軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第612話 ギランの試練②恩と祈り

カラサギ宰相の話は続いていく。

虹色の卵を産んだアルバヘロンレジェンドは食糧を求め、大陸を渡らせてまで、配下のアルバヘロンに餌を集めさせた。

BランクやAランクなど凶悪なアルバヘロンたちが解き放たれた。

その被害によって多くの鳥人が命を落とすかもしれない。

実際、産卵後、孵化する前であっても、鳥人たちを中心に、かなりの犠牲が出たらしい。

(なるほど、あの鉄格子は、アルバヘロン避けで取り付けているのか)

光や空気の流れを多少悪くしてまで、鳥人たちは自らの命を守るため、巣箱の金網のようなものを住処に取り付けている。

地上の街や村の住む者たちの外壁のような役目のようだ。

「その卵を手に入れたってことかしら」

「そのとおりでございます。クワトロ様の協力の下、マッカラン様とお仲間たちの協力で卵を盗み出し、アルバヘロンレジェンドを落ち着かせた。これはその時の絵でございます」

英雄たちの功績を称え、王城でも最も目立つところに絵を飾ってあるという。

「冒険者ギルドの本部長をやっているときは、そうは見えないけど、この時は随分やんちゃそうね」

正面で満面の笑みのマッカランと違って、他の5人はどこか顔が引きつっているように思える。

セシルはアレンのノリに付き合わされる仲間たちを、この絵にも見たようだ。

「回復役はイスタールで、獣人はじゃあ先王ヨゼか。ん? この方はオルバースさん?」

宰相の解説もあったが、絵にも刺繍で名前が縫われてある。

「本当ですわ。横顔で分かりづらいですか」

邪神の化身の騒動で死んだ大教皇イスタール=クメス。

現獣王のムザの先王であるヨゼがいる。

数十年に1度しか任命されないSランク冒険者のメンバーとあって、錚々たるメンバーなのだろう。

アレンたちはもっとも端で顔をそむける銀髪のハイダークエルフに目が行く。

その顔はルークの父で、ダークエルフの里ファブラーゼの王であるオルバースだった。

(そういえば、ルークを仲間にするとき、オルバースが世界を冒険したことがあるとか言っていたな)

