軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第496話 もう1つの世界

聖鳥クワトロがアレンのたちの下に現れた。

「クワトロさんじゃないですか。あなたも一緒に神界へ? でしたら、原獣の里を案内してくれると助かります」

試しの門が開くのを待っていたのかとアレンは考える。

ついでに神界にあり、獣神ガルムが治めるという原獣の里を案内してほしいと伝えた。

そこには聖獣がたくさんいるらしい。

『いいえ、アレンさん。見させていただきました。皆を先導するため、神々とも交渉するその胆力、これこそ私の求めた器です』

「ん? 器」

『はい。約束どおり、あなたの聖獣になりに来ました。どうぞ、以前だしたものを私にかざしてください』

何事だとアレンも仲間たちも思う。

アレンは器が良く分からなかったが、聖獣になってくれるなら是非もないと聖獣石を魔導書の収納から出した。

「こんな感じでいいでしょうか?」

『ええ、これからは私のことを「クワトロ」とお呼びください。あなたの目となり、世界を見渡しましょう』

聖鳥クワトロはアレンが両手で前に突き出した聖獣石の中に入っていく。

魔導書の表紙には待ちに待った文言が銀色の文字で表示された。

『鳥Sの封印が解除されました。鳥Sを召喚することができるようになりました』

「おお、鳥Sの召喚獣が召喚できるようになったぞ」

「やったあ!!」

クレナも一緒になって喜んでくれる。

(新フィールドに新しい召喚獣とか、ワクワクが止まらないんだけど)

やり込み好きの熱い気持ちが沸き出てくる。

「よし、さっそく神界に行こうぜ!!」

キールも張り切って神界に行こうと言う。

仲間たちが審判の門を越えようとワラワラと門の前に集まろうとする中、ルークは肩の重みが無くなったことに気付く。

精霊王ファーブルがルークの肩から飛び降りた。

「ん? どうしたんだ?」

床石の上で頭を下げてルークを見ない精霊王ファーブルに、ルークはどうしたのかと尋ねる。

『ルーク。あたいは神界に行くわけにはいかないよ』

ファーブルはルークを悲しく見つめ、ここまでだと言う。

『精霊王よ……』

ムートンは何か察するものがあった。

『あたいは、ダークエルフの未来を狂わせてしまった。ここに残り、ダークエルフの行く末を見守ることにするよ。ムートン』

『ぬ?』

『大精霊神様は、きっと貴方を精霊王にして下さる。ルークをこれからも守ってあげてほしい』

精霊王の立場も降りると言う。

自らの後任には大精霊ムートンを指名すると言い、神界の精霊の園を治める大精霊神にも根回しは済んでいるようだ。

(けじめか)

どうやら、審判の門を攻略したら、こうすることは決めていたようだ。

アレン軍にもエルフやダークエルフも大勢いる。

ソフィーやフォルマールも何事だと見つめる中、ルークはファーブルの下に歩みを進めた。

アレンたちは無言で、ルークにどうするか委ねることにする。

ルークはハイダークエルフにして、ダークエルフの里ファブラーゼの国の王子だ。

言うべきことを言い項垂れる漆黒のイタチの姿をしたファーブルの首を、ルークはがっしりと掴んだ。

『え!? ちょっと、ルーク!!』

ファーブルの足がワチャワチャと宙を蹴る。

「何言ってんだ? 早く行くぞ」

定位置の肩に乗せて、待たせたなと言わんばかりにアレンたちの下にやってきた。

「器で言ったら、ルークの方が大きそうだな」

「……大物になりそうですわね」

アレンは、ルークの器の大きさを呟いてしまう。

ソフィーはアレンの独り言を拾ってくれて同意する。

一瞬微笑んだソフィーにもダークエルフの未来が見えたのかもしれない。

これからのエルフとダークエルフの未来を思い強く頷いている。

(ん? 日の光が見ている?)

