軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第526話 大精霊神イースレイ

黙々と前に進んでいくと、1つの広い空間にたどり着いた。

ローゼンの言う大空洞とはよく言ったものだ。

半径1キロメートルの円状の空間で、天井までの高さも1キロメートルはありそうだ。

(大精霊神ってあれかな。結構歩かされるね)

近づいてみると、1体の老齢な白銀の毛のカモシカの姿をした大精霊神イースレイが台座の上に横たわっている。

寝た状態で数十メートルの巨躯なので、遠くからでも一目でわかった。

アレンたちが傍までやってくるのを静かに見ていたが、ある程度近づいたところで口を開いた。

『もう年なのです。このままの姿勢で失礼しますよ』

感情を感じさせない静かな口調だ。

『大精霊神様、お久しぶりでございます。御挨拶に伺いました』

少し大人しくなったローゼンに変わり、ファーブルが挨拶をする。

(大精霊神だ。クワトロ鑑定いけるか?)

こっそり外套の中に忍ばせた、幼鳥化したクワトロに特技「鑑定眼」を使わせる。

【名 前】 ?

【年 齢】 ?

【種 族】 ?

【体 力】 ?

【魔 力】 ?

【神 力】 ?

【攻撃力】 ?

【耐久力】 ?

【素早さ】 ?

【知 力】 ?

【幸 運】 ?

【攻撃属性】 ?

【耐久属性】 ?

上位神の大精霊神には鑑定は使えなかった。

(うは、ネスティラド以来の鑑定不能やんけって、って、めっちゃ見られている)

鑑定できなかったことを見透かすようにアレンを見つめている。

アレンは視線を下げ、目を合わさないようにしている。

『……ようこそいらっしゃいました。私は万物を司る大精霊神イースレイです』

(万物を司るとか言ってみたい)

ローゼンがソフィーに視線を送る。

ここから先の発言をするよう誘導しているようだ。

「ご挨拶をさせてください。エルフの国ローゼンヘイムを治めるレノアティールの娘ソフィアローネと申します」

『エルフの国を治める……。そのエルフの国を治めるソフィーさん。何故、この精霊の園に足を踏み入れたのですか』

(ん? 何かソフィーの発言に違和感があったのか? っていうか、俺らの愛称「ソフィー」を使ってくるのな)

ソフィーの発言を受け、どこか不快感に近い感情を大精霊神にアレンは感じとった。

「はい。私は精霊師になることができました。魔王軍と戦い世界を救うため、精霊の園で大精霊と契約することをお許しください」

『なるほど。精霊の園にいる精霊と契約が交わしたいと。そちらのダークエルフのルークさんも同じですか?』

「俺も精霊契約したいぞ!」

ルークは大精霊神から話を振られて嬉しそうだ。

『フォルマールさん、あなたもそうですか?』

(お? ちゃんとフォルマールにも話振ってくれるのね)

「いえ、私はソフィアローネ様をお守りするためにこの場におります」

『そうですか。分かりました。精霊の園を創造神から預かる身としても、ソフィーさんとルークさんの精霊との契約を許可しましょう』

「あ、ありがとうございます!!」

「やった! 大精霊神様、気前がいいぜ!!」

ソフィーは胸を撫でおろし、ルークは拳を握りしめガッツポーズをとる。

(お? すんなりいったな。クエストはないのね)

『あの……申し訳ありません。大精霊神様、まだお願いがあるのです』

喜ぶ中、ルークの頭から降りたファーブルが大精霊神に歩み寄った。

『精霊神に至ることができたファーブルよ。お願いとはいかがされましたか?』

(お? 願いってなんだ?)

