軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第678話 獣神ガルム戦③

獣神ガルムの尾を食いちぎり噛みしめるシアの体が変貌する。

メキメキッ

『ぐるる!!』

全長が3メートルに達する巨大な虎であったのだが、一気に10メートルほどの体長になった。

だが、ガルムを見つめるシアは、まるで自らの肉体を操作するかのように、筋肉の躍動とは裏腹に体は縮ませ始めた。

全長160センチメートルの元々のシアの身長ほどの背丈にまで小さくなった。

剥がれてしまった顔の皮も、弾けた眼球も、折れた牙も体の変化と共に一気に回復していく。

肉体は原人を思わせるほど毛むくじゃらで、全身を虎柄の黒と黄色の毛皮で覆われている。

オリハルコンの武器と神器の白色の靴がいっそう輝いて見える。

『ほう? 人身型(ザ・ビースト/タ) 獣神化(イプ・ヒューマン) じゃな。あくまでも儂にコンボを決めたいとのう』

コンボを決めないと試練が達成できないよねと尾が切れているにも関わらずニタニタとガルムは笑っている。

【獣神化の特徴】

・ステータスそのままに3 型(タイプ) に発動中何度でも変更できる

・ 人身型(タイプ・ヒューマン) は毛皮に覆われた2足歩行の獣

・ 猛獣型(タイプ・ノーマル) は体長10メートルの4足歩行の獣

・ 怪獣型(タイプ・モンスター) は体長100メートルの4足歩行の獣

・半径100キロメートル以内の獣人を獣帝化状態にする

・自らのスキル「獣王化」「獣帝化」どちらかと効果の重ね掛けが可能

・ステータスは10000×スキルレベル分上昇

・クリティカル率は100%×スキルレベル分上昇

・回避率は100%×スキルレベル分上昇

・体力、魔力が秒間3%回復(神界では霊力)

