軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第650話 大地の迷宮RTA⑲マグラ戦(2)

【99階層・残り0:23】

石像になった竜神マグラがルバンカを踏みつぶそうとする。

だが、地面の中で6本の野太い腕で足の裏を必死に持ち上げるルバンカの目が光った。

『幻獣化!!』

ルバンカは覚醒スキル「幻獣化」を発動した。

体の筋肉がいままで以上に膨張し、全身を蜃気楼のようなものが覆う。

『ぬお!?』

自らの体の3分の1ほどのルバンカのステータスが増加し、大いに抵抗を感じる。

ひねり潰さんとバキバキに力を込めて、さらに足下に力を込めた。

マグラの焦りを仲間たちは見逃さない。

敵が誰をターゲットにしているか判別するのは戦いの基本だ。

ターゲットの有無によって、攻めるのか、守るのか、退避するのか、守りにいくのか、あらゆる行動が変わってくる。

攻めるにしても、自らの分担やその時の状況でスキルも変えないといけない。

仲間たちが行動に移す中、最もステータスの高いドラゴンがマグラに襲い掛かる。

ルバンカに迫りくるマグラの足裏が一気に上空に吹き飛んでいく。

『ギャウアアアアア!!』

マグラの3分の1の大きさに満たないハクが全力で腹部めがけて突っ込んだ。

今がマグラとの距離を詰め時だと判断した時からのハクの行動は早かった。

軽く両の翼で1回、羽ばたいたと思うと、両足でも床石に蹴りを入れて体重がないのかと思うほどの推進力を手にする。

(よし、偉いぞ。後衛たちを背にして突っ込んでくれたぞ。このタイミングなら!)

前衛の理想の立ち位置は、敵と後衛の間に入ることだ。

セシルの指導が効いたのか、ハクは抜群の動きを見せた。

『がは!? なんだこの力は! も、もしや、貴様、貴様が我の神器を使っているのか!! それは我が頂いたものだ!!』

衝撃で腹部の石板が大きく陥没し、さらにそのまま、胸元めがけて前足を振り下ろす。

ぐしゃぐしゃとマグラの石像の肉体が粉砕していく。

意味深な言葉をマグラが発するが、その次の言葉はなかった。

「憑依合体……。ソウルセイバアアアアアアアアアアア!!」

足元のルバンカからハクへ意識を向ける中、アレンはさらに距離を詰めていた。

マグラのさらに上空から、グラハンと憑依合体をしたアレンが襲い掛かる。

『ギャハッ!?』

特技「ソウルセイバー」がマグラの首元に襲い掛かり、アレンのオリハルコンの剣によって勢いが止まることなく両断していく。

バフがモリモリになり、ホルダーのカードを知力特化にしたアレンの攻撃は、マグラの首を切り落とすのに十分な威力であった。

ピキピキ

知力依存による余りの威力に、アレンの握りしめるオリハルコンの剣にヒビが生じる。

せっかくハバラクに鍛え直してもらったのだが、アレンの強力な一撃に耐えきれなかったようだ。

「よし、勝ったわ!!」

アレンによって叩き切られ、床石に向かってマグラの頭部が落ちる中、セシルが勝利を宣言する。

マグラの意識が最も自らから外れるタイミングを待っていた。

後衛に頭を狙わせたのもそのためだ。

ソフィーの神技「精霊神の祝福」は使用済みのため、もうクールタイムはリセットできない。

マグラの体力を削りつつ、ここ一番の一撃を狙う必要があった。

(仲間たちのおかげだな。外すわけにはいかない状況だったからな。ん? 角が光ってるな)

アレンは切り落とされたマグラの頭部が光っている部分に気付いた。

額の部分にある長い角の先端が光っている。

『首が落ちたが、倒されたというログが流れていません。皆、油断しないように。私は角を回収するので、メルルは鍵の回収を』

「分かった!」

タムタムに取り付けられた拡声の魔導具にメルルの元気な返事が響く。

残り時間が20分を切ろうとしている中、マグラを倒したというログは流れない。

80階層ボスは倒さずに攻略したが、そもそも倒すことはできないのかどうなのか分からない。

ザシュ

アレンは警戒しながらも、マグラの額に伸びた大きな角の先端の光る部分を切り取った。

(ただの石くれの角だなっと)

