軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第721話 残り1体

アレンたちが大地の迷宮に入るようになって5日が過ぎた。

24時間挑戦して24時間の休みを経て再度挑戦するため、今回は3回目の挑戦となる。

目標はセシルのレベル上げのために大地の迷宮にいると言われる亜神級の霊獣だ。

1体でも亜神級の霊獣を狩れば、大地の迷宮を攻略する目的は概ね達成する。

アレンたちが召喚獣、精霊たちで隊列を組んで進んでいる。

メルルたちやガララ提督たちがいないため、48体の枠限界まで召喚獣マシマシの攻略構成だ。

「うおおおおおお!! いそげえええ!!」

アレンは叫び仲間たちに檄を入れながらも、左手にかけた腕時計を見るように、ミニ土偶を顔まで手繰り寄せて見る。

【72階層・残り00:00:45】

10分を切ったため秒針も表示されるようになり、ミニ土偶の目がハザードランプのように点滅し、催促されているようだ。

(ふぁ!? 残り45秒だ。せめてこのオリハルコンだけでも!)

隊列を待ち伏せていたかのように漆黒に輝く集団が、正面のT字路の左手から躍り出てきた。

ハニワとコマイヌの姿をした者たちが敵意むき出しに襲い掛かってくる。

下の階層になってアダマンタイトの材質が強化されており、ステータスは10万を超える数十体の集団だ。

ギョッとしたセシルが背後を見ると店番が鬼の形相でアレンたちに向かって走ってくる。

「ちょっと、後ろから店番がいるわよ!!」

『泥棒発生。ハニワ部隊、コマイヌ部隊は泥棒を退治してください!! ハニワ部隊は……

何度も同じ発言をしながら壁からアダマンタイトのハニワやコマイヌの部隊を誕生させ続けている。

「メルスは左手から来た奴らの盾になれ!! マクリスとマグラは後方の店番を氷漬けにしろ! あとは任せたぞ!! もう転移できるツバメンたちはいないんだ!!」

『やれやれだ! 無茶ぶりばかりしやがって!!』

『足止めするのらああああ!!』

『このような形で余を封印した場所にくることになるとはな……』

メルスとマグラが悪態をつくのを無視して、T字路の右手へ突っ込んでいく。

アダマンタイトのハニワやコマイヌが右手にもいたが、戦いを避け全て躱す。

10体に構成した鳥Aの召喚獣の覚醒スキル「帰巣本能」は全て使用して、階段まで一気に転移することはできない。

大地の迷宮のルールで削除して再召喚は許されないため、召喚獣が覚醒スキルを使用するとクールタイムを待たなくてはいけない。

なお、53階層で見つけた「回復の泉」とソフィーによる神技「精霊神の祝福」を使用してクールタイムをリセットした上での覚醒スキル使用済みだ。

「見えたぞ。階段だ。駆け込め!!」

アレンたちはハニワやコマイヌの攻撃を避けながら隊列を維持したまま、階段を飛んだまま下の階層に突っ込んでいく。

仲間たちが全員下の階層へ到着して何秒も経たないところでミニ土偶の目がカッと光った。

『時間切れです。大地の迷宮入り口へ転送します。泥棒をしたアイテムについても、下の階層へ入りましたので報酬として没収は致しません』

丸24時間に渡る攻略が終了し、アレンたちの視界は大地の迷宮入り口に一気に切り替わる。

大地の迷宮は24時間以内に99階層を目指すダンジョンで、毎回ダンジョンの構造が変わり、時間になると、このような形で迷宮の外に追い出されてしまう。

「よっし。神聖オリハルコンが『また』手に入ったぞ。これで鍛冶が捗るわい」

神聖オリハルコンを両手で掲げるハバラクは24時間無休で活動したとは思えないほど元気ハツラツだ。

「いえいえ。せめて十分な睡眠と食事をしてからにしましょう」

「そうか? そうだな! だが最近、地上のオリハルコンとの違いが分かってきて鍛冶が楽しいんだ! がはは!!」

地上のオリハルコンのほとんどが魔法神イシリスの造ったダンジョンなどで手に入る魔造のコピー品だ。

大地の神が神力を込めたオリハルコンの方が魔法神イシリスの物よりも、武器なら攻撃力、防具なら耐久力が圧倒することが多い。

なお、魔法神イシリスのコピー品は、製造が安定しているのか、攻撃力、耐久力が安定しており、神力をあまり込めていない大地の神のオリハルコンよりも性能が高くなることもある。

