軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第621話 威力確認

アレンたちは要塞にその日は滞在して翌日を迎えた。

この日はメルルたちの大地の迷宮攻略は休みで、竜人たちは霊獣を狩ることになる。

要塞の上空でアレン、セシル、ソフィーが鳥Bの召喚獣に乗っている。

要塞の真上だと竜人たちの邪魔になるかもと思って、少し前方に浮いている。

背後では、竜人が朝から霊獣狩りの準備中だ。

魚系統の召喚獣も、竜人や獣人の身を守るため、特技や覚醒スキルを振りまいている。

日々の狩りで稼ぎが良くなったのか、竜人たちの表情が生き生きしているのを、アレンの側で見つめる鳥Eの召喚獣が捉えている。

だが良い話だけではないようだ。

「こらあああああ!! しっかり隊列を組まんか!! 間もなく始まるぞ!!」

「ちゃんと組んでんだろ。隊長さんはこまけえな」

「なんだその口の利き方は!!」

「あんだよ! 殴ることねえだろうが!!」

外壁の上の喧騒がそこまで離れていないためか、確かに隊列を守らない獣人がいる。

隊長クラスの竜人が拳で言うことを聞かせている。

(なるほど、問題児も結構多いと。さてと)

アレンは後方の要塞から前方に浮くメルスに視線を移す。

『召喚獣が武器なのか……。こんなのは私の設定にはなかったんだがな。というより、そもそも創生のスキルなど検討まで進んでいなかったがな』

朝から呼んだメルスが、思いがけないと言わんばかりに感想を漏らした。

メルスはアレンの召喚獣になる前は、第一天使として召喚士や召喚獣の設定作業に当たっていた。

死ぬ寸前まで研究に奔走しており、大量の資料を残していたとアレンも聞いているが、その中にも、目の前の情報はないと言う。

メルスが死んだのは、Aランクの召喚獣の設定途中だ。

その後のSランク以上の召喚獣など、召喚士の才能レベルが9以上については、構想段階で細かい設定はなかったらしい。

当然のように、召喚士の設定作業は第一天使となった双子の妹のルプトに引き継がれた。

王化の次に覚えた「成長」のスキル以降については、ルプトが運用段階まで設定を詰めたらしい。

「そうなんだ。メルス、とりあえず、目の前の武器たちはお前専用だ。ちょっと、持ってみてくれ」

メルスの横には目録にそれぞれ入れられた100個の武器がある。

先日の注意メッセージのログの通り、メルスなら難なく目録に収めることができた。

なお、アビゲイルを通じて、スキルの検証をする旨、隊長以上には指示が届いているはずだ。

『分かった。ルプトの奴め、何を考えているんだ』

(目録に収めやすくて使いやすそうだね。もしかして、もしかするとだけど)

唐突に手に入った目録の活用方法、そして天使Bの召喚獣の検証の際流れる注意メッセージのログが何を物語っているのか予想ができる。

メルスが手を差しのべる光景を見て、今その答え合わせの瞬間が訪れた。

ブンッ

魔導書が突然現れる。

セシルとソフィーが目を丸くする。

『天使Aの召喚獣と天使Bの召喚獣の接触が確認されました。天使Bの召喚獣は、天使Aの召喚獣の構成要素に変更されました』

「おお、ステータスが増加したぞ!」

『たしかに、武器を握っただけだが分かるぞ。凄い力だ……』

メルス自身も自らの強化具合に驚きを隠せないようだ。

メルスが当たり前のように剣と盾を装備している。

(これは助かる。メルスは「裁きの雷」を使った後、殴る蹴るしかできなかったからな。お? 創生スキルの天使Bと融合したから霊力があるぞ。指揮化、王化、強化に成長もさせてよ)

アレンは、今の召喚士のスキルだけで、どの程度強くなるのか確認していく。

【種 類】 天使

【ランク】 A

【成 長】 S

【階 級】 王、将軍

【名 前】 メルス

【体 力】 40000(※1)+10000(剣と盾)+20000(※2)

