軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第467話 爪の門①

ハクが試しの門を挑戦できるのか分かった。

審判の門を開くための、試しの門の挑戦には神器を持った竜が必要だった。

ハクは創造神エルメアが与えた神器がある特別な竜だという。

難易度なりが分かり、生きてさえいれば竜神の里に戻してくれるとのことなので、このまま試しの門の挑戦を続けることにする。

この門は爪の門と言い、爪の門の1階層にあたるらしい。

他にも牙の門、瞳の門の3つがあるので3つの門を攻略する必要があるらしい。

退屈していたクレナとハクも引き連れて、この広い空間の出口に向かった。

箱状の場所から出た先を見て仲間たちは目を見開く。

「何よこれ、何もないじゃない」

セシルが出口の先を見て愕然とする。

出口の先には通路が10メートルほど伸びており、そこから先は何もない空間が延々と続いていた。

「すっげえな。下もなんもねえぞ。この場所って浮いてんのかよ」

ルークが飛び出た通路から下を覗くが地面は全く見えない。

「ホークたち、ちょっと、この部屋がどうなっているのか見てこい」

『ピィー!』

『ピィー!』

『ピィー!』

まずは状況の確認だ。

(これは違和感だが、もしかするとだけど)

3体の鳥Eの召喚獣を召喚し、状況の把握に努める。

試しの門もダンジョンであるという認識なのだが、これまで挑戦してきた学園都市やS級ダンジョンと様子が違う。

鳥Eの召喚獣が捉えたものは、アレンたちのいる場所は何もない無の空間に巨大な箱型のものが浮いていた。

遥か先まで飛んでいるのだが、何も見つけられない。

鳥Eの召喚獣に覚醒スキル「千里眼」を発動させる。

この「千里眼」は、視界の先100キロメートルまで把握できる。

しかし、地面も含めてその先に建造物らしきものは発見することができなかった。

「アレンどうなの?」

ハクの上に乗ったクレナが、既に移動の準備は万全と言う。

「何もないようだ。いや、飛竜が数百体を超えてこちらに向かって飛んできているぞ。戦闘準備に入ってくれ」

アレンが召喚した鳥Eの召喚獣に反応するように、体長が10メートル以上ある飛竜が群れとなってこちらに向かってきている。

仲間たちに警戒態勢を取るように言う。

『そうかそうか。アレンは何か不思議な力があるようだね』

割とアレンのことを知っている神界の神々やその使いの天使などが多い中、時空神デスペラードの使いの妖精竜の姿をしたメガデスは随分驚いている。

メガデスの態度からもアレンについて神界から聞き及んでいないようだ。

『グルアアアア!!』

『グルアアアア!!』

『グルアアアア!!』

アレンたちが視認できるところまで、飛竜たちがやってきた。

「クレナはハクに火を吐かせてくれ。後はこっちで何とかする」

「分かった。ハク、火を吐いて!!」

『ガアアアア!!』

飛竜よりも一回り大きなハクは火を吐きつける。

結構な距離まで広がりながら炎が空間を飛ぶ飛竜たちに吹きかけられる。

レベルも1でまだまだ威力が低いためか、倒すには至らない。

炎を吹かれた飛竜の1体がハクに狙いを定めた。

「やあ!!」

しかし、ハクの喉元に飛竜の牙は届かない。

クレナが大剣を棒きれのように振るい、ハクを狙う飛竜を瞬殺する。

クレナはプロスティア帝国でエクストラモードになった後、S級ダンジョンの最下層でレベルを92まで上げた。

エクストラモードとあって、ノーマルモードでは到達できないステータスを手に入れた。

「よし、あとは俺たちで殲滅だ。セシルよろしく」

ダンジョンの攻略を優先させたい。

殲滅ならセシルの魔法が一番早い。

「これくらいなら私1人で十分よ。フレイムランス!」

セシルは火魔法を使い、飛竜たちを葬っていく。

少し時間差でやってくる飛竜も含めて全て火達磨にして落下させていく。

『飛竜を1体倒しました。経験値を6400獲得しました』

『飛竜を1体倒しました。経験値を6400獲得しました』

『飛竜を1体倒しました。経験値を6400獲得しました』

魔導書にログが流れていく。

「やったかしら?」

「セシル、ありがとう」

時間差でやってきて結局15体の飛竜だったが、難なく討伐することができた。

セシルに瞬殺され、アレンたちの敵ではなかった。

(ほうほう、結構レベルが上がったな。それにしても飛竜の経験値は6400か。びっくりするくらい少ないんだが)

