軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第503話 霊障の吹き溜まり

アレンたちは竜人の族長ソメイのお願いを聞いて霊障の吹き溜まりにいる霊獣を狩ることになった。

シャンダール天空国の王妃が懐妊したから、霊晶石をとってきてほしいらしい。

アレンたちの下に、族長がやってくる。

「もう出発するとは本当なのか。昨日、着いたばかりじゃないのかの?」

族長の館は部屋数が少なく、タコ部屋で一晩を過ごすことになったアレンたちは早朝に出発の準備を始めた。

そんなことを聞き付けた族長が、配下やアレンたちが会った門番を引き連れてタコ部屋にやってきた。

皆を代表して、アレンが答えることにする。

声を掛けられ、族長の下に向かう前にメルルに視線を送る。

辺りに転がっているガララ提督たちを叩き起こせという意味がメルルに伝わる。

昨日の歓迎会でもてなしてくれた酒を、樽を空にする勢いで飲んでいた。

「いえ、昨日はおもてなしを頂きありがとうございます。早速、霊獣のいる場所へ向かいたいと思います」

「そうなのか。では、守人への依頼を書いておこう」

昨晩のうちに準備してほしかったが、これから手紙的なものを準備するようだ。

タコ部屋から移動したアレンたちは先日も通された大広間で朝食をゆっくりとっていると手紙が出来上がったらしい。

アレンは族長から手紙を預かる。

預かるときに手紙の内容も教えてくれる。

『守人長アビゲイルへ

門番を越えた者たちがとうとう神界にやってきたのじゃ。

その者たちと一緒に霊獣を倒して霊晶石を手に入れてほしい。

シャンダール天空王に竜人の力を示すのじゃ!!

族長ソメイ』

「……アビゲイルさんというのが、霊獣の吹き溜まりを管理する守人長なのですね」

欲望丸出しの手紙を貰ったなとアレンは思う。

「そうなのじゃ。門番のカタクチに吹き溜まりの場所を案内させる。ここから歩くと10日くらい掛かるでな」

「そのあたりは大丈夫です。私たちにはゴーレムもいますので」

結構距離があるらしい。

徒歩で10日なので、この大きな街から300キロメートル以上離れていそうだ。

なお、霊障の吹き溜まりはこの神界にいくつもあるらしい。

その中で最も近い吹き溜まりを案内してくれるとのことだ。

アレンたちにはゴーレム使いもたくさんいるので、ゴーレムに乗ればあっという間だ。

改めて、もてなしてくれた族長たちに礼を言うと、モード「イーグル」になったメルルのゴーレムに3パーティーが乗り込んだ。

メルルはダンジョンマスターのディグラグニ討伐報酬で手に入れた魔導キューブのお陰で30個の石板を魔導キューブにはめることができる。

タムタムを超大型の全長100メートルにしたまま、特殊用石板「鷲」を石板にはめても、まだまだ魔導キューブに石板をはめる空きがある。

空いた場所には強化用石板「素早さ」をはめて移動速度をさらに速くする。

ガララ提督のパーティーも上空を移動できる石板を持っているのだが、タムタムを超える速度を出すことはできない。

モードイーグルに乗り込み、船体の頭部分に集まる。

船内に取り付けられた巨大なスクリーンから、タムタムの目が映し出す光景を見ることができる。

「それで方角はこっちでいいんでしたか?」

竜人の門番をしていたカタクチに霊障の吹き溜まりの位置を改めて確認する。

カタクチは地図を広げて、方角を確認して問題ないと言う。

門番のカタクチも正確に向かうため、タムタムに搭乗して現地に来てもらう。

(雲の上にも木が生えていると)

