軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第654話 アレンの剣

大地の迷宮99階層を攻略した報酬はアレンの武器を手に入れることにした。

アレンの仲間たちは、何カ月もアレンの報酬を手にするために命を懸けてきたようだ。

必死に階層ボスや最下層ボスと戦ってきた理由をアレンは知り、胸に熱いものを感じる。

(こうやって俺の報酬を手にするのは初めてかもしれないな。従僕時代に何度かあったかな)

S級ダンジョン攻略の報酬、試しの門などいくつかのダンジョンを攻略してきたが、報酬は仲間たちに配ってきた。

神々の試練についても、攻略は全力で手伝うものの、自らの報酬を手にすることはなかったが、それは当然だとアレンは考えていた。

仲間たちの強化もあって、強さの底が見えない魔王と戦えるものだと考えていた。

だが仲間たちは、血を流しながら最前線で戦うパーティーリーダーのアレンに相応しい武器が欲しいと願ってくれていた。

「アレンよ、感傷に浸っている場合ではないぞ」

「そうだな。シア、ありがとう」

命を懸けてマグラの首にかかった鍵を手にしようとしたシアに礼を言う。

(って、何でパンプアップしてんだ? おしゃべりは後だってか)

『ふうううう……むん!!』

パンイチの大地の神ガイアがゆっくりと手足を動かしながら、急にポーズを取り、筋肉をパンパンに張らせる。

アレンたちの話し合いが暇だったようだ。

「大変お待たせして、すみません」

『おう、大地の迷宮攻略報酬は何にするのか決まったか?』

「はい。当初のお話の通り、私に『絶対に折れない最強の剣』を頂けたらと思います」

最大限の表現で具体的に自らの武器が欲しいと言う。

『ぬ? 何だと?』

大地の神の目がクワッと開き、アレンの言葉を問い直す。

「今お伝えしたとおりのことでございます。剣神セスタヴィヌス様にお渡しした剣と少なくとも同程度の最強の剣を頂けたらと思います。刃こぼれもできれば避けていただけたら幸いでございます」

これほどにないほどの誇張を込めて、妥協の産物にならないよう大地の神に伝える。

『それは俺の神力の全てを込めないといけないな。お前にその覚悟があるのか』

「え? 覚悟? はい、当然ございます」

大地の神ガイアが神力を込めるといって、何故覚悟が必要なのか分からないが肯定するしかない。

『分かった。じゃあ、「アレンに最強の剣を送る」が試練の報酬でいいぞ。儂のこの肉体を思う存分堪能してくれ。むん!!』

大地の神ガイアが胸の筋肉をパンパンに張らせて、両腕を掲げ、力こぶを作る。

腹をへこませ、まるで「フロントラットスプレッド」のポーズをとった。

「へ? え?」

近距離で、スキンヘッドで日焼けした大地の神がポーズをとったので、困惑し思わず視線を外してしまう。

『目を外すんじゃねえ。「お前」の剣が欲しいって言ったんだろうが! 最後までしっかり見てろ!!』

「わ、分かりました……」

何が起きているのか分からない。

『さらに……ぬん!!』

そのまま手を腰に当て「サイドチェスト」のポーズをとる。

「……」

(へ? え? 神力が沸いて出ているのか)

アレンが困惑しながらも視線を逃がすことなく見つめ続けると、大地の神の震える筋肉から湯気のようなものが出始めた。

どうやら、湯気でも蒸気でもなく、大地の神の全身から溢れる神力だった。

大地の神ガイアはどうやら自らの神力を最大限にするため、このような行動をとっているようだ。

皆が困惑する中、メルルだけが目を光らせる。

「僕もやる。ぬおおおおおお!!」

大地の神の横で身長が半分ほどしかないメルルが「サイドチェスト」のポーズをとる。

メルルは大地の神のポーズに「カッコいいポーズ」のインスピレーションを得たようだ。

『ぬ? ふん、まあよい。だが、これはできるか!!』

大地の神が体を横にそらし、上腕筋をアピールする「サイドトラセップス」にポーズを移行する。

「それもカッコいい! おりゃああああああ!!」

大地の神が無数のポーズを切り替える横でメルルもポーズを切り替えていく。

誰も理解できない状況が1時間以上続いていく。

「ちょっと、アレン。止めなくて……」

「黙っていてくれ。俺も理解が追いつかない」

(これが神の祈りか。それとも舞なのか)