『マグラの角を収納しました』

魔導書に入れたら、たしかに「マグラの角」とある。

「やったわ!!」

アレンの魔導書をセシルが覗き込む。

これでセシルはようやく1つ、魔法神イシリスのお使いクエストを達成したことになる。

「ほいっと。って、え?」

仲間たちも、セシルの表情に安堵の表情を浮かべる中、タムタムのアームがマグラの首にかかる鍵を掴もうとした。

しかし、アームから逃れるように鍵がタムタムから離れていく。

足が動き始めたかと思うと、パラパラと土煙を上げながら、首から下の体が起き上がり始めた。

カッ

首だけになったマグラの目が真っ赤に光る。

「うおっと!? なんだ!!」

アレンは思わずセシルの手を握って、後ろに飛びのいた。

「ちょっと、まだ倒されていないの!!」

「そうみたいだ」

グゴゴゴッ

首だけで立ち上がった石像のマグラに、これまで破壊して砕け、床に広がった石塊が集まって回復していく。

胴体部分のダメージが完全に治ったと思ったら、鋭い爪のある手を使いマグラの首を掴んだ。

アレンによって落とされた頭を首に取り付けるとメキメキと回復していく。

『皆攻撃を!!』

(これはまずい。攻撃手段がもう残り少ないぞ)

一気に臨戦態勢へと移っていく。

ゴーレム部隊は砲身から熱弾を打ち放ち、マグラを中心に爆炎が上がり、噴煙が散り爆音が鳴り響く。

『なるほど、流石は余の神器を持つ竜とその仲間たちだ。余は竜神マグラ! 世界を統べる竜神である!!』

全身が復活した後、一切行動に移さない。

何かのたまっているが、その間も仲間たちは必死に攻撃をする。

攻撃を続けるとマグラの体は攻撃を受け石で出来た全身は大小様々なヒビが生じ、とうとう体全身は崩れるように、大小の石や噴煙が床石に零れ落ちていく。

「やったの……。そんな! 体が!!」

大小の小石が全て床に落ち、舞い散る噴煙が落ち着いたところでマグラが姿を現した。

筋肉質な体は緑の鱗に覆われており、頭には先端が欠けているものの、長い1本の角が生えている。

後ろ足は太くたくましく、全長100メートルの体を支え、3本の凶悪な爪の生えた前足は全てを切り裂かんとアレンたちに向けている。

翼の内側の被膜と腹部はクリーム色で、ツートンカラーのオーソドックスな「ザ・ドラゴン」と思われる姿をしている。

『貴様らの攻撃によって、ガイアによって封印された余は解き放たれた。余に代わり、この迷宮で朽ちてゆくがよいわ!!』

目を開けて、感謝の意を述べた。

態度はあまりに尊大で、アレンたちを虫けらのようにしか見ていないようだ。

【99階層・残り0:14】

(この状況で2段階目に変身があるのは勘弁してほしいぞ。攻撃の手段が!)

アレンが困惑するが、向こうもこちらを待ってはくれないようだ。

ミニ土偶の時間を確認し、数少ない攻撃手段の中から、勝利の条件を模索する。

ゴーレム使いたち、魔法使いたち、マティルドーラによる攻撃をものともせずに、後ろ足を踏み込み、ズンズンと突っ込んでくる。

「ハク! マグラの進行を止めるんだ!!」

『ギャウ!!』

「セシルはプチメテオの準備を!!」

「え、ええ分かったわ!」

矢継ぎ早に指示を出していく。

倒す手段なら仲間たちの数だけたくさんあるだろう。

だが、残り時間以内となるとどうだろうか。

マグラの動きや見た目からも体力はどうも全快しているようだ。

アレンの予想を絶望が塗り替えていく。

ギンギン

バキッ

アレンも、シアやルバンカと共に、マグラの腹元で剣を振るう。

グラハンの覚醒スキル「憑依合体」を解除しておらず、知力依存による強力な一撃を与えているものの、今のペースで体力を削り切れるのか分からない。

それほど、マグラの体は、強固な鱗に覆われ、その下には鍛え抜かれた筋肉が躍動し、アレンのオリハルコンの剣を遮っていく。

(おっと、剣が折れてしまった。予備だ予備)