【名 前】ハク

【種 族】白竜

【形 態】幼体

【ランク】C

【レベル】38

【体 力】1310+1000

【魔 力】1210

【攻撃力】1780

【耐久力】1310+1000

【素早さ】1780

【知 力】750

【幸 運】840

【特 技】火炎を吐く、切り裂く、竜の鱗〈1〉、火耐性〈1〉

【経験値】約120万/200万

何百体の飛竜を倒した後、アレンが分析しながら見つめる魔導書をクレナが横から覗き込む。

「おお、ハクが強くなった!!」

『ギャッギャ! ボクツヨクナッタ』

嬉しそうにするクレナに感情が高まったのか、盛大にブレスを吐いている。

(なるほど、特技は向上することもあれば、追加されることもある。バフ効果もある常態的に発動するスキルもあると)

ハクにはハクの仕様でステータスやスキルが上がっていくようだ。

もともと「火を吹く」だった特技が「火炎を吐く」に威力が向上している。

竜の鱗〈1〉、火耐性〈1〉とレベルが上がって追加された特技もある。

数字があることから、レベルが上がればさらに向上するのかと分析できる。

だが、今回の戦闘で1つの疑問が生じる。

それは飛竜の経験値が低いのではというものだ。

アレンはS級ダンジョンに挑戦する前、白竜を倒したとき得た経験値は2700万だった。

学園のダンジョンにいたA級ダンジョン最下層ボスのヘビードラゴンは200万だった記憶がある。

さすが竜系統の魔獣なのだが、同じAランクの魔獣なのに10倍以上の経験値差がある。

それにしても今回倒した飛竜の経験値8000は低すぎるということだ。

竜系統にしてはかなり少ない経験値だと思われる。

【パーティー構成時の獲得経験値割合】

・1人は100%

・2人~8人は80%

・9人~16人は60%

・17人~48人は40%

・49人~252人は20%

・253人以降は10%

「ちなみに、飛竜にしては経験値が低いようですね」

(こんなものかと言われたらそうだけど)

『ああ、里の外からくるとそう感じるかもしれないね。ここは魔王の力の及ばない聖域さ。魔獣のランクでいうとCかな』

「なるほど」

魔王の「大厄災」によって、この世界の魔獣は一段階ランクが上がったと言われている。

しかし、この里は聖域となっており、魔王の影響を一切受けていないようだ。

だから、外の世界ではBランクの飛竜も、魔王の影響がないためCランクしかなかった。

経験値もその分少ないらしい。

そう言われてみたら、飛竜というよりさらに格下のワイバーンのようにも思えた。

『アレンは仲間の力を見ることができるようだけど、白竜のランクも本来Bなのさ。Cランクなのは幼体だからだよ』

アレンが魔導書を見ていることに気付いたようだ。

白竜のハクが幼体から成体になるとランクが1つ上がるらしい。

アレンは今聞いた情報を魔導書に整理する。

【ハクと魔獣のランク】

・試しの門にいる魔獣は、外より1ランク低い

・経験値もその分少なくなる

・ハクは幼体だから、成体よりランクが1つ低い

・ハクは成体になると、ランクが1つ増える

「ちなみに、出口がどこにあるか聞いても?」

『さすがにそれは教えられないよ』

これは教えてもらえなかった。

「アレン、どうするの?」

「この何もない空間には、空飛ぶ竜種が多いようだ。セシルは全部撃ち落としてくれ。俺はその間、この空間に何かないか探すことにする。ソフィーもできれば、この足場まで敵を引きつけないように頼む」

「アレン様、承りましたわ」

ソフィーはアレンの指示が来て嬉しそうだ。

ここは元来た箱状の空から出た先だ。

しかし、その先は続いていなかった。

10数メートルの渡り廊下のような足場しかないので、こんな狭いところではなるべく戦いたくない。

ソフィーが顕現する精霊たちにも働いてもらうことにする。

鳥Eの召喚獣がどこまで行っても、果てしなく何もない空間が続いており、何も見つけられない。

『……』

メガデスがアレンたちの攻略を見守る中、アレンの思考はダンジョンの攻略に向かう。

(俺にはマップ機能がなく、とんでもなく広い世界と。これってもしかして大陸並みに広いんじゃないのか。もしかしてそれ以上か)