「なんか変な植物が生えているね」

クレナがブロッコリーやレタスのような見たことのない植物に違和感を覚える。

神界は植生も違うようだ。

当たり前のように雲の上に大小不思議な木が生え、一部の場所で林や森が形成されている。

環境が変わっていく様をスクリーンが映している。

桃源郷や天国とも思える穏やかな世界が広がっており、神界に来たんだなと改めて実感する。

セシルはすごい勢いで移動するタムタムに乗って気付いたことがあるようだ。

「すごい速度ね。これなら天空王に船を借りる必要ないんじゃないのかしら」

霊晶石を献上したら天空王から褒美で精霊の園へ行ける船に乗れるかもしれないという。

「ん? まあ、そうかもしれないな」

「何よ。ただの人助けなの?」

今回、竜人の族長に協力するのは、何が目的だったのか、セシルはいまいち分からなかった。

たしかに、竜人が神界人に比べて立場が弱いのは事実なのかもしれない。

ただ、今は魔王と戦う大事な時期でアレンも言う通り時間がない。

そんな中でも必要か分からない精霊の園に行くための船を手に入れるために、天空王に差し出す霊晶石を取りに霊獣狩りに向かった。

本当に、竜人の助けをする必要があったのかというセシルの言葉に「そうだな」と頷くキールも同感のようだ。

「……クエストには、意味のない物と意味があるものがある。どっちなのか最終的にクリアするまで分からないものだ」

アレンが何かを語りだした。

仲間たちは耳を傾けることにする。

アレンが多用する「クエスト」という言葉は、仲間たちの中で「神の試練」「神の意思」など多少の曲解しつつも理解できている。

クエストというものは最終的に意味が「あるもの」と「ないもの」に大別できる。

やり込み要素の強いゲームだとクエストを達成しても、何も得られないサイドストーリー的なものも多い。

達成後に「だから何?」とよく分からない余韻を残して終わることもしばしばあったとアレンは言う。

ステータス効果のない「アバター」であったり、よく分からない「ポーズ」「表情」が手に入ったりすると時間を返せと思うものだ。

逆に、意味がないと思っていたクエストがクリアの鍵になっていることもある。

今回のように「霊獣を倒したい」、「精霊の園に行きたい」というアレンの目的に合致したクエストは受けていた方が無難と判断した。

まだ、神界に来て2日目だ。

そこまで慌てる時間でもないというのも理由の1つだ。

(メルスが何だか機嫌が悪くて塩対応だしな)

『……そんなことはないぞ。ああ、天の恵みの生成は楽しいな』

共有したアレンにメルスの意見が流れ込んでくる。

10万年、直接に創造神に仕えていたということもあり、現地にいる竜人や神界人、霊獣に詳しいわけではないようだ。

竜人と神界人の間の立場や身分の話はどうでもいいが、無難な対応をしたというだけの話だとセシルに言う。

「そ、そうね……」

セシルは首をかしげながらも返事を何とかした。

「ん? 何か霧が立ち込めていますね。あのあたりですか?」

「はい。あそこが霊障の吹き溜まりです。我ら竜人たちが、霊獣が溢れないように、柵を築いているのです。霊障の吹き溜まりの端に砦を設け、守人たちが待機しております」

(なるほど、中央大陸北部で魔王軍の侵攻から守る要塞に似ているな。少し見すぼらしいけど)

今までののどかな雰囲気が一変する。

雲の上に100メートルを超える巨大な木が鬱蒼と生えている。

木々の間を埋めるように深い霧が森を包んでいた。

タムタムの視界に森林に立ちふさがるように要塞が見える。

要塞の両端から森林を囲むように数十メートルの柵が伸びている。

要塞の上やら下で竜人たちが慌ただしく移動している。

(ん? 何かあったのか?)