アレンの知らない話がファーブルと大精霊神の間で進んでいく。

『あたしとローゼンは、それぞれの契約者であるルークとソフィーに力を授けたいのです。許可をお願いします』

漆黒のイタチの姿をしたファーブルは地面に顔が着くほどの土下座をした。

『何故?』

『地上は魔王に侵攻を受け、非常に危険な状況にございます』

『ふむ、これもエリーゼの教えですか?』

『今回の件にエリーゼ様は関係ございません』

(エリーゼって誰? ルークたちも知らないのか)

ソフィーもルークも困惑顔で、どうやら2人も知らない何かのようだ。

『あなた方の願いの前に、私はエリーゼがそそのかし、ローゼンが犯したことの処断が終わっていないのです』

大精霊神の口調に厳しさが増し、話の空気が変わってきた。

お願いをする前に、話があるだろうと大精霊神は言いたいようだ。

「しょ、処断でございますか?」

ソフィーはその言葉に表情が強張ってしまった。

ゆっくりと視線を見つめる先にいるローゼンは、ここに来る前に地上でしたことで大精霊神に裁かれるかもしれないと言っていた。

『はい。ローゼンよ。一歩前に』

『……はい』

ソフィーの肩に乗っていた精霊神が床に飛び降りて、大精霊神の前に歩み寄る。

『私が言いたいことは分かりますね』

『もちろんです』

『何か申し開きはありますか?』

『いえ、私のしたことは全てのエルフのために行ったこと。言い逃れをするようなことは一切ありません。また、エリーゼ様は決して私をそそのかしておりません』

平伏した姿勢でローゼンは大精霊神に自らの行動に一切落ち度はないと言い切った。

『反省はないということですね?』

大精霊神はローゼンの顔に圧を加えるように見つめる。

『ございません』

(なんだなんだ?)

『精霊神ローゼンよ、罪を重ねた貴方を裁くため、2つの刑がある』

(おい、いきなり刑だと、全然穏便じゃないんだけど!)

ローゼンの口ぶりからも大精霊神に叱責を受ける程度だとアレンは考えていた。

『はい……』

『一匹の名もなき獣になるか、一滴の雫になるか選びなさい』

『そ、それは……』

大精霊神の言葉にローゼンは震え出した。

(どんな刑か知らないが、とんでもなく重いってことか)

『それはあまりにです! 大精霊神様、何卒、お待ちください!!』

アレンたちの理解が追い付かない中、震えるローゼンよりも、ファーブルはさらに一歩前にでる。

『ファーブルよ。あまりにとはどういうことでしょう?』

『エリーゼ様もローゼンもエルフのためにやったこと。なぜこのように重い裁きをローゼンにだけに課すのでしょうか!』

『エリーゼに仕えしファーブルよ。ローゼンの罪を半分背負うということですね。罪は2つあります。でしたら、あなたがどちらかを選びなさい』

もう1つをローゼンに処すと言う。

『……少々お待ちください』

ファーブルは即答できなかった。

「これはどういう状況でしょうか! 何故、そのような罪があると言うのですか!!」

状況がまだ理解できないソフィーが広い祭壇の空間の全てに響くほどの声で絶叫をした。

『……そうですね。エルフたちにローゼンのしたことを伝えるのも私の務めでしょうか。ローゼンは先見の宝玉に勝手に触れ、エルフの未来を歪めたのです』

大精霊神はローゼンがしてきた罪を語りだした。

精霊神ローゼンは精霊の園にあるという「先見の宝玉」を勝手に使って、エルフの未来を知る。

エルフがダークエルフに滅ぼされることを知ったローゼンは、幼精霊であったにも関わらず、1人のエルフを開放者に変えた。

(3000年前の祈りの巫女の話か。エリーゼはどこに出てくるんだ?)

『全てに相違ありません……。全てはエルフを守るため……』

『よろしい。自らの罪を認めるのですね。では処刑としましょう。ファーブル、早く刑を選びなさい』

大精霊イースレイは体を起こした。

一歩前に進んだ前足に存在感を増す中、ソフィーはさらに食い下がる。

「ローゼン様はずっと私たちのためにおられました。罪を犯したのがエルフのためと言うのであれば、私たちエルフがその罪を背負います」

『分かりました。では、全てのエルフを根絶やしにし、ローゼンの罪はなかったことにしましょう。私にはその権限があるのです』

地上にいる全てのエルフを刑の対象にすると大精霊神は言う。

その言葉には一切の恩情は感じられない。

「そ、そんな……」

『ローゼンのお陰であなた方は生存できていたのです。当然でしょう』

「ソフィアローネ様、お気を確かに!!」

ソフィーは意識が遠くなり、床に倒れようとする。

フォルマールがソフィーの体を必死に支える。

「おい、アレン、いつまで黙ってんだよ。こういう時にお前が何とかするんだろ!!」

ずっと黙っていたアレンに何か言えとルークが叫ぶ。

確かにその通りだとセシルもアレンを見る。

セシルは横にいるアレンの行動にギョッとする。

アレンは魔導書を開いて、今までの会話を静かにメモに記録をしていた。

視線が集まるアレンに大精霊神も顔を向ける。

(大精霊神も俺に何か言えってことか。まあ、そうなんだろうけど)