誰も今何が起きているのか答えを持ち合わせてはいなかった。

『うおおおお!!』

パン

身体をやや前かがみになり「モストマスキュラー」のポーズをとったと思うと、バキバキに血管の張った両手をアレンの目の前で閉じた。

大地の神ガイアが全力で両手を合わせているようだ。

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

メルルも迫真の表情で同じポーズをとる。

『行くぞ出るぞ! アレンの剣が出てくるぞ!!』

筋肉をバキバキにした大地の神がアレンの目の前で、合わせた手のひらをゆっくりと開いていく。

手のひらの間に全身の神力を込めているのか、隙間から、日の光を目の前で見るほどの圧倒的な輝きを放つ。

仲間たちがあまりの眩しさに手で目を覆う中、アレンは吸い込まれるように大地の神の手のひらの隙間を見つめる。

手のひらの間からはっきりと金色の輝きをした剣の刀身がじわじわと見えてくる。

「け、剣が出てきました!!」

24時間戦って疲弊したアレンは、感動が困惑を上回る。

『おう、待ってろ!!』

両手をゆっくりと開いていくと剣の腹の部分から両サイドに、持ち手の部分と剣先の部分が現れていく。

大地の神ガイアの手の平から、アレンが持ちやすいサイズに合わせた刀身1メートルほどの剣が姿を現した。

「おお!!」

アレンは両手で大地の神ガイアが造った「神聖オリハルコンの剣」を報酬として貰う。

『ぜぇぜぇ、やべえな。久々に神力を全部使いきったぜ。それなら、何があっても折れないと思うぜ。まあ、何かあった時のための「保険」を加えておいた。これはアレンよ。お前のために造った「アレンの剣」だ』

「ありがとうございます!」

あのポーズが何なのか忘れるほどの感動がアレンに押し寄せてくる。

(武器の名前に俺の名前が付いたぞ! 凄い!!)

「ちょ、ちょっと儂にも見せてくれ! 素晴らしい。こ、これが神の御業か……」

両手の上に乗せていたアレンの剣を奪い取るように掴むと、凝視した名工ハバラクが手を振るわせて感動している。

あまりに滑らかで、まるで水に浸したのかと思うほどの光沢だ。

ハバラクは剣の柄を握り、自らが行き着くべき先が見えているのか、涙を流している。

『ふう、儂はもう帰るぜ。じゃあな』

モコモコ

大地の神ガイアが土塊に戻っていき、そのまま大地の迷宮の遥かなる大地に溶け込んでいく。

早々に居なくなるのは、もしかしたら、思いのほか神力を使い切り疲弊してしまったのかもしれない。

アレンは改めて、大地の神ガイアのいなくなる先に頭を下げると、メルスを召喚した。

「メルス。剣の効果を確認したい。鑑定してくれ」

『分かった。鑑定』

メルスは天使Bの召喚獣の「虫眼鏡」を使って、特技「鑑定」を発動する。

【神聖オリハルコンの剣「固有名称:アレンの剣」の性能】

・攻撃力50000

・知力30000

・物理耐性(極)

・スキル発動速度100%増

・クリティカル100%増

・無限修復

・アレン以外が装備時効果半減

「むは!? 神器を超えておる!!」

アレンに合わせて知力が3万もあり、効果の1つ1つがこれまでのどの神器よりも威力がある。

99階層を攻略した報酬として、大地の神が神力を全力で込めたというだけあって、どの効果もけた違いだ。

(固有名称までついてて、俺専用とか感動なんだけど)

