作品タイトル不明
第489話 メガデス戦②
メガデスのブレスを食らい、ハクとクレナは吹き飛ばされる。
『マンマ、だいじょうぶ?』
「うん、ハクも大丈夫?」
クレナは受けたダメージを素早く回復するため、魔導具袋から天の恵みを取り出した。
『ギャウ!』
お互いに無事を確認しながらも、違和感を覚える。
クレナは素早さの低下を感じる。
元気よく返事をしたハクも素早さがどうやら低下したようだ。
『ふ~ん。完全に時を止めたはずなのに、結構な耐性だね、だけど、これでウロチョロできなくなったね』
「ハク、距離をとって!」
今度は凶悪になった口を開け、ハクもろともかみ砕こうと突っ込んできた。
体長100メートルを超えるメガデスにとって体長15メートルの竜など、一噛みでかみ砕きそうな迫力がある。
次元竜であるメガデスのブレスは対象の時の流れを操り、時を止めることすらできるようだ。
クレナは戦闘早々にアレンに魔導具袋に詰めてもらった香味野菜を使い、ハクと共にデバフに対して耐性を得ている。
あらゆるデバフを防ぐことができるのだが限界はある。
最下層ボスのゴルディノが放った仲間たちのバフをはがす効果は全く防ぐことができなかった。
翼を大きく広げたハクがスピードを上げるが、メガデスの方が素早さは上のようだ。
自らの耐性に、香味野菜の効果も重なったハクも素早さ低下を完全に防ぐことができなかった。
「うりゃああ!!」
クレナはメガデスの顔面目掛けて、スキル「真鳳凰破」を振りぬいた。
『グア!?』
メガデスの顔から鮮血が大量に飛び散る。
『マンマ、すごい!!』
「……結構、効いてる」
ハクが褒めちぎる中でも、クレナはスキルの一撃に違和感がある。
クレナのスキルには、切る、突くと言ったもの。
斬撃が遠距離まで届いて切り裂くもの。
広範囲に渡ってダメージを与えるもの。
スキルレベルで範囲攻撃魔法、単体攻撃魔法に変わるセシルの攻撃魔法と違う。
クレナのスキルは、範囲攻撃スキルはレベルが上がっても範囲攻撃スキルだ。
威力は基本的に直接切りかかるものが最も威力が高く、遠距離攻撃、範囲攻撃と対象の敵が増えていくと1体当たりの威力は減退する。
これはアレンがよく口にする、一長一短の考えであるとクレナは理解した。
範囲と単体攻撃の関係以外でも、威力の高いスキルや魔法の方がクールタイムは長いなど、一長一短の設定はとても多い。
クレナの最強スキル「真覇王剣」は広範囲に、そして長距離に莫大なダメージを与えるが、距離が近づけば近づくほど威力が高い。
スキル名に『破』と付くものは、遠距離範囲攻撃のスキルだ。
スキル単体の威力としては最初に覚えているスキル「真斬撃」ほどしかない。
10万に達するほどの攻撃力のある一撃とはいえ、真鳳凰破でこれほどのダメージを受けるものかとクレナは考える。
攻撃力に比べて耐久力は結構低いと判断する。
『ちょこまかと!!』
顔面から血を流しながらも、メガデスは襲い掛かる。
「ハクは距離をとって、ブレスだ」
ブレスは広範囲で近距離での攻撃が得意な状態になったとクレナは判断する。
この無限に感じるほど広い空間も自分らには有利だ。
『うん。グルアアアアアア』
背中に回り込んだハクは特技「業火の息」を吹きかける。
火に包まれながらも、メガデスは巨大な尾を振るう。
迫る尾に合わせて、今度はクレナが今一度、スキル「真鳳凰破」をお見舞いする。
「攻撃は通じているね」
『うん、いける! あ! はやくなった!!』
「本当だ」
尾からも大量の血が吹き荒れる中、クレナは勝機があると考える。
メガデスの素早さ減退効果のあるブレスは、永続ではないようだ。
さらに素早さが上がり、こちらの有利は変わらない。
移動をハクに任せ、距離を詰められたらクレナが一撃をお見舞いする。
時間のかかる方法だが、負けはない作戦だとクレナは考える。
一撃、また一撃と同じ戦法で攻撃を繰り返し、メガデスに対するダメージを蓄積させていく。
攻撃を受け続けたメガデスが、ある時動きを止めた。
何事だとハクも宙にホバリングをし、様子を窺う。
『……確かに強いね。今回は本気で戦えと言われているんだ。勝たせてもらうよ』
メキメキッ
『マンマ!? またかたちがかわっていくよ!!』