アレンは魔導書を開いたまま、ゆっくりと視線を大精霊神に移す。

「大精霊神イースレイ様、人族の身でありながら発言をしてもよろしいですか?」

『もちろんです。この場で何を発言しますか?』

「もちろん、精霊神ローゼン様を弁明するための発言です。私に交渉をさせてください」

『ほう。精霊神ローゼンの罪に交渉の余地があると。アレンさんは何故そう思うのですか?』

「それは、もし重大な罪があり裁く必要があるなら、発着場に来た時に取り押さえているからです。いえ、もっと早くでしょうか」

アレンは大精霊神の対応に違和感があると言う。

大精霊神の話が本当なら、罪を犯した精霊神ローゼンを今の今まで、数千年という長い間、野放しにしたことになる。

罪を裁くと言うならもっと早く罪を裁くことができた。

『責任の一端が私にあると言うことですね。私が口にするのは、ローゼンの酌量の余地ですか。そうですね……』

「何卒、寛大なご処置を……」

ソフィーは祈るようにつぶやいた。

大精霊神は前足をゆっくりとローゼンに向ける。

ゴゴゴゴゴ!!

ローゼンの足元の床石が揺れ始めた。

つるのような植物が伸びたかと思うと、ローゼンの体を縛り、巨大な木の中に閉じ込めてしまった。

『ローゼン!?』

『一緒に罪を背負うと言いましたね。あなたもですよ。ファーブル』

『ぐあ!?』

ファーブルの足元の床石の隙間からヘドロのような物が溢れ出てくる。

ファーブルの全身を覆ってしまった。

「おい! 何をしてんだ!!」

ルークが大精霊神の行動に怒りを露にする。

アレンはルークにここは下がるように視線で訴える。

「これはどういうことでしょうか?」

アレンだけが一切動揺せずに大精霊神を正面で捉えている。

『10日です。10日後に2体の精霊神は名も無き獣に変わります。それまでに1つの問題を解決してほしいのです』

「問題ですか。私たちに問題を解決せよとのことですね」

『そうです。ローゼンのせいで、精霊の園は1つの大きな問題を抱えております』

アレンたちだけで問題を解決するように大精霊神は言う。

(精霊たちが解決できない問題を解決しろってことか?)

無茶を言うなと言わんばかりのアレンの表情に、大精霊神はニヤリと笑みを零した。

『アレンさん、私は地上にいるあなたを見ていました。何でも、学園でとても優秀な成績を残したとか』

アレンならこの問題も解決できると大精霊神は言う。

「はあ、人族の中で割に……だけですが」

いつの話をしているのかと言いそうになるが、相手は大精霊神なのでグッと我慢して飲み込む。

『謙遜しないでください。優秀なアレンさんならきっと「問題」を解決してくれます』

(なんか「問題」って言葉が強調して聞こえるな)

「ローゼン様が関係しているようですが。どのような問題でしょうか?」

気になるところがあるが話を進める。

『それを知ることもローゼンたちを赦免するための条件だと思ってください』

(ようやくグラハンを仲間にするクエストが終わったのに、またあいまいなクエストが始まるのか。だが、これは頑張んないとな)

猶予は10日後の日が沈むまでだと大精霊神は言う。

セシル、フォルマール、ルークをゆっくりと見つめ、3人が頷くことを確認した。

10日が過ぎるとローゼンとファーブルは裁かれ「名もなき獣」になるらしい。

「分かりました。ローゼン様、ファーブル様、今しばらくお待ちください。精霊の園の問題を解決し、お迎えに上がります」

2柱の精霊神に少し待ってほしいと言う。

『アレンさん、待っていますよ。期日は10日、それだけは忘れないでください』

10日目が過ぎたら、取返しはつかないと強く念を押す。

アレンたちは精霊神ローゼンが犯した罪をなくすため、精霊の園の問題解決に動き出すのであった。