【魔 力】 40000+10000+20000

【霊 力】 70000

【攻撃力】 40000+30000+20000

【耐久力】 40000+30000+20000

【素早さ】 40000+10000+20000

【知 力】 40000+10000+20000

【幸 運】 40000+10000+20000

【加 護】 全ステータス8000(※3)

【特 技】 属性付与、天使の輪、マジックシールド、剣術〈9〉

【覚 醒】 裁きの雷、ライトニングスラッシュ

※1 成長レベル9

※2 王化10000、指揮化5000、強化5000

※3 天使B4000、天使A4000

とてつもないステータスと、そして、有用なスキルを持つ召喚獣がアレンの前に浮いている。

これまでの弱点はそのほとんどが、今回の天使Bの召喚獣によって解消されたと判断する。

これまでのメルスはステータスの割に攻撃の選択肢が少なかった。

大技の覚醒スキル「裁きの雷」を打ったあとは、遠距離攻撃も範囲攻撃も一撃必殺もなかった。

(さてと、スキルの効果と威力の確認をきっちりしないとな。きたきた、試し打ちといこうか)

圧倒的なステータスでも、スキルの威力が低ければ意味がない。

ドドドドドドドド!!

アレンが分析を進めていると、遥か彼方から、土煙と地響きが聞こえてきた。

竜人たちの準備が終わったタイミングで、視界の果てに集めておいた霊獣を虫Gと虫Aの召喚獣コンビが要塞へ釣ってくる。

今回は、メルスのスキルの試し打ちのため、セシルやソフィーは後ろにいる竜人たちに被害が及ばないよう、待機してもらっている。

(スラッシュはアロータイプか。パワータイプか)

セシルとソフィーに攻撃しないように言う。

さらに、今持っている武器の威力を確認するようにメルスにも指示を出す。

『分かった』

霊獣が要塞に接敵するまで10キロメートル以上離れている。

10万体ほど釣ってきたので、最後尾になると20キロメートル近く離れた巨大な集団だ。

8キロメートル

6キロメートル

4キロメートル

2キロメートル

虫Gの召喚獣を全力で追いかけてくる霊獣もすごい勢いだ。

集団の最後尾についても、10キロメートル以内に接敵したことを鳥Eの召喚獣の覚醒スキル「千里眼」が捉えた。

竜人の守人長たちも、アレンたちがあまりにも攻撃しないため、思わず攻撃の合図を送ろうとしたその瞬間だ。

「メルス、ライトニングスラッシュだ」

『ライトニングスラッシュ!!』

メルスは重心を下げ、腰を低くし、腰に下げた鞘から剣を抜くや否や、紫の放電を纏った剣が衝撃波が霊獣たちに真っ直ぐ迫る。

(おお! やはりアロータイプだ!!)

この世界のスキルで「スラッシュ」という名がつくものは遠くまで飛んでいくものが多い。

ズドオオオオオオオオン!!

竜人たちの攻撃範囲の倍近い距離をメルスの飛ぶ斬撃が襲う。

数千、数万の霊獣が上空から斜めに襲った覚醒スキル「ライトニングスラッシュ」によって大地ごと大きく吹き飛ばした。

威力なども勘案して、飛距離は2から3キロメートルだろうか。

ソフィーの精霊によって強固に作られた要塞が、地盤から波打つ衝撃を受けている。

(流石エクストラスキルか。ん? ってことは)

要塞の上の竜人たちの困惑ぶりと、メルスの背中を捉える。

荒くれ者の獣人たちが慌てて何かを大声で叫んでいるが、構わず検証を進めることにする。

「続けてくれ。後ろの要塞に気を付けて、ど派手にやってくれ。マクリスたちも補助をかけてくれ。ソフィーは精霊神の祝福だ」

『分かったのら~。ロイヤルオーラなのら~!』

「はい。畏まりましたわ」

(お? よしよし、メルス本体だけでなく、武器と盾もステータスが増加したな。メルスの一部って言ってたし。これは良好と。さらにだ)