・効果は(全霊力+全魔力)/100秒

・クールタイムは1日

毛むくじゃらのシアは咥えていた尾を掴み、腰にぶら下げる魔導袋に「獣神ガルムの尾」をまるで戦利品を手に入れたかのように大事そうに収めた。

口を開き、ルバンカやゼウたちに指示を出した。

『尾を手に入れたぞ。あとはコンボを決めるだけだ!』

シアの全身から霊力が溢れていく。

『うむ!? おおおおおおおお!?』

『おいおいなんだこりゃああ!! 力が!? うおおおおおおおおおお!』

シアの掛け声と共に体から発する霊力と魔力が十英獣の9人を獣帝化状態にさせる。

返事をしたルドは困惑気味だ。

獣帝化したシアによって、獣王化してもらっていた以上の力を得たレペも絶叫してしまう。

『うむ!!』

シアに絶大な信頼をしている兄のゼウだけが一切の迷いなく返事をする。

シアの掛け声に、ゼウも獲物を狙う猛獣のように細めた目でガルムを捉える。

ガルムは尾だけで戦い、手足を使って反撃しないと言った。

現在、その尾は食いちぎられているため反撃出来ない。

『ふぁ!? ま、待つのじゃ!! あまり神力を使うと腰に来るのじゃが! ふぬぬぬぅ!!』

ガルムは膝を曲げ、へっぴり腰で踏ん張るような姿勢になると尾が腰からゆっくりと生えてくる。

さらに全長120センチメートルだった筋肉のなく、つやのない縮れた体毛のよぼよぼであった体にも変化が起きる。

骨と皮だけだった細い体は、明らかにパンパンの筋肉が張り出し始めた。

小さな体の骨格までも伸び始め、巨大になっていき全長は既にホバの体格を越え、5メートル、10メートルとどんどん大きくなっていく。

おしりの上から、ホバの胴体ほどもある巨大で筋肉質な尾が生え始めている。

巨大な大猿へと姿を変えようとしていた。

『攻めよ! 変身されたら終わりぞ!!』

変身を最後まで待つようなことはしないとゼウは叫ぶ。

『うおおおおおおおおおおおおおお!!』

攻めるように言ったのはゼウだった。

S級ダンジョンの攻略の試練を与えられた際は、攻略よりも周りの獣人たちの保護に回った。

過去の負い目からも、獣王争奪戦をシアと争っているが、日のカケラ、月のカケラ探しを積極的に行った。

どちらかと言うと手段を択ばないシアと違い、ゼウは手段も勝ち方も選ぶ。

真面目なゼウが変貌を遂げ始めたが力を出し切っていないガルムを攻めるよう叫んだ。

自らの信念すら曲げる判断に、十英獣の9人の獣人たちも犬歯をむき出しにし、ガルムへと向かっていく。

『確実に倒すぞ!! むん! ①真・渾身!!』

スキルもステータスも一時的にエクストラモードになったホバが飛び上がり槌を振るう。

【ビーストモードの種類による獣人強化の違い】

・獣王化は半径100メートルの範囲で獣人の星を1つ増やす

周囲の獣人たちの見た目はケモナー度を1だけ上げる

・獣帝化は半径1キロメートルの範囲で獣人のステータスのみエクストラモードにする

周囲の獣人たちの見た目は獣王化状態になる

・獣神化は半径100キロメートルの範囲で獣人のスキル、ステータスをエクストラモードになる

周囲の獣人たちの見た目は獣帝化状態になる

『ふぁあああああ!! 待つのじゃ! このような卑怯なマネが許されるはずがないわい!! 儂は獣人たちの神であるぞ!!!』

十英獣の前衛たちが一斉に攻め立てる。

2回もスキルを使えばコンボは10回に達し、シアとゼウの拳が光り始めた。

『よし、いけるぞ! ⑪虎神柔破掌!!』

ガシャン

ゼウの掌底が当たると、もう一度神技の効果が発動し、ガラスが砕けたような効果音と共にガルムの耐久力を再度低下させたようだ。

『⑫豹神無情撃!!』

『がは!?』

今度こそ、ゼウのあとにシアもコンボも決めることができた。

スキル「獣王無尽」によるダメージ増の効果も相まって、片腕を根本までガルムの腹に叩き込む。

既に30メートル近くに達したガルムは2度に渡る神技「虎神柔破掌」によって、耐久力が削られており、シアの一撃で涙目となっている。

『よし! 皆、もうひと踏ん張りだぞ!!』

ゼウが振り向き、ホバたちに檄を入れたところであった。

『調子に乗るなよ! 獣人ども!!』

長い犬歯が上下4本ついた大きな口を広げ、尾を掲げ、ゼウに袈裟切りに切り裂くように振り下ろした。

先ほどの太さ十数センチで2メートルほどしかない尾と違い、太さ2メートル、長さ20メートルには達したその一撃は脅威そのものだった。

『ゼウ兄様!!』

シアが大きく叫ぶが、既に行動に移していた者がいる。

巨大で凶悪な尾がゼウに向かって振るわれる。

もし、ゼウが倒されれば、シアとゼウがこの神殿内で手に入れた神技全てを使うという、今回の試練は失敗に終わる。