鳥Eの召喚獣をそのまま飛ばせ続けても、どこまで行ったのか分からなければアレンたちはその場に向かうことができない。

アレンは鳥Eの召喚獣がどこにいても大丈夫なように鳥Aの召喚獣とペアで移動させる。

何かあれば鳥Aの召喚獣が特技「巣ごもり」の巣を設置する作戦だ。

鳥Eにこの階層の攻略を任せて、アレンたちが態々探し回る必要もない。

ハクのレベルが順調に上がっていっているので、このまま強化することにする。

それから10時間が過ぎた。

今日は1日、朝から竜王に謁見して、ハクを仲間にしてそれから試しの門攻略だ。

外の世界に待機させている召喚獣で確認すると、日の光は失い真っ暗になっている。

「ちょっと、そろそろ戻らない。私、疲れたわ」

「そうですわね。今日はこの辺にしませんか? アレン様」

セシルの言葉に、ソフィーも同意する。

アレンも参加しての飛竜討伐なのだが、もう数万体倒すことができた。

Cランクの魔獣とはいえ、10時間を超えて倒し続けるとさすがに疲れる。

2人揃って、今日の試しの門攻略はこの辺にして明日にしようと言う。

「そうだな。って、うん? なんかあるぞ」

アレンが同意しようとしたところ、召喚獣の1組が、空間に浮かんだ箱のような物を見つけた。

入り口があり、中に入れるようだ。

鳥Aの召喚獣で転移先となる「巣」を設置する。

(おっと、ここに戻れるように、こっちにも「巣」を作ってと)

疲れた、腹が減ったという意見の出始めた仲間たちのためにも手短に済ませる。

「よし、皆移動するぞ」

アレンが鳥Aの召喚獣の覚醒スキル「帰巣本能」を発動すると、一気に視界が変わる。

『あれ、僕も運んでくれたんだね』

「ええ、今後も助言が欲しいので」

アレンたちは、1000キロ以上離れた場所にあった、宙に浮かぶ箱の中に移動した。

メガデスはアレンの意思1つで置いて行くこともできたのだが、助言がある案内人はいた方が良いので一緒に転移した。

「ここに何かあるよ!!」

『ホントウダ!!』

「ふふふ。これがママの力だよ」

お姉ちゃん風を吹かせたクレナが転移先の床板に描かれた紋章のような物を発見する。

誰が見ても分かる怪しい紋章だが、ハクが褒めるのでクレナは満更ではないようだ。

1人と1体は放置して光っている床に、アレンたちは近づいていく。

『次の空間に繋がってるよ。その床に乗るといい』

メガデスの助言の元に、アレンたちは床の上に移動する。

転移の魔法陣が発動し、アレンたちの視界が変わる。

(へ? なんだこの暑さは!?)

「ちょっと、暑いわ! は、肌が荒れてしまうわよ!!」

転移してすぐに分かったことはこの場所はとても暑いと言うことだ。

魚人のロザリナがすぐに悲鳴を上げた。

転移元と同じ広い空間に飛ばされたのだが、サウナもびっくりの温度だ。

「あそこから外に繋がりそうですわ」

ソフィーが指さす先に、広い空間からの出口が見えたので向かってみる。

前の階層と同じ階層のようだ。

箱状の空間には出口がある。

「世界が燃えているわ……」

目の前に地獄が広がっていた。

あまりの光景にセシルが力なく、感想を漏らす。

ドロドロの溶岩が地面の至る所から噴き出していた。

ドオオオオオオオオオオオオン

遠くで巨大な火山が噴火したようだ。

衝撃波と共に、溶岩が地面に向かって降り注ぐ。

アレンたちは慌てて、箱状の空間に避難する。

「ふむ、ここを攻めるのか」

アレンがどうやって攻略しようか考え始めたので、セシルが天を仰ぐ。

『あれれ、諦めないんだ。この場で足を竦ませる竜人たちも結構多いよ』

「これは、何か攻略を前提としたダンジョンになっていませんね」

メガデスが嬉しそうに話しかけてくるので、何もない空間に飛ばされたときに思っていたことを口にする。

攻略を前提にした過去のダンジョンとは何か違うと感じたからだ。

『もちろんだよ。だって、頼んでもいないのに神界に足を踏み入れようとしているんだ。それなりのことをしないとね』

「その結果、竜人たちがたくさん死んでも」

『僕らは別に神界に足を踏み入れてくれって頼んでるわけじゃないんだよ』

メガデスは当然のように断言した。

この言葉にアレンの仲間たちもハッとする。

神界に向かうための条件は与えたが、挑戦するかどうかは挑戦する者次第だ。

その結果、きっと多くの竜人たちが死んでいったのだろう。

「なるほど、分かりました。まあ、攻略できなかったダンジョンはないからな」

アレンは灼熱の業火を見つめる中、攻略の糸口を模索するのであった。