軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第700話 パーティーの最終兵器

ひと風呂浴びて仮眠して、さらにシャワーを浴びてようやくやってきたロザリナが空いている席に座った。

今どこまでの話だったのか確認することもなく、並べられた果物を1つ取り、小さな口でシャリシャリと食べ始めた。

「それで最終兵器とはなんだ?」

ロザリナを見ていたシアがアレンに視線を向き直して問う。

その横ではクレナがワクワクして目を輝かせている。

アレンの言う「最終兵器」に胸が高鳴っているようだ。

「……その前に、今回の『神技炸裂! 100連コンボ大作戦!!』は正攻法ではないことを皆理解してほしい。はめ技と言われる作戦で、正々堂々とは程遠い戦いになるだろう。非常識を受け入れてほしい」

(まあ、前世でははめ技じゃないと倒せないボスは多かったからな)

前世では倒せない敵には2通りあったと思う。

1通り目は、「負けイベ」と呼ばれたもので、そもそも今はストーリー上、倒せないというボス戦だ。

これはどんなに膨大な時間を注ぎ込み、キャラクターの成長限界まで鍛え上げても倒せなかった。

たとえ何らかの裏技で倒せても何故か、その後の会話や演出などは負けた感を出したままイベントが進行していく。

2通り目は、倒し方が限定的過ぎたかバランスが崩壊したボス戦だ。

これはやり込み系のネットゲームに多かったのだが、調整が失敗しており、ボスの体力が高すぎたり自然回復が早すぎるなどで体力ゲージが一切減らない、回復する蘇生する等でどうしても倒せないボスがいた。

数多の作戦と多くの失敗と屍を積んだ果てにユーザーたちは、正攻法ともいえない戦術を駆使して勝利につなげてきた。

(逃げる8回会心の一撃ほどの確実性はそれでもないか。だが、最終兵器を投入すれば、成功確率は上がるはずだ。所謂はめ技だな。どこまで通じるか分からんけど)

「……非常識か。アレンからその言葉を聞く日が来るとはな」

(失礼ね)

シアの言葉に仲間たち全員が頷き同意見のようだ。

非常識の権化とも言うアレンが手段を択ばないと仲間たちに言う。

どれほどの作戦が繰り広げられるのか、仲間たちは息を飲んだ。

「コンボの発動条件を満たすためにデバフを与えるためにも、コンボを繋げるための攻撃を与えるにも戦い方を改めねばな。今回は参加させなかったけど、相性の良い仲間を1人知っている」

倒せない敵を正攻法で臨むことがそもそも間違いであった。

「ああ、そういうことですわね。少し『説得』も必要でしょうか」

「ん? ほう? 『説得』ということは、あいつを呼ぶのだな。なるほど、確率を上げて戦うわけか」

「そうだ。正攻法ではない場所でこそ奴は輝く。ひと仕事終えて、今は暇しているしな」

(ソフィーとシアは察しが良いと)

「なるほどね。アイツね」

「ふーん。そうかそうか。やっぱりアイツは必要だね」

何も分かっていないクレナとメルルが深く頷きお互い相槌を打ち合っている。

「ん? 誰か呼ぶとかそういう話かよ?」

(キールは真面目だが、はめ技の解像度は低いか。まあ攻撃脳と回復脳では思考が違うか)

学園にいたころから色々な作戦を考え、仲間たちと戦ってきた。

今回の作戦に似たようなこともしたことがあるのだが、キールはピンとこないようだ。

誰1人死なせない守りに徹した役割のキールとは、戦いに向けたスタンスの違いだと思う。

「そのとおり。これからその仲間が必要な理由を説明するからな」

アレンは仲間たちに必要なメンバーについて語り出した。

小一時間の説明を終えると、ドゴラが「たしかにな」と理解したところで、アレンはシャンダール天空国の王都ラブールへと向かった。

何十分も経たないうちに対象を見つけ出して、この場に連行する。

「ちょっと、アレン。何だよ、急にって、ねえ! フィオナに時間がかかるから地上に帰ってくれってどういうことだよ!! 聞いてよ!!」

苦情を申し立てているのだが、構わず腕を掴んで無言で部屋の中に入ってきた。

「……」

「……」

「……」

「え? やあ、皆……?」

やって来た者は、無言で皆が見つめてくるので思わず息を飲んだ。

「よし、ペロムス。今後の話をするから席についてくれ。すまんがフォルマール、その席を空けてくれ」

ソフィーの横に座るフォルマールにペロムスが座るから退くように言う。

「そうだな」

「え? ちょっと。わざわざ、良いよ」

「そう言わずにおかけください。ペロムスさん」

ソフィーの優しい声に、流されるがままにペロムスは席についた。

「それで何? 何の話? いきなりこんなところに連れてきて」

何も聞かされずにここにやって来たペロムスは、アレンに向き直って問う。

「そんな用件の前にお礼を言わせてくれよ。金貨1億枚本当に助かった」

(これで魔王軍との戦いにも、5大陸同盟へのアレン軍の信任にもつながる)