アレンは焦る気を落ち着かせて、先ほどのグラハンの特技「ソウルセイバー」によってヒビが入り、消耗していたオリハルコンの剣を予備の剣に切り替える。

魔導書から出した予備の剣は、いくつもの試練を越えたハバラクに攻略前に渡されたものとは違い、攻撃力(威力)が落ちてしまう。

そんな焦りの気持ちをアレンは必死に落ち着かせようとする。

『む? エクストラスキルか!』

しかし、マグラは戦いに慣れており、後方で魔力を練るセシルの変化に気付き警戒心を露わにする。

こういうことが起きないようにするために、特技「ソウルセイバー」を振るう際は、仲間たちの攻撃の中、必死にマグラの意志がこちらに向かないようアレンは意識をしてきた。

一撃必殺の一撃は、敵の意識の範囲外からするから、最も威力が発揮される。

『ギャウ! グググ!!』

自らの3倍の巨躯のマグラを、ハクが必死に抑え込む。

『メルル、我々も前に出るぞ』

「うん、タムタム行くよ!」

『分かりました』

後方からブレスを主体にして攻撃をしていたマティルドーラがメルルに声をかけた。

老齢だが成熟しきった肉体のマティルドーラはタムタムと同じく、そしてマグラと同じ体格をしている。

『む? 貴様らごときで!!』

さすがにハク、マティルドーラ、タムタムの3体がかりで抑え込まれ、マグラは行動の勢いを失う。

「準備出来たわ! 皆離れて!!」

セシルは魔力を練り終わり、マグラにまとわりつく3体に退避するよう叫んだ。

しかし、3体の誰も、マグラから離れようとしない。

既にセシルのエクストラスキルは読まれており、確実に攻撃を当てるため、このまま抑え込む選択をしたようだ。

血まみれになりながらも鍵を奪い取ろうとしたシア。

シアの身を守るため、ひねりつぶされそうになったルバンカ。

ガララ提督やヘルミオスのパーティーも必死だ。

誰もが自らの覚悟を背にし、行動をしてきた。

『この程度の力で馬鹿めが!!』

『放しません!!』

マグラの凶悪な前足の爪がタムタムのアダマンタイトのボディを切り裂いていく。

しかし、タムタムはマグラに抱き着き、一切離れようとせず、動きを封じる。

「僕らのことはいいから、早くプチメテオを!!」

拡声の魔導具ごしに、タムタムを操縦するメルルの声が響く。

(くそ、この強さならディグラグニを呼び出しても意味がなかったか)

メルルはディグラグニをこの場に呼び寄せ「ディグニオン」による合体技を使うことはできない。

大地の迷宮は最初に入場すると決めた仲間たちが倒されて減ることは許されても、あとから追加することはできないからだ。

24時間という攻略時間は、魔法神イシリスの下へ研究の手伝いをするディグラグニにとってあまりに長い時間のため、協力を断られてしまった。

だが、この状況で、ディグラグニが一撃必殺の強力な必殺技があるわけではないので、タイムアタックにとってどれだけ有効な状況になれたのか分からない。

【99階層・残り0:10】

間もなく残り10分になろうとする中、アレンは決断を迫られた。

「仕方ない。セシル、このままプチメテオを食らわせてくれ。グレタさんとイングリッサさんは速やかに回復の準備を!!」

「ええ、分かりましたわ!!」

「し、仕方ないわね! プチメテオ!!」

2体がかりで抑え込み、セシルは練り上げた全ての魔力、そして霊力までも全てを注ぎ込み、エクストラスキル「 小隕石(プチメテオ) 」を放った。

セシルが学園に通っていた時に使えるようになったエクストラスキル「小隕石」は当時50メートルほどであったのだが、今となっては直径1000メートルにも達する程になった。

数十万の魔力と霊力の全てを吸った真っ赤に焼けた大岩が天井に生じ、マグラの下に真っ直ぐに落ちてくるのであった。