通常の状況はどうなのか分からないが、尋常ではない状況のような気がする。

竜人の中にはタムタムに気付いた者がいた。

何かを叫んでいるが、砦から少し距離をとって着地することにする。

アレンたちは到着したので、タムタムから降りてゾロゾロと雲の上に降りた。

すごい勢いで竜人たちがこっちに向かってくる。

「なんだ、お前たちは!!」

槍を握りしめた竜人たちがアレンたちの傍まで寄ってきて大きな声で何者かと問う。

大層な歓迎ぶりだ。

何しに来たか知らないが、今じゃないという竜人たちの思いは伝わった。

(この人たちが、霊獣が溢れないように神界人たちを守る竜人か)

「お忙しいところ申し訳ありません。族長のソメイさんの依頼により参上しましたアレンと申します。守人長のアビゲイルさんはいますか?」

とりあえず、ここに来た目的だけでも伝えることにする。

「はぁ!? ん? お前はカタクチか?」

守人の竜人たちはアレンが何を言っているのか分からなかったようだ。

守人は門番のカタクチの事を知っていた。

カタクチは端的に昨日アレンが神界にやってきてからの話をして、守人長のアビゲイルに用事がある旨伝える。

「何だ、その話は、この一大事の時に! ネスティラドが躍動を開始したのだぞ!!」

「ぶ!? ネスティラドが!! こ、ここに近づいているのか?」

門番のカタクチも大声でびっくりする。

「分からん。しかし、霊獣たちが騒ぎだしている!!」

(ネスティラドって何だ?)

『その場所にある吹き溜まりの 主(ぬし) だ。とても強いと聞いているから近づかないほうがいいぞ』

この吹き溜まりにいる霊獣の主で、ネスティラドはその主の名前らしい。

「ええい! 守人長は要塞の前にいるからついてこい」

守人たちは、アレンたちに来いという。

アレンたちを要塞に入れてくれる。

要塞の階段を歩き、屋上に到着すると多くの竜人たちが騒いでいた。

「霊獣たちの動きが活性化しており、こちらに向かっております!!」

「霊獣で溢れております。この数は逃げるしかありません!!」

「馬鹿な。どこに逃げるというのか! 我ら守人の役目を忘れたか!!」

(なんか、こんな時にきて迷惑な気がしてきた)

これもそれも、ここに来るように言った族長が悪いと思う。

「も、申し訳ありません。守人長アビゲイル様はおりませんか!!」

(む? 真面目か? カタクチさんは自分の仕事を完遂させるタイプか)

口を挟むのも憚られる状況で門番のカタクチは大声で叫んだ。

何だと竜人たちの視線がアレンたち3パーティーに集まっていく。

「む? 何だ、お前らは。我が守人長をしているアビゲイルだが?」

イグノマスと同じくらいだろうか2メートル超の大柄な竜人がアレンたちの下に歩み寄る。

「ああ、あなたがアビゲイルさんですか。私はアレンと言います。族長のソメイ様より手紙を預かっております」

アレンはお忙しい時に申し訳ありませんと、端的に名乗り、族長から渡された手紙を守人長のアビゲイルに渡した。

「む? 手紙だと」

アビゲイルはアレンから渡された手紙を受け取った。

何事だと見つめる竜人たちの視線が集まる中、アビゲイルは手紙を読みだす。

(守人長の手がワナワナとし始めた件について)

「申し訳ありません。このようなお忙しい時に」

お騒がせしていることを謝罪する。

その時だった。

『アアアアアアアアァアアアア!!!』

気持ち悪い悲鳴のような声が、鬱蒼とした木々の奥から聞こえる。

木々と霧の中から1人の斥候と思われる竜人の守人が出てきた。

「逃げろおおおおおおお!! 間もなく、霊獣たちがやってくるぞおおおおおおお!!!」

斥候担当がやってくると砦の吹き溜まり側の扉が開き中に入る。

守人たちの中にはこの世の終わりのような顔をする者も多い。

その様子に守人長アビゲイルがアレンを見た。

「何故この時にやってきたのか知らないが、力を貸してくれる。……そういうことでいいのだな?」

「もちろんです。そのためにここに来ました」

アレンはそのために来たと即答する。

霊獣との戦いが始まろうとしているのであった。