「そうだね。もっと距離をとって」
メガデスの全身を覆う鱗がメキメキと蠢き始めた。
先ほどは形を変えたメガデスに低速にされてしまった。
今回も何かしてくると警戒を怠らない。
『捻りつぶしてあげるよ。 状態変化鱗(モードスケイル) !!』
鱗を逆立て、球体になったアルマジロのように体を畳んだメガデスはそのまま体を回転させる。
全長50メートルほどの球体となって、クレナたちを襲った。
「もっと高く飛んで!」
『うん!!』
竜の鱗を逆立たせギザギザの球体となったメガデスの体当たりを受けたらひとたまりもないとクレナは判断した。
ハクに上空に飛ぶように叫ぶ。
上空に逃げ、間一髪と思ったその時だ。
『それで逃げたつもりかな』
球状になったメガデスは自らの体を押しつぶすように半分の高さになる。
クレナが何をと思った瞬間、丸い状態に戻り、勢いそのままに上空に逃げたハクに激突した。
『ギャウ!?』
ハクの全身に鮮血が飛び散り、吹き飛ばされる。
「ハク、大丈夫!!」
クレナはすぐさま天の恵みを使い、ハクの体力を全快させる。
オリハルコンの胸当てをしていてこの威力とは、何度も受けたらただでは済まない威力のようだ。
なお、クレナもダメージを食らっているのだが、ハクと違ってクレナにはスキル「限界突破」がある。
今も効果が持続しており、秒間1パーセントと脅威の速度でクレナは回復をしている。
『これも耐えるか。だが、いつまで持つのかな。そのまま距離を取ると長い戦いになるよ』
メガデスはクレナが自然回復していることに気付いた。
そして、魔導具袋に大量の回復薬を持っていることについてもだ。
「え?」
また飛んできても大丈夫なほど距離を取ったハクとクレナに対して、メガデスは言う。
メガデスの体は、状態変化牙で与えたこれまでのダメージがみるみると回復していく。
クレナの攻撃で大きく裂けた部分も、ハクの炎で焼いた部分も元通りになってしまった。
『かいふくしちゃった!』
「うん、また頑張んないとだね」
体力も気力も十分だ。
アレンがこの戦いのために用意した天の恵みは万を超える。
振出しに戻ってしまったが、今一度頑張ろうと思う。
球状を維持したまま、また突っ込んでくる。
ハクが上手いこと寸前で避け、躱し様にクレナは大剣を振るう。
「うりゃあああああ!!」
スキル「真鳳凰破」の範囲攻撃と火属性の攻撃により炎に包まれた。
『何かしたかな?』
「効いていない!」
先ほどあれほどダメージを与えられたスキル「真鳳凰破」がほとんどダメージを与えられない。
その少し与えられたダメージもみるみる回復する。
自然回復する上に、通じていたダメージが通じない。
耐久力は状態変化牙のときよりも高いようだ。
『ほらほら。捻り潰して終わっちゃうよ』
ネズミをつぶす像のような感覚で球体を回転させながら迫ってくる。
「ハクは距離を取ることを優先させて、私が攻撃する!」
『うん!』
与えられるダメージはたかが知れていると分かっていた。
体力が続く限り逃げるつもりだ。
たまにすごい速度で飛んでくるが、その前につぶれる状態になるのは間違いないようだ。
飛んでくると分かれば、避けることも可能だ。
ほとんどダメージを与えられないが、こちらもダメージをほとんど食らわない状況が続いていく。
この状態のメガデスの耐久力は高いが、素早さはそこまで高くなくハクでも逃げ切れる。
『さてと、このままじゃ終わらないね。まだ僕は状態変化を残しているんだよ?』
3つ目の状態変化があると言う。
メキメキッ
球状を解除したメガデスが竜の姿に戻る。
「また、何か来るよ。気を付けるんだよ!」
『うん!』
状態が変わるたびにステータスが変わり、能力も変わる事を理解した。
巨大な竜の姿に戻ったメガデスの爪がどんどん大きくなっていく。
明らかに攻撃力を上昇させる変化だと分かる。
『 状態変化爪(モードクロウ) 。よくここまで来たね。これで終わりだ』
警戒するクレナとハクに対して、怪しく笑みを零すメガデスは勝利を宣言した。
巨大な爪を突き出すように大きく広げる。
『ゆだんしない』
ハクは何をしてきても対処できるよう十分な距離を取り、中空をホバリングする。
『どこに逃げても無駄さ。試しの門の攻略お疲れだったよ』
ガシュ!!
