軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第625話 ギランの試練②似た者同士

第一天使ルプトはある程度、アレンの行動を読んだ上で、この場に臨んだようだ。

(ん? ああ、そうか。ルプトも俺と同じか。いわゆる似た者同士だな)

ルプトの状況を前世の健一でサラリーマン経験があるからこそ理解できる。

この世界は創造神エルメアを中心として、上位神、神、亜神という上下関係で出来ている。

創造神の意向は絶対だが、必ずしも従順に従う神ばかりではないのだろう。

そんな上下の板挟みの中でルプトは調整をしてきたと思われる。

以前、アレンが健一だったころ、職場の上司たちの考えが異なり、めんどうな立ち位置になったことなら何度かあった。

平社員の立場で、係長と課長、課長と部長など、上司の意向が違うと、これ以上めんどくさいことはない。

平社員の健一へ、係長と課長で異なる考えや指示をすることもあった。

(創造神エルメアと獣神ガルムの関係はそんな感じなのか)

係長の顔も立てつつ、課長の意向も無視はしないという、頭をひねるような行動を求められ続けたことを思い出す。

だが、どうしても理不尽な指示を係長がしてきたなら、平社員であった健一がやるべきことは1つだ。

上席の立場の課長に状況を報告し、判断を仰ぐ。

その結果、係長から多少気分悪く思われるかもしれないが、それも報告の仕方次第だろう。

今この場に、神々の間に挟まれた似た者同士のアレンとルプトがいる。

1人と1体が見つめ合う中、他の誰も間に入ることはできない。

このまま黙って、慰め合ってもしょうがないので、アレンから口を開く。

「苦しい立場でございました。ルプト様におかれましても、お手数おかけしております」

『アレンよ、今回の一件も神罰を下さざるを得ない限界を攻めましたね』

「いえいえ、私は波風を立てたくなかった一心でございます」

風の神にわざわざ出向いた理由をよく分かっていたようだ。

(ルプトは状況を分かってくれていたと。流石最上位神に仕える第一天使だ。レームを神にするのはエルメアだからな。祈りを増やすとか、そんなことをしても決定権者が首を縦に振らないと話は前に進まないからな)

アレンは風の神の神域に出向き、けんか腰の態度で話をすることで、エルメアが動くと踏んでいた。

エルメアが動く限界を攻めた。

風の神の下へ伺うこともなく魔導具の配備を進めれば、それこそエルメアの怒りを買いかねない。

決定権者の耳に入れつつ、ギランの試練も達成しないといけない。

アレンが、ここから交渉の大詰めをしようと頭をフル回転させる状況に、ルプトの口角が上がる。

『これ以上の話は不要のようです。どうやら、エルメア様の答えは出たようですね』

アレンの前にいきなり魔導書が現れた。

ブンッ

「え? っと!」

魔導書のページの一部が輝いているようだ。

(久々の手紙じゃないか。どれどれ)

「今、この場で確認してもよろしいですか?」

『どうぞ』

ルプトに許可を取り、アレンは魔導書の手紙を読んだ。

セシルとソフィーもアレンの背中越しに覗き込む。

『アレン様

平素より大変お世話になっております。

早速ですが、本件の状況についてルプトより報告を伺いました。

当方としましては、自由な活動を依頼している身ではございますが、本件については見逃せない点がございましたので、第一天使ルプトを派遣した次第でございます。

不快な思いをさせてしまった点におかれましては謝罪させていただきます。

さて、たった今、アレン様のおっしゃる通り、神界では淀みが随分となくなり、今後の人間世界、神界の運営に、多大な貢献を頂いたと認識しております。

アレン様の多大なる功績を考慮し、また純粋なる試練達成に向けた行動と判断できました。

また、レームシール王国におかれましても、いっそうの祈りがレームに捧げられるとお見受けできました。

神の『枠』を、神界一同、前向きに検討する方針となりました。

結果はおって、獣神ガルムに報告します。

これはアレン様に報告することではありませんが、本件が起きた原因たる獣神ギランの行動にも、一定の理解があることから、神の試練にしたことも含めた全てにおいて不問を予定しております。

お手数ですが、獣神ギランにはその旨お伝えください。

アレン様及びその一行様におかれましては、今後もますますのご活躍を期待しております。

神界スタッフ一同

創造神エルメア』

そこには、以前に何度も見た創造神エルメアからの手紙が入っていた。

(うっし、試練達成や~。報酬は何だろうな。ぐへへ)

そこにはアレンの望みが書かれており、心の中で拳を握りしめ天に掲げた。

魔導書には試練の達成報酬が書かれていた。

アレンはこの結果をもって、ギランの報酬に頭の中がいっぱいとなる。

『アレンよ。見せていただいてもよろしいですか?』

「どうぞ」

アレンはメッセージが乗った該当ページをルプトに見せる。

『エルメア様のご判断を私たちは尊重したいと思います』

「御足労おかけして申し訳ありません」

似た者同士の1人と1体は、このまま形式的な状況を続けることにする。

アレンが上目使いでルプトを見ていると、ふむふむと何度か頷いて、魔導書の他のページを見だした。

(手紙以外関係ないだろ)