オルバースがSランク冒険者のパーティーの一員だったことを知る。

冒険者になって何がしたかったのだろうか。

おそらく本人に聞いても、答えないであろう問答を、横向きでめんどくさそうにしているオルバースの絵を見ながら思う。

「どれだけの人が救われたか。私たちは欠かさず祈らせておりますのです」

カラサギ宰相は、目をつぶり、両羽を合わせ、深く頭を下げ祈りを捧げる。

絵の説明と祈りが終わった後、アレンたちは応接室に通された。

国王の謁見を待つこと2時間が過ぎた。

パラパラ

アレンは窓の外を見ながら、魔導書を高速で動かし、竜人たちが集めてくれた霊石を消費する。

1個でも多く霊石を消費し、1回でも多く霊力を上げ、1日でも早く創生スキルを上げたい。

「もう夜になっちゃたわね。本当に今日中に会えるのかしら」

セシルが窓から外の景色を覗き込むと辺りは随分暗くなっているようだ。

山をくり抜いてできたような王都のため、日が沈むのも早いのかもしれない。

外の景色の静寂を見ていると扉のノックがなった。

コンコン

「はい、どうぞ」

同じく応接室で待機していたソフィーが扉を開ける。

ヌイッ

「おお、よくぞ来てくれた。余がウーロンである」

「ひい!?」

扉を開けるなりヤンバルクイナ面のウーロン国王が、ソフィーの目の前に現れる。

鳥人特有の首の長いウーロンが、頭だけを先に、扉の隙間から頭を覗き込ませてきたため、ソフィーが思わず絶句した。

「ちょっと、父上、お客様が怖がっているわ」

王女だろうか、ウーロンにあまり似ていなく、若く美しいドレスを纏う鳥人がツッコミを入れる。

その後ろには王妃もきており、王家全員でやってきたようだ。

さらに、宰相や近衛の騎士もいて、総出の対応でアレンたちの下へ来てくれた。

「おお! ウーロン国王陛下、ご無沙汰しております。5大陸同盟会議以来でございます」

王家全員で来てくれたよパターンで、少し高めのテンションで、アレンは応対することにする。

「なんのなんの。英雄アレン殿が我が国に来てくれたのだ。しかし、いつか来るみたいな話を式場でしてくれたのだが、こんなに早くなるとは驚きだぞ」

「いえいえ、その節は、ペロムスの結婚式に来ていただきありがとうございます」

ウーロン国王とは今年に行われた5大陸同盟の会議からの関係だ。

その会議の中で行われたペロムスの結婚式にも同席しており、アレンはその場でも幾度か会話をした記憶がある。

レームシールにやってきたらぜひ国に立ち寄るといったお世辞文句も受けていたのだが、本当にやってきたことに驚いているようだ。

応接室のテーブルがそのまま、ウーロン国王との謁見の場となった。

王家は日々、要人と謁見したり、晩餐会に出たり、国民の行事に参加したりと、とても忙しいものだ。

その日に会いたいと言って会えるものでもない。

そんな用事のいくつかを投げ出してここに来てくれたのかもしれない。

さすがにいきなり用件を伝えるのは失礼と、社交モードに入ったアレンが雑談を回してく。

「それで、今日は何用でこられたのですかな。宰相の話ではレーム様が関わっているとか?」

国王から話を切り出してくれた。

アレンに気を使ったのかもしれない。

もしくは、夜が早いと言われる鳥人なので、早々に済ませて眠りにつきたいのかもしれない。

「実は、幻鳥レーム様が神に至れない問題を抱えているのです。その解決策はないかと私たちはこの国に来たのです」

「問題とな?」

ヤンバルクイナ面の国王は目をぱちくりさせて驚く。

「はい、どのような問題か分かりませんが、レーム様のため、何かできないか知りたいと街々を観察し、王城内も拝見させていただきました」

今回の王家との対応で獣神ギランとのクエストについては伏せておくことにした。

これは待っている間にソフィーとセシルとも話し合ったことだ。

理由としては、試練の話を含めるとややこしくなり、レームを神鳥にするという目標が遠くなる恐れがあるからだ。

「ああ、なるほど、分かったわ」

そこでセシルが会話に入ってくる。

名推理でも湧いてきたのか、目がキラーンとなっている。

アレンが普段やっていることを、一度はやってみたかったのかもしれない。

「なんじゃ、何が問題でレーム様は神に至れないのか」

国王も王家の皆も宰相たちもセシルを食い気味に覗き込む。

「それはやはり、クワトロ様を深く祈りすぎたからではないでしょうか。やはり、まずは国名の由来にもなっているレーム様を祈らないと」

(ふむ、それは俺も思った)

60年前、王国を救ったクワトロを拝めた結果、レームへの信仰が薄くなったのではとアレンも思う。

「そのようなことはありません!」

「へ? え?」

王妃がテーブルに手を当て立ち上がらんとばかりに、セシルの考えを否定する。

「気を悪くして申し訳ありません。私たちも何が原因が分からないのです。ちなみに、何か否定できるようなお話があるのでしょうか」

アレンがフォローに回る。

(この反応は、王家もレームが1000年も神に至れないことを気にしていたのかな)

セシルに代わってアレンが謝る。

申し訳なさそうにするセシルに対して、アレンは目配せをして問題ないことを伝えた。

王家の反応を見ることも、今回のクエスト達成に向けて必要なことだ。

「もちろんじゃ。この王城の横には大きな神殿を立て、幻鳥レーム様を祀っている。決して疎かになどしておらぬ」

(そうなのか。ホロウ、ちょっと見てきてくれ)

アレンは夜でも視界の明るい鳥Dの召喚獣を窓の外に召喚する。

一つ飛びで向かわせると、たしかに王城の側に別館と思われた建物があり、窓の外からのぞき込むと幻鳥レーム像が祀られる神殿だった。

既に夜も更けているのだが、魔導具の明かりを持った貴族たちが足を運び、神殿内に祀るレームの像に祈りを捧げている。

「そういえば、なぜレーム様を祈るようになったか、事の始まりについてお話頂けませんか?」

クワトロが何をしたのか、その一端を先ほど、宰相から話を聞いた。

アルバヘロンレジェンドの時だけ活躍したわけではないだろうか。

きっとその時は国家存亡の時だったのだろう。

鳥人たちの記憶に鮮明に残っているようだ。

「それは、レーム様は1000年前、この国の流行病から救ってくれたのじゃ」

「流行病?」

「そうじゃ。儂ら鳥人にしかかからない奇病により、人々は皆、瘦せ衰え苦しんでいるところ……」

国王の話を魔導書に記録する。

幻鳥レームが聖鳥であったころ、レームシール王国は突如流行した謎の奇病にかかってしまった。

王国全土に広がった奇病で、国が滅びかけた。

この時救ってくれたのが、レームだった。

レームは自らの羽をちぎって与え、人々の病を癒した。

レームの羽は万病に効く特効薬となった。

病の原因は珍しい魔獣が、人々に病を蔓延させたのだとか。

既に魔獣自体は討伐できたのだが、病を消す術が鳥人たちにはなかった。

明日には自らが死ぬかもしれない。

もしかしたら子供たちに未来がないかもしれない。

何十万人、何百万人の人々が絶望と苦しみで喘いでいるところ無償で救ってくれたと言う。

さらに、自らの羽を与えるだけでなく、難病を癒す「薬学」の知恵も与えてくれた。

奇病だけでなくたくさんの病気の苦しみからレームのおかげで解放された。

祈りの結果と思われるが、レームシール王国は薬師の才能を持つものが多く誕生するようになったと言う。

今ではレームシールの薬術の研修にくる獣人たちもいるのだとか。

(なるほど。癒しの羽の効果があるのか。落ちてる羽を拾うべきだったか。魔獣を倒すだけが救いではないってことか。なるほど)

アレンは国王の話を整理して、なぜレームが神鳥になれないかさらに考察する。

「その時のレーム様の功績と感謝の祈りを捧げるため、神殿をお作りになられた。何と素晴らしいことでしょう。だが、それは王家だけではありませんか?」

人々は感謝しているのか国王に問う。

「そんなことがあろうはずがない。人々は感謝している」

「そうよ。アレン、人々は感謝していたわ。アレンも王城に来る前、人々が広間にあるレームの像に祈っているって言ってたじゃない」

セシルが、アレンたちがここに向かう途中見た、街の光景について触れる。

たしかに感謝をしている風景をアレンは鳥Eの召喚獣の特技を使って見ていた。

どの街にも、大きな街の広場にならレームの像があり、鳥人たちは思い思いに祈りを捧げていた。

「困りましたわね。王国に来ましたが、原因は分からないってことなのでしょうか」

ソフィーは手を当て、困ったと口にする。

「そんなことはないぞ、ソフィー。まだ手がある」

「何よ。『手』って、王国を挙げて祈りを捧げている。これで神になれない原因なんてどうしたら分かるのよ」

王家も宰相や騎士たちも、ソフィーやセシルもアレンの次の言葉を待つ。

「原因を調査をするぞ。そうだな、信仰調査だ」

「信仰調査?」

「信仰調査?」

「信仰調査?」

アレンの言葉に皆の言葉が重なるのであった。