アレンは5月に行われた5大陸同盟会議の中で学園制度の変革を訴えた。

務めのある王侯貴族の学生たちにラターシュ王国の学園で転職して魔王軍と戦ってもらおうと提案し、そのために莫大な資金が必要であった。

全世界の学園から務めのある、または魔王軍との戦いを望む生徒たちを受け入れるため、ラターシュ王国の学園を倍以上に拡張する必要がある。

そのための資金をアレン軍が受け持つから学園制度の変革を訴え、その資金金貨1億枚を準備すると豪語した。

その後、神界に行って、ペロムスは商神マーネの試練を超え、シャンダール天空国との取引で莫大に出た資金を学園改革費用である金貨1億枚に当てた。

「もう先月のことだよ。今更だなぁ」

その時もお礼を言われたとペロムスは気恥ずかしそうに言う。

「でも、その結果、廃課金商会は世界商会ランキング1位だけどね! ドワーフが1位の座を明け渡す日が来るなんてってバウキス帝国では大騒ぎらしいよ」

「それもアレン軍の財務を任されているからだよ」

メルルが被せるようにペロムスの実績をほめちぎる。

アレン軍に属する廃課金商会は、売上の実績が世界の商会で1位となった。

商会の売り上げランキングの上位30位は基本的にドワーフが独占しており、10位内に人族の商会が入ったのはバウキス帝国が前身のバウキス王国の建国以来のことだ。

それが商会ランキング1位に商神の加護を持つ人族が成ったことに、バウキス帝国では騒ぎとなっている。

「謙遜をするな。ペロムスよ。お前はベク兄様と共に魔王軍の根城に乗り込んで、その悪事を暴き、マクリス様の魂を救ったのだ」

その勇気は感嘆に値するとシアは頷く。

「俺が皇帝やっているときの話だな。ペロムスの恋人のために、俺は野望を失ったのだ。いや、お前ほどの野心が俺にはなかったというわけだった」

イグノマスにも分かる話だったと会話に参加する。

反乱を起こしアレンたちに野望を挫かれたイグノマスが、アレンたちがプロスティア帝国にやってきた理由を聞いた。

それが、ペロムスが愛する人のために「聖魚マクリスの涙」を得るために魚人となってプロスティア帝国に乗り込んできたと聞いて、イグノマスは言葉に出ないほどの衝撃を受けた。

身分制の強い帝国に生まれ、槍王の才能に生まれたイグノマスは才能こそが全てだと信じていた。

才能も低く身分もない男が命を懸けることに気持ちが大いに揺さぶられた。

「いやいや、獣王の証を取り返すとか、そのついでだよ。さっきからみんなそんなに褒めてどうしたんだよ!」

「そんなことはありません。ペロムスさんのフィオナさんへの愛があればこそ成し得たことです」

「まったくだ。子分だと思っていたペロムスが随分先の方にいってしまったのかよ」

クレナ村の鍛冶屋の息子のドゴラと村長の子供のペロムスは、アレンやクレナと知り合う前から友達だった。

ガキ大将と子分くらいの感じではあったのだが、そのころからの腐れ縁や、自分以上に世界から認められているペロムスに嫉妬とは違うむずかゆい思いをドゴラは抱いている。

「ドゴラ……」

「さて、実はペロムスにちょっとしたことをお願いしに呼んだんだ」

しんみりしてきたところでようやくアレンがペロムスに呼び出した理由を言う。

「お願い? 今度は何稼ぐの?」

金貨1億枚のミッションが終わったこともあり、次の用事ができたのかとペロムスは思った。

「いや稼ぐと言うか。何ていったらいいんだろう……。ちょっと頼みずらいんだが」

「え? 何だよ。はっきりしてよ。アレンのお陰で僕はフィオナと結婚できたと思っているんだ。もちろん、仲間の皆にもね。何でも言ってよ」

アレンにも仲間にも恩があるとペロムスは断言する。

「本当か? 俺たち仲間だもんな!」

「うんうん」

「じゃあ、お願いと言うかお誘いなんだけどさ」

(チャットでレイドボスを誘う感じで爽やかに)

「誘い?」

「ひと狩り行こうぜ!」

キラリッ☆

商人の才能を持つ者がいなくて困っていたんだよとアレンは白い歯を輝かせ笑顔で言う。

「狩り? 何か戦うとかそういう系? 僕そういうの苦手だけど」

「おお! 流石ペロムス。話が早い!! ちょっと、俺たちだけで挑戦してみて、難しくてさ。何でもって程の話じゃないんだけど、昔からの友人のよしみとして聞いてほしいんだ」

「えっと。アレンたちだけで倒せない敵って。たしか、ここは吹き溜まり側の要塞だよね」

ペロムスは怪しい笑顔を振りまくアレンに嫌な予感しかしない。

他の仲間たちも取り繕ったようにニコニコしている。

身の危険を感じて、逃げ場を求めるように本能的に出入口の扉を見ると、先ほど席を開けてくれたフォルマールが自然と立ち、扉を塞いでいた。

この時、ペロムスはようやくはめられてことに気付いた。

「そうそう。前話したと思うけど、霊獣ネスティラドに挑戦したんだけど惨敗でさ。別の作戦で行こうと思ったんだけど。ペロムスが獲得したスキルや神技が相性良くてね」

「いやいや。ネスティラドでしょ。この前、アレン。ボコボコにやられていたじゃないか」

腕や足が吹っ飛び、内臓がはみ出るほどの負傷の様をペロムスは見ている。

「大丈夫。安全安心な後方からスキルとか使ってくれたらいいから」

「ええ、無理だよ~」

涙目のペロムスにシアが被せるように口を開く。

「何を言う。ペロムスなら問題あるまい。だが、連携には特訓が必要だろう。余はこの機会に転職することにするぞ」

「お? そうだな。作戦を練り上げが必要だからな。シアは転職とスキル上げをしながら臨んでくれ。それで言うと商王のペロムスも転職してくれ」

ペロムスの返事を待たずに押し切るようにアレンたちは今後の話をする。

「そんな~……。ええっと僕の話、皆聞いてるかな?」

外堀を完全に埋められ、完全に攻略されていることを悟り、肩を落とすペロムスであった。