また、魔法神イシリスのものとの違いで大地の神のオリハルコンを「神聖オリハルコン」と呼ぶ。

「俺腹が減ったぞ」

「そうですわね。ゆっくり食事にしましょう」

お腹をさするルークにソフィーが答え、フォルマールは無言で2人の後をついていく。

24時間の労働から解放され、ハバラクも仲間たちが安堵で包まれる中、はらわたが煮えくりかえる者がいた。

「ちょっと、全然レベルが上がらないじゃない!!」

24時間の攻略をした後とは思えないほどの脚力でドロップキックした両足はアレンの頬へと吸い込まれていく。

「へぶあ!? ま、待て。すまない、セシル。タイムだ。命だけは! 仕方ないだろ! どこにも亜神級の霊獣どころか、霊獣もほとんどいないんだから!!」

蹴り上げ倒したアレンは慈悲を乞うがセシルの怒りは収まらない。

体勢を崩して倒したアレンの両足を掴んで逆海老ぞりを極める。

両手をバタバタしながら言い訳を並べるが、セシルは聞くことはなかった。

セシルの怒りは無理もなかった。

元々セシルは、1体の亜神級の霊獣を狩れば、この大地の迷宮での狩りは終わり、時空神の試練に臨む予定だった。

20日以上かかるアイアンゴーレム狩りよりも、大地の迷宮で亜神級の霊獣を狩れば1日で終わる目算だった。

しかし、既に3回の挑戦と2回の休みで5日が過ぎてしまった。

当然この間もスキルレベルを必死に上げ、ノーマルモードの10倍必要経験値が多いのだが、まもなく才能レベルが6になろうとしている。

レベルが上がらない理由は、20階層に1回出てくると言われるボスも、10階層など指定の階層にいると言われる宝の番人すらいない。

アレンがレベル250になった以降もメルルたちによる霊獣狩りはポツポツと続いていたのだが、このボスや番人たちが主に亜神級の霊獣たちなのだが影も形も見なくなった。

(おかげでボス戦を最小限に抑えることができたし、このパーティーで64階層まで行けたんだけど。い、痛いいい。ゆるちて!?)

ロザリナの強力なバフ、十英獣のテミの道案内、ロゼッタの罠検知無しでもボス戦を省いたおかげで攻略が進んだ。

(だけど、それだけじゃないような)

激しい痛みに襲われながらも 性(さが) なのか、アレンの頭の中で分析が進む。

3日72時間による攻略の中でアレンの中で1つの確証があった。

メルルたちが大地の迷宮を攻略する際もアレンは大地の迷宮を手伝ってきた。

その時も鳥Aの召喚獣が先行して階段やダンジョン内にある店の位置を探すこともあったのだが、発見の確率が明らかに変わっている。

アレンや10以上に分かれた鳥Aと鳥Eの召喚獣の組み合わせによる階段の発見確率はもちろんのこと宝箱の内容や引きも良くなった気がする。

おかげで、フルメンバーで臨んだ前回よりも仲間たちのバフや協力が少ない中、宝の番人を探す手間をかけても、最高72階まで到達することができた。

『それは儂の加護「因果律調整(中)」のお陰じゃな。こういう時にこそ効果が発揮するのだがの………。何か大変そうだな』

一緒に転移してきたリオンが憐れむ視線を送りながらも、アレンの心を読むように答えるがセシルの攻撃からは助けてくれないようだ。

【神Sの召喚獣の加護「因果律調整(中)」の効果】

・選択時の正解補正がつく

・幸運依存で効果に相乗効果がある

『……一体何しておるんだ』

最近暇をしているのか、一度攻略して、姿を現すようになったのか、大地の神ガイアがハバラクの工房から当たり前のように出てくる。

「ちょっと! 霊獣がいないじゃない!!」

セシルが今度は大地の神にも噛みついてくる。

『おいおい、そんなことを言われてもな~。レベルを上げたんだろ。だったら大丈夫って話だしな』

「何階のどの部屋にいるのか言いなさいよね!!」

『そんなこと言うなよ。霊獣は最近、天使からの供給も止まってるし、それもお前らが狩りまくったせいだろ』

「じゃあいないのね!」

『だからはっきり言えないって話をしてんだろ。分かんない嬢ちゃんだな~』

セシルに無茶ぶりを言われ、スキンヘッドの頭をさすりながら、大地の神は困った顔を浮かべる。

(セシルが大地の神に嚙みついておる。おかげで助かったぜ。だが、セシルのお陰でこれは答えが出たんじゃないのか。レベルが10上がる確約はあるが詳細は説明できない。何故なら攻略のヒントになってしまうから)

解放されたアレンは大地の神と荒ぶるセシルとのやり取りから今の状況の理解を進める。

大地の迷宮には主に二種類の敵であったり、ボスであったり、店などを管理する者たちがいる。

霊獣と 土塊(つちくれ) と呼ばれ、霊獣は天使たちが大地の迷宮に運んできて、土塊は大地の神ガイアが造っているようだ。

※人の場合は作る、神の場合は造る、創造神の場合は創る

※人であっても力があれば造るに至れるし、アレンは「創」生の力がある

【霊獣と 土塊(つちくれ) の違い】

・霊獣は宝の番人や20階層ごとにでる階層ボス、通常の階層内に出る

・土塊は、店番、ハニワ部隊、コマイヌ部隊、罠使いなど、多岐に渡る役割がある

・霊獣は下の階層へ進むにつれて強くなる

・土塊は下の階層へ進むにつれて強くなる

・霊獣を倒すと強さ相当の経験値が貰える(固定レベルアップも有り)

・土塊を倒すと強さ相当の経験値が貰えない(固定レベルアップも無し)

霊獣は狩るとその対価に経験値を得ることができるが、土塊は基本的に敵であっても店番などであっても経験値は貰えない。

大地の神がケチっているのだろうが、店のものを得るという対価を経験値の代わりにしているのであれば、文句は言えない状況だ。

アレンたちの執拗な活動のせいで、おかげで今は土塊ばかりの大地の迷宮になってしまった。

「セシル、どうやら分かったぞ。あと1体いるがそれは霊獣ではないようだ。だが、レベル上げをするのにふさわしい敵がいることも事実だとガイア様はおっしゃりたいのだよ」

『……』

アレンは知力を全開にして大地の神ガイアの顔を見るが、ヒントを上げないようにしているのか無表情のママだ。

「何よそれ! どういうことよ!!」

「ガルムとの戦いの前にいただろ。倒さずに鍵を奪った階層を守護するボスがな」

「あ!! あいつね。たしか、性格の悪い……」

『あまり悪く言うなよ。あれでも儂の眷属なのだからな』

(結局答え言うのね)

「そうよ。アンドレよ! 土の化身アンドレがいたわ。アイツを倒せばいいのね!!」

セシルが大声で叫ぶのであった。