これまでこの世界で生きてきた中でも数少ない感動を覚える。

効果に仲間たちも頑張ってよかったと一緒になって喜んでくれることに、さらに感動で涙が溢れそうだ。

「ちょっと、私にも見せなさいよ……。す、すごい……」

セシルはあまりの性能に「チート」という単語も忘れて絶句してしまう。

「それにしても、絶対に折れないなら『無限修復』は必要なさそうですわね」

アレンの魔導書を見ながら、ソフィーが首をかしげる。

「それはたぶん。いくら最高硬度の物体を造れる大地の神であっても、それ以上の存在がこの世界にはいるからな」

「ああ、上位神とかですわね」

「相性が悪く、刃こぼれしても修復できるっていう『保険』を掛けたってことだろう」

大地の神の言ったセリフをアレンが解釈し、ソフィーは理解できたと頷いた。

「ちょっと、アレン。まだ、何かあるの? ロザリナ、もう眠いんだけど」

剣の分析もいいけど、休みたいとロザリナが不満顔だ。

「おっと、そうだな。ちょっと入り口に転移してから休もうか」

アレンは大地の迷宮の入り口面へと仲間たちを転移させる。

既に丸24時間ぶっ続けでの攻略で皆、疲労困憊だ。

大地の迷宮入り口側には拠点用の魔導具などが設置されており、仲間たちはぞろぞろと疲れたと中へ入っていく。

「あら、アレンは休まないの?」

アレンが魔導書のログを見つめていることにセシルは気付いた。

「ああ……。どうやら、マグラへの説得が済んだようだ」

『竜神マグラは竜Sの召喚獣になりました。召喚には聖珠ポイントが29ポイント必要です』

大地の神のポーズを見つめている間に、ルプトがマグラの説得に成功していた。

アレンは、セシルとソフィーにまだやることがあると言う。

「そうですか。でしたら、私もマグラ様の新しいお姿を見たいですわ」

「そうね」

ソフィーとセシルが見学を続けると言うので、アレンは頷き聖珠ポイントを消費する。

「マグラ召喚! 出てこい、マグラ!!」

『ふむ……』

Sランクの魔石と聖珠ポイントを同数の29消費して、竜Sの召喚獣マグラを召喚した。

全長は100メートルで、外側が緑、内側がクリーム色のツートンカラーは変わらない「ザ・ドラゴン」といったところだろう。

後ろ足は大きく、前足には凶悪な3本の爪が人の体よりも大きく伸びている。

一本角だった頭には3本の角が額と頭頂部に生えている。

背中には大きな翼がついており、広げると300メートルは優にありそうだ。

成長限界まで成長した老竜のマティルドーラと同じくらいの大きさだろう。

(変化したのは角くらいか。俺って神龍を仲間にしたくて、この世界に来たんだっけか)

不貞腐れて顔を背けているマグラを見てアレンはこの世界に転生してきたことを思う。

召喚士を選んで真っ先に召喚したいと思ったのは神龍であった。

あれから随分時が流れ、バッタが召喚された時の絶望感が懐かしい。

『勘違いするな。余は石のままでいるよりもマシだと思ったまでのこと。「世界の希望」か。そんなものは知らないし、興味もないことだ』

アレンの感動を打ち消すようなことを言ってくる。

「世界の希望……。まあ、そうだな。俺たちは魔王と戦っているからな。お前にも付き合ってもらうぞ」

『なるほど、ガイアとの会話も見ていたが、お前には神に対する畏敬の念も畏怖もないようだ。それは無知からくる愚かさか。それとも器の大きさか……。まあ、良い。暇つぶしと思えば良いのだ』

人の召喚獣として使われることに対する言い訳を並べているようだ。

「好きな理由で戦ってくれ。だが、言うことは聞いてもらうぞ」

作戦を立てる上で、言うことを聞かないほど困ることはない。

ルバンカにも聞こえるよう、割りとはっきりと要望は伝える。

『……気が向いたらな』

そんなマグラのステータスを魔導書で確認する。

【種 類】竜

【ランク】S

【名 前】マグラ

【体 力】40000

【魔 力】40000

【攻撃力】50000

【耐久力】40000

【素早さ】50000

【知 力】40000

【幸 運】40000

【加 護】攻撃力5000、素早さ5000、物理攻撃力(強)

【特 技】切り裂く、炎極殺、絶対零度、無限断絶、竜鱗

【覚 醒】竜王の魂、聖珠生成、〈封〉

(ほうほう、各種ブレスに、攻撃主体と、なんかバフも使える感じだな! 俺の加護もお陰で随分上がったぞ!!)

こうして、アレンは最強の剣と共に竜Sの召喚獣の封印を開放することができたのであった。