「どうしたんだ?」

アレンの挙動の変化にキールは気付いた。

「いや、なんでもない」

アレンが審判の門の先を見つめる。

地上にいるころよりも大きく見える燦燦と輝く日の光がどこかアレンを見ているような視線に感じられた。

まさかそんなことはないと自らに言い聞かせるように気のせいかと口にする。

「私たちの新たな冒険だ!!」

試しの門の攻略を頑張ってくれたクレナも目を輝かせる。

「さて、審判の門は開かれた。行くぞ! 神界へ!!」

前世で新たなフィールドが解禁されワクワクした時のような瞳で、アレンは神界を見て叫んだのであった。

***

アレンたちが審判の門を開き、神界を目指そうとしている。

審判の門の先には、雲海が広がり、日の光がアレンたちの行く末を明るく照らしているようだ。

アレンたちが魔王と戦うべく、活動する舞台を神界に変えようとする中、アレンの動きを見ている者がいた。

その者がいるのは、光と希望に溢れる世界ではない。

暗たんとした大地が広がっている場所だ。

荒廃した大地や鬱蒼とした森林など、どこを見ても薄暗い大地が広がっている。

森林の木々はホラー映画にでも出てきそうなほど枯れており、闇夜に生きる鳥たちの目がギラギラと光っている。

ここは人間世界でも、神界でもない、もう1つあるという「暗黒世界」だ。

そんな暗たんとした世界の大地の1つの丘の上に巨大な城が建っている。

城の中でも一番大きな広間には玉座が置かれ、大きな女が椅子に座ることもなく立っていた。

玉座の近くには跪く者たちがいる。

どうやら魔族のようで、女性に仕えているようだ。

女性は50過ぎの見た目をしているが、肉付きもよく活力に溢れており、何故か体中から闇が沸き起こっている。

『ははは!! これは愉快だ!! 見よ、あのデスペラードの顔を!!』

口を大きく開け、玉座の前に立つ女性が大口を開けてゲラゲラと笑っている。

跪く魔族たちは何も言わず、この城の主と思われる大女の傍に静かに控えていた。

『また地上を見ていたのか……。何がそんなに愉快なのだ?』

この玉座のある間には、大女と魔族たち以外にもう1つ異質の者がいた。

玉座と魔族の脇の方に人間の大人ほどの頭部が転がっていた。

こちらも深い彫りのある相応の年を重ねた頭部のようだが、何故か当たり前のように玉座の前に立つ女性に話をする。

頭部だけであるが生きているようだ。

『ああ、アクシリオンよ。どうやら神界へ行く者たちが出てきたぞ』

玉座の前に立つ女性は頭部だけのおっさんをアクシリオンと呼ぶ。

『ほう? 竜人が久々に審判の門を開いたと』

『それがどうも、会話の内容から察するに人族のようだな。だが、人族だけではないな』

多種多様な種族が、竜王の神殿にいることを確認しているようだ。

大女が目を凝らすことで、暗黒世界からでも「何か」越しに、竜王の神殿の様子を見ることができるようだ。

『ふむ、そういえば、儂の愛馬も動き出したようだが、何かが起きておるようだな』

思い出したかのように首だけのアクシリオンは自らの馬について思い出す。

『ああ、お前のファルネメスも動いているようだぞ』

大女とアクシリオンの会話がひとしきり終わったところで、1人の魔族が玉座の間に入ってくる。

「暗黒騎士イルゼが戻ってまいりました。お通ししてもよろしいでしょうか?」

『おお、そうか。我の騎士が戻ってきたか』

「暗黒騎士イルゼよ、暗黒神様の下で報告をするのだ」

大女は暗黒世界を支配する暗黒神であった。

お目通りの許可を求めた魔族は暗黒騎士イルゼに入室するように言う。

暗黒神は報告があるのかと玉座に座った。

扉の前で待っていたイルゼは頭部も含めた全身に鎧を纏い、カツカツと真っすぐ玉座に座る暗黒神の前に跪いた。

『それで、「歪み」の件はどうなっている?』

「は! ご報告します。昨今から発生している空間の歪みですが、最近ではその発生件数も多く、中には街近くにまで生じているようです!!」

『ほう、随分研究を進めているようだな。で、穴は見つかったか?』

暗黒神はイルゼの報告を興味深そうに話を聞く。

「いえ、所詮は歪み程度。何かがやってきた形跡もございません。しかし、歪みの発生した場所の近くで行方不明の魔族も出ているようで……」

イルゼはフルプレートで頭部まで鎧に包まれているが、それでも分かるほどの怒気を込めて報告をする。

『……我を通さず矮小なる者たちのみ行き来させたいか。どおれ?』

イルゼの報告に歪みを起こしている者がどうしたいのか察したようだ。

暗黒神はゆっくりと手を上部に掲げた。

手が向かう先に漆黒の闇が現れる。

よく伸びた爪が闇の中に入っていき、手首程を飲み込んだ。

「……」

イルゼは全身に鎧をまとっていても分かるほど無言で身震いしている。

『……まだまだ研究段階といったところだな。時空神の結界紋はよくできておる』

『ほう。結界が壊れたわけではないのか』

アクシリオンだけが暗黒神の行動に恐怖を覚えていないようだ。

暗黒神は視線をイルゼに戻す。

『我の可愛い騎士よ。また、何か異変があれば知らせるがよい』

「は! 暗黒神アマンテ様!!」

イルゼは深々と頭を一度下げて立ち上がり、玉座の間から出ていった。

イルゼがいなくなったところで、暗黒神の視線がまた遠くなる。

皆を先導するアレンを暗黒神はもう一度凝視する。

見つめられた先のアレンはどこか違和感を覚えたようだ。

審判の門の先にある日の光を見つめ返してしまう。

何を思ってか暗黒神は立ち上がり笑みを零し始めた。

笑みはだんだん大きくなり、体を揺らすほどになる。

『そうか、ついに時が動き始めたか。楽しい舞踏会の始まりだ。皆、招待券は受け取ったか? さあ、狂乱の時代がやってくるぞ!!』

暗黒神は城中に響くほどの声で叫び、顔は狂気で歪んでいた。

アレンが神界を目指す中、世界は大きく動こうとしているのであった。