軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第546話 山の頂上

山は、中腹にあった大空洞が押しつぶされてしまったため、半分ほどの高さとなり、頂上は大岩が崩れた部分を覆ったゴツゴツとなっている。

浮遊羽を解除して、アレンたちは頂上の端の部分の足場が安定してそうなところに降り立った。

「アレン、結局それは何なのよ。結構大きいけど種とか言ってたわね」

アレンたちの中で、アレンだけがドロップアイテムを抱え込んでいる。

(む、セシルは真実の鏡を置いてきたんだったな)

セシルは戦闘中に精霊獣に大きな手鏡のようなアイテムを使用したあと、投げ散らかしている。

お陰で、真実の鏡は今では押しつぶされた大空洞の中に埋もれているのだろう。

ああいう一点もののアイテムは、倉庫や巨大な袋の中に肥やしとなるのが定番なのだが、失うとイベントを振り返る機会が減ってさみしく感じる。

アレンは真実の鏡から抱える葉脈で覆う緑色の「神樹の種」に意識を戻す。

「何だろう、神樹の種と言っていたな。もしかして……」

アレンは聖獣石を収納から出して、神樹の実にかざそうとする。

Sランクの召喚獣になる逸材なら何らかの反応があるはずだ。

『神樹はまだ芽を出していないみたいね。まだ草Sの召喚獣にはできないわよ』

(お? 魔導書のログではなく直接にだと。だったら……)

一緒に転移する条件を満たしていなかったため、大空洞においてきたルプトは当たり前のようにメルスの横にいる。

「なるほど、これは草Sの召喚獣にするための……」

『ああ、ごめんなさい。あれこれ聞かれても答えられないわ。そういう決まりなの』

神樹の種について聞こうと思ったが、何も教えてくれないらしい。

職業やスキルについて、神に教えを乞うても何も答えは来ないらしいのだが、神々のルールなのだろうか。

だったら、最初から魔導書のログで回答してほしいと思う。

アレンとルプトのやり取りにメルスはため息をついた。

アレンがベタベタと戦利品のドロップアイテムである神樹の種を触っていると、ポンズとコンズがすごい勢いで頂上までやってきた。

『な、何故こんなことに……、これはどういうことですコンか!?』

『お前らの仕業かポン! 人間世界と神界の生命を支える大精霊神様の御山に何をしてくれたんだポン!!』

ポンズもコンズもアレンたちに敵意をむき出しにする。

(なんだ文句あんのか、この野郎)

アレンも負けじとメンチを切り、睨みつける。

幼精霊化していない2体の精霊がさらにアレンたちに距離を詰めようとした時だ。

大精霊神イースレイが対峙するアレンとポンズたちの間に現れる。

アレンたちより少し遅れて頂上にやってきた大精霊神の口には、失ったはずの真実の鏡がある。

大精霊神がポンズに視線を送ると、ポンズは真実の鏡を受け取った。

(真実の鏡か。取っ手には紫に輝く宝玉があると。宝玉か……)

『怒りを鎮めなさい。彼らは、私の与えた試練に答えた。それだけの事ですよ』

アレンが真実の鏡を考察しようとするが、大精霊神が打ち消すように口を開いた。

『分かりましたコン』

『分かりましたポン』

大精霊神の言葉でコンズもポンズも二つ返事で平静に戻ってしまう。

アレンたちはゆっくりと大精霊神の元に歩みを進めた。

「この度は、大精霊神の問題を解決させていただきました。流石は、大精霊神様、厳しい問題でした」

アレンは問題が解決したことを前面に出す。

『たしかにそのとおりです。大精霊神として、アレンさん方の努力と勇気をもって、今回の難題を解いたことを認めましょう』

大精霊神の言葉にソフィーもルークも緊張が和らぎホッとする。

「しかし、申し訳ありません。大精霊神様を祀るこの御山がこのようなことになってしまって……。それに、生命の泉」

「そうだよな、結局、エルフとダークエルフの問題も先延ばしにしてしまったし」

ソフィーとルークが大精霊神との会話に参加する。

精霊獣は倒したものの、生命の泉の枯渇問題はどうするのか、エルフとダークエルフの争いはどうするのか大きな問題を抱えたままだ。

(多くのエルフとダークエルフが関わることだからな。拙速に解決するだけが「答え」じゃないだろう)

