色するし、アレンとの距離によっては店内に転移することもある。

【18階層・残り19:55】

「よし18階層だな。残り5体になった。ソフィーは精霊神の祝福を!!」

「はいですわ! 精霊神様、私たちにお力を!!」

光る雨が降り注ぎ、アレンたちのステータスが一気に増加し、さらに、クールタイムが完全にリセットする。

チューチュー

仲間たちに指示をしながらも、アレンはダンジョン内で手に入れた栄養剤を吸いながら含まれる糖分で脳の疲れを癒す。

(や、やばい。12256通りの道を暗記させられたんだけど。50階層に向けてアダマンタイトのスコップがないと脳がパンクするがな。爆炎草は見つけたけど備超炭は店売りの方が見つけやすいから宝箱は無視してと)

10階層の宝の番人は存在せず、宝箱だけが放置され、中には爆炎草が入っていた。

既に備超炭、爆炎草、アダマンタイトの鉱石を見つけ、工房エリアでハンマーで叩けば、50階層の大迷宮に大穴を開け、ショートカットできるアダマンタイトのスコップを製作できる。

高速で移動する鳥Aたちがどの道順を進んだのか。

行き止まりだったら、どの道が未踏なのか。

分かれ道だけでなく通路の形状も暗記する必要がある。

発見した鳥Aの個体とアレンたちの距離なら覚醒スキル「帰巣本能」は惜しむのか。

階段と店の距離から先に覚醒スキルを使うのか。

貴重なアイテムがあるが階段の距離が離れすぎていて諦めるか。

ほぼ無限に近い選択肢と確率を秘めたアンドレ狩りの大地の迷宮攻略は、圧倒的な知力をもってしても短時間で考えることが多すぎて、アレンの頭は限界に達しつつあった。

「……なんか調子悪そうね」

冷汗を垂らすアレンの体調はあまりよくなさそうだということがセシルにも伝わる。

これほど無理させたのはいつぶりだろうかと言葉を選んでいるようだ。

「いや、そんなことないぞ。これから大迷宮が控えているからな。必要なアイテムを手にいれないと大迷宮は越えられない。回復の泉でクールタイムのリセットも必要だ。アンドレ狩りの時間も残さないといけないし。……あれ、これはちょっとやばいかもしれないな」

階層によってかかる時間も求められることも違うので油断しないように言おうと、攻略方法を整理しながら解説する。

だが、アレンの視界がぐらりと揺れ、天地がひっくり返るような浮遊感を覚える。

「もう、分かっているわよ。って、アレン、鼻血が!?」

「あ、あれ?」

セシルの質問に答えることで限界に近かった脳の疲労により、自然とアレンの鼻からポタポタと血がたれ始める。

「もう、ちょっとは横になりなさいよね」

「すまない」

「まあ!? セシルさん、よろしいのですの? 魔法のスキル上げが必要ならわたくしが代わりますけど」

セシルにスキルレベル上げは大事だよねとソフィーは語気を強めて言う。

「大丈夫よ、ソフィー。少し休ませたらきっとよくなるわ。なんだか表情は良くなってきたし」

セシルが髪を撫でてあげるアレンの体調は、精霊神の祝福の光の雨を浴びて次第に落ち着いてきた。

マグラの背の上で、素直にセシルの膝枕になりながら、アレンはダンジョンの天を仰ぐ。

ソフィーが絶句し、その横でルークは呆れている。

「大丈夫なのか。ここから先、ソフィアローネ様のお力でさらなる速度を手に入れたのだぞ。この作戦はアレンの知力あってのものではないのか」

視線を前方に固定し、警戒を怠らないフォルマールがアレンの方を向かずに、尤もなことを言う。

精霊神の祝福で移動速度が上がる中、鳥Aの召喚獣たちも距離を早め、アレンとは別の道を進んでいく。

階段を後から追いついた個体たちも神技「精霊神の祝福」のバフを受ける距離まで近づいたかと思ったらものすごい勢いで飛んでいく。

大地の迷宮は時間になると強制的に外に追い出されるが、攻略中で死んでも助かることはない。

奥深くでアレンの行動に支障が出たら、パーティー全体が危険になる。

それはソフィーの身を案じるフォルマールとして当然の思考のようだ。

「負担は速度が上がっても問題なさそうだ。知力が10万以上も上がったからな」

元々知力上昇の魔法具で固めたアレンが、知力が上がる鳥Aの召喚獣を大量にフォルダーにある。

鳥Aの召喚獣の「巣」の設置は、1カ所に限られるため、10カ所近い神界や人間界に設けた巣の設置した個体たちは、今回の攻略に持ってこれていない。

だが、加護の恩恵はカードにして魔導書のホルダー内にいるだけで受けられる。

実際は40体の鳥Aの召喚獣によるバフがあり、指輪も知力特化にして今回の攻略に臨んだ。

チューチュー

「もう行儀が悪いわね。よだれがたれているわよ」

膝枕をしてもらいながら、アレンは疲れを癒すため栄養剤を吸う口元をセシルが甲斐甲斐しくハンカチで拭いてあげる。

・大地の迷宮攻略用のアレンのステータス(+武器防具)