『ほう、創生のスキルも、順調のようですね?』

「霊石が集まり、仲間たちの協力もありますので。この度は有用なスキルを設定頂き、ありがとうございます。メルスも喜んでおりました」

(ついでにお礼を言っておこう)

メルスの戦力が上がったことについて、これ以上にない礼を言う機会だとアレンは判断する。

『……引き続き、鍛錬に励むのです。あまり余裕があるとは思わないことですね』

メルスの話題もふったのだが、ルプトは一切表情を変えることがなかった。

先ほどまでの交渉以上に、厳しい表情をアレンに向ける。

「……肝に銘じておきます」

話の流れは分からないが、とりあえず肯定の返事をしておく。

『ルプト様、どうするのですか~?』

話についていけない大天使ランランが状況を確認する。

『創造神エルメア様が本件について動いていただけることになりました。風の神ニンリル様については安心するのです』

『おお! エルメア様~さすが創造神です~』

大天使が小躍りするようにピョンピョンと跳ねながら喜ぶ。

ルプトはさらに、アレンから少し距離をとったところで跪く、レームシールの王家に視線を向ける。

『鳥人の王ウーロンよ。日々の祈り感謝します。そして皆の者、これで引き上げさせていただきます。レームへの祈り、弛むことのないように』

「はは! 誠心誠意、王国を上げて祈らせていただきます」

嘴をフカフカの絨毯に差し込むほどの勢いで、国王が土下座をして返事をした。

『では、皆さんこれで失礼します』

小躍りする大天使の首を握ると、第一天使ルプトは天井に向かって上がっていく。

光に包まれた4体の天使たちはそのまま消えてしまった。

「何とかなりましたわね」

ソフィーはホッとする。

ようやく、国王たちは動き出し、アレンたちの下へ向かう。

「そうなのか? 何とかなったのであるな?」

魔導書が見えない王と宰相は話についていけない。

天使がいなくなり、王妃と王女も王の下に駆け寄る。

次の答えをアレンに待っているようだ。

このような状況になってしまったことも含めて、セシルもソフィーも、アレンがどうなったのか答えるべきだと視線を送る。

「はい、国王陛下。エルメア様が鳥人の日々の祈りに感謝すると仰せのようです。どうやら幻鳥レーム様の祈りが届いた結果のようでございます」

(嘘も方便とはよく言ったものだ)

「お、おお!! そうか、そうか。アレン殿もやってくれたな」

「そういうわけで、現在王都にある魔導具はそのまま置いて帰りますが、そのほかについては、たった今のお話もあったように、設置は厳しくなるかもしれませんが……」

(予算もないし、そもそも話の流れで魔導具にすべて置き換える予定もなかったし)

予算カツカツのアレンだ。

「も、もちろんです! 風の神様への恩を忘れるようなことできるはずがありません!」

アレンは自らの約束を反故にすると、宰相はすごい勢いで同意してくれる。

魔導具を推し進めた結果、神の怒りを買いそうになったことは理解できているようだ。

宰相の発言に国王も強く頷く。

セシルは跪いた状況から立ち上がり、大きく息を吸った。

「もう、ギリギリ何とかなったのよ! 分かっているの!!」

「ああ、そうだな。クエスト達成とみて良いな。ギランに報酬を頂きに行こうか!」

「やばいわね……分かっていなかったわ」

呆れるセシルの声はアレンには届かない。

***

昨晩の祝いの席が終わり、翌日となった。

アレンたちの前には扉がある。

日の沈みが早く、そして、日の昇りが遅いレームシール王国においても、日の光が十分に王都を照らす時間帯だ。

「結局朝食まで出てこなかったわね……」

「ロザリナは相変わらずか。セシルとソフィー、引っ張り出してくれ」

1人だけ、私室から、なかなか出てこないのだが、いつものことだと部屋の前で呆れてしまう。

セシルとソフィーが部屋に入っていくと何やら喧噪が聞こえる。

「もう、何なのよ! ロザリナ、朝は苦手なの!!」

「ちょっと、前髪と世界どっちが大事なのよ」

「前髪よ!!」

(今日は前髪が決まらなかったから出てこなかったのか)

セシルの気迫にロザリナは負けていない。

皆で叩き起こして、早々に移動した。

試練(クエスト) を達成したなら、行くべき場所は1つだ。

小山の上にある半径500メートルほどの円状で、厚さ1メートルほどの真っ白な石材の上にシアとギランはいた。

「やっと到着したぞ。随分待たせたな」

どうやら、早朝の訓練が終わり、ひと汗かいて小休憩をとっているところだった。

ギランに 神域(サンクチュアリ) と呼ばせた、この場はシアが1ヵ月ほど暮らす中、随分と生活感が出てきたなと思う。

(よしよし、良いウォーミングアップになったかね)

「そんなことはない。それで、この様子だと……」

「ああ、とりあえず達成済みだ。ギラン様に報告だな」

昨日貰ったエルメアからの手紙から判断しても、試練②の達成は間違いないと思う。

アレンたちは 神域(サンクチュアリ) の中央に佇むギランの下へ向かう。

『……』

ギランは静かに、アレンの表情を確認しているようだ。

無言のギランに対して、アレンたちは試練達成報告に伺うのであった。