先延ばしにする結果となったエルフとダークエルフの問題だが、この対応も現実的であるとアレンは考える。

なお、精霊獣戦で活躍したフォルマールは黙ったまま、今回も王族である2人に対応を任せるようだ。

『生命の泉については、あなた方の協力で、ある程度目途が立ちました』

「え? 大精霊神様、それはどういうことでしょうか?」

ゴゴゴゴゴッ

ソフィーの問いのタイミングで瓦礫となった頂上の大岩が上下左右に大きく動き始めた。

仲間たちは驚き、転ばないようにバランスを取る。

大小の岩の隙間が輝きだしたかと思うと、命の雫があふれ出す。

勢いは増していき、山の頂上の淵の一部が決壊し、生命の泉目掛けて大小の岩を飲み込み流れ込んでいく。

アレンたちは頂上の淵にいたため、命の雫の濁流に巻き込まれなくて済んだ。

大小の岩を押し流した山頂の中央は、大きな泉の源泉に変わっていく。

「これは、さっき倒した精霊獣が吐きだした奴か? すげえ量だな。何でこんなに溢れんだよ」

ルークは精霊獣が大きな緑の玉を吐き出した後、命の雫を吐き出し始めたことを思い出した。

ここまでになるのかと山の淵で濁流を覗き込む。

『そうですよ。あなた方が霊獣を狩り集められた神力は、命の雫となり、生命の循環に戻ったのです』

(メルスの話か。10体を超える亜神級の霊獣を狩ったからな。相当な神力がローゼンとファーブルに貯まっていたはずだ。なんだか出来過ぎているな)

アレンはメルスから、霊獣は神界と人間界の命の循環の間から外れた存在だと聞いた。

今回、シャンダール天空国の亜神級の霊獣を狩りつくした結果、このようなことが起きたようだ。

今回の精霊獣との戦いでの勝利は、泉の水位回復に直結する結果になっていた。

「精霊たちが困らない十分な時は生まれたということでしょうか?」

『ええ、そのとおりです。元の泉に戻ることでしょう』

水位が減ってしまった生命の泉を元に戻すだけの雫の量は溢れてくるようだ。

命の泉の水位が回復する結果になったのは随分うまい話だなと思う。

「精霊の園の憂いがなくなり、私たちもホッとしているところでございます」

心配していたことがなくなり良かったと言うアレンの言葉と態度に、仲間たちは苦笑で答える。

『ただ、アレンさん。精霊たちとの契約書は頂いてもよろしいですか?』

水位の確保のため、アレンが数千体の精霊たちと契約を交わしたのだが、このままでは済まされないようだ。

「もちろんです。ただ、このように数千体も地上に行きたいと言われる精霊様がいるのに残念ですね」

アレンとしても数千体の精霊を養う契約はエルフやダークエルフには負担が大きすぎると考えていた。

契約書がない前提で、里を豊かにしたいと精霊の園に来た時に言っていたルークの言葉を思い出し、更なる旨味を求める。

『……そうですね。コンズ、契約書の回収と、地上に向かいたい精霊たちの選定をお願いしますよ。まあ、千を超える数にはならないでしょうが』

『承りましたコン』

「おお! 精霊たちが里に来てくれるのか!!」

大精霊神とアレンのやり取りに里を思うルークは明るい顔をする。

『人間界の者たちに問題を与えたらこうなりました。これが抗う者たちの力ですか。ルプト様、現状はこのようになっております』

『え? そうですね?』

一部始終を見ていた第一天使ルプトがいきなり話を振られる。

何の話か分からず、大精霊神のカモシカの顔を覗き込む。

『見ての通り、私たちの神殿は破壊され、地上に向かう精霊たちも選ぶ約束もしたばかりです。今回起きたことを創造神エルメア様にご報告に上がれません。今後の対応はお願いできませんでしょうか?』