『ギャウ!?』
「うわ!!」
メガデスと相対していたのに、真横の両サイドからいきなり攻撃を受けてしまった。
すぐに何が起きたのか分かった。
メガデスの巨大になった両手が手首から先が無くなり、転移してきてクレナたちを襲ったのだ。
メガデスの両の爪が宙を浮いたまま襲い掛かってくる。
『マンマ!?』
あまりの一撃に困惑するハクが悲鳴を上げる。
「諦めないで!!」
クレナも爪の一撃を受けてしまいダメージを受けるが気持ちは折れていない。
気弱になったハクに檄を飛ばす。
転移してきた爪はふわふわと浮いた後、メガデスの元に戻った。
「……」
クレナは勝機を探るため、メガデスの様子を伺う。
『 状態変化爪(モードクロウ) になってから負けたことないんだよね』
メガデスは勝利を宣言し、さらに攻撃を加える。
両爪は消えるとハクとクレナに襲い掛かる。
「こ、この!! はあっ!!」
『ふん、防御ががら空きだね』
『ぎゃふん!』
2つの爪に意識を集中させハクと共に必死に躱していると、メガデスに距離を詰められ、巨大な尾で吹き飛ばされてしまう。
地面に何度も打ち付け、クレナはハクの背中から投げ出される。
躱すことに手一杯で、クレナも防戦と回復薬使用に集中することになる。
『ギャウ!』
「おお! 躱した!!」
ハクの動きに変化が生じ始める。
ハクの背後から攻められても、気付くようになったようだ。
『さすがに幼体でも古代竜まで上り詰めると「気配察知」を体得するか。それにしても早い速度で成長しているね』
ハクの様子にメガデスも賞賛する。
どうやらハクはこの状況の中で成長したようだ。
背後から迫るメガデスの両手を躱し始めた。
『ギャウ!!』
「うんうん、いけるよ!」
『……だけど、ここまでだ』
メガデスは気配察知を体得した竜とも戦ったことがあるようだ。
両手のそれぞれのタイミングをずらすなど、ハクが覚えた気配察知の上を行く攻撃を仕掛けてくる。
攻撃を躱せないハクの目から涙が溢れてくる。
クレナと与えられるダメージは明らかに少なくなってきた。
与えたダメージもきっと状態変化鱗で完治されるのだろう。
ハクの中で敗北という気持ちが大きくなっていく。
「大丈夫。私たちは勝つんだ」
『う、うん』
天の恵みで全快させ、クレナは今一度ハクに檄を飛ばす。
『この状況で気持ちが折れないことは認めるけど、これで終わりだよ。デスペラード様の予言が外れることもあるんだね』
勝利を確信したメガデスは余裕を見せるように何かを語りだす。
何の話だと、クレナとハクが警戒しながらも耳を傾ける。
すると、メガデスではない者の声が聞こえる。
『デスペラードの予言ですか。興味のある話ですね』
パカパカッ
『な!? なぜここに。あ、あなた様は!!』
メガデスもよく知る者が試しの門で門番と戦うための空間に入ってくる。
『申し訳ありません。クレナさん。少し結界紋が変わっていて、突破するのに時間を要してしまいました』
丁寧な口調で麒麟の姿をした調停神ファルネメスがクレナたちとメガデスの間に割って入るようにやってきたのであった。