だが、まるで風の化身となったルバンカがゼウとガルムの間に瞬く間に移動する。

『ぐは!? 絶対防御!!』

先ほどの2度に渡る物理攻撃を無効にしていた状況とは違い、ルバンカの体が2つに割かれる。

変貌したガルムの尾は、ルバンカの物理攻撃無効の効果を突破した。

肩から袈裟懸けに肉体を切り裂かれ、首とつながっている右側の腕だけになったが、ルバンカの戦意は衰えていなかった。

攻撃を受けた後にもかかわらず特技「絶対防御」を発動させる。

『なんじゃ死にぞこないが!!』

ルバンカは半身を奪われたものの、右側の3本の腕でガルムの尾に絡みつき、特技「絶対防御」によって体の動きを封じた。

『何をしている! もう一度だ!! 最後の一撃まで諦めるでない!!』

ガルムの攻撃がルバンカに通ったため、コンボの回数は0に戻ってしまった。

だが、相手の攻撃の手段を奪ってしまえば、コンボを繋げるのは容易い。

尾に絡みついたおかげでガルムの攻撃の手段を奪ったも同然だ。

家族を魔獣たちに殺され絶望していたルバンカの目に気迫が戻ってきたようだ。

尾をくねらせルバンカを吹き飛ばそうとするガルムの尾に必死にしがみつく。

床石に叩きつけられようが一切放そうとしない。

だが、ルバンカの気迫とは裏腹に体力は既に尽きてしまったようだ。

パアッ

体から光る泡が生じ始めていた。

体力超回復の効果も効かないほどのダメージを負っているようだ。

もう何秒もこの場にいられないルバンカが自らの命を削りながら、最後の最後に特技「絶対防御」をガルムの尾に発動を続ける。

命を懸けて試練達成のチャンスを与えられたことを知り、皆の目に希望の光が宿る。

『スキルが切れるぞ! 皆急げ!!』

覚醒スキル「嵐獣化」はルバンカが消えてしまえば、クリティカル率アップの効果も消える。

攻撃が防御されたり当たらなくてもコンボ判定は潰えてしまう。

『先陣は俺からだ! ①真・必中矢!!』

真っ先に攻撃が達したの、弓獣帝パズの背中の針の矢だ。

確実に当てるために選択した矢がガルムの眉間に当たる。

『②真・斬撃!! 皆、発動の速いものを!! ホバとラゾは効果が切れる。回り込め!!』

剣獣帝ハチがモーションの低い斬撃を選択するよう叫んだ。

気迫だけで存在を続けるルバンカは既に体のほとんどが消えてしまっている。

『③真・双撃!!』

『④真・連撃!!』

爪獣帝パズ、双剣獣帝セヌが駿足を活かして距離を詰め、発動時間の短い連撃を浴びせる。

素早さと他連攻撃が得意のパズとセヌは攻撃スキル枠を1つ使用し、スキル「急所特攻〈6〉」により素早さ6000とクリティカル率60%上昇している。

しかし、斧槍獣帝ラゾと槌獣帝ホバは大きな武器による攻撃範囲の広さ、一撃必殺の特性があるものの、一撃一撃の発動が遅く、当てずらいという特性があった。

『⑤真・穿孔牙!!』

『⑥真・渾身!!』

パズとセヌが攻撃をつないでいる間に、ハルバートを武器に持つ獲物の長い斧槍獣帝ラゾが先端でガルムの喉元を大きく突き上げた。

ようやく最後に、コンボのタイミングに間に合ったホバが槌を振り下ろした。

『ゲン、パズ、セヌ、ハチ!! すぐに攻撃せよ!!』

ゼウが最も攻撃の初動が速い3人と距離をすでに詰めており、攻撃の体勢に入っているハチに攻撃するよう叫ぶ。

『⑦真・必中矢!!』

『⑧真・斬撃!!』

『⑨真・双撃!!』

『⑩真・連撃!!』

『……よし、今度は我々が! ⑪虎神柔破掌!!』

ガシャンッ

『⑫豹神無情撃!!』

3度目の耐久力減少の神技「虎神柔破掌」を受けてしまった瞬間に、シアが神技「豹神無情撃」を発動する。

『げほあ!? 貴様ら! 調子に乗るなよ!!』

『あとは任せたぞ……』

パアッ

とうとうルバンカは存在の限界を迎えてしまった。

光る泡となったルバンカは完全に姿が消え、尾に絡みついていた拘束もなくなってしまう。

とうとう、反撃とシアたちに犬歯を向けて絶叫する。

だが、狙いを定めるガルムの様子にシアの頭が回った。

『⑬神風連撃爪!!』

連撃を行うように3つある神技のうちのもう1つを発動する。

『ぐやあ!? め、目が!?』

『ガルムの視界を奪ったぞ!! これで躱せまい! 攻撃を続けよ!!』

風の刃が2手に分かれ、ガルムの眼球を襲う。

少しでも攻撃を受けたり避けられたりする可能性を落とすため、シアは神技「神風連撃爪」を放ち、ガルムの視界を奪った。

『皆! ルバンカ様のスキルはもうないぞ! 確実にコンボを繋げよ!!』

シアの神技にゼウも大声で十英獣たちに叫び奮い立たせる。

ルバンカがいなくなり、ゼウたち全員が圧倒的なバフであるクリティカル率100%上昇が消えたのは体感で分かる。

ガルムとの壮絶な試練が続いていくのであった。