本来、剣などの武器や鎧などの防具は、魔法具と違い補助スキルのステータス補正の範囲対象外だ。

しかし、メルスと一体になっている天使Bの召喚獣は補正の対象内のようだ。

金の卵も使って、仲間たちもと共に強化できる最大限まで強化する。

「よし、メルス。派手にやってくれ」

『本当にこの状態で使っていいんだな? 分かった、目録よ』

バフをかけまくったアレンはメルスに攻撃を続けるように言う。

手元に目録を出現させると、剣と盾が瞬時に大きな鞭に切り替わる。

(ノータイムでステータスも変わったな。覚醒スキルを使っても武器交換でクールタイムなしか。特技も速攻で変わると)

武器が変わるとメルスのステータス、特技、覚醒スキルが変更される。

目録によって変更された武器は、魔力と霊力を吸い、ぐんぐんと鞭が長くなる。

100メートル以上メルスが上空にいるにもかかわらず、鞭の先端が地面についた。

ヒュンヒュン

それでも鞭の長さは止まることを知らず、1キロメートルを超えてさらに長くなる。

ぶつけた先の岩や地面を吹き飛ばしていく。

「背後に要塞がある。後方には気を付けてくれ」

『問題ない。鞭が手に吸い付くようだ。では、行くぞ! スパーリングウィップ!!』

メルスが鞭の覚醒スキル「スパーリングウィップ」を発動させると、鞭は紫の電撃を纏い残った霊獣たちに襲い掛かる。

ズドオオオオオオオオン!!

無数の残像を残しながら振られる鞭は大きく広がっていき、その距離は霊獣の背後にまで達する。

紫の放電を纏った鞭が広範囲に広がり、触れるものが岩だろうが、霊獣だろうが、覚醒スキル「スパーリングウィップ」は無造作に全てを払い飛ばし、撃滅させていく。

「なんだこ、こりゃあああ!?」

「あばばばば!? 化け物だ!!」

「こんなの聞いていないぞおお!」

背後の要塞からも絶叫が広がり、中には腰を抜かしたり、ちびってしまう者もいるようだ。

特に、アレンについてよく知らない獣人たちが震えあがっているようだ。

鞭の一振りが、10キロメートルほど離れた富士山ほどの数千メートルの岩山の裾野に激突する。

岩盤の根本から弾かれたかと思ったら、山がゆっくりと回転しながら上空を舞う。

「や、山が吹き飛んでいきますわ!?」

1キロメートル以上舞い上がったと思ったら、自らの重さによって落下を開始した。

アレンたちの驚きをあざ笑うかのように山はゆっくりと地面に帰っていく。

激突すると、山は粉砕され、地面に広がり衝撃波と共に、ここまで土煙が襲い掛かる。

(無数に分かれた範囲攻撃の一振りでこの威力とか)

流石のアレンも絶句する。

土埃が落ち着いたころ、覚醒スキル「ライトニングスラッシュ」を生き延びた霊獣たちの中で、立ち上がれるものはいなくなっていた。

竜人も獣人も目の前の光景を理解できないのか、ただただ黙って動けなくなってしまう。

「クールタイムはどんな感じだ?」

『恐らく一日だな』

鞭を握った感触を確かめるようにメルスは答えた。

【天使Bの召喚獣の検証結果】

・武器(盾も一部あり)は全100種類

・天使Aの召喚獣にしか使えない

・それぞれ、覚醒スキル、特技、ノーマルスキル(使いこなすため)が1つずつある

・それぞれの武器で覚醒スキルを1回ずつ放つことができる

・霊力が付与されるため、創生スキルの使用が可能になった(ここ重要)

・成長及び強化のスキルは天使Aの召喚獣、天使Bの召喚獣それぞれに発動できる

・王化は天使Aの召喚獣に発動できる

・指揮化は天使Bの召喚獣に発動できる

・天使Bの召喚獣(武器)はバフの恩恵を受ける

・天使Bの召喚獣(武器)はデバフの効果を受ける(予想)

アレンはさらさらと予想を含めながら、検証結果をまとめていく。

「何よ。これ『チート』じゃない」

地形が変わるほどの、あまりの衝撃にセシルからアレン語録が飛び出た。

竜人や獣人の言葉をセシルが代弁するのであった。