【体 力】204770

【魔 力】254514

【霊 力】254514

【攻撃力】193539+50000

【耐久力】190939+12000

【素早さ】246895

【知 力】359827+30000

【幸 運】207895

(さて知力39万弱か。精霊神の祝福さまさまだな。必要なアイテムはとっとと手に入れて、店に寄る回数を減らし、思考を階段に集中させるぞ)

【50階層・残り12:03】

攻略時間がそろそろ半分になろうかと思うところで、アレンたちはアダマンタイトのスコップの鍛造に成功し、階層全体がアダマンタイトの通路となった大迷宮に到着する。

「よし……」

「ちょっと、何でアレンがスコップ握っているのよ。貸しなさい。私が掘るから」

引きも運も絶望に悪いアレンからスコップを奪おうとする。

スコップ、ツルハシ、ハンマー、鍵など大地の迷宮では攻略に必要な工具やアイテムが手に入る。

単純に店で完成形として売っている物もあれば、スコップのように、爆炎草、備超炭、鉱石をハンマーで叩いて作り上げることできるものもある。

なお、ハバラクが持つ神器の大地のハンマーはスコップを叩き上げることができるが、無制限に持ち込み可能だ。

それは大地のハンマーが「装備枠」だから、アイテム持ち込み不可の制限には入らないという。

おかげでハンマーを探す手間が省けた。

アレンは目を見開き、セシルを叱責した。

「セシル、分かっていないな! 俺には『因果律調整(中)』の加護がある。確率がある万物あらゆることが俺の有利に働くのだ。二度とパーティーリーダーの決断を邪魔すんじゃない!!」

「わ、分かったわよ。なんか、ごめんなさいね……」

アレンの気迫にセシルは折れて、スコップの使用を譲る。

カッ

アレンがアダマンタイトのスコップを掘ると、大迷宮の漆黒の床石にぽっかりと大穴が開き、板の階層に通じる。

スコップの耐久は2回から5回なので、最低2回は使え、今回は壊れることはない。

「よし。降りるぞ。残り時間が半分を切るぞ。次は回復の泉を探すぞ!!」

アレンの掛け声で仲間たちは改めて意識を高め、攻略に向かう。

【60階層・残り8:03】

アダマンタイトのスコップがアレンの手の中で光る泡となって消えていく。

仲間たちが予想出来ていたのか小さくため息をつく中、セシルの怒りが爆発する。

パアッ

「ちょっと、アレン。何で、たった2回でスコップが壊れるのよ!!」

「ぐ、ぐ、ぐるぢい……」

(おかしい……。期待値でも3回が平均なはずなのに)

両手で胸ぐらを掴まれ、喉を締め上げられ、なんとかか細い声を上げた。

冷めた視線だけを送るフォルマールたちは誰も助けてくれないようだ。

先ほどと同様にアレンが壊れなかったアダマンタイトのスコップを大迷宮の時短攻略のために使用すると、大穴が開くとともに光る泡となって砕け散った。

「それでどうするのだ。まだ10階層ごとに大迷宮は続くのだろ。新たなスコップを探すのか?」

助けることもなく憐みの視線を送るフォルマールが、淡々と今後の作戦を確認する。

現在も広い視野で 土塊(つちくれ) を寄せ付けまいと警戒を怠らない。

セシルがフォルマールの言動に落ち着きを取り戻し、アレンを解放した。

「げほげほっ。いや、回復の泉を探せたおかげでクールタイムリセットされた。状況を見てソフィーに神技「精霊神の祝福」を使ってもらう。ここからはアイテムは無視で階段に集中しよう。寄り道は無しだ」

50階層以降もスコップの素材は手に入る。

下の階層ならレアなケースだが宝箱や店からアダマンタイトのスコップの完成品が手に入ることもある。

だが、店で引き当てる確率が低いし、材料を集めるにしても作成に必要なアイテムが厳正されており、70階層までに作れるとは限らない。

実際、1階層から50階層までの攻略の過程で作れたアダマンタイトのスコップは1つだ。

確率の低い宝箱、店の選択を捨てて浮いた時間で大迷宮を力技でごり押しするとアレンは言う。

「なるほど、『運要素』のない堅実な作戦だ」

ニヤリと笑みを零したフォルマールの言葉がアレンの胸に刺さる。

【80階層・残り1:58】

アレンたちはようやく80階層へ到着した。

(ギリギリだな。だけど良かった)

大迷宮をごり押しで攻略したが、その分時間が過ぎてしまった。

(さて、こいつは霊獣じゃないからな。倒せていないし普通にいたな)

大広間の中央には、前世で昔見た、亀の怪獣映画を彷彿させるように、後ろ足でどっしりと立ち、亀の甲羅を背にし、腹筋が分かれたような腹を見せている。

背中の甲羅には金色に輝くオリハルコンが無数に伸びており、圧倒的な耐久力と共に近づくものを寄せ付けない。

『ん。我はアンドレ、大地の神の眷属であり、土の化身よ。……お前たちか、また攻略にやってくるとはな』

小山ほどの大きさの体を起こすとこれまで戦ったどの魔獣よりも大きい。

前回同様に今回も律儀に名乗ってくれるようだ。

全長300メートルにはなろうオリハルコンの怪物であるアンドレがとうとうアレンたちの前に姿を現したのであった。