資料は提供するので報告については丸投げすると大精霊神は言う。

『ふぁ!? 冗談よね!! 何でそこまでしないといけないのよ!!』

大精霊神はポンズとコンズにけしかけるように見る。

『この状況を見て分からないのかポン。それくらいしてほしいポン』

『なんのために第一天使を立ち会わせたと思っているコンか』

門番のポンズもコンズも当然だとやいのやいの言ってルプトを追い詰める。

『わ、私の仕事がまた増えてしまったわ……』

キッ

(ん? ルプトから睨まれた)

「うほっほん、ああ、あああ」

しんみりとした状況に、アレンがわざとらしく咳き込んだ。

皆の視線が集まる。

『アレンさん、いかがしました?』

「大精霊神様、このようなことを私たちから言うのは大変心苦しいのですか、ローゼン様が10日ほど前に言われたことがまだ頂けていないようなので……」

このまま良かったねと話が終わるわけにはいかない。

クエストは対価があってこそ、クリアする意味がある。

まだ寄こしていないものがあるぞと遠回しに言う。

「アレン、まだ、って、ああ、ローゼン様の願いね」

アレンは、何が言いたいのかセシルは分かった。

今回大精霊神から、ローゼンが裁きを受ける発端となったのは、魔王と戦うため、ソフィーに神器を与え、エクストラモードにしたいと口にしたことが発端となった。

「そうだ。セシル。大精霊神様、こちらについても問題なく履行していただけるということで……」

アレンが頑張って大精霊神の与えた問題に答えるために奮闘した理由は、エルフやダークエルフの問題を解決するためではなかった。

あくまでも仲間たちの強化を主眼に置いていた。

『魔王と戦う力が欲しいということですね。神器についても、開放者にすることについても私は問題ないと考えていますが、ルプト様はいかがですか?』

『え? ええ、そうですね。このような問題の解決について前例はありませんが、エルメア様もきっとお許しになるでしょう』

地に伏し落ち込むルプトは答える。

(前例がないってなんだよ。やっぱりとんでもない問題だったじゃないか)

2体の精霊神を取り込んで誕生した精霊獣は、これまで手に入れた力の全てを出し切ることでようやく勝利し、仲間たちが1人も欠けずに倒せたのは奇跡だと思う。

『では、ローゼンさん、ファーブルさん』

大精霊神の言葉にローゼンとファーブルは反応しアレンたちの前に出る。

その様子にフォルマールが初めて口を開いた。

「ローゼン様……申し訳ありません。エリーゼ様を私は……」

(ん? フォルマールはなんか後悔しているな。何かあったのか?)

寡黙な男フォルマールは、どうしてもローゼンに謝らないといけないことがあったようだ。

アレンたちは知らないが、エリーゼの命が削られていく中、フォルマールは仲間たちを救うことを優先し、見殺しにしようとしていたことに後悔の念があった。

『……エリーゼ様に君が会ったようだね。元気にしていたかい?』

「はい、それはもう」

『はは。その様子だと、強引なエリーゼ様に圧倒されたようだね。だけど、君も力を得てほっとしているよ。これで僕らのなすべきことを全て行える』

「え? ローゼン様、どういう意味でしょうか?」

『あたいらはここでお別れってことだよ』

「な!? ファーブルどういうことだよ」

ルークがファーブルの言葉に驚く。

『僕らは君たちに祝福を与えたら、その種を芽吹かさないといけないんだ』

ローゼンとファーブルは、ソフィーとルークのために最後の